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森林の話


1.森林のはたらき

森林は、様々なはたらきを通じて人々の生活の安定、経済の発展に寄与しています。これを「森林の多面的機能」といい、例えば次のような機能が挙げられます。

  1. 生物多様性保全機能
    様々な動物の棲み処になる。
  2. 地球環境保全機能
    二酸化炭素を吸収するなど、地球温暖化の抑制。
  3. 土壌保全機能
    樹木の根が土砂や岩石を支え、土砂災害・土壌崩壊・山崩れを防ぐ。
  4. 水源涵養機能
    貯水し、水源となり、水をきれいにする。
  5. 環境形成機能
    空気を浄化し、快適な環境を形成する。
  6. 保健・休養(レクリエーション)機能
    人々のレクリエーションの場になる。
  7. 文化機能
    文化を醸成し、景観を形づくる。
  8. 物質生産機能
    木材、食材(キノコ、山菜など)の生産の場になる。

■森林の種類(諸説あり)

森林には、大きく分けて「天然林」と「人工林」があります。

「天然林」は、文字通り、自然の状態で種や切り株から出た芽が成長してできた森林です。天然林にはさらに「奥地(奥山)林」と「里山林」があります。奥地林は、自然の力だけで形成された森林で、「原生林」ともよばれます。なお原生林のうち、植生が古いものを特に「原始林」といいます。里山林は人々が炭や薪などを取るために木を切るとか、肥料などをつくるために落ち葉を取るなどして利用され、人手が入っている森林のことを指します。「自然林」ともよばれます。

「人工林」は、人の手で苗木を植え、育ててきた、すなわち「植林」によって形成された森林です。人工林には、「生産林」と「海岸林(等)」があります。生産林は、木材を生産するためにスギやヒノキなどを植えて育ててきた森林です。一方の海岸林(等)は、強風や砂などから住居やムラを守るため、マツなどを植えて育ててきた森林です(防風林、防砂林など)。このほか、防雪林、屋敷林などがあります。

2.日本の森林

世界全体では、約30%が森林です。その中で、日本の森林面積は国土の67%であり、実に約3分の2が森林です。このことから、日本は「森の国」ということもできます。日本の森林のうち、約60%が天然林、約40%が人工林です。

北海道・岩手県・長野県は代表的な森林県で、例えば北海道は、もっとも森林面積の少ない大阪府(5.7万ha)の約97倍の森林面積(554万ha)があります。

3.森林の循環利用

樹木は年々成長します。やがて隣の木の枝とぶつかり合うと、光を求めて木の競争がはじまります。このとき、木は「幹を太らせる」のではなく、「上に伸びる」ことで光を受けるように生長します。すると、ひょろひょろと長い木が増え、暴風や雪の重みで倒れやすい木になってしまいます。いわゆる「森が荒れる」状態です。ひとたび森が荒れると、生物環境の荒廃、土壌の崩壊、水源としての機能喪失など、これまで保たれてきた良質な自然環境の棄損が発生します。

したがって、木が混みあってきたときは1本1本の木にしっかりと光が当たるように間引きをしていくことが必要になります。これを「間伐」といいます。間伐によって残された木は、再び幹を太らせ、葉を広げてのびのびと生長できるようになります。ふたたび林が混みあってきたら、同じように間伐を行っていきます。

日本には、高度経済成長期に植林した人工林が多く、このような手入れを行って、健全な森林を維持していく必要があります。「植林」は、「植えたら終わり」ではありません。育てて、必要に応じて下刈りし、除伐し、育ってきたら間伐し、木材として使用できる状態になったら主伐し-その後にさらに植える-すなわち、「伐採して、使って、植える」という循環利用をしていくことが不可欠なのです。

木製品、紙製品、建築物、建築資材など、間伐材を含む木材を使った商品を消費者として購入るすることで、間伐材をはじめとした人工林の利用促進につながり、これが結果として豊かで持続可能な森林環境の維持に貢献できることになります。

ひところ言われたような「森を大切に」⇒「割り箸を使わない」といった運動は典型的なミスリードで、実際は森を大切にするからこそ、間伐材である割り箸を適切に使用しましょう-という世論の合意が必要だったわけです。ようやく近年、「木材を使ったビル」など、「木材の適正利用」が市民権を得たように思いますが、この人口オーナスの時代、それに大衆が「気づく」のは遅すぎたのではないか-というのが懸念として残されます。



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