先着順の販売では、組織的な買占めが横行しがちです。ECサイトではボット化されたツールによって一瞬で売り切れになる事象がよく起こります。また、実店舗では待機列による混乱が悩みの種となります。これらを防ぐため、以下のような方法が導入されています。
抽選にエントリーし、当選した人が期間内に確実に購入できる販売方式です。
特定の条件で招待された顧客だけが先着順で購入権利を得る販売方式です。
「お一人様1個まで」など購入数を限定して販売する方式です。ただし、何らかの方法で複数のアカウントを所持すれば大量購入ができてしまうことがあるため、本人確認や購入可能なアカウントの条件を絞るなどの方策と組み合わせることが望ましいでしょう。
「一度に大量に購入できる」ことが転売利益の源泉ですので、その源泉を断つ方法が考案されています。
整理券を事前配布し、整理券がある人にだけ販売する方式。「並び屋」を雇った大量購入を防ぐため、整理券自体を抽選とするなど、さらに対策を組み合わせることが望ましい。
アカウントを複数作成して「個数制限」を突破するなど、「アカウントだけ」で管理すると大量購入をされるリスクが高くなります。店頭での身分証明書の照合、オンライン販売でのSMS認証を含めた多要素ないし多段階認証などを組み合わせることは、複数アカウントでの登録動機を減じます。
過去に同一商品の購入履歴がある顧客への販売を行わない、過去に転売と思われる不自然な大量購入があったアカウントの購入を排除するなど、店舗が保有する購入履歴を活用した転売目的の購入者の抑制手法です。
決済方法を、例えば「日本国内発行のクレジットカード」限定とすると、海外からの(外国人の)転売目的の購入はきわめて難しくなります。また、「自社提携のクレジットカード専用」など、より自社のヘビーユーザーでなければ購入できない方法に限定することも有効です。このほか「現金不可」という条件も、「並び屋」による大量購入の抑止力になります。
予約段階でクレジットカードの即時決済限定で販売することで、大量購入のハードルを高めます。例えば「コンビニ支払い」の場合、支払期限が切れるまで猶予があるため、その期間で相場が予想よりも上がらない場合は支払いを行わないことでキャンセルをする-という方法で、大量に予約を入れて、その後に予約キャンセルを大量発生させるという事象が現実に起こっています。Amazonはこの理由でコンビニ決済を取りやめています。
Nintendo Switch2の予約方法で話題になった方法です。「特定の期間の〇〇のプレイ時間〇時間以上」とか、「特定の期間の自社ECサイトで〇万円以上の購入」など、自社のヘビーユーザーに限定した購入(予約・抽選参加)条件とすることで、より「本当に自社製品を欲しい人」に向けたアプローチが可能となるでしょう。利点は、あらかじめ母数を特定できることで、だいたいのリーチ率、反応率を販売開始段階からある程度確認できることです。
店頭販売の際、コアなユーザーであれば絶対に知っているであろうことをクイズにし、それに答えられた場合にのみ販売を行う、という方法です。アナログですが転売目的の購入を防ぐためには、効果的な手法の1つです。
転売は、「限定的な価値があるもの」が狙われます。であれば、その逆を突いて「転売の旨味」を削いでしまえばよいということになります。転売価値自体を下げてしまう、ということですね。その商品が本当に欲しいユーザーの「顧客使用価値」は削がずに、ということもポイントです。
商品をそのまま(新品として)転売できる状態にしない方法です。もっともアナログな方法としては「購入時に油性ペンで外箱に名前を書かせる」手法が有名です。このほかにも、剥がすと「開封済」「転売禁止」の文字が箱に残るシール部分を購入時に開封させる、購入時に「転売防止」などのシールを貼る、などの方法があります。商品の利用価値自体は変わりませんが、「中古品」となって転売価値だけは下がるため、転売抑止に有効です。
購入時に、商品のパッケージを開封してから受け渡すことを条件に商品を販売する方法です。こちらも「中古品」となって転売価値が下がります。
初回限定の割引など、通常販売価格よりも大きな割引がある商品の場合は、価格差を利用した利鞘を狙って転売が横行します。この割引による販売数量がそのまま(継続的なユーザーの)集客効果につながる可能性と、転売目的で買い占められて結局市場のほとんどのユーザーは初回限定の価格で当該商品にアクセスできない(継続的な集客効果につながらない)リスクとを天秤にかけておく必要があります。
生産元が「〇月には〇〇くらいの量が店頭には行き渡る予定」など、稀少性を削ぐアナウンスを定期的に入れることで、「高い価格で買うのはやめよう」という消費者心理がはたらき、転売相場が下落し、転売価値を下げることが可能です。
転売にペナルティが発生することが知れ渡り、「旨味」がなければその商材が転売される確率も低減します。
フリマサイトの調査を行い、転売が特定できた場合はサイトや出品者に直接連絡し、出品停止を依頼することも方法の1つです。「対策をしている」という姿勢を示すことで、「旨味」を感じにくくすることが目的です。
転売が確認されたチケット(入場料や座席指定など)を無効化します。入場券の場合はQRコードをシステム的に無効化したり、座席指定の場合はその座席そのものを物理的に使用できなくしたり、などの方法が実際に用いられています。転売品を「販売」だけでなく「購入」することにも踏み込んでペナルティを課すことで、転売そのものの価値を無効化してしまう方法といえます。