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消費増税後の「10-12月」のGDPが年換算で-6.3%になった(日経)という衝撃的なニュースが飛び込んできた。

政府はこれを「台風」だの「暖冬」だのに結び付け、果ては「緩やかに景気回復」という大本営発表(日経)までして、「やっぱり消費税増税は失敗だった」という世論が形成されぬように躍起になっている。

ただ、大本営発表は生活実感と乖離しているので、圧倒的大多数の物言わぬ国民は、「そんなことないべ」と鼻をほじりながら、財布のひもをしっかりと結んでいるのである。景気がよいのに個人消費が上向かない、そんなことはあり得ないからだ。

ここへきて新型コロナウイルスの市中感染拡大、という日本社会にとって特大のリスク要因が発生した。すでにインバウンドバブルの崩壊(ダイヤモンドオンライン)も確実で、常識的に考えて、1-3月期のGDPが前期よりも好転する要素はない。

そして誰もが薄々思っていることだが、「東京オリンピック」の開催も、もはや黄色信号である。もし中止となれば、大阪万博と併せ、老年期に突入しつつある「近代日本社会」の「壮年期、最後の仇花」だっただけに、実体経済はもちろん、個人消費の前提となるメンタルに与える影響も計り知れないことになるだろう。

大本営は、だからこそ「座してコロナが過ぎるのを待つ」「心頭滅却すれば火もまた涼し」という心境なのだろうが、何も手を打たなければますます状況はひどくなる・・という点では戦前の敗戦直前と類似した「誰も決断しないし、したくない」状況にあるといえよう。

斯様に、チャレンジングな状況にある日本経済において、今回の増税のタイミングは、おそらく「最悪」であったと、後世の経済学の教科書には記銘されるに違いない。

私は2019年の8月に、以下の趣旨のことを書いた

1.参院選を冷静にみれば「野党の政策実現能力」は国民から既に見放されている。与党の「現実改善主義」だけが、現状のシュリンクし続けていく社会を少なくとも<下支え>だけはする、と国民が暗に感じているからこそ、与党は「増税」を訴えたにもかかわらず、議席を維持できた

2.これで増税は決定的になったが、もはや国民に増税を受け入れる経済的余裕はなく、消費増税を受けて、決定的に消費回復の芽は絶たれる

3.増税後は放っておいても深刻な不況が訪れる可能性が極めて高い

4.現政権は「現状改善主義(≠理念先行主義)」を取っているので、「善なる現状に国民の支持が立脚する」。したがって、不況になって「悪なる現状」になった途端、国民の支持は容易に離れていく

5.だからこそ国民は、徹底した家計防衛行動をとるべきだ。目に見える形で不況が深刻化すれば、「現状改善主義」であるだけに、政策的対処も取られやすい

この議論の核心は、「消費増税を受けて、決定的に消費回復の芽は絶たれる」というところだったが、これはたぶん小学生でもわかる理屈である。

今回の「やっぱりGDPがものすごく下がってしまいました!」というニュースに対する感想は、「やはり」という言葉しかもはやない。

***

いくら「軽減税率」や「ポイント」でごまかしても、「10%」である。「消費した分の1割を持っていかれる」という数字のインパクトは、やはり大きい。

「お店で1割引きの値札を見ても、『それって税の分が安くなったというだけで、定価のままということでしょう?と感じてしまう』」なんて話も聞くので、それだけ痛税感が大きいのだ。

ここまでのデフレで「値下げは消耗戦略でしかない」ことに気づき、安易な値下げ勝負に懲りた日本企業は容易に値下げをしなく(できなく)なった。「物の量を減らす」「サービスの内容を減らす」ことで価格だけは維持する戦略を取り始めている。

物の量を減らすといえば、食料品の極端ともいえる少量化が典型例である。大義名分は「高齢者や女性でも食べきれるように」という形をとるわけだが・・

サービスの内容を減らすといえば、営業時間の短縮が典型例である。これまた大義名分は「働き方改革」「労働者確保」という形をとるわけだが・・・

増税で可処分所得は減っているので、これらは実質的にはすべて「値上がり」である。すでに日本は不況時の物価上昇、すなわち、スタグフレーションに突入しつつあるのではないか。

それを示す兆候の1つに、不動産価格の高止まりがある。

資産バブルで異常な高値が続く都市部のマンション市場は、もはや一般の家庭では手が届かない水準になってきている(「19年マンション発売12%減 価格上昇、43年ぶり低水準」[読売新聞2月22日付東京版]、「誰が買えるの?マンション1戸当たりバブル期越えの8360万円」[MAG2NEWS] など、価格高騰を懸念する記事は枚挙に暇がない)

しかし、不況が続けば結局は「今の価格では売れない」・・そんな時代が間違いなくやってくる。

現に、前回のバブル経済の象徴の1つであった別荘地の不動産は、マイナス価格でも買い手がつかない状況に陥っている場所が出てきているという(空き家問題で増え続ける「マイナス価格物件」の実態 [IT Media])。

深刻なデフレが目の前まで迫っている。それを庶民は敏感に感じ取っているからこそ、資産防衛に走るのだ(消費を手控えるのだ)。

まさに日本経済崩壊を防げるかどうかの正念場だ。

だというのに、新型コロナウイルスの影響で、レジャー、移動・・つまり「人が集まって何かをする」機運が大幅に減るなど、実体経済も深刻なダメージを受けつつある(例えば東海道新幹線は、休日の利用者が現時点ですでに1割減になっている[日経])。

    *** 

このように、ただでさえ消費マインドが下がっているときに、さらに「老後は2000万円貯蓄しないと野垂れ死ぬし、国も面倒はみないよ」(意訳)と言ってみたり、IMFに「消費税は15%、20%と引き上げていかないと国の財政は破綻するよ」(意訳)と言ってもらったり、どんどんどんどん消費の足を引っ張ることをする。

これに追い打ちをかけるように、働き方改革で「仕事量は変わらないけれど残業代は減らすよ。休みも増やすから、あとはよろしく」(意訳)となって、家計にもじわりじわりとダメージを与え続けているのである。

これで景気が上向くわけがないのだ。

財務省は、「景気に左右されない財源を確保し、税収の安定化を図ることを以て、国家国民の安寧を図る」ことを存在意義としている。国際的な下げ基調で法人税は下げざるを得ないし、景気に左右される所得税も心もとない。となると、生きている限り発生する「消費行動」に着目した、事実上の「人頭税」である消費税は、確かに「安定した財源の確保」には寄与したのだといえる。

しかし、「安定した財源」というと聞こえはよいが、これはすなわち「国は景気を安定させることではなく、どんなときでも税を徴収できる仕組みづくりを優先します」と言っていることと同義である。

すなわち、「国家の繁栄と国民の福祉増進のために税金を徴収する」ことよりも、「税金を安定して徴収するために、税金を徴収しやすい仕組みをつくる」という手段の目的化が起こっているのだ。

この倒錯した状況で、国民経済の発展や、福祉増進が為されるわけがない。

今後間違いなく大きなデフレ(資産価値上昇)が起こることが目に見えている以上、やはり国民がすべきは、徹底したデフレ対策(資産防衛)なのである。間違ってもインフレ対策(投資や消費)ではない。

・・・これが論理的にせよ非論理的にせよ感覚として持っている国民の一般的な経済観念の帰結である以上、消費が上向くことはないのだ。

これをどう逆回転させるか。まずは「このタイミングでの消費増税が失策だった」ことを出発点に政策パッケージを展開していくしかないだろう。

しかし、ああいう「大本営発表」をしているようでは・・・それを期待しようもないのだが・・・(だから、余計に消費マインドが下がるのだが・・・)。


2020年2月24日公開

2020年。2020年代の幕開けである。2010年代のスタート、2010年からはすでに10年が経過した。「十年一昔」というので、ここで2010年がどんな年であったか、振り返ってみたい。

まずはわかりやすく、「歌は世につれ、世は歌につれ」ということで、「歌」の世界から。

■流行曲
・『ありがとう』(いきものがかり)?朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』主題歌。
・『ヘビーローテーション』(AKB48)
・『トイレの神様』(植村花菜)

■映画
・『アウトレイジ』(北野武)
・『借りぐらしのアリエッティ』(米林宏昌)
・『アバター』(ジェームズ・キャメロン)※2009年末公開
・『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン)

■書籍
・『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海)※2009年末発売
・『1Q84 [3]』(村上春樹)
・『体脂肪計タニタの社員食堂』(タニタ)
・『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル、鬼澤 忍 訳)

■ドラマ
・『ゲゲゲの女房』(NHK)
・『フリーター、家を買う。』(フジ)

■スポーツ
・横綱朝青龍が引退(大相撲)
・バンクーバーオリンピック・パラリンピック(冬季)
・サッカーワールドカップ南アフリカ大会(日本ベスト16入り)

■お笑い
・笑い飯(M-1)
・キングオブコメディ(キングオブコント)

■テレビ番組
・『無縁社会』(NHK)

■ヒット商品
・食べるラー油
・プレミアムロールケーキ
・オールフリー

■家電製品
・iPad
・3Dテレビ
・ホームベーカリー

■ファッション
・山ガール系
・見せパン
・ロンパース
・マキシワンピ

■新語・流行語大賞
・「ゲゲゲの?」
・「いい質問ですねぇ」(池上彰)
・「イクメン」(つるの剛士)
・「女子会」
・「?なう」
・「ととのいました」(Wコロン)

■できごと
<1月>
・平城遷都1300年祭(奈良)
・日本年金機構が発足
・日本航空が会社更生法の適用を申請
・JR東日本の「省エネ電車」209系が京浜東北線から引退(2009年10月?13年3月にかけて、順次改造の上房総ローカル各線に転用)
・ドバイに世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」(828メートル、206回建て)が
<2月>
・「とんがり頭の」500系新幹線が東海道新幹線の運用から撤退。
<3月>
・任天堂が携帯型ゲーム機「Nintendo 3DS」の発売(翌年)を発表。
・建設中の「東京スカイツリー」が、東京タワーの高さ(333メートル)を抜く。
<4月>
・神奈川県相模原市が政令指定都市に移行。
・「ミニ新幹線」400系が引退。
・刑事訴訟法が改正。最高刑が死刑となる凶悪犯罪の公訴時効が廃止となる。
<5月>
・金星探査機「あかつき」打ち上げ。
・普天間基地問題で鳩山内閣が迷走。社民党が連立政権から離脱。
・上海万博。
<6月>
・鳩山内閣が総辞職。菅内閣が発足。
・小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還。
・高速道路無料化社会実験の開始。
<7月>
・翌年の地デジ化を前に、全番組が16:9サイズのレターボックス化。
・京成成田スカイアクセス線が開業。新型スカイライナーが「日暮里?成田空港」間を最速36分で結ぶ。
<8月>
・GDPが中国に抜かれ、世界3位に。
・イラク駐留アメリカ軍の戦闘部隊が撤退完了。
<9月>
・尖閣諸島中国漁船衝突事件。
・任天堂が「スーパーマリオ25周年キャンペーン」を開始。
<10月>
・日本人がノーベル化学賞をダブル受賞(根岸英一氏・鈴木章氏)
・羽田空港に「新国際線ターミナル」が開業。「新滑走路」を供用開始。
<11月>
・横浜市でAPEC首脳会議が開催。
<12月>
・東北新幹線が新青森まで開業。全線開通。

■こんな時代です
・まず驚くのが、今やコミュニケーション・インフラとしてすっかり定着した感のある「LINE」は社会に未登場であるという点。また、iPhoneはまだ「4」で、OS名称が「iOS」に定まったのもこの年です。

■2011年から2019年のできごと
*2011年
・大相撲八百長問題
・東日本大震災
・地デジ移行
・Nintendo 3DS発売
*2012年
・東京スカイツリー開業(634メートル)
・原発の稼働が42年ぶりにゼロに
・尖閣諸島国有化
・ノーベル生理学・医学賞(山中伸弥氏)
・自民党が政権奪還
*2013年
・東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転が開始。
・交通系ICカードの相互利用開始。
・年金受給年齢が65歳に引き上げ。
・富士山が世界文化遺産に登録。
*2014年
・「STAP細胞事件」
・『笑っていいとも!』放送終了。
・消費税が5%から8%へ増税。
・リニア中央新幹線の着工。
*2015年
・北陸新幹線が金沢まで開通。
・上野東京ラインが開通。
・東京オリンピック騒動(国立競技場計画の白紙撤回、エンブレムの使用中止)
・ラグビーワールドカップで日本が南アフリカに勝利。
・ノーベル生理学・医学賞(大村智氏)
・ノーベル物理学賞(梶田隆章氏)
*2016年
・マイナンバー制度開始
・SMAPの解散騒動
・熊本地震
・オバマ大統領が広島訪問
・天皇陛下(現上皇陛下)が譲位のお気持ちを国民に向けて発表
*2017年
・電通の「違法残業」が事件化し、連日報道される  
・森友学園問題、加計学園問題、自衛隊日報問題などが連日報道される
・天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立。皇室会議で天皇陛下(現上皇陛下)の退位日・新天皇即位日が決定する。
*2018年
・大阪北部地震
・北海道胆振東部地震  
・北海道内全域で大規模停電が発生
・平成30年7月豪雨
・オウム真理教事件の死刑囚13人の死刑執行
・安室奈美恵が芸能界引退
・日産自動車のカルロス・ゴーン会長を逮捕
*2019年
・平成から令和へ、譲位に伴う改元が行われる
・「働き方改革関連法」施行
・参議院議員選挙で、従来であれば「泡沫」とされてきた複数の政党が議席を獲得
・消費税増税8%から10%へ
・イチローが現役引退
・芸人の「闇営業問題」が連日報道される
・京都アニメーション放火事件
・台風15号・19号・21号が連続して列島を襲い、「強風」「豪雨」で甚大な被害。千葉県では長期間にわたり大規模停電が発生した。
・ラグビーワールドカップで日本がベスト8進出


2020年1月15日 公開

■「ノー残業 職場の外では 仕事増え」     

仕事量を変えずに残業時間だけ規制しようとすると、持ち帰り残業が増えるだけだ。もっと構造的に「仕事のプロセス」を改善していかないと、真の働き方改革にはならない。

仕事には、「やらなければならないこと」と「やったほうがいいこと」「やらなくてもよいこと」が混在している。大抵は「やらなくてもよいこと」に時間がとられ、「やらなければならないこと」までしか手につかず、「やったほうがいいこと」(これは、一言でいうと将来の自己成長や組織成長への投資である)にリソースが割かれることはほぼない。

これを逆転させて、「やらなければならないこと」に特化し、「やらなくてもよいこと」には手を掛けず、「やったほうがいいこと」の時間を捻出する。ここまでやっての「働き方改革」であることをもう一度考え直したい。

国会でも取り上げられた有名な話で、「レジ打ちの速度が2倍になったところで生産性は変わるのか」という命題がある。企業サイド(ミクロの観点)からすると、レジ打ちが2倍速になればそれだけレジの稼働台数を減らせる(単純計算で1/2にできる)わけだから、確かに「生産性」は高まるのである。ただ、マクロのの観点でみると、レジ打ちが2倍速になったところで客が2倍に増えるわけでもないし、売り上げが2倍になるわけでもないから、「それだけ」では付加価値を創出したわけではない、ともいえるのである。

要はスキルアップによって時間が単純に2倍速くなったレジ打ちの店員が、その時間を使って何を捻出できるか、まで設計することが必要だということだ。

時間労働者の作業力がスピードアップすると、結局その労働者の取り分が減る(作業時間が減るから)とか、そもそもレジの総稼働数が減って総人件費が抑制できるとか、そういう「人件費圧縮」目的だけで働き方改革を進めていくと、前述のとおり経済全体として「付加価値を創出」したことにはならないので、利益は上がっても、いつまでたっても社会全体としての「生産性」は上がらない、ということになりかねない。

働き方改革とは何のためにあるのか。それは、人口が激減し、社会がシュリンクする中であっても、今の経済を何とか維持していくためのアウトプット改革である。これは換言すると「労働者1人当たりの生産性を高める」ことに他ならないことをここで確認しておく。

繰り返しになるが、「スキルアップの結果として捻出された資力を何に活かすか」という観点と、そもそも、前提となる「スキルアップやアウトプットをどうやって創出するか」という観点が、働き方改革には欠かせない要素ということになる。

■では、何から着手するか 

「やらなくてもよいこと」を今すぐやめることである。今すぐにだ。

*確認事項だけの「念のため会議」
メールを読めば済むこと、各自で確認すればよいことはいちいち集まって行わない。「会議の時間が60分設定だから、そこに合わせてコンテンツを組む」など愚の骨頂だ。

*出社しての「書類作成」
わざわざ1時間かけて書類作成のためだけに出社するのはもはやナンセンスだ。「人と顔を合わせる必要がある」仕事のためにだけ、オフィスはあればよい。いや、もはや「人と顔を合わせる」ことすら、SkypeやTeamsなどの情報共有ツールで事足りる。そもそもオフィスって何のために存在するのだろうか(たぶん、突き詰めると社員と社員の知的な刺激と化学反応・・学びあいのため「だけ」にあるのかもしれない。オフィスは事務作業をする場所ではなくて、学ぶための場所・・・となると、今までのような機能はオフィスにはいらなくなる???)

オフィスと社員はもう要らない!?(日経ビジネス)

*同じ時間に通勤すること
上述のとおり、オフィスに出勤することそのものは「仕事」でもなんでもない。携帯さえあれば顧客に直接電話だってできるから、デスクについている必要すらない。とすると、わざわざ「同じ時間に通勤すること」すら異常にナンセンスなことだとわかる。すし詰めの満員電車に全員で乗り続けることは、体力的にも精神的にも、社会の大きな損失でしかない。

*社内の視察と接待
一定規模の企業であれば、「偉い人」が現場訪問(視察)をすると大騒ぎで社内接待がはじまる。やれ、どんな職場の状態を見せる、どのお店で歓迎会を開く・・・「現場の声を聴く」つもりが、「忖度といい顔で塗り固められた張りぼて」だけが一夜城のごとく構築されるのである。企業のアウトプットにはまったくかかわらないことだ。

現場の本当の空気を知るには、偉い人がフラットにやってきて、フラットにランチでも一緒に食べて帰る・・・くらいの状態が常態化する以外にないのであって(そして組織のレポートラインを考慮すると、直属の上司を飛び越えてその状態を実現する組織的合理性は不明であるし、仮にその状態が必要なのであれば、そもそも組織の改編こそ求められるともいえる)、旧態依然とした「視察部隊」をやっている限りは、現場で「顔を見せる」ための残業が今日もどこかで行われることになるのである。

*社内でのプレゼンや勉強会でやたらとPPTを使うこと
PPTは、「装飾」もあれば「ノート」もあって、「作業」の集合体だ。社外向けのプレゼンであれば効果的な視覚効果を狙ってどんどん使えばよいと思うが、社内向けではどうだろうか。実はワードファイル(PDFでもいいが)に文章と図を載せておくだけで充分・・ということはないだろうか(むしろそのファイルを読めば大要が理解できるのであれば、「プレゼン」という行為すら不要なのではないか)。

ワードファイルなら、「大量のPPTをカラー印刷する」みたいな時代に逆行した行為もなくなり、大幅な印刷費縮減にもつながる。

*虚礼
すぐに顔を突き合わすメンバーに対する年賀状を筆頭に、古い職場だといまだに「バレンタインデー」や「ホワイトデー」の義理チョコの交換などを行っているところもあるかもしれない。これも「やらなくてもよいこと」の代表のようなものだ。

*社内行事
歓送迎会はともかくとして、忘年会や納会を代表とする強制的な飲み会、社内BBQや旅行などの強制的な親睦会。すべて「やらなくてもよいこと」だ。やるのであれば、自発的に「飲みに行く?」→「行こうか」とならないもの以外は、すべて「業務」として対応すべき案件だ。これに「賃金を出せない」のであれば、それは企業にとって不要なのである(働く場所で、働くこと以外をしたらおかしいでしょう?)

*定時
同じ組織でも、それぞれが違う仕事をしている。「定時」で区切って、同じ時間で全員仕事をさせようとするから、無駄な残業が起こるともいえる。仕事時間はそもそも、「フレックス」であるべきなのかもしれない。

*「とりあえずCC」
「CCは禁止」にすると、1日のメールはどれだけ減るだろうか。

*FAX文化
「FAXの着確認の電話」ほど、無意味な業務はない。いまだに校正がFAXのところもあるが、PDFではなぜダメなのか・・・習慣の力は素晴らしいが、負に回ると恐ろしい非効率を「当たり前」のものにしてしまう。

*ネクタイ着用、スーツ着用
この高温多湿の日本で、よく最近まで「クールビズ」なしで生活できていたものだと心底思う。本当にネクタイ・スーツが必要なビジネスシーンは、実は少ない。リラックスできる格好で働いたほうが、頭をクリアにしてアウトプットもできるというものだ(スーツを着たほうが頭が回る、という人はそうしたらよいだけの話。要は、「絶対にネクタイ・スーツ」という固定観念がすでに生産性を阻害しているかもしれない、ということだ)。

■働き方「修整」しかしていない
世で起こっている「働き方改革」のほとんどが、働き方「修整」「調整」の類だ。ノー残業デーなどその筆頭で、そもそもの「やらなくてよいこと」を削らずに、「時間だけ減らせ(あとはお前らで調整しろ)」とやっても、冒頭の「ノー残業 職場の外では 仕事増え」になるだけなのである。

単なる「流行」でよそもやっているからうちも・・というノリで働き方改革をやるくらいだったら、「働き方修整」など、むしろやらないほうがよい(職場の外で際限なく仕事をされたら、余計に過労リスクは高まるし、情報セキュリティの観点からしても望ましくないからだ)。

「やらなくてよいことを減らす」のは、「流行」ではなく「不易」の概念だ。「働き方改革」は、それを完遂させるだけの準備と覚悟が必要なのだ。なにせ「改革」なのだから。


2019年12月31日 公開

■「何のため 誰のためなの セキュリティ」
この警戒っぷり、まるで見えない敵と戦っているようだ・・・。バカみたいな長さのパスワード、データを持ち出すための複雑な手順。前者は「付箋」という、後者は「私用に添付メール」という、もっとも漏洩しやすい手段が濫用され、むしろセキュリティはガバガバになっているというのに。

■「景気が上向きゃ 増税で そりゃ消費など しなくなる」
ちょっとでも景気が上向けば消費税が上がる。国民はそれを学習したので、所得が増えれば貯金をし、所得が減っても貯金をして、「将来」に備えるのであった。

■「企業も学んで値は下げず 中身を減らしてステルス値上げ そりゃ消費など しなくなる」
「値下げ」は企業体力を下げる悪手でしかないと、20年以上のデフレ社会で企業も学んだ。値を維持したまま実効価格を上げる方法(中身を減らすか、粗悪化する)が主流で、どんどん貧乏くさくなっているのが今である。

■「年賀状 送るのやめたら 喧嘩減り」
以前は天皇誕生日が12月23日だったので、この日が「25日までに年賀状を投函(=元旦に年賀状が届く)」するための年賀状作業デーになっていたという向きも多かろう。今年からは平日になったので、それはできなくなった。

年賀状はもともと、「お年始回り」のハガキ版。例えば年初すぐに合うような同じ職場の同僚に対し、忙しい師走に、時間をかけて、喧嘩をしてまで作るようなものでは本来はない。

わが職場も、働き方改革の流れで「虚礼廃止」の流れになった。これで少なくとも25%ほどのハガキが節約されることになった。仮に20人規模の職場で年賀状のやり取りが廃止されると、それだけでこんなにお金が「浮く」のである。やらない手はない。

・はがき代 63円×20人×19人分=23,940円
・インク代 3000円×15人÷30枚(1人当たり平均30枚投函で計算)×19人分=28,500円
・印刷代 50円×10人=500円
(インク印刷が15名、印刷委託が5名と仮定して計算した)

計52,940円(1人当たり2,647円)

今や家庭でパソコンを使うことなどほとんどないという方も多かろう。そういうご家庭は、年賀状の時期だけWindows「7」(10ではないところがポイントである)のPCを引っ張り出してきて、プリンターを出して、いざ印刷をしようと思ったらインクがかすれて出ない・・・インクを買いに行ったら高すぎて買う気も起らない・・・泣く泣く買ったはいいもののヘッドが故障していて結局動かず、サポートセンターに聞いても修理代よりもむしろプリンターを新しく買ってしまったほうが安いので結局そちらを買う・・・この過程で不機嫌になり家族と喧嘩をして、デザインもいまいち決まらず、年の瀬のくそ忙しいときに準備に追われる・・・という悪循環である。

お金をかけて不愉快になるくらいだったら、もともと「日本の伝統」ではないのだから(近代になって郵便制度がはじまるまで「年賀状」という制度があるわけがないので)、「気にせずやめちまえ」ということになる。


2019年12月30日 公開

このページは一応「編集後記」という名前になっているが、基本的にはサイトのことをほとんど書かず、かなり好き勝手な所感を書く秘密の場所みたいになっている。

なのでたまにはこのサイトのこと自体を書くのだが、2003年2月に公開を開始したこのサイトも、いよいよ17年である。

ネットの世界は変化が激しいので、当時は個人の情報発信の主流であった「個人テキストサイト」など、ほとんどが「ウェブログ」「Twitter」「Facebook」「インスタグラム」(テキストと写真)・・・を通り越して、「YouTube」(動画)の世界にまで進展した。個人の発信欲、共有欲は完全にそこに吸収されていった感がある。

昔はテキストサイトランキングというのがあって(「Readme!」などが有名だった)、「静香の入浴シーンリスト」を公開した時など、今でいう「バズ」が起こって、そこの日刊ランキングで、数々の著名サイトに並ぶ6位になったのはよい思い出である(2005年8月3日)。

  >懐かしいサイトがいっぱい!

今や20年単位のかなりの老舗サイトが相次いでウェブログ化して見た目を新しくしていく時代。それでも、しぶとくテキストベースで公開しているサイトというのはある。

私も何百回もウェブログ化、スマホ最適化、いろいろと「見た目を変える」道を考えてきたのだが、なにせページが多すぎる(2000ページくらいかな、と思っていたら、3000ページ以上あった・・・)。

これを全部近代化するのにはえげつない時間がかかる。そこでサイトの「見た目」に力をかけるよりも、思い切り「昔の姿でやっています」感を出したほうがよかろう、という結論になった次第である。

実は裏ではすごく実験していて、WordPressやら、Concreteやら、あれこれでこのサイトがスマホでも表示が最適化されるよう、いじってはいたのだ。最終的には「2019年中にWordPressで作り直す」ハラを決め、一人で「見た目近代化プロジェクト」を立ち上げてもいた。

ただ、「見た目近代化プロジェクト」によって進行していた、「パイロットサイト」のトップページを見てほしい。このサイトがこんなおしゃれな感じになってしまったら、「何か違う」んじゃないだろうか。

【今のこのサイトのトップページ】

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【パイロット版のトップページ】

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・・・微妙である。実に微妙だ。

この「何か違う」ところに、このサイトの「このサイトらしさ」があるような気がして、「あ、これは安易に見た目の近代化にはしるのはやめよう」と思いとどまることになったのだ。

***

ただ、「見た目が古い」からといって中身まで古いわけではない。

まず肝心のコンテンツであるが、トップページの「雑記」こそ昔のように毎日更新などとてもできる状況ではないが(仕事も、家庭も、17年もたてばそれなりに責任のある立場になるものである・・・)、新しいコンテンツも追加し続けている。

19年だけでもNintendo Switchのスーパーマリオメーカー2のコース紹介ページとか、常に一定のアクセスのある健康に関する情報をまとめたページとか、実に現代的なコンテンツを立ち上げている。

また、ドラえもん年表など、常に情報が更新されるものについては、できる限りこまめにアップデートするように意識している(2004年8月の初版公開以来、50回目の情報更新となった)。

次に強調しておきたいのが、サイトのセキュリティ強化である。常時SSL化、すなわち、サイトのURLがhttpからhttpsになることであるが、これは「このサイトは古いまま放置プレイをしているわけではないですよ」という意思表示でもあった。

また、このサイトは古いテキストサイトらしく「Shift_JIS」を標準の文字コードとして設定したままであった(サイト内を調べてみると、「euc-jp」や、「x-sjis」なども残っていた!)。今や90%以上がUnicodeで記述されていることを受け、一挙にすべてのページを変換するということもやった。

同時にWindows PCからこのサイトを見るといまだに「MS Pゴシック」で表示される問題にも着手し、「Meiryo UI」で表示されるようにする標準フォントの見直しも行った。

このように、「見た目は古いが、メンテナンスは常時行っている」というのがこのサイトの現在の管理状況である。

古い家は、人が住まなくなり、管理が行き届かなくなるとすぐに痛み、ますます人が住めない環境になっていく。

ウェブサイトもこれは似ていて、管理が行き届かなくなるとすぐに古びてしまい、人が来ないサイトになっていくのである。

「管理人」とはよく言ったものである。

2000年代にスタートした「鬱色時代」。2010年代を超え、2020年代、30年代、40年代、50年代、60年代、70年代、80年代、90年代、2100年代、2112年(ドラえもんの誕生年)を超えても、まだまだがんばりまーす!!!


2019年12月28日 公開

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