私が実際に適応障害になった経験に基づき、気づいたこと、身をもって学んだことのあれこれをQ&A形式にまとめてみました。
適応障害 学びのまとめなども適宜ご参考になさってください。
調子に乗って書き溜めているうちに、60万文字を超えてしまいました。文庫や新書で5冊分くらいの情報量があります(笑)。おそらく通しで読むと16時間くらいかかります・・・。通読するというよりも、 適当にスクロールやページ内検索などをしていただき、ご興味のあるトピックスを辞書的にお使いいただいたほうがよいでしょう・・・。 そして、こんなに文章を大量に書き殴っている時点で(具合が悪いピークのときだったら、とてもこんな長文書けませんから・・・)、「あ、この人ちゃんと治ったんだね・・・」と思っていただけるかと思いますので、なぞの説得力だけはある・・・かもしれません!
番外編)AIに聞いてみた:AIに聞いたほうが、むしろ客観的な回答が得られるのではないか?と思って質問をしてみました。聞くのも、それを元に活用するのもしないも最終的には「人間」です。
A.一言で言うと、「ストレスによって、ある環境への適応が障害されてしまう病気」です。あるストレスで心身がやられてしまい、原因となる環境になじめなくなってしまう (いられなくなってしまう)のです。英語でもそのまま「Adjustment Disorder(適応障害)」であり、その頭文字をとって「AD」と略されることもあります。
環境(の変化等)に起因する明確なストレスが原因となり、過剰な(※)心身の不調が生じ、日常生活や社会生活に大きな支障がでる自律神経失調症、抑うつ症状、回避行動などの心身の様々な症状が起こります。症状だけを見ると「うつ病」と酷似していますが、「発症原因が明確に説明できる」ことが「うつ病」との違いとされています。また、概ね原因となる出来事の発生から1~3か月以内に発症し、原因から離れると6か月以内に症状が改善すると言われています。
ストレスによって抑うつ症状を呈するメンタル疾患の中でも、「原因がはっきりしていて、急激に発症し、適切に対処することで比較的短期間に寛解するもの」が適応障害と言えるでしょう。
(※)「過剰な」心身の不調という部分がポイントです。ここでの「過剰」とは、あるストレスによって、普通にしていれば(他の人では)起こらないような心身の不調が、強烈に発現することを指します。「反応として一般的に予想されるよりもはるかに強大な苦痛」という表現もなされます。 また2022年1月発効のWHOの診断基準(国際疾病分類:ICD-11)では、「ストレスへのとらわれ」(「ストレスに対する過度の心配」「ストレスに対する反復的で悲観的な思考」そして「ストレス源についての絶え間ない反芻」)が診断上の必須の症状に加えられています。
A.発症すると「抑うつ症状」や「自律神経症状」など心身の不調を呈する病気であるという意味で臨床的な症状は酷似していますが、発生機序が異なるとされます。
適応障害の場合は、「特定のストレス源など明確な原因が認められ、かつ、そのストレスに曝露してから比較的短期間(1~3か月以内)に抑うつ症状を発症し、当該のストレス源から離れるとすぐ(6か月以内)に症状が改善する」とされています。一方のうつ病は、「明確な原因が不明の場合が多く、ストレスに曝されてからも抑うつ症状を発症するタイミングが不定で、さらにストレスから離れてもなかなか症状が改善しない」ようです。
上記から明らかなように、適応障害とうつ病の違いは「症状の軽重」というよりは、「明確な原因の有無」と、多くはその「継続期間の長短」にあります。単純に「適応障害だから軽い」「うつ病だから重い」というわけではないので、注意が必要です。
このほか、適応障害では、特に発症の初期においては、抑うつ状態にあっても「楽しいこと」「ストレスでないこと」は比較的従前通りにできることが多い (ただし悪化すればそれもできなくなりますので、あくまでも程度の問題です)のに対し、うつ病の場合は「楽しいことがあっても、まったく楽しめない」状態になることが多いとされます。
A.「ストレスが原因で引き起こされる、継続的な抑うつの諸症状(原因から離れて休息すると6か月以内に快方に向かう)」が一般的な定義でいうところの適応障害です。一方でうつ病は明確なストレスに限らずに抑うつ症状が引き起こされることもあります(が、これはストレスが原因ではない、とは言っていないところに注意が必要です)。定義としては、「原因を特定することが不明な(困難な)抑うつ症状が長期にわたって繰り返される」のがうつ病と言えるでしょう。
適応障害かと思って治療を開始したら、予後が不良でやはり「うつ病だった」「躁うつ病だった」ということもしばしば起こるのは、それだけ「抑うつ症状」の見分けがつきにくいということです。
A.ストレスに直面すると、まずはアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどに代表される「抗ストレスホルモン」によって、心身がストレスに対処するべく 「頑張ろう」「我慢しよう」と活発に働きだします。しかし、そのランナーズハイ的な「頑張り」と「我慢」がいつまでも続くわけではありません。「イライラ」「疲労」など「心身からの注意のメッセージ」を押し殺して働き続けていると、やがて抗ストレスホルモンが枯渇し、 疲労が蓄積し、心身がかかるストレスと闘えなくなります(頑張れなくなる、我慢できなくなる)。疲弊し切ってしまって心身が正常にはたらかなくなる状態、これが適応障害の発生です。
A.以下のようなものが挙げられます。
※このQ&Aでは、主に 「仕事」の要因について記載しています。このほかに「学校」「家庭」「地域社会」といった要因なども当然にあり得ます。
これらを一言で表すと、「業務過多」「仕事そのものの悩み」「職場における人間関係の悩み」のいずれかが原因、ということになります。
A.適応障害の背景には強いストレス環境がありますが、当該の「ストレス」に対して心身が防衛体制を取るまでには、「前段階(きっかけ)となる マイナスの精神状態」が必ずあります。これを「自分自身の精神状態・体調(コンディション)」「職場環境(働きやすさ)」「組織風土(仕事そのもののやりがい)」という3つの観点から考えてみましょう。
「理想の状態」と「現実」とのギャップのことを「問題」と言いますが、ここに挙げた現象は、まさに「問題」が表出してしまっている状態であると言えます。マイナスの感情を惹起させるものばかりです。この状態が常態化すると、「疲労感」「徒労感」「不安」「怒り」「虚無感」「虚しさ」「あきらめ」「妬み」「嫉妬」「落ち込み」などのネガティブな感情が心を支配するようになり、負の気持ちが次から次へと連鎖するようになります。ここへさらに強いストレスが掛かり続けると、これをきっかけとして、一気に適応障害へと突き進むということは、 どんなに健康な人であったとしても、決して珍しいことではないのです。
A.ストレスの原因(と考えられる)因子を「ストレッサー」、ストレスによって起こる心身の反応を「ストレス反応」といいます。
単純には、「ストレッサーによってストレス反応が起こる」といえるのですが、すべてのストレッサーがそのままストレス反応に直結するわけではありません。 ここに3つの因子が関わってきます。「個人要因」「環境要因」そして「周囲のサポート」です。
ここまでをまとめると、「ストレッサー」に、「個人要因」と「環境要因」そして「周囲のサポート」が影響した結果として、「ストレス反応」が起こる、ということになります。
さらに最近では、この3要素に加えて、本人が職場で発揮できている生産性の指標である「エンゲージメント」や、本人の総合的な満足度を指す「Well-beingスコア」も、ストレス反応に対するポジティブ(またはネガティブ)なインパクトを与える指標として注目されています。
A.分類方法にもよりますが、大きく分けて以下の9つが代表的なものとして挙げられることが多いようです。
A.ストレス反応の発生機序は、「ストレッサー」に、「個人要因」と「環境要因」そして「周囲のサポート」が影響した結果として、「ストレス反応」が起こるということでした。まずは、自分がどのような状況にあるのかを客観的に判断することが必要です。具体的には、「どのようなことにストレスを感じているのか」「どんなストレス状態で働いているのか」「悩み事を一人で抱えやすい状態に陥っていないか」といった、「ストレッサーの把握」「周囲のサポート状況の把握」を行いましょう(できれば、「個人要因」や「環境要因」についても可視化したいところですが、まずは「ストレッサー」の把握が優先です。具体的なストレッサーの中身については、上記で取り上げています)。
ここでもっとも有効なのが、「ストレスチェック」を受けることです。点数化することで、「どのストレッサーに暴露されているのか」を客観視できるからです。
そのうえで、「自分に起こりやすいストレス反応」はどのようなものか、を理解しましょう。大きく分けると、「心」に出る人、「身体」に出る人、「生活態度」に出る人、の3パターンがあるようです(もちろん、そのすべてに症状が出る人もいるでしょう)。「ストレス反応」について詳しくは、次のQ&Aで取り上げます。こちらも、ストレスチェックの結果を参考に、自分に出やすいストレス反応の特徴について知るようにしましょう。
これらを受けて、ストレスに対処することを「コーピング」と呼んでいます。コーピングは、大きく分けて「問題焦点コーピング」と、「情動焦点コーピング」の2つに分けられます。
コーピングの種類は、複数のものを組み合わせるほど有効だとされます。まずは自分のストレスの原因と反応を知り(問題を発見し)、そのうえで「気が晴れる方法」「気分が落ち着く方法」を見つけ、状況に応じたストレス解消を図る(課題化する)ことがストレス対処の鉄則となります。
A.イスラエルのムーリ・ラハド博士が開発し、市民のストレスケアに活用されてきた高名なコーピング・モデルに「BASIC Ph」があります。これは、人間が持っている「回復する力」(レジリエンス)を引き出すストレスコーピングの類型の頭文字を取ったモデルです。こちらをご紹介します。
ストレスに対処するときに、自分が得意なモデルはどれか?(それは複数重なることもありますし、状況によって変化することもあります)―その強弱を日ごろから理解しておくだけでも、ストレス状況下における対処(コーピング)の選択肢となるでしょう。
A.「心」「身体」「生活態度」の3つの観点からみてみましょう。
なお「心」と「身体」双方の不調で現れる症状としては、活気の低下、疲労感や倦怠感、だるさなども挙げられるでしょう。また、「勝手に涙が流れる」といったことも自覚されるようになってきます。
これらの反応は、すべて心身からのSOSといってよいでしょう。頭では「大丈夫」と思っていても、心身がすでにストライキをはじめている状態といえるでしょう。
A.まずは休職などで、ストレス源から離れることが最優先です。そして、傷ついた心身を休めることに努めます。並行して、しばしば投薬治療(抗うつ剤、睡眠薬など)が行われます。しばらく休養によって不調が改善してきたら、次に内的要因としての「自分自身の認知の歪み」(働き方のクセなど)をカウンセリングなどを並行して修正していきます(認知行動療法など)。さらに体調が整ってきたら、外的要因としての環境調整(軽減勤務など)を行い、社会復帰に向けて、再発を予防していきます。
適応障害の程度は、「(ストレス(外部要因)+自分自身の認知の歪み(働き方のクセ・・内部要因))×ストレスへの曝露時間」で表されるとされます。この式からも明確なように、とにかくまずは外部要因から離れ、内部要因を修正すること。そして、できるだけそれを早期に対処すること(一般にストレスへの曝露時間が短いうちに対処できるほど回復も早いとされます)が重要です。
A.交感神経優位で常に気持ちが高ぶっている場合は、気分転換などで、それを直接鎮める対処法が有効です。しかし「闘争」モードはそこまで長くは続かず、やがて疲れ果てて(燃え尽きて)、「逃走」モードに移行します。適応障害と診断される頃には、たいていは「逃走」モードで、フリーズないしはシャットダウン状態である可能性が高いものです。
休職直後には「気分転換」のアクティビティよりも「薬を飲んで、とにかく休む」(寝る)ことが有効とされるのは、まさにこのフリーズ状態にあるからです。闘争状態の場合は「気分転換」が有効でも、いざ「身体が動かない」状態になってしまえば、いきなり「元気を取り戻そう!」と、あれこれ気分転換を試みてもなかなかしんどいでしょう。「運動」や「散歩」などが推奨されるのは、あくまでも急性期を過ぎた人から、というところは覚えておいてもよいでしょう。
休養のポイントは、自分がまずは「フリーズ」状態にあることを正しく自覚し、「休養」だからといって「気分転換」がすべてだと思わないことが大切ということです。
A.一般的には、復職までは少なくとも3か月程度は掛かることが多いと考えてよいでしょう。最初の1か月が「完全休養」、次の1か月で「活動再開(日常生活の回復)」、最後の1か月で「復職調整 (社会復帰準備)」というのが最短に近いコースなのではないかと思います。統計的には、3か月で4割弱、半年で6割、1年で7割、1年半で8割弱の割合で復職に至ると言われています。
個人差はありますが、休養が2週間とか、1か月といった単位ではきわめて短く、再発し易いとされます。というのも、休職時の業務引継や復職時の調整にも時間がかかるため、1か月ではほとんど休みらしい休みにならないことがほとんどだからです。またそもそも、休んだ直後はしばしば心身が緊張状態にあり、本当の意味での「休養」になっていないことがあるからです。
A.あります。適応障害は、その多くが、そもそもの適応障害の定義である「特定のストレス源など明確な原因が認められ、かつ、そのストレスに曝露してから比較的短期間(3か月以内)に抑うつ症状を発症し、当該のストレス源から離れるとすぐ(6か月以内)に症状が改善する」という比較的急性の経過をたどるため、敢えて「急性」「慢性」という区分をすることは少ないと思います。しかし、厳密には「急性」の適応障害と「慢性」の適応障害があるのです。会社の風土として、より正確に事由の掲載を行った、ということなのでしょう(普通は「適応障害」とだけ記載されることが多いです)。
医学上は、適応障害の本来の定義通り、ストレス源から離れたり、薬物治療をしたり、心理療法を受けたりすることによって適応障害の諸症状が6か月以内に改善するものを「急性」と呼び、休養や治療を開始してから6か月以上経っても諸症状がなかなか改善しないもの(悪化する場合を含む)を「慢性」としています(復職ができるか、という一歩進んだ観点ではなく、あくまで「症状に改善がみられるか」によって急性と慢性を区分することが普通です)。 症状が慢性化することを、「遷延化」ともいいます。
一般的に急性の場合は予後が良好ですが、慢性の(遷延化した)適応障害の場合は、「うつ病」「気分障害」その他の精神疾患へ移行、またはこれらを併発している可能性もあるため、治療に長期間を要することもあります。また再発を繰り返した場合も同様に「慢性化」する危険性がありますので、注意が必要です。
A.以下のようなタイプが挙げられるとされます。 実際は、個人の性格を単純に類型化することは難しく、以下のタイプの複合的な要素が少なからずあろうかと思います(例えば、「執着型だが、攻撃型の傾向もある」などです)。
A.あり得ることだと思います。適応障害は、ある環境・ストレスに「適応」できなくなってしまう疾患です。その「適応できなくなるなり方」に、私は個人差があることに気づきました。表でまとめると、以下のようになります。この表は、あくまで私がこれまで実際に見聞きしたことをもとに、私的にまとめた「適応障害タイプ分類」です。「ああ、そういうこともあるかもね」という観点でご覧ください。
▼よくある適応障害の発症例
▼贈る言葉
▼よくある適応障害の発症例
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▼よくある適応障害の発症例
▼贈る言葉
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いかがでしょうか。実際はこれらの複合要因になるかと思いますが、一口に「適応障害」といっても、その「起こり方」は様々であることが想像されます。この分野の研究がさらに進むことを願うばかりです。
A.それぞれのタイプによって、「環境に適応できなくなる」パターンが違ってきます。どのタイプに該当するかを吟味して、試してみましょう。
A.適応障害は、外部要因(環境調整)×内部要因(個人の特性)×暴露時間で発症する病気です。環境調整、そして暴露時間を減らす(できるだけストレスにさらされる時間を減らし、早めに対処する)ことが重要なのは言うまでもありませんが、個人特性へのアプローチにによって発症を防いでいく取り組みも、同じだけ重要です。以下、タイプ別にみていきましょう。
A.「環境の変化が起こりやすい時期」は適応障害も起こりやすいとされます。
まずよく言われるのが、新年度を迎える「春」ですね。3月~4月に環境の変化が起こって、そこから1~2か月経つ頃、つまり「5月下旬~6月頃」は適応障害が自覚されやすい時期です。よく「5月病」と言いますが、環境の変化が起きてから、 実際には若干のタイムラグがあるイメージでしょうか。この時期は慣れてきたころにGWがあるので生活のリズムも崩れやすいですし、6月頃にはちょうど蒸し暑くなったり、湿度が急に上がったり、梅雨で低気圧の日が多かったりで、もとより体調を崩しやすい時期でもあります。 天候不順で日照時間も畢竟少なくなりますから、気分も落ち込みやすくなるのです。
では「夏」はどうでしょうか。日照時間も長く、いかにも「憂鬱」とはかけ離れた季節に見えますが、「冷房との温度差」で体調を崩したり、酷暑下でパニック発作が誘発されたり、所謂「夏バテ」で心身を崩したり・・ということもありますからなかなか侮れません。
次に「秋」から「冬」にかけてです。この時期は、有名な「季節性うつ病(季節性感情障害)」の発生期と重なります。日照時間が短くなる10~11月頃から体調を崩しはじめ、日照時間が長くなってくる3月頃から体調が回復するのが「季節性うつ病」の特徴とされます。 この症状をそのまま「ウィンターブルー」とも言います。「季節性うつ病」そのものは周期性がある疾患なので、 「特定のストレス」という原因がはっきりしている「適応障害」そのものではないものの、季節性うつ病自体が、「適応障害」を増悪させるということは大いにあり得ます(なぜならば、季節性うつ病の症状は「気分の落ち込み」「疲労感」「仕事に取り掛かれない」「楽しめない」「集中力が落ちる」「眠れない」など、症状的には「適応障害」の抑うつ症状と酷似しているからです)。このウィンターブルーの時期に環境の変化(異動や昇進など)が重なると、覿面に「適応障害」を生じせしめることは、想像に固くありません。
このほか季節の変わり目も「環境の変化」という観点で重要な不調のサインです。「急に暑くなった・寒くなった」「低気圧が近いづいている(梅雨、台風)」「湿度が高い」など、様々な気候変動要因が、適応障害(自律神経失調)の引き金となるケースはあるようです。
・・・ということで、結局は1年中、適応障害は起こり得るのですね。
A.はい。いわゆる「5月病」といわれる現象は、適応障害のことを指す場合が多いと思われます。4月からの就職や転職、異動、年度替わりといった環境の変化に適応できず、ちょうどGWをはさむ前後で緊張がいったんほどけたところで心身の不調を自覚する、といったことが原因でしょう。GWで長期休暇に入ることで、休み中のテンションと、仕事に対するモチベーションの落差が影響し、休み明けの就労への意欲低下、抵抗感につながると考えられます。
しかし、臨床的には「5月のGW明けすぐ」というより、「5月中下旬~6月に入るころ」に適応障害が急増することが知られています。「少し遅れた5月病」、さしずめ「6月病」といったところでしょうか。
体調不良を自覚するのがGW明けだったとして、そのまますぐに心療内科にかかる、ということは現実問題としてはあまり考えられません。通院を逡巡し、何とか決心して心療内科の扉を叩くのが普通でしょう。中には、頭痛だから内科、吐き気だから胃腸科、めまいだから耳鼻科・・・と、まずは対症療法をしてみて、それでもなかなかよくならない、「原因不明だ」-となってはじめて、「もしかしてメンタルかも?」と気づくということだってあるでしょう。そうこうしているうちに、発症から2週間、1か月というのはあっという間に経ってしまうのです。 数か月経ってようやく・・・ということもあり得る話です。
「GW明けからどうも体調が悪い」ということが2週間以上続いた場合は、「もう6月になるし、5月病ではないや」と思う前に、"5月病"からくる「適応障害」を一度疑ってみることも重要です。
A.近年は、「気象病」という現象が広く人口に膾炙するようになってきました。気象病とは、気候や天気の変化(気圧・気温・湿度の変化)で自律神経が乱れ、体調が悪くなる状態の総称で、「雨が降る前になると頭痛がする」「台風など低気圧が近づくと眩暈がする」「天気が崩れると古傷がうずく」といった訴えがしばしば聞かれます。 「天気痛」という表現をすることもあります。多かれ少なかれ、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
気象病によって引き起こされる症状には、次のようなものがあります。
めまい、頭痛、頭重感、吐き気、食欲不振、胃もたれ、消化不良、首・肩の凝り、関節痛、古傷の痛み・疼き、手足のしびれ、喘息、むくみ、低血圧、狭心症など
抑うつ、気分の落ち込み、重だるさ、倦怠感など
これらの症状は、まさに適応障害で感じられる自律神経系の諸症状と酷似しており、 適応障害そのものが原因かはなかなか判別がつきにくいものだといえるでしょう。自律神経が弱るという意味では、適応障害と関係がある場合もあるでしょうし、相互に症状を増悪させる可能性 も十分にあると考えられるでしょう。
A.個人差はありますが、「雨の日」「台風や前線などの大型の低気圧が近づいている」「湿度が高い」といったときに体調を崩す方が多いようです。
A.「気象病」そのものは、いわゆる正式な「病名」ではありません。気象や天候の変化によって不快な症状が起こる(悪化する)症状を示す「病態」です。
まず、不快な「頭痛」が起こる大きな原因は、内耳にある前庭にあります。気圧の変化によって前庭にあるリンパ液が影響を受け、前庭神経が興奮します。すると、すぐ近くにある三叉神経に興奮が伝達されて脳の血管が拡張、片頭痛などを引き起こす炎症物質(CGRP)が放出されると言われています。
このほか、頭痛以外の自律神経症状(だるさ、肩こり、めまいなど)が起こる原因は、同じく内耳にある前庭神経が原因とされています。気圧の変化によって前庭や半規管から送られてきた「体のバランス」の情報と、実際のバランスとの「差」で脳が混乱し、自律神経が乱れ、交感神経が全身の血管を収縮させることで、血流を悪化させます。結果として全身の痛み、古傷の痛み、まただるさやめまいなどが起こるとされています。
すなわち、気圧の変化によって内耳のリンパ管が影響を受けることによって起こる「頭痛」と、実際の「バランス」と体液のバランスとの「ずれ」によって発生する「自律神経の乱れ」が、気象病の発生メカニズムということが言えそうです。
A.概ね、成人の60%は水分で構成されています。体調に関係ないわけがありません。実際、水分不足(脱水)によって、疲労感・倦怠感、吐き気、頭痛、めまいや立ち眩み、脱力感、意欲低下、心悸亢進、震え、またもやもや感(ブレインフォグ)といった多彩な症状が引き起こされることが知られています。
だいたい、過労になるような仕事の仕方をしていると、適切な水分補給を忘れて過集中・過緊張状態で働いていることがほとんどです。結果的に、脱水(隠れ脱水、軽度脱水、前脱水)を引き起こし、体調不良(そしてこれがまた、うつ病や適応障害の症状と酷似しているのです)につながるとされています。
こまめな補水や、脱水につながるような生活習慣の改善でこれらの症状が改善する場合も多いようですから、原因不明の体調不良が続いている場合は、一度「脱水」になっていないかを確認してみるのもよいでしょう。
A.「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の通りです。水分を摂りすぎて体内に余分な水分が溜まりすぎると、「水毒」という状態となり、身体が浮腫んだり、イライラや不安といった精神症状を来すこともあります。
さらに水分を過剰摂取すると、血中のナトリウム濃度が低下し、「低ナトリウム血症」という状態となります。いわゆる「水中毒」で、命にかかわることもあります。
多尿(量が多い)や頻尿(回数が多い)、下痢といったことだけでなく、めまいや頭痛、吐き気や嘔吐、錯乱、意識障害、呼吸困難といった症状が起こることもあります。
A.個人差はありますし、環境差(夏はより多く)、状況差(スポーツをしているのかなど)によっても変わってきます。一般的には、1日で2.5リットルほどの水分が必要とされています。食事や代謝で1.3リットルほどが確保されるようですから、差し引き1.2リットルの水分を、食事とは別に摂取するイメージです。
アルコール飲料やカフェインを含む飲み物(お茶やコーヒーなど)は利尿作用がありますから、できれば水や薄めたスポーツドリンク(糖分を多く摂取しすぎないため)、カフェインを含まない飲み物で上記の水分摂取量をカウントするとよいでしょう。
A.因果関係は個人別に様々なケースがあるとは思いますが、頸性神経筋症候群(頸筋症候群)という、首の筋肉の異常(首の凝り)によって自律神経失調症を引き起こす疾患が知られており、肩凝り、動悸、息切れ、手足の冷え、眼精疲労、全身倦怠感、不眠症状、さらには抑うつなどを引き起こすことがあります。これらの不定愁訴はまさに適応障害の症状とも酷似しており、そもそも多忙な状態で罹患する可能性が高い適応障害との相関はないとはいえないでしょう。ただでさえデスクワーク、スマホで「ストレートネック」など、首の疾患を発症しやすい現代ですから、「首の凝り」が適応障害の誘因となっている可能性は、少なくとも「否定はできない」といえるのではないでしょうか。
以下のような症状が5項目以上ある場合は治療が必要といわれています。必要に応じて脳神経内科などにかかることも検討するとよいでしょう。
A.最新の学説で、ヒトヘルペスウイルス(HHV-6)というウイルスが精神疾患の発現に関与しているのではないかという研究結果が大きな話題になっています。
小児期に突発性発疹として感染し、ほぼすべてのヒトに潜むHHV-6。HHV-6は小児期の感染後、そのままヒトに潜伏感染し、脳の嗅球(鼻の奥にある免疫細胞)のアストロサイトに棲みつきます(このほか、血液中のマクロファージにも存在します)。ここで産生される潜伏感染タンパク質SITH-1が、抑うつ症状のリスクファクター(原因の1つ)になっているとされます。SITH-1は、嗅球の一部にアポトーシス(細胞死)を引き起こし、それが原因となって脳内のストレス物質が増加。増加したストレス物質が抑うつ状態を引き起こす、というメカニズムが 実際に解明されたのです。
ここでのポイントは、「ウイルスがうつ病の原因の1つと判明したが、それだけが原因ではない」という点でしょう。疲労やストレスによって生じるストレス物質そのものが抑うつ症状の引き金となることは間違いなく、そういう意味では「ストレス物質」が抑うつの根本原因ということができるかもしれません。SITH-1は、アポトーシスを引き起こすことでそのストレス物質を大量に発生させ、うつ病を引き起こすのです。
一説には、「身体の疲労を感じたウイルスが、その宿主から逃げ出すために再活性化(爆発的に数を増やす)し、唾液を使って体外へ排出される。その過程で鼻の奥にある嗅球にもウイルスが感染し、うつ病の引き金となる」とされます。「疲労がストレス物質を大量に発生させる原因を作り、うつ病をブーストさせる」とでもいえる現象です。
すなわち、「うつ病ウイルス原因説」は、「うつ病は心の病気」と単純に割り切れるものではなく、「HHV-6の保菌者(ほとんどのヒト)は、疲労を溜めることで誰でもうつ病になり得る」ということ、そして結局は「疲労を溜めないこと」が重要であるということを示唆していると言えそうです。
A.うつ病は、日本においては「平均気温が低く、雪が多い地域」に有意に多いことが知られており(所謂「雪国うつ」)、世界的に見ても「年間総日照時間」との相関があるとされています (日照時間が少ないほど、有意に発症率が高い)。「抑うつ」という観点で見ると、適応障害も同様の傾向がみられる可能性は高いとみてよいのではないでしょうか。
A.必ずしもそのようなことはありません。適応障害になるタイプの人は、むしろ激務に耐えて文句を言わずに仕事をしたり、対人関係構築上はソツなく仕事をこなしたり、という傾向が強いと言えます。どちらかというと、組織の要請に過剰適応してしまうがゆえに、その要求が当人の受忍限度を超えた時に、耐力が燃え尽きてしまうという表現のほうが的確でしょう。
適応障害は、ストレスの負荷が強ければ、誰でも罹患し得るメンタル疾患です。適応障害になってしまった人がそのまま「ストレス耐性が弱い」とか、「コミュニケーション能力が低い」などと短絡的に結びつけることは、環境因をスポイルした危険な「偏見」ともいえるでしょう。
A.どの年齢でも「環境との不適合」でなり得る病気です。ただし、学校や家庭、社会環境における要因を除いて、「職場要因の適応障害」という観点でみると、30代半ば~40代前半が好発年齢であるように思われます。
30代半ばになってくると、職場における職責(役職、職掌の重さ)もだんだんとヘビーなものになってくることが一般的です。さらに、人生のイベントとしても結婚・出産を経て、「子育て」や「介護」、「家を買う」などとの両立も課題として本格化する時期です。ここで問題となるのが、ついつい「まだ若い」と思って、20代のイメージで働いてしまうことなのです。
しかし残念ながら、どんなに日々鍛えていても「気合と根性、体力で乗り切るぞ」という無茶ができるのはせいぜい30代も前半までです(身体を鍛えているはずのアスリートですら、20代と30代では「闘い方」が違ってくるのを見れば明らかです)。30代前半ならまだしも、四十路が見えてきているときに無理をしても、身体がついてこないのです(当然、精神もです)。「今までと同じ働き方をしていたら、突然潰れてしまった」というタイプの適応障害は、実は30代半ば以降にとても多いのです。40代前後ともなればこれまで15~20年くらいは優に勤めてきているはずなので、「仕事や職場そのものへの適応性」が決して低いわけではないのですが、「働き方」はこれまでと同じではまずい、というところでしょう。 またそもそも、「十年一昔」という言葉の通り、働き方自体が時代にそぐわず、「古い」非効率なものになってしまっている可能性も否定できません。
実は20代の場合は、まだ「体力」「気力」があるので力押しで何とかなってしまうことが多いのです。適応障害になりかけていても、何とか「転職」で環境チェンジをする力も残っています。また、20代の適応障害の場合は、「働き方」というより、携わっている「仕事」 や「職場」そのものへの適応自体が当人にとっては難しかったというケースや、むしろ「うつ病」になってしまっていたり、いわゆる「大人の発達障害」が潜んでいることもあり、「15年選手」よりも実は背後関係が複雑なことも多いようです。
一方、40代後半以降の場合は、巧く面倒ごとを避けて生きていくスキルが否が応でも身についてきていますし、部下なり後輩なりが「嫌なこと(些末な調整)」の大部分をカバーしてくれるような立場になっていきますので、職場環境だけを原因とした適応障害は減っていきます。むしろ、本人の更年期障害であったり、 家族の問題があったり、背後に「介護」や「健康問題」があったり、重いローンを抱えていたりなど、「仕事以外」の要因が潜んでいるケースが増えてくるのです。
A.現代社会そのものが、動物としての「ヒト」の精神状況にとって、酷薄な環境であることはたびたび指摘されているところです。まず、そもそもの資本主義の「資本」の性質からして、際限なき拡大・成長を求めるものです。資源の拡大、距離の拡大(グローバリズム)、時間の拡大・・・と、拡大一辺倒を要求する資本に対し、人間は動物ですから疲れますし、働き続けることは不可能です。特に経済的に衰退の一途を辿る日本においては、「働けど、働けど、そのぶんだけ豊かにならず」という状態が30年以上、定常化してしまっています。経済的に苦しい中で、「もっと成長を!」と、「成長ハラスメント」(ガンバリズム、ハッスルカルチャー)が跋扈しています。さらに、高度情報社会化によって脳が常に「接続」と「思考」を強いられる「加速思考」の蔓延が、社会全体の疲労状態に拍車をかけています。
これでおかしくなるな、というほうがむしろおかしい状態といえるでしょう。
A.はい。むしろ、出世して職責が重くなったり、配置転換で今まで慣れてきたはずの職種から外れたり、様々な要因で今までの環境からの「変化」が大きい世代ですから、環境の適応に失敗してしまうことはよくありがちだと言えるでしょう。また、そもそも体力的にも中年に近づく曲がり角で、これまでのような働き方が通用しなくなってくる年齢であるとも言えます。
上記で詳述していますが、「気合」や「根性」「体力」といった要素で乗り切れるのは、やはり30代前半まで。35を過ぎたら、別の要素(頭脳、経験、仕事勘)で勝負をするように自分の仕立てを切り変えていく必要がありそうです。
A.ある企業の内部統計(メンタルダウン事例の集計資料)では、大きなギャップを感じやすいであろう「キャリア3年以下」の発症率が最も高く、以降、概ね5年刻みでみると、相対的に職責が重くなるであろう11年目以降から再び割合が高まる傾向がありますが、ほとんど発症率に有意な差は見受けられませんでした。
キャリア3年以下は、どちらかというと仕事そのものへの不適合(採用ミスマッチ)に起因したメンタルダウンの傾向が強く、「適応障害」という観点で見ると、どのキャリアでもまんべんなく罹患している様子が伺えます。
このことから、「入社してすぐの層はメンタルダウンに相対的に罹りやすいといえるが、適応障害自体はどのキャリア層でも罹患し得る」ということが言えそうです。
A.全人口の2~8%と程度とされています (※1)。これは20名程度の部署であれば少なくとも1人は発症を経験し得る、というイメージです(ご自身の職場をみて、この数字はどうでしょうか?)。
(※1)文献によっては、「20%」とするものもあります。5人に1人とはいかにも多い気がしますが、「適応障害予備軍」や「ストレス障害」「うつ病」といったメンタル疾患 やストレスに起因する不眠症なども含めると、あるいはそのくらいの数になってもおかしくはないかもしれません。
上述の通り、適応障害はどの年齢でも発症し得る病気ですが、特に成人の場合、女性のほうが男性よりも2倍弱程度、かかりやすいとされています(※2)。しかし本人にとって強度のストレスに曝された場合、誰でも起こり得る精神疾患であることは強調しておきたいところです。
(※2)男性が4%強、女性が7%弱程度とされます。統計上は、最も報告例が多いのが「独身女性」とされています。この差は、女性ホルモンの影響、女性の社会進出と「男性型社会」との齟齬の発生、ライフイベントでの環境変化(特に妊娠・出産・育児)、女性特有(ここではジェンダー的な意味ではなく、生物学的な意味で使用しています。念のため)の人間関係の複雑さなどが理由、と説明されることが多いです。
A.概ね、平均すると全従業員の0.5%程度とされています(本稿は議論を分かりやすくするため休職+退職の合計ポイント値とする。出典は厚生労働省『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』による)。ただし規模が大きくなるとその割合も増え、300名以上の事業所でみると0.6~1%程度にまで上がります。ざっと、1000名規模の企業であれば年間10名程度はメンタルで休職者を出している、という計算です。また「休職者がいた割合」も、平均すると事業所の9.2%にとどまりますが(それでも多い数字ですが 、休職制度そのものがないケースもある)、従業員1000人規模を超えると何と90%が「何らかのメンタル休職者を出している」ことになります。
「メンタル疾患での休職」は、それだけごくありふれた事象、ということになります。チャップリンの『モダン・タイムス』のころから人類はもしかすると何も変わっていないのかもしれませんね。
A.ストレスは生きていく以上、避けられないものです。何か強いストレス、または慢性的だったり継続的だったりするストレス、あるいはそのいずれもが侵襲してきたとき、ここに苦しみをもたらすのは「抵抗」だと言われています。ストレスでパンパンになったボールを、いくら沈めようとしても強力な浮力で押し返されます。ただただ、嵐が来るのを待ったほうがいくらかましなのですが、それでも深い感情に「抵抗」してしまいたくなるのが心理的には自然でしょう。ここに、「厭なこと」をぐるぐると考え続ける反芻思考、過去の苦い思い出、くよくよ悩みがちな自分、脳を乗っ取る勢いのネガティブな感情たち・・・が重なれば、あっという間に「鬱のるつぼ」です。
ストレスに対して「抵抗」を示すパターンには、以下のようなものがあるとされています。
どの類型でも現実から目をそむけているだけで根本的な解決策とは言えないため、苦しみを紛らわせる効果は長続きせず、大抵の場合は反芻思考や更なる悪感情を惹起し、抑うつを悪化させていきます。これらが、心理的に見た適応障害発症のメカニズムと言えるでしょう。
A.もちろん、「1%」でも異常なのですが、少なくともそれが自社の平均を大きく超えている場合は、間違いなくその組織に異常があると考えてよいでしょう。実際に「罹患率30%」なんていう部署も私は聞いたことがありますが、これはどこかに欠陥があるとしか言いようがありません(し、それでは仮に成果を挙げていたとしても、早晩結局成果を上げ続けることも難しくなるでしょう)。
A.環境が大きく変わることは、適応障害の大きな原因の1つといえるでしょう。環境変化がストレスとなり、心身の不調が出てくるのが、いわゆる「5月病」であり、一種の適応障害といえると思います。
転勤・昇進・業務内容の変化など、生活にかかわる大きな環境変化が起こると、その環境変化自体がストレスとなり、適応がうまくいかなければやがて心身の不調として自覚されるようになっていきます。
人間には恒常性維持機能がありますので、まず、私たちの心身は環境の変化に順応しようと努力します。しかし、そこには必ず無理も生じてきます。適応がうまくいかなければ、覿面にバテてくるのです。
早ければ2週間くらい、遅くても1か月くらい経ってくると「不安」「不眠」「体調不良」などが発生します。ここで適切な休息をしなければ、おそらく適応障害に向けて一直線となるでしょう。
A.過剰な仕事量や負荷、不相応な責任、競争過多、酷薄な長時間労働といった「組織全体の問題」に加え、人間関係の不全といった「個人に直結する問題」が挙げられます。
このような状況が所与の条件としてあって、かつ、抱えている業務に「見通しが持てない」とか、そもそも業務を「抱えすぎている」など、仕事に「把握可能感」がないと、処理可能な感覚を持てず、不条理な気持ちが増幅する(有意味感・有意義感を喪失する)ことで、メンタル不調の負のループが展開することになります。
A.こうなると、壊れますをご参照ください。ここでは、以下のような風土が適応障害を引き起こしやすいと例示しました。
上記で記載した「職場環境」の観点の外、「上司」というのも当然に適応障害の要因となり得るものです。具体的には、次のような上司が、所謂「クラッシャー」になりやすい要注意人物だと思います。
以下、詳しく見ていきたいと思います。
以上、クラッシャー上司の特徴を記載しました。これらの構造のまずさに気づかない人、気づけない人、「そもそも何がいけないの?」と思う人は、間違いなく「適応障害患者製造機」になります。絶対にリーダーにならないほうがよいでしょう。 短期間で何人も辞める職場、どんどん人が倒れていく職場には、こういうクラッシャー上司がよくいるものです。ちなみに私の聞いたことのある例では、部下を公然と「ソルジャー」呼ばわりして憚らず、着任わずか半年で5名を適応障害に仕立て、さらに2名を退職に追い込んだとんでもない冷血漢がいるそうです。社内でもそれはもう大問題になったそうですよ。「人」を「モノ」として扱う先は、「人が壊れる職場」ということですね。
ちなみに部下を適応障害に追い込んだ時に、最初に「人生を狂わせてしまって申し訳ない」と思うタイプと、「さて、補充をどうしよう・・・」と思うタイプの2通りがあります。
会社としては当面は後者のタイプを重用する傾向にありますが(中間管理職として、この発想はきわめて適合的です)、経営層までが後者の発想をしている場合は、その会社はどこかで、必ず「人」が原因でおかしくなっていくこと請け合いです。その理由は、もう明らかですよね。「人はいくらでもいるから」と、人材を使い捨てしていく先には、やがて「その仕事をやる人がいなくなる」という深刻な矛盾が待ち構えているからです。
不幸にもこういう上司に当たったら、何より自分が「適応障害にならない」ためにも、面従腹背で目立たないように生き抜きましょう(業績を上げすぎると重宝がられてどんどん要求水準が上がってとても面倒なことになりますし、業績を上げなすぎるとやり玉にあげられるので、良くも悪くも「目立たない存在(平均的な業績を上げ続ける)」でいることが生き延びるカギです)。そして当然、自分がそんな人物にならないか(なっていないか)にもよくよく留意する必要があるでしょう。
A.例として、4つの類型を挙げます。
A.シンプルに「仕事を任せる」ということがマイクロマネジメントを防ぐ要諦です。そして「仕事を任せる」というのは、相手を尊敬し、信用し、信頼してはじめて成立する行為でもあります。
そして仕事を任せるときは、「明確な結果、具体的な指示」が欠かせません。「いつまでに・どのような成果を」「どのように」出してほしいのかを”明示"し、あとは結果を待つ-という態度が不可欠です。
このとき、「任せたから、プロセスは知らない」という「放置」は単なる「管理放棄」です。部下も「本当は興味がないんだ」とやる気をなくしてしまいます。一方で、「任せたからには、細かいプロセスに介入する」という「過剰介入」も、それこそ「マイクロマネジメント」です。
プロセスを「観察」はしても、過剰に「口出し」はしない(自由にやらせてみる)-そして結果責任は負う-そういうスタイルをこそ部下は求めており、この感覚こそがマイクロマネジメントを防ぐポイントです。
A.成果と生産性向上に拘る「組織の管理能力」だけではなく、個人のパフォーマンスや関係性を把握し、調整する「個人の管理能力」も求められることになります。 個人の管理能力には、大きく分けて「信頼関係」と「共感(思いやり)」の2つの要素があります。詳しく見てみましょう。
この「信頼関係」と「共感」によって、はじめて「血の通った」組織形成が可能となります。 この状態をベースに、「組織の目標を明確化し、計画を具体的に落とし込める」そして、「組織において、個々人の仕事の質と量を適正化できる」ようになれば、結果としてメンタルの不調を出しにくい職場を実現できることになるでしょう。
これは、正に言うは易く行うは難し、ですね。
A.一般的に、上司の影響力には5つの類型があるとされています。それぞれの種類と、適応障害への作用を見ていきましょう。
A.「新卒配属・転勤・異動」、「昇進」という明確な環境の変化はもちろん、慣れた職場であっても「業務量の増加」という目に見えにくい環境の変化も含め、「環境の変化」が適応障害を引き起こす典型的なファクターです。1つずつ見てみましょう。
A.以下のような習慣があると、親和性が高いと言えそうです。
A.はい。まだ「1人」ですと、要因がかなりのところ「その人の性格」だとか、環境に着目するにしても「たまたま、その人の業務量が多かった」など、どちからというと偶然性や個別性の問題にされてしまいがちです。しかし、 同じ職場で2人、3人・・と続いてくると、偶然や個別性で片づけられる問題ではなくなってきます。連鎖が起こるときは、必ず構造的な問題があるのです。 必然性、そして全体の問題ということですね。
単純に業務量に比して人員が足りていないというケース、既に高ストレス状況下にあって、メンバーが離脱したことによって寸でのところでとどまっていた心理的安全性が瓦解し、「ドミノ倒し現象」が起きているというケースなどが考えられます。いずれも「高ストレス状況」が問題です。さらにこういう時に起こりがちなのが、「スケープゴート」の現象です。職場のストレスが臨界点に達しているとき、自分たちの生存を確保するために、誰か特定の人を「悪人」に仕立てて一致団結するという現象です。ここまでくると職場の秩序は完全に崩壊し、信頼関係ではなく、「敵と立ち向かう自分たち」という関係だけで組織が構築され、かつ最適化されてしまうので、ストレス状況が解消されない限り雰囲気がよくなることは期待できないでしょう。そして「スケープゴート」にされた人からさらに病んでいく・・・という形で、職場が急速に音を立てて崩れていくことになります。
こういった「高ストレス状況」とそれに引き続く「立て続けの離脱」を招く一番の原因は、やはり、「直属の上司」です。知らず知らずのうちに「部下を追い詰める上司」が、こうした状況を帰来させているのです。では、それはどのような行為によっているのでしょうか。次のQで詳しく見ていきたいと思います。
A.いかにもなパワハラ上司、嫌味をいう上司・・・というのは実は「敵」も多く、上述のスケープゴートが実は「上司そのもの」だったということもあります(そういう部署は妙に一致団結して 活気があったりするものです)。ただ、明白なパワハラは経営監査などでも不評だったり、パワハラ通報窓口などへの複数の匿名の訴えなどで会社も動かざるを得ないことがありますから、時代の要請的には、究極的には淘汰されていく方向性にあります。
実はもっと厄介なのは、「一見、そうとは見えない」タイプなのです。人を追い詰めるのには「暴力」も「武器」も不要で、以下の5つの手順だけで簡単に実現されてしまいます。立て続けに人の離脱を招いている部署は、多かれ少なかれ、以下のような行為のすべてまたはいずれかを、上司が(意識しているか、あるいは無意識的かどうかはともかく、結果として)行っているというケースが非常に多いのです。
いかがでしょうか。これらは、問題が起こっていることが「ぱっと見でわかりやすくない」からこそ、極めて早期発見されにくく、組織が崩壊してからはじめて気づく・・というところが実に厄介なところです。
A.私が実際に見聞きしたケースを挙げてみます。
-など。こうしてみると「突然」というケースが目立ちます(周囲から見ると「突然」なのですが、本人からすれば予兆は必ずあったのでしょう)。規模の如何に関わらず、職場でメンタルダウンした同僚がいるというケースは、珍しくないでしょう。「特殊な事例」と思って片づけず、「明日は我が身(または身近 にある)」と思って過ごすほうがよいでしょう。
A.まずは「正しい情報を収集する」こと、「心身の声に気づく」こと、「ストレスが起こりやすい環境そのものを軽減する」こと、そして「周囲に相談する」ことの4つが挙げられます。「自分が発症しないために能動的に動く」ことが肝要です。
A.今はさすがに公言する人は少なくなっていると思いますが、適応障害は「甘えだ」「気の持ちようだ」 「気合が足りないからなるんだ」「怠け病だ」「サボりでしょ」「メンタルが弱いからかかる」というのがもっともありがちな誤解でしょう。しかし、実際はどちらかというと、ストレスに対処しようと「頑張りすぎる人」に起こりがちな病気であるということ、そしてストレスの負荷や環境の急変によって「誰にでも」起こり得る病気であることは、かなり周知されてきているのではないでしょうか。
一方で、「心が弱いから」「精神的に打たれ弱いから」「心を鍛えていないから」といった、「根性論」や「性格」にこの病気を矮小化して捉えてしまうことはよく見られますし、「絶対に完治しない」「必ず再発する」といったように、いたずらに不安を煽る誤解もよく見られます。
また、十把一絡げに精神疾患は全部「うつ病」としてしか捉えられないケースもまだまだ多いですね。
A.人の考えを変えることは非常に難しく、わざわざ体調を崩したあなたが労力をかけて「人の考えを変える」ことに腐心する必要はないと思いましょう。復職後、元気に働き続けて、安定的なパフォーマンスを上げていれば、自然と偏見も消えていくのではないでしょうか。
身近に「適応障害」や「うつ病」を経験した人がいないと、どうしても「気合が足りない」「甘えである」「怠け病だ」「サボりでしょ」「メンタルが弱いからかかるんだ」と思い込んでしまうものです。
しかし、適応障害は、明確なストレス源によって誰でもかかり得る病気であり、しかも、しっかりと付き合っていける病気でもあります。むしろ、身近な復職者の姿を見ることではじめて、病気への理解も深まっていくものだと考えるのがよいかもしれません。
A.「大丈夫」が口癖の人は抑うつを発症しやすいという研究があるそうです(参考リンク:エリートに「突然休職する人」が意外にも多い理由 適応できるからこそ逆にストレスを自覚できない)。
本当は辛くても、それを前に出さずに「大丈夫」と、感情を隠蔽できる人は、いわば「無理をして演技をしている」わけですから、どこかで無理が生じて破綻します。過剰適応は適応障害の前駆症状といってもよいのです。明らかに大変な仕事量(あるいは質)なのに、大丈夫、大丈夫・・・といっていつも笑顔で仕事を引き受けている人が(あなたであれ、他者であれ)いたとしたら、「適応障害」の一歩手前かもしれません。
A.公表してから奇異の目で見られたり、偏見を受けたり、あるいは過剰に気を遣われたりするのも困る、という事情はよくわかります。
しかし、職場の同僚に現状を正確に伝え、配慮を得られる状態にしておいたほうが、中長期的には望ましい職場環境になる可能性は高くなるといえるでしょう。とはいえ基本的には個人の自由で、公表しなければいけないということはありません。
どうしても公表を控えたい場合は、メンタル疾患の病名を使わずに、「頭痛やめまいがひどい」など、症状ベースで現状を説明する、という方法は使えるかもしれません。 「体調を崩した」もお勧めです。
A.適応障害は、論理を追求する「脳」が、ともすると非論理的な「心」や「身体」を抑え込むことで成り立っている現代社会の構造、すなわち「脱心性」「脱身体性」-要するに「脱人間性」-傾向の強まる現代社会において、正にその「脱人間性」によって引き起こされる、きわめて現代的な病であると捉えることができます。
極論をすれば、人間性を極度に失った現代社会の要請に過剰に「適応」し、その結果として「適応」できなくなったが故に「適応」障害が発生します。逆説的ですが、過剰適応は適応障害と裏表の関係にあるということです。したがって誰でも、条件が揃えば心身のバランスを崩す可能性はあります。
もちろん、適応障害の因子には「ストレスを溜めやすい性格」や「認知の歪み」「考え方のクセ」があると言われています。また、環境変化に対してのレジリエンスの強弱も個人差があるでしょう。しかし、それ「だけ」で適応障害を発症するわけではありません。 長時間労働をはじめとした仕事の負担(責任、緊張の度合い)はもとより、環境の変化、職場環境、人間関係、家庭事情、体調、 ここまでの疲労の蓄積度合い、残っている体力・気力、周囲の理解・協力や支援の度合いなど、様々な要因が組み合わさって適応障害は発症するものです。さらに、取り組んでいる仕事に対する想いやモチベーションの軽重によっても大きく影響されるとされています。
現代社会が「人間性」をスポイルするという本質的な構造に立脚している以上、どんなに「精神的に強い」と思われている人でも、適応障害を発生する危険性は「誰にでも、常にある」と考えたほうがよいでしょう。
A.いざ自分がなったときに、「甘え」などではなかったと痛烈に気づかされることになります。
「甘え」を辞書で引くと、「相手の行為に遠慮なく寄りかかる」とか、「慣れ親しんで我儘に振舞う」とあります。その人が持っている精神気質も適応障害の1つの原因であることは間違いないですが、適応障害を惹起しやすい気質というのは「真面目」「完璧主義」等々、「甘え」の対極にあるような性格群であることがほとんどです。
さらに抑うつ症状そのものが、ストレスによる日和見の(普段は病原性を有しない)特定のウイルス(ヒトヘルペスウイルスの一種)の活性化が原因、という最新の学説があります。またセロトニンの不活性でうつ症状が惹起されることや、日照不足によるビタミンDの生成阻害のほか、遺伝や甲状腺の病気など、「抑うつ症状」を発生させる原因は様々あると言われています。
抑うつ症状の1つである適応障害は決して「甘え」によるものではなく、何らかのきっかけで、誰もがなり得るものだと思っておいたほうがよいでしょう。 それが、将来の自分を守ることにもつながるからです。
A.「なるかもしれない、なるかもしれない」と脅えて暮らすよりは余程健全ですが、これは「自分は詐欺には引っ掛からない」の類と一緒で、大抵は「過信」です。「もしかすると、自分がなる可能性もある」というくらいの心構えで、毎日を丁寧に生きるというのも大切かもしれません。まあ、そんな人はこの欄を読むわけがないのですが!
A.高いストレス環境下で働いているときに、周囲から見るとほんの「些細なこと」が、「最後の一押し」になってしまうということはよくあります。それはつまり、クレーム対応やトラブル対応といった誰にも分かりやすい引き金に限らず、日常業務の中でトリガーとなってしまうことが無数にあることを示唆しています。
このほか、「季節の変わり目」「天候不順の時期」「気圧変動の時期」「風邪をひいた直後」「寝不足」「飲酒」などは、高負荷を受け続けているときには適応障害の発症を不可逆的に進めてしまう要因になる可能性がありますので注意が必要です。
A.大きく分けて2つあると思います。1つが、「職場環境の問題」、そしてもう1つが「伝染」です。
いずれにせよ、立て続けに人が病む職場は、構造的に何らかの問題を抱えている可能性がきわめて高いですので、その原因を究明し、早急に組織的に対処をする必要があります(「1人目」ないし「2人目」までは許容されても、さすがに「3人目」を出してしまうと、決定的な士気低下は避けられません。従業員の会社へのロイヤリティも落ちる一方でしょう。 遠からず、それこそ「優秀な人から辞めていく」という最悪な職場に必ずなっていきます)。
A.適応障害も「病気」の1つとすると、風邪のアナロジーで考えると分かりやすくなります。すなわち、「感染」→「発症」→「伝染」というプロセスです。
風邪は、発生機序を単純化すると空気の悪いところに充満したウイルスによって感染し、抵抗力が落ちている人が発症し、周りの人々に伝染す、というプロセスを踏みます。 メンタル不調も、ストレスを溜めやすいところで感染し、ストレス抵抗が落ちている人がまず発症することにより(休職や転職などの職場離脱)、周りのメンバーに伝染するというプロセスを踏むと言えるでしょう。
発症・伝染の段階で気づいたころには、「感染しやすい環境」が既に組織内に蔓延してしまっているということはよくあります。 こうなってしまうと放っておいても治ることはまずなく、「換気」「消毒」などの対処をしていく必要があります。要は、元から絶つしかなくなるのです。
メンタル不調が伝染していくプロセスは、「ドミノ倒し」と言えるかもしれません。もともと足場が不安定で倒れやすくなっていたところへ、同じ環境で辛うじて立っているドミノ同士が、状況の近い順に次から次へと倒れていく-そんなイメージでしょうか。最初のドミノは、あるきっかけ(最後の一押しともいえる)で倒れます。一度倒れたら、止めることはなかなか難しい-そして、一度倒れたドミノの列を修復までには時間がかかる-メンタル不調伝染のプロセスとそっくりです。
A.はい、「あり得る」と思ってよいでしょう。適応障害でAさんが休職すると、次にBさんが退職し・・という形でドミノ倒し現象が起こることはしばしば観察されます。適応障害が発生するような職場は、しばしば「ギリギリ」で何とか持ちこたえて業務をこなしているケースが多いと推察できますから、特にAさんの職場内での影響力が大きいと、それに引きずられる形で次々と、精神の失調が「うつる」ことは否定できません。
AさんとBさんの関係が近い(同じ職種でよく相談をしあっていた、一緒のプロジェクトを行っていた、など)ほど、感応する可能性は高いといえるでしょう(※)。
(※)2名の間で起こる感応精神病を「二人精神病」、多数で発生した場合は「三人精神病」とも呼びます。いずれも、こうして言葉になっているほどですから、一般的に観察され得る現象です。
A.関係が近ければ近いほど、「感応」してしまい、適応障害を「もらう」危険性が高くなります。職場内で誰かが過労で倒れると、少なからず職場内のメンバーにはショックが走ります。「代わってあげられなかったのか」とか、「何ができることはなかったのか」「気づいてあげられなかった」など、後悔する人も出てくるでしょう。特に、近くにいて辛い状況を知っている人であれば猶更、「あのとき声をかけておけばよかった」と思うことでしょう。しかし、必要以上に相手の立場を想像してしまうと、まさに「もらう」ことになるのです。
一番注意が必要なのが、「倒れた社員と仲が良かった同僚」「適応障害やうつ病から復職して1年以内の社員」です。
「仲がよかった同僚」は、倒れた相手の状況をよく知っていますから、「次は自分もなるかもしれない」という不安感に苛まれたり、一方で「そうか、その手があったか」と(深層心理で)感じてしまい、気持ちとしてマイナスの方向に引っ張られる、ということが往々にしてあります。非常に危険な精神状態ですので、早めに現状の気持ち、組織に感じている問題点などを個別にヒアリングする場を設け、必要に応じて業務軽減も検討するなど、メンタルケアを間髪を入れずに行うようにしましょう。
「復職して1年以内の社員」は、より危険です。「かつて自分が通った道」がフラッシュバックして、精神的に極めて不安定になりがちだからです。実際、うつ病から復職した社員が、ようやく復職から1年経とうとしたときに、同じ職場で精神を病んで退職する社員が出てしまったことで、急にメンタルを持ち崩し、あっという間に(後を追うようにして)退職してしまった-というまったく笑えない事例も起こっています。 こうした事象は、何度も書いているように、適応障害が繰り返される職場は何かしらの機能不全が起こっているものです。こちらも、早めのメンタルケア(できれば産業医の協力も得る)が不可欠です。
A.あり得るでしょう。これまでギリギリで持ちこたえていた人が、「もしかすると自分もそういう環境にいるかもしれない」と気づき、深層心理で「この手があったか!」と感じてしまい、どんどんマイナスの方向へ気持ちが引っ張られていくというのは現象としても自然なことといえるでしょう。
「ブラック企業」という言葉が人口に膾炙すれば、「ブラック企業」への感度は高まります。テレワークで「通勤環境が過酷である」ことが認知されると、そうやすやすと満員電車に乗る誘因 といったものも次第に失われていきます。一度社畜が「ブラック労働と適応障害」の関係性にも気づいてしまうと、もう堰を切ったように「我も、我も」と続くでしょう。
一度開けてしまったパンドラの箱は、もう二度と元に戻すことはできないのです。
A.3つの要因が考えられます。1つが、そもそも適応障害自体が「そういう病気である」というもの、もう1つが、限界だったところへ「最後の一押しをしてしまった」というもの、最後の1つが「そういう発想がまかり通っている職場そのものが要因」というものです。
A.適応障害を抱える親の子どもが必ず適応障害になることはありませんが、「うつ病」などのメンタル疾患になりやすい気質や性格はしばしば遺伝する場合があります。したがって、家系的に適応障害になりやすい傾向があること自体は、否定できません。
とはいえ、たとえ家系にメンタル疾患者が多かったとしても、物事の捉え方(認知)の歪みに気づいたり、ストレスを溜め込まない日常生活を心がけることで、予防することは十分可能です。
またそもそも「適応障害」に限っては、抱えきれない程のストレスに曝されたときには誰でも発症し得る病気ですから、後天的な要素も相当にあると言えるでしょう。
したがって、この事実を以て、過度に悲観的になる必要はありません。
A.はい。身体因、すなわち脳のつくりの問題ととらえると、遺伝の問題はあるといえるでしょう。しかし一方で、育った環境、周囲の環境といった環境因も大きいので、「生まれつきで発症するものでもないが、ストレスで誰もが発症するわけでもない」ということです。
どんなに(遺伝的に)"強い"状態でも、激しいストレスに曝されればいずれは適応障害になるでしょう。"弱い"と、非常に小さいストレスでも適応障害に罹ってしまうかもしれません。「適応」障害ですので、要は自分の精神的な「強度」と、環境とのバランスということですね。
A.比喩を使うと、物事の本質を高次な視座で捉えやすくなります。以下、適応障害の解説を、いくつか日常的なアナロジーを使って例示してみます。 下記と重複する部分もありますが、「適応障害たとえ話」というページも作っています。併せてぜひご参照ください。
(※)そもそも、追い越し車線をずっと走っているのは交通違反です。
A.いいえ。「環境が変わる」「症状が収まる」「本人の認知の歪みが修正される」の3点が整わない限り、決して治りません。すなわち、「環境が変わる」ためには大抵は「休職」が、「症状が収まる」ためには「投薬」が、「認知の歪みが修正される」ためには「認知行動療法」や「社会復帰のためのリハビリ」などが不可欠です。このうち1つでも欠ければ、いたずらに抑うつ症状が長引くことになり、予後を悪くしていくでしょう。
骨折したまま試合に出れば、骨折した部位は間違いなく悪化し、余計に「以前のような試合」をすることが難しくなるでしょう。これとまったく同じで、心が折れたまま社会に出てしまうと、手負いの心は間違いなく悪化し、余計に「以前のような社会生活」は遠のくといえるでしょう。
ですから、小手先の治療で誤魔化して、しっかりとした休みを取らずに「薬を飲んで何とか働いています」という状況だったり、休んだはいいけれど「考え方などは特に修正せずにそのまま働いています」などということをやってしまったりすると、悪化・再発の一途をたどることは目に見えているのです。「放っておいても、治らない」という事実をしっかりと胸に刻み、体調が悪ければ一刻も早く、医師の診察を受けるべきでしょう。
プロのスポーツ選手が、「骨折」したまま試合に出るでしょうか?出ませんよね。選手生命を縮めるだけです。休養を取って休むはずなのです。これと全く同じです。(お金をもらっているという意味で)プロの社会人が、「心の骨折」をしたら、しっかり休養をとって休むべきなのです。
A.統計的に有用なデータがあまり見当たらないのですが、定性的にみて「増えている」という論説は多く見かけます。身近な例を確認しても、1つの部署で短期間に複数の社員がメンタルを壊した-という話は、どこかで見聞きするのではないでしょうか。感覚的には、「増えている」と判断してもそう間違ってはいないという感触です。以下、「増えている」という前提で議論を展開していきます。
さて、上記までについては要約すると「単純に医者に掛かる人が増えたから」「人口減少と経済悪化で将来不安が増したから」「テレワークで論理世界が強化されからた」という、人口に膾炙した3つの議論を展開してきました。ここまでは概ね首肯される方が多いのではないかと思います。 あるいは、どこかで聞かれたことがあるので退屈な議論だったかもしれません。ただ私は、もう1つ、刺激的な仮説を考えているので取り上げてみたいと思います。それは「晩婚化」です。
A.多くは、「身体症状」→「心の症状」→「行動の変化」へ推移しやすいとされます(※)。まず、いわゆる「自律神経失調症」(しばしば身体のどこを調べても悪いところは見つからないが、とにかく具合は悪い)といわれるような、多彩な症状が身体に起こります。そして、ほぼ同時かまたは少し遅れて「抑うつ症状」を発症し、やがて行動面において、正常な日常生活・社会生活を棄損していきます。
(※)もちろん個人差があり、最初に心の症状(不安症状など)が自覚されるという場合もあります。
睡眠障害(早朝覚醒・入眠困難・中途覚醒・熟眠障害などの不眠症、過眠、1日中眠い)、肩こり、頭痛(緊張型頭痛、片頭痛)、首の痛み、腰痛、背中の痛み、あごの痛み、めまい(回転性、動揺性、起立性)、立ち眩み、 ふらつき、乗り物酔い・画面酔いをしやすくなる、食欲不振、吐き気、嘔吐、胸やけ、逆流性食道炎、胃痛、胃炎、腹痛、下痢、便秘、下痢と便秘を繰り返す(過敏性腸症候群)、喉の渇き、感冒様症状(風邪のような状態)、短期間で数キロ (医学的には「5%」とされます)の体重の増減、動悸、頻脈、胸の苦しさ、胸の痛み、胸の圧迫感、首の圧迫感、息切れ、息苦しさ、息の吸い方が分からなくなる、浅い呼吸、空咳、喘息、気管支喘息、失神、のどの詰まった感じ ・異物感、のどの圧迫感、疲れやすい、倦怠感、だるさ、微熱が続く、手足のしびれ、顔のしびれ、口のしびれ、冷え性、のぼせ感、ほてり感、むくみ、 顔面の紅潮、発汗異常(冷や汗、脂汗、多汗)、 味覚異常、嗅覚異常、喉の渇き(水分補給量の増加)、皮膚のかゆみ、 肌荒れ、乾燥肌、帯状疱疹、おでき・ニキビ・湿疹、ほくろが増える、肌のくすみ・シミ、顔の毛細血管の浮き出し(細絡)、皮膚のピリつき、髪のパサつき、表情のやつれ、眉間の皺が深くなる、肋間神経痛、 胸部の違和感・胸に何かがくっついたような感じ、蕁麻疹、突発性難聴、耳鳴り、耳閉感、 音が二重に聞こえる、音が響く・エコーがかかる、耳のかゆみ・痛み、中耳炎、内耳炎、外耳炎、 眼精疲労(疲れ目)、 閃輝暗点の発現、かすみ目、鳥目、ドライアイ、視力低下、目の充血、目の下のクマ、ものもらい、目やにの増加、縮瞳、瞼の痙攣、顔の痙攣、唇の荒れ、唇や歯肉の暗赤色化、奥歯や親知らずの痛み、歯の知覚過敏、歯周病 (歯肉炎・歯周炎(歯槽膿漏))、歯が浮くような感じ、虫歯、口内炎・口角炎、歯ぎしり、口臭、声が出なくなる・出にくくなる、声がかすれる、 喉の違和感・喉に何かがくっついた感じ、アレルギー性鼻炎、花粉症、のどの痛み、鼻詰まり、 副鼻腔炎(蓄膿症)、扁桃炎、風邪をひきやすくなる、いびき、高血圧・血圧上昇、血圧低下、脳貧血、失神、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、 頻尿、残尿感、下腹部の違和感・むずむず感、尿糖や蛋白が出る、膀胱炎、血尿、脱毛症、肛門周囲膿瘍、痔疾、白髪の増加、ほくろの増加、月経痛、月経の乱れ、子宮内膜症の発症・悪化、など
抑うつ症状(気分の落ち込み、憂鬱な気持ち、気分が晴れない、絶望感)、不安症状(不安感、焦燥感・焦り、恐怖感)、イライラ、怒りっぽさ、神経過敏・易刺激性(視覚過敏、聴覚過敏、騒音過敏、触覚過敏、臭覚過敏)、注意力過剰、緊張感、 取り越し苦労や思い過ごしの頻発、防衛態勢、気力低下、意欲低下・減退、虚しさ、喪失感、絶望感、集中力低下、易疲労性(疲れやすさ)、脱力感、 頭の中がもやもやする(頭の中に霧や靄、霞みがかった状態。ブレインフォグ)、物事に対する興味や喜びの喪失(しばしば、仕事に関係することからはじまり、趣味や日常に関係することまで増悪していく)、 感情・心の痛みを感じにくくなる(乖離)(※)、注意力低下、罪悪感、劣等感、自己卑下、攻撃性、 自責傾向、他責・他罰傾向、他人にわずらわしさを感じる、離人感(人が遠くに感じる)、自分が自分ではないような感覚、物忘れ、放心状態、記憶力低下、会話や本の内容が頭に入らなくなる、悪い方向にばかり考える、ぐるぐると同じことを考えてしまう、強迫観念、悪夢、希死念慮、パニック発作、過換気症候群(過呼吸)など
(※)心身の「痛み」もストレス反応の一種で起こることがあります。継続的なストレスによって心の反応が低下することで、その「痛み」を却って感じにくくなると考えられています。乖離とは、「現実感」が薄れ、外的世界と自分(内的世界)との間に膜(薄い場合も、厚い場合も、透明な場合もある)が張られているように感じられる状態です。
心気妄想:自分は不治の病に違いない、自分は重い病気だが家族はそれを隠しているに違いない・・・など自分が重い病気に罹っていると思い込んで不安を増幅させてしまう
。
→手足にできたほくろが気になり、Googleで何度も何度も「これはメラノーマ(悪性黒色腫)なのではないか」と調べる。なかなか治らない口内炎が心配になり、「もしかすると口腔がんなのではないか」と四六時中心配している。下痢によって肛門を傷つけてしまい、トイレットペーパーに少量の鮮血を確認したところ、「これは直腸がんか赤痢に違いない」と心配になる。-など、自身の身に起きた特異な症状から、実際は確率の極めて低い重篤な疾患に自分が罹患してしまったのではないかと心配になり、「自分が病気である証拠」を収集するということはありませんか?程度の差こそあれ、酷い風邪を引いてしまったときなどに、心細くなり、「もしかして悪い病気なのでは?」と不安になるあまり、こういった経験を多少なりともしたことがある方も多いでしょう。これがエスカレートすれば、立派な「妄想」の1種です。
罪業妄想:自分は悪い人間だ、自分には生きている価値がない、自分が働いていることが申し訳ない・・・など自分を「悪い奴」認定して、ある種の「悲劇のヒロイン」として振舞ってしまう。
→悩んだ結果自分の存在意義を疑って、希死念慮を抱くなど深刻な状態に至ることも多い妄想です。他者が親切心から罪業の気持ちを「そんなことないよ」と否定しても、それを素直に受け容れられないばかりか、「相手は、自分の立場をよくするためにわざと"いいこと"」を言っているんだ、などと逆恨みに近い感情を抱くこともあります。
貧困妄想:自分にはお金がない、貯金も資産も何もない、このままでは確実に路頭に迷う・・・など実際の資産状況とは無関係に「お金がない」と思い込み、焦燥感に駆られてしまう
。
→実際にはそういうことがないにもかかわらず、「お金がどんどん減ってしまう」「貯金がゼロになる」という妄想で、頭がいっぱいになってしまうことがあります。社会的に成功していると一般的に見られている人や、貯金が数千万円あっても「自分はこのままでは(金銭的に)終わりだ」と深刻に悩むケースもあります。現実との差異から妄想だと分かりやすいこともあり、突飛な発言さえしてくれれば周囲が本人の「異変」に気づきやすい妄想でもあります。
被害妄想:自分は攻撃されている、上司や同僚に監視されている、取引先に付きまとわれている・・・など自分が誰かに攻撃されていることに脅え、常に戦闘態勢になって疲弊してしまう
。
→誰かの善意をすべて裏返しに受け取ってしまう(何か裏があるはずだ、マウントを取るためにやっているのだ)ようになるため、一度この妄想に取り付かれると対人関係でトラブルを起こしやすくなります。急に攻撃的になったり、あるいは塞ぎこんでしまったり、対人関係を拒否するようになるなど、対人コミュニケーションの面で変化が見られる妄想です。
陰謀論や、目に見えないもの(放射能や電磁波、食物に含まれる毒素など)への過度の恐怖や忌避行動なども、この妄想の一種と言えるでしょう。
関係妄想:世の中の事件が自分のせいで引き起こされていると信じ込んでしまう、インターネットやテレビ・新聞をはじめとしたメディアが自分に関する情報を集中的に流していると思い込んでしまう・・・など、社会が自分と常に関係(連関)しているように感じてしまう
。
→まだよいことを「自分のおかげ」だと吹聴して回るくらいならばよくてほら吹き、悪くて「あの人はそういう人だから」という程度の評判で済みますが、悪いことを「自分のせいだ」とすべて自分でひきつけてしまうようになると、それこそうつ病まっしぐらです。「意外と、世の中の人は自分のことなんて気にもしていない」というか、ドラえもんで「石ころ帽子」をかぶって生活しているくらいの感覚でいるのがちょうどよいのでしょう。なお、ストーカーも一種の関係妄想
(と被害妄想の複合的な妄想)だと言えるでしょう(相手が自分のことを好きである、と思い込むことでトラブルが発生するわけですから
。客観的な事実としてはまったくそういうことがないのに、「相手が〇〇に違いない」(さらに、うまくいかないのは相手が悪いからだ)と思い込んでしまう―このあたりの心理構造は、吉田貴司『やれたかも委員会』4巻を読んでいただくと理解しやすいかもしれません
。
評価の妄想:自分はもっと高い評価を得るべきだ(あるいは、自分の評価はこんなに高いはずがない)
・・・など主観的な自己評価を他者も同じようにすべきだ(他者も同じようにしているはずだ)と思い込んでしまい、しばしば攻撃的(そのエネルギーが自分に向かった場合は自虐的)になってしまう
。
→会社の業績評価にとらわれ過ぎて、その評価に一喜一憂するような仕事の仕方をしていると、その評価基準が(会社の方針変更や上司の入れ替わりで)変わったときに文字通り「適応」障害を起こしやすくなります。実際、評価というのは移ろいゆくものであり、是々非々で決められるようなところがあるのはご承知の通りです。ある時の「他者評価」を自己評価の基準にしてしまうと(過度に他者に適応的になると)、環境が変化した時に真っ先に淘汰されます。その意味でも、「評価」にとらわれること自体が親妄想的であるとも解釈できるかもしれません。
悲観的な未来の妄想:自分は破産する、会社が倒産する、日本社会が終わる、世界経済が沈没する・・・など将来に対して(周囲からみると)極度に悲観的になってしまう
→端的に言って、「簡単に終了はしません」としか言いようがありません(もちろん、そうでない確率もないわけではないのですが、実は非常に低いのが普通です)。しかし、日々のセンセーショナルなニュースに触れ、さらに将来の展望が見えない閉塞した環境に何十年と身を置けば、誰もが多少なり
とも、悲観的な未来を想像することは間違いありません。ただし、ここから敷衍して「もう何もかも終了だ」と極度にペシミスティックになること自体は、いったん留保しておく必要があるでしょう。
起床できなくなる、 休みがちになる、電話ができなくなる、会話ができなくなる、口数が減る、笑わなくなる、笑顔がなくなる、無断遅刻や欠勤・早退が増える、 (もともとのレベルに比して)社交性が低下する、悲しくないのに勝手に涙が流れる、よく泣く・涙もろくなる、拒食・過食、 過食嘔吐、過剰な飲酒(痛飲や酒浸り状態)・喫煙、乱暴な運転、暴力、人に当たる、物を壊す、喧嘩、言いがかりをつける、自傷行為 (リストカットやかきむしり行為)、抜毛症、食毛症、買い物依存・散財、 外出ができなくなる、風呂に入れなくなる、引きこもり、ゲーム依存、スマホ依存、ネット依存、ギャンブル依存、爪噛み、指しゃぶり、汚語等の発声、奇声、幼児退行など
睡眠障害(頭が冴えてなかなか寝付けない、ほぼ1時間おきに起きてしまう、毎朝2時~4時台に目が覚めてネガティブなことを考えてそのまま 朝まで眠れなくなる) 、めまい・立ち眩み・ふらつき、頭痛、こめかみ痛・あごの痛み、奥歯の痛み、強い疲労感・倦怠感、肩凝り・腰痛、眼精疲労、目の奥の痛み、瞼の痙攣、耳鳴り、耳に空気が詰まったような感じ、音が遠くに聞こえる 、動悸、息苦しさ、胸の詰まり・苦しさ、肋間神経痛、皮膚のかゆみ、背中のピリつき、蕁麻疹、胃腸症状(胃痛、胃もたれ、吐き気、腹痛、下痢)、体重の減少(2か月で4キロくらい) 、消え入りたい気持ち、仕事に取り掛かれない気持ち、脳に霞や靄のようなものがかかっており思考や考えがまったくまとまらない、強い不安・焦りの気持ち、対人恐怖症(人と話すのが辛い) 、焦燥感、抜毛症、一人でいると勝手に涙が流れる、夜中に泣いてしまう
A.心のエネルギーが低下し、「気分が落ち込んで何もすることができない」とか、「憂鬱な気分で塞ぎこんでいる」などといった不快適な心の症状を指します。適応障害やうつ病はじめ、メンタル疾患における代表的な心の症状の1つと言えるでしょう。
A.例えば「便秘と下痢」、「顔面紅潮や多汗・ほてりと顔面蒼白や冷や汗」、「注意力過剰と意欲減退」など相対する症状が起こっているということですね。これらは、「自律神経系の乱れ」で説明できます (※)。
ストレスに対して、交感神経が過剰に反応して「闘う」モードが優位になれば、いわゆる「過覚醒」状態となって、「ハイ」で強くて、一種のパニック発作を引き起こすと考えられます。一方で過剰に反応した自律神経が(反応し続けることで鈍麻した結果)、「逃げる」あるいは「省エネ」モードが優位になれば、これは「低覚醒」状態となって「ロー」で、弱々しくて、一種のフリーズ動作 (段階が進むと、いわばシャットダウン状態)を引き起こすと言えるでしょう。
パニックとフリーズあるいはシャットダウンがストレスによって対となって引き起こされるもので、一見すると矛盾する症状であっても共存し得る、ということがお分かりいただけるかと思います。
(※)近年提唱されている「ポリヴェーガル理論」では、「交感神経」と、「副交感神経」の2つの神経(背側迷走神経、腹側迷走神経)の3つのモードで、心身の健康状態を説明しています。この理論では、交感神経が優位になる場合はいわゆる「闘争」モード系の激しい症状が、背側迷走神経が優位になる場合は、いわゆる「逃走」モード系のフリーズ系の症状が現れ、腹側迷走神経が優位な状態になると、「安心・安全」を感じられる状態になることが示されています。
A.適応障害の兆候・なりかけ・初期症状のサインや、それ、おかしくなっています!をご参照ください。「本当は休みたいのに、休めない(気がする)」というのと「睡眠が覿面におかしくなる」というのが、危険な2大兆候だと個人的には強く思います。
よく、若手のYouTuberが、「休めない!」なんて言って動画配信をやめるにやめられなくなっている光景を見聞きしますが、ああいうのはすごく「休めなかった時の自分」と重なってしまい、見ていてとてもハラハラします。 「若いと体力も気力もあるねぇ」とは思うものの、「休めない」と思い込んでしまっている時点で危険なサインであることは間違いありません。周囲で止めてくれる人がいればよいのですが・・・。 一般的に、30代半ばになってくると、体力と気力も相応に落ちてくるので、適切に「休む」ということをしていかないと、確実に精神を蝕むことになります。
さて、 このほか、「人とかかわる行動が億劫になる」というのも危険な兆候です。「電話1本を掛けるのに1時間掛かってしまう」とか、「レストランで店員さんに声を掛けることが急にできなくなる」「エレベーターでは人と乗り合わせないようにする」などという、健常な人から見たら「何それ!?」と思われるような対人恐怖症的なことも、休職直前の時には日常的に発症していたことを思い出します。渦中にいるとなかなか気づきませんが、こうして言葉にしてみると、明らかに「おかしい」ですものね・・・。
また、これまでできていたことが急にできなくなる(億劫になる)のも危険なサインと言えます。分かりやすいのが入浴習慣です。今まで湯船に浸かっていたのが面倒臭くなってシャワーだけで済ませるようになったり(元からシャワーだけという人は除きます)、毎日洗髪していたのが二日に一遍になったり(※90年代半ばくらいまでは、洗髪を毎日する習慣がなかった人も多かったので、元から毎日洗髪をしないという人は除きます)、習慣が変化した場合は注意が必要と言えるでしょう。(今までは普通にしていたのに、急に)髭を剃らなくなった、寝ぐせを直さなくなった、調髪しなくなった、化粧をしなくなった、同じ服ばかり着るようになった、など「自分の清潔感やおしゃれ」に目が向かなくなっているときは、特に注意が必要といえるでしょう。
とにかく、「何かおかしいぞ」という症状が2週間続く場合は、躊躇せずにまずは家族、そして上司にも相談し、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。
A.直近の状態を観察した時に、次の5つの質問に1つでもYESがついた場合は、家族や上司への相談を行い、場合によっては早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。
A.適応障害の兆候・なりかけ・初期症状のサインをご参照ください。特に、「休めない」「眠れない」「疲れが取れない」「食べられない」「興味がわかない」「集中できない」「思考ができない」という7つの「ない」があったときは、危険なサインだといえるでしょう。
A.経験に基づき、簡単なチェックリストを作成してみました。
※各選択肢の得点には、「症状の重さ」を加味して点数を2~4点で傾斜配分しています。10点以上の場合はかなり適応障害の蓋然性が高く、15点以上であれば可能な限りすぐに休職をしたほうがよいレベル、20点以上ともなると日常生活にも相当影響が生じ出しているレベルであろうと推察されます。 配点を含めて個人の体験に基づく私製チェックリストですので、あくまで1つの参考としてご活用ください。
A.経験に基づき、簡単なチェックリストを作成してみました。
※ 個人の体験に基づく私製チェックリストですので、あくまで1つの参考としてご活用ください。
A.経験に基づき、要素を3つに絞り、より簡単化したリストを作ってみました。
いかがでしょうか。シンプルですが、この3つが判断の中核といっても過言ではないかもしれません。その「不快な症状」をもう少し分解してみますと、以下のような形になるでしょう(ここまででも何度か述べてきたことと重複します)。
大前提として、以下のいずれかの気分が存在する(抑うつ状態)。
そのうえで、以下のうち複数(とりわけ、5つ以上)の心身の不安定が認められる。とくに、8.がある場合は強く判断される。
A.経験・知見も踏まえて、簡単なチェックリストを作成してみました。
カテゴリーごとに分類しています。当てはまるものが複数ある場合は、一度病院に相談してみましょう。
【気分に支障があり、日常生活に影響している】
【原因不明の体調不良が続いており、日常生活に影響している】
【睡眠に難を抱えており、日常生活に影響している】
【未来が欠如したように感じられ、日常生活の精彩を欠いている】
【気が滅入ってしまい、人とのかかわりを避けるようになっている】
【人生への絶望感を覚え、日常生活で覇気がなくなっている】
【生活を楽しむ気持ちが欠落し、日常生活が無味乾燥になっている】
【脳機能が低下し、日常生活に支障が出ている】
A.「生活」という観点でみたときに、次のような変化はありませんか?もともとの性格や趣味などにも関係する部分もあるかと思いますので一概には言えませんが、ポイントとしては「急にそうなった」というところでしょうか。
【食に対しての興味が薄くなる、または極端になる】
ニヒルになり、極端な思考で「食を楽しむ」ということができなくなってしまいます。
【部屋が薄暗くなる】
「明るい部屋」でそわそわするようになり、まるでドラキュラのような状態(太陽が怖い)になります。
【睡眠習慣が変化する】
精神の不調は睡眠の障害と密接に関わります。
【飲酒の習慣が変化する】
ストレスを感じている状態を飲酒(脳のはたらきを弱らせる)で紛らわそうとして、ますます脳のはたらきが弱っていく悪循環。危険度の目安は、「理想の飲み方」と乖離した飲み方を「ついつい」やってしまうところにあります(嗜好品という意味では、喫煙やパチンコや競馬などのギャンブル、ゲーム(特に射幸性の強いガチャ系など)でも同様のことがいえるでしょう)。
【入浴習慣が弱る】
「面倒くさい」という領域を超え、そもそも「きれいにしないと気持ちが悪い」という感情そのものが希薄となり、結果として入浴に関するあれこれが省略されてくるのも、危険の兆候です。
【身だしなみが弱る】
入浴と同様で、「他者からの見られ方」に対しての極端な無頓着がみられるようになります。あるいは、「ほどほど」の身だしなみでは飽き足らず、強迫的に着飾る(まるで、「始終手を洗わないと気持ちが悪い」という潔癖症や、「カギをかけたか常に気になる」のと同じような頻度で「この身だしなみで良いのか気になって仕方がない」というような強迫観念によるおしゃれなど)のも変調の一種のサインと言えるでしょう。
【ゴミの分別がいい加減になる】
「どうでもいいや」「面倒臭い」という気持ちが社会的な折り合いよりも先行し、ゴミの出し方変わります。
【洗濯ものが山積みになる】
「後回し」が進行し、特に面倒なルーチンである洗濯に影響します。
【部屋が汚れる、家がゴミ屋敷になる】
「目の前のものを片づける」「元あった場所にしまう」という動作が取れなくなり、「出しっぱなし」「散らかしっぱなし」になっていきます。
【テレビが見られなくなる】
なんでもないテレビの番組が、脳に刺激を与えて集中して見ることができなくなります。
【自分でもものを決められなくなる】
鬼滅の刃の有名なセリフ「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」(栗花落カナヲ)状態になります。ちなみに、これに対して炭次郎は「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ」と優しく応えるわけですが・・・。
A.「睡眠がおかしくなる」というのには、いくつかバリエーションがあります。例えば、目安として30分経っても寝付けない(入眠障害)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、本来起きる時間より2時間以上早く目が覚めてしまい、もう一度眠ることができない(早朝覚醒)などがあります。また、全体的に眠りが浅く、熟睡できない(熟眠障害) という状態も起こります。これらを総称して「睡眠障害」とか、「不眠症」と言います。 また個人差はありますが、一般的に、6時間未満の睡眠が何日も続いていると、心身の不調が強く自覚されるとも言われます。一方で、日常生活に影響が出るレベルで「寝すぎてしまう」 症状が見られることもあるようです(過眠)。
メンタル疾患の場合は、これらのうち「早朝覚醒」「中途覚醒」を原因とする「熟眠障害」が先ず、特徴的に起こりやすいとされています。 これを放置すると、「入眠障害」にも至り、「寝付けない」「眠れない」「途中で起きる」と不眠症状のオンパレードとなり、やがてまったく心身が休まらなくなってしまいます。
不眠症そのものは、睡眠環境(寝具、温度や湿度、周囲の音や光)、また体調(風邪をひいている[高熱にうかされる/頭痛がひどい/咳が止まらない/喉が痛む]、花粉症[鼻詰まりが酷い]など)、心理的要因(ストレス、悩み、緊張など)、食事や薬(飲酒、喫煙、カフェインなど)、そして生活習慣(不規則な生活や運動不足)も影響してきます。まずは以下の睡眠環境改善策を試してみて、2週間経っても良くならない場合は、早めに精神科や心療内科 、または睡眠外来を受診することをお勧めします。
A.物理的に睡眠時間が取れないほど忙しいから、という理由もありますが、何よりも、ストレスに曝された状態が慢性的に続くと、ストレス反応が激しくなり、やがてそれに抗することができなくなってしまうからです。その過程で心身に起きていることは、簡単に言うと交感神経の過緊張です。過緊張によって真っ先にしわ寄せが来るのが睡眠です。「疲れているのに眠れない」とか、「興奮して眠れない」「不安で眠れない」 「仕事が気になって夜中に目が冴えてしまった」「翌朝が心配で早朝に目覚めてしまった」「寝床で仕事のことについてネガティブな妄想をくよくよと考えてしまう」などといったことは、誰もが一度は経験することでしょう。
よい睡眠のためには、日中の緊張感が静まり(交感神経が緩和し)、副交感神経が優位になってリラックス状態になる必要がありますが、疲弊してくるとその切り替わりがうまくいなかくなります。その結果として、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、浅い眠りといった睡眠障害を発症するのです。ちなみ に数か月の平均的な睡眠時間が6時間を下回ると適応障害やうつ病の発症リスクが高まり、4時間・5時間程度にまで落ち込むと、ほぼ8割近い確率で早期に適応障害を発症すると言われています。
しかし困ったことに、睡眠の不調は「自覚されにくい」という特徴があります。「何となく日中に元気が出ない」症状の真因が「浅眠」にあったり、「私、寝つきはいいんです」という人に限って、実は夜中に何度も目が覚めている(寝る時は疲弊のあまり「気絶」しているだけという人もいます)ということもあります。兆候が見過ごされることで症状が悪化し、「おかしいぞ」と気づいたときにはもう適応障害真っ只中、ということも珍しくないのです。
睡眠の不調を早期に発見し、早めに対策(セルフコントロール、仕事の調整など)ができるかどうか-これは、適応障害を予防する意味でとても重要な意味を持つといえるでしょう。
A.過去1か月の間に、週2~3日くらいのペースで以下のような変化を経験した時は、「もしかして不眠状態になっているかも?」と疑ってみましょう。疑ってから2週間、睡眠の質が改善しないようであれば、不眠症になっている可能性が高いといえるでしょう。
A.あり得ます。上記の「不眠状態チェックリスト」は、どちらかというと「眠れていない」という自覚がはっきりとある方には有効なのですが、「自分はよく眠っているつもりである」とか、ストレスの余り自分の身体の状態に意識がいっていないと、そもそも不調に気づくことができない場合もあります。
例えば、「私、寝つきはとてもいいんです」という人をよくみると、疲労や寝不足のあまり夜は単に「気絶しているだけ」というケースもあるのです。
睡眠には「量」のほかに「質」も関係してきますので、「私はよく眠れているはずだ」という人も、以下のチェックリストをしてみると「あれ?睡眠の量が足りない?」とか、「もしかすると、睡眠の質が落ちているかも?」ということに気づけるかもしれません。
また、「自分では気づきにくい睡眠障害」の背景に「睡眠時の呼吸」の問題が隠れている可能性もあります(睡眠時無呼吸症候群など)。「呼吸」が原因と思われる諸症状も例示しますので、併せてご確認ください。
A.「眠りたくない」という意思や、「眠るのが不安」という不安感そのものは、どちらかというと「抑うつ」症状に属するものといえるでしょう。ただしその結果として睡眠障害に発展していく可能性は極めて高いですから、そういう点では睡眠障害の一種と言ってもよいかもしれません。
「眠りたくない」「眠るのが不安」な理由は、しばしば、「眠ったら明日になってしまうから眠りたくない」という訴えが聞かれるように、酷薄な現実からの一種の逃避 現象です。
「本当は23時台に寝たほうが身体によいことは分かっている」が、ついつい、明日の活動に対する逃避感情から、スマホをずっと眺めてしまったり、夜食を食べてしまったり、睡眠の質を落とすことを繰り返すようになっていきます。エスカレートすると、「明日は 朝一番で大事なプレゼンなのに朝の4時まで起きてしまった」「夜更かしでついに起きられず、はじめて会社を遅刻してしまった」など、社会生活に不規則な睡眠の影響が侵食していくようになります。ここで睡眠リズムが狂うと、あっという間に睡眠障害になってしまうのです。
誰にでも「眠りたくない夜」というのはあるものですが、それが毎晩のように(本当は眠れるのに)いつまでもなかなか眠ろうとしない、というのは抑うつ症状が強くなってきている、と思って間違いありません。
A.いいえ。症状のあらわれかたとしては、適応障害の症状の1つとして睡眠障害になることがある、という順番です。そもそも、心配事や考え事があって、不安や緊張で眠れない―ということは誰もが経験するでしょう(これをストレス性の不眠、あるいは状況因の不眠といいます。一過性であればよいのですが―そして大抵は数日のことですが―これが数週間も続けば、立派な不眠症といえるでしょう。特に症状が不眠のみという場合は、「ストレス性の不眠」という診断がつくこともあるでしょう)。
このほか、「熱帯夜が続いて眠れない」「騒音が大きくて眠れない」「まったく運動しなかったので眠れない」「昼寝をしすぎて眠れない」といった、環境や生活習慣に起因する不眠もあります。
また、アルコールやニコチンによる浅い眠り、カフェインの摂り過ぎによる覚醒といった嗜好品に起因する不眠、薬の副作用による不眠など、摂取した化学物質を原因とした不眠も考えられます。
病気であっても、適応障害以外にうつ病・不安障害などの精神疾患による不眠、風邪や花粉症などで鼻詰まりや咳、のどの痛み、頭痛、歯痛、高熱に浮かされることによる入眠・熟眠障害、下痢などによる中途覚醒、アトピーやアレルギーによる痛みやかゆみによる不眠、ナルコレプシーなどの過眠、長く寝てしまう病気など、様々な原因が考えられるのです。
A.一般的とされる睡眠時間(例えば7~10時間くらい)を遥かに超えて、いくらでも睡眠してしまう状態を指します。ただし、寝不足の翌日だったり、休職直後だったりすると、 疲れにより一過性で過眠症状を呈することは誰にでもあるでしょう。
問題となるのは、しっかり寝ているはずなのに日常生活に支障をきたすレベルで強い眠気が襲い、居眠りしたり、日中に起きていられない、などの症状が出ている場合です。このような病的な過眠は、「睡眠障害」の一種です。「朝、何があっても起きられない」「何もせずに1日中寝てしまった」ということが数日続くようでしたら、一度専門医に相談してみることをお勧めします。
A.はい。上述の通り日常生活に支障をきたすレベルの過眠は睡眠障害の一種ですので、適応障害の症状として「過眠」が出ている可能性は否定できません。
A.「疲れ」が溜まっていることが最大の理由であるとされます。精神的にも、肉体的にも強い疲れを潜在的に自覚し、特に休日や休職直後などに「休める」ことを認知した身体は、これまでの無理を顧みて寝続けることを選択する、ということです。
なお、双極性障害や季節性のうつでも過眠を呈することがあります。また単純に、処方された睡眠薬で「過眠」となっている可能性もあります。気になる症状が続くようでしたら、主治医に相談しましょう。
A.抑うつ状態とは、「気分が落ち込んで何もする気になれない」など、「憂鬱」な心の状態が強くなることで、様々な精神・身体症状を呈する状態を指します。一般的には、次のような状態(20項目)に当てはまれば当てはまるほど、また、その度合いが強ければ強いほど、そして継続 (※)していればしているほど、「抑うつ傾向」にあると判断されることが多いようです。
(※)なおここでの継続とは、「2週間」を1つの目安とします。
A.誰でも「憂鬱な気持ち」になって気持ちが落ち込んだり、元気がなくなってしまうことがあります。しかし、病的な「抑うつ状態」とは、気分が塞いだ状態が数日たっても回復せず、気晴らしをしても解消せず、概ね2週間以上続くような状態を指します。 うつ病や適応障害での「抑うつ」と、一般的な「憂鬱気分」との違いをまとめてみます。
「憂鬱な気持ち」は一時的で一過性のもの、病的な「抑うつ状態」は2週間以上継続する持続性のものだとみてほぼ差支えないでしょう。 「病的な」というのは、日常生活に影響が出るレベル、と読み替えていただいてもよいでしょう。
A.はい。めちゃくちゃストレートに言えば、適応障害とは「ストレスで頭がおかしくなった状態」です(経験者だから言っています)。こんなこと、有識者が公共の電波で言ったら村八分ですからね。オフィシャルにはこんな直截的な言葉誰も言いませんけれど、要するにストレスで頭が狂っちゃうんですよね。言葉を選ばずに言います。「 環境に適応できなくなって気狂いになる」のです。一度気狂いになった私だから言っています。マジで「休めない、でも休みたい。うわああああああ」ってなりますからね。一度気が狂うと、 自分でもコントロールできなくなって・・・怖いですよ。 「休みたいのに、休めない」という感情と、「自分は休むべき状態だと分かっているのに、休んではならないという制約をかけなければならない!」という矛盾した感情が脳を支配します。
これくらいはっきり言えば、「だったら狂う前に休まなきゃ」と思えませんかね?変にオブラートに包むから、ことの重大性が伝わらないのです。はっきり言って、「仕事が忙しい余り気狂いになった」って、これ、そのまんまチャップリンの映画『モダン・タイムス』 (1936年・アメリカ)の世界ですからね。86年前(2022年現在)とまったく状況が変わっていないわけですから。 頭の中はチャップリンの迫真の名演技であるあの狂い方、そのものですからね。 マジで頭、狂いますよ。二度と経験したくないくらい、頭がおかしくなります。あの鬱々とした気分、マジでイヤだったなあ。
A.はい。比喩ではなく、どうやら本当に縮むといわれています。抑うつ状態が酷いときと、寛解した患者の脳とでは、海馬の大きさが異なるという研究結果もあるようです。抑うつによって脳が物理的に委縮して、脳機能も低下するということは確かに言えそうです。「心の病」というと、特に物理的な影響が起こっていないように錯覚しがちなのですが、実際は脳に物理的なダメージも起こしているのですね。
A.身体の痛み(頭痛、顔面痛、首の痛み、肩の痛み、背中の痛み、手足の痛み、腰痛、臀部の痛みなど)を訴えて「整形外科」や「脳神経外科」でレントゲンを撮ったり、CTスキャン、MRIで検査をしたり-といったことをしても、「どこも悪くない」とか、場合によっては「気のせい」と言われてしまうことがあるかもしれません。しかし、現に痛みはある-といったときは、ストレス性の疼痛かもしれません。
これは、脳が刺激に対して過剰に反応していて、これ以上活動することにブレーキを掛けている状態、とみなすことができます。「調べてもどこも悪くない謎の痛み」が続く場合は、ストレスによる疼痛も疑い、一度心療内科を頼ってみてもよいでしょう。
A.あり得る話です。乗り物酔い(冷や汗、生唾、だるさ、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など)は自律神経失調症の1つともされており、不安やストレスがその原因になることも多いようです。「荒波を漁船で渡 って船首で小さい文字の本を読む」とか、「遊園地のコーヒーカップで信じられないほど回転する」 「寝不足の状態で旧式の振り子式電車に乗ってずっと下を向いてスマホで動画をみていた」みたいなことをやれば普通の人は誰でも覿面に酔いますが、明らかに(今までは大丈夫だったのに)「弱くなったな」と思うことが増えてきたら、注意が必要です。
例えば以前は平気だったのに、「何でもない通勤電車で酔うようになった」「ゲームや映画の動きの多いシーンで酔うようになってしまった」「遊園地のアトラクションがまるでダメになった」「自分で車を運転していても、ちょっとした田舎道で酔うようになった」「ブランコをちょっと漕いだだけで具合が悪い」「自転車でしばらく走っただけで気持ちが悪い」 「流れるプールで浮いているだけで酔う」など、状況が(以前よりも)酷くなっている場合は、もしかすると自律神経が悲鳴を上げているサインかもしれません。
知らないうちに、日常的に「酔い止め薬」の服用が不可欠になっているなど明らかに日常生活に支障が出ているようでしたら、一度自律神経失調症を疑って耳鼻科、神経内科や心療内科を頼ってみてもよいでしょう。 私も今思えば、なんでもない通勤電車で酔うようになってしまって「酔い止め薬」をカバンに忍ばせるようになってすぐ、適応障害になりましたからね・・・。
A.人間の平衡感覚を司る、内耳の中の「三半規管」の中にあるリンパ液が揺れたり傾いたりすることで、人は自分の位置情報を把握します。
乗り物の振動や加速、身体の傾斜などの刺激は、脳から眼球に伝えられ、眼球は頭の位置と強調して動くようにコントロールされます。
実際には、「目や耳」から入ってくる情報と、身体が体感している情報にずれが生じます。「頭の位置情報」と「目から入る実際の情報」とがずれると(許容の閾値を超えると)、脳が混乱し、「酔い」を自覚します。
情報のずれは「不快」として、偏桃体(感情をコントロールする)に伝わり、「不快」を検知した視床下部が自律神経を刺激するとともに、下垂体に「ストレスホルモンの分泌」を刺激し、自律神経が異常興奮を起こします。すると、血圧の急変変動や胃腸の蠕動運動の異常など、身体面でも不調が生じるのです。実際、乗り物酔いをしている人は、していない人に比べて10倍程度もストレスホルモンが分泌されているそうです。
この乗り物酔いは、「生唾、生あくび」からはじまり、「冷え、顔面蒼白」、進行すると「めまい、頭痛」「吐き気、嘔吐、下痢」などを引き起こします。これらは、自律神経失調症そのものです。
もともと自律神経が不安定になっている適応障害患者の場合は、まさに自律神経が弱っていますから、少しの動揺で簡単に乗り物酔いを引き起こしてしまうのです。
A.適応障害を治療することが第一選択であることは当然として、「自律神経が弱っている」こと自体が、乗り物酔いのリスクファクターであることは上述でお判りいただけたかと思います。ここでは、脳が弱っているときに特に効果的な、乗り物酔いの対処法について記述したいと思います。
(※)自家用車の場合は、運転席以外では助手席がもっとも視界がきくので酔いやすい人は助手席を選ぶとよいでしょう。
電車の場合は騒音や振動の大きい車端部ではなく車両の中央部分、できればモーターのついていない車両(JRでモハ、クハ、サハとあったときに、「モ」は電動車なので最も振動する。「ク(駆動―運転台)」は運転席や車掌席があるので
音はしやすいかもしれません。したがって、基本的には「サ(附随車―機器類少ない)」を選ぶと静かです)、ないしは2階建てならば2階が揺れにくいです。車種で言えば最近は揺れを防ぐ「アクティブサスペンション」という装置が付いた車両もありますので、調べてみるのもよいでしょう。
ボックスシートの場合は、できるだけ進行方向を向くようにします。
バスは前輪と後輪の中間地点(概ね5番目前後の席)が最も揺れにくいとされますが、「前のほうに座ると視界が利く」のでそちらを選ぶのもよいでしょう(ただし、揺れは大きくなってしまいます)。
船の場合、中央部がもっとも揺れにくく、船首や船尾は揺れやすいとされます。特に波の影響を受ける船首部は避けることをお勧めします。
A.「酔い止め薬」を服用すべきであることは大前提として、次の方法を試してみましょう。
A.平衡感覚や体感を鍛え、様々な方向からの動揺を経験することは「乗り物酔いに強いからだ」をつくるためには有効です。
公園の遊具は、様々な「揺れ」を知らず知らずのうちに経験することができます。ブランコ、滑り台、シーソー、鉄棒、ザイルネットなど、「揺れ」「動き」(動揺)を楽しむ遊具ばかり。童心に帰って、これらで遊んでみては どうでしょうか?(お子さんがいらっしゃるのなら、一緒に遊ぶとどれだけ「動揺」が負担になっているか、身を以て体感するはずです・・・)
A.出る場合があります。ただし、「めまい」は多彩な原因で起こり得るもので、「めまい」だけをもってして適応障害の主訴とは言えません。一方で、適応障害によって引き起こされる多様な症状の1つにめまいがある、という可能性はあ り得る、というところでしょうか。
A.症状別に見ると、3つの「めまい」があります。ぐるぐると目が回る「回転性めまい」、ふわふわと浮いているような感覚が続く「動揺性めまい」(浮動性めまい)、頭がクラクラする「立ち眩み」です。
A.自分や周囲がぐるぐると回っているように感じるめまいです。「耳」の平衡感覚の異常が原因とされることが多いため、耳鼻科にかかることが第一選択となります。以下のように、「耳鳴りや難聴の有無」で分類されることが多いです。
A.身体や頭がふわふわと浮くような感覚になったり、姿勢を保つことが難しかったり、まっすぐ歩くことができないなどの症状が起こるめまいです。中枢神経系の疾患が原因となることが多いため、脳神経外科が第一選択となるでしょう。検査の結果、「原因が分からない」こともしばしばで、「自律神経失調症」や「精神疾患」として扱われる場合が多いです。そのケースでは、心療内科・メンタルクリニックの出番となります。
大きくは、以下の4種類のタイプに分類されます。
A.急に立ち上がったり、トイレでいきんだり、熱めのお風呂から出た直後などに、頭がくらくらしたり、目の前が一瞬だけ真っ暗になったりすることがあります。これは、ストレスや疲労状態などで自律神経が乱れることで、自律神経が調節している血圧の変動調整が一時的に不全となり、脳内の血流が一時的に不足することで起こるとされています。
また、片頭痛が起こる前兆で「目の前が暗くなって光る(閃輝暗点という)」ことがあります。片頭痛と立ち眩みのような感覚を併発することもしばしばあります。
A.激しいめまいが起こると、恐怖心や危機感を覚えて不安になってしまいます。ましてや、強い吐き気や嘔吐を併発した場合は、危険な病気であると思って余計に心配になるでしょう。しかし、「吐き気」と「症状の重症度」は、それほど相関関係はないとされています。
その前提で、危険なめまいとはどのようなものかというと、すなわち、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)を疑う症状の有無となります。以下の症状とめまいが同時に起こった場合は、一刻を争う事態ですからただちに救急車を要請しましょう。
今までに経験したことがないような激しい頭痛(頭が割れるような痛み、頭を思い切り殴られたような痛み、頭から首・肩にかけて裂かれるような痛み)
意識喪失、意識朦朧
呂律が回らない、話している内容が支離滅裂である(意味が通じない)
嚥下困難
声が急にかすれた
手足がうまく動かせない、箸や鉛筆が持てない
手足のしびれ(特に片方)、顔面麻痺やこわばり
物が二重に見える
口の周りのしびれ
A.自律神経失調症は、「特にその症状が発生する原因が思い当たらない(専門的な検査をしても特に悪いところが発見されない)」にも関わらず、心身に様々な症状が現れる病態を指します(「病名」ではありません)。
代表的なものとしては、だるさや疲労感、ふらつきやめまい、片頭痛やほてり、動悸、便器や下痢・吐き気などの胃腸症状、耳鳴り、瞼の痙攣、口や喉の不快感(へばりついているような感じ)、微熱といった多様な症状が現れます。中には、頻尿や残尿感、下腹部の違和感といった泌尿器症状が現れることもあります。
精神面でも、抑うつ、不安感、焦り、イライラ、疎外感、落ち込み、意欲ややる気の低下、感情の起伏が激しくなる、といった症状を呈することが少なくありません。
症状だけを見ると、基本的には適応障害で現れる様々な心身の症状と酷似しています。自律神経失調症が、適応障害の症状の一形態であった、ということは少なくないのです。
「自律神経失調症」は、「検査をしても器質的な異常は見られない」というところから、どうしても対処療法的に抑え込んだまま放置して(例えばめまいだったら、めまいの薬を飲んで押さえるなど)、適応障害などの早期発見を逃してしまうこともあります。「原因不明」の症状が現れて、日常生活を棄損しているようでしたら、一度心療内科の診察を受けてみられることをお勧めします。
A.自律神経(交感神経と副交感神経)は、全身の器官をコントロールしているため、そのバランスが崩れると結果的に全身の機能に支障を来すからです。
A.適応障害の原因とも通じる部分ですが、もっとも原因として考えられるのがストレスです。仕事などのストレス、人間関係、試合やテストといったプレッシャーからくる精神的なストレスなど、自身にとって過剰なストレスが蓄積すると、自律神経失調症を発症しやすいとされています。
生活リズムの乱れに起因する自律神経失調症もよく見られます。いわゆる「時差ボケ」による体調不良はその際たる物でしょう。このほか、夜更かしや徹夜、深夜の交代勤務といった夜型生活、不規則な生活習慣などもリスクファクターとして知られています(ただし、これらは高ストレスとの相関関係もあるでしょう)。
また、そもそも社会環境の変化(コロナ禍でのテレワークなど)、仕事の変化(転職・昇進・異動など)といった環境の変化への適応(過剰適応でも、不適応でも起こり得る)ができていないときも自律神経を失調させやすいと言われています(これも一種のストレス環境ということが言えるでしょう)。
このほか、思春期や更年期、女性ホルモンの影響、体調不良(風邪気味や花粉症、寝不足、二日酔いなど)といった年齢や体調の変化も自律神経失調のリスク要因の1つです。またもともと低血圧気味や虚弱体質などで体力に自信がないタイプ、生まれつき自律神経が弱い、自家中毒など体質的な原因がある場合もあります。
A.もっともよく見られるのは、日々のストレスを原因とする心身症型の自律神経失調症でしょう。心身の双方に影響が出やすく、病院へ行っても原因が分からないため、長い間不快な症状が続くケースもあります。高ストレス状態のまま放置しておくと、いわゆる「抑うつ型」の自律神経失調症に移行します。やる気が起きなかったり、エスカレートすると仕事に行けなくなったりもします。ここまでくると、「適応障害」といってもよいかもしれません。
これとは微妙に違うタイプで、神経症型の自律神経失調症も見られます。自身の気分や体調の変化に敏感で、その過敏性ゆえに体調を崩してしまうタイプです。例えば、ちょっと酷い下痢をしたとすると、「とんでもない食中毒か、もしくは赤痢に違いない」と思い込んで、ネットで調べまくり、どんどん悪い情報を仕入れて余計に具合が悪くなってしまう・・・。あるいは微熱が出たとすると、「37度台前半」で「もう終わりだ!」と絶望的な気持ちになってしまう・・・。そんなタイプです。心身症型との併発も起こり得るでしょう。
このほか、上述の通り体質で自律神経失調症を起こしやすいタイプ(本態性)もあります。このケースでは、必ずしもストレスが直接的な原因(間接的には連関する可能性はあります)と判断できない場合もありますので、日常生活のリズムを整えることで自律神経と付き合っていくことが必要となります。
A.以下、様々な「目の症状」を挙げてみました。自律神経失調症かと思ったら別の病気だったということもあります。一度、眼科にかかって原因を確認することをお勧めします。
(※)斜視は視線が常にずれている状態、斜位は無意識の状態でいると視線がずれる状態を指します。
A.以下、様々な「耳鼻咽喉科系の症状」を挙げてみました。自律神経失調症かと思ったら別の病気だったということもあります。一度、耳鼻咽喉科にかかって原因を確認することをお勧めします。
A.以下、様々な「口腔の症状」を挙げてみました。自律神経失調症かと思ったら別の病気だったということもあります。一度、歯科や口腔外科にかかって原因を確認することをお勧めします。
(※)胃腸の調子が悪いときに舌苔が増えることが知られています。これは、舌の感覚を鈍麻させて食欲を減退させ、食べる量を押さえることで胃腸のはたらきを守るためだと言われています。ですから、舌苔が増えた時は「食べ過ぎ」のサイン、ですね。
(※)歯ぐきだけに炎症が起こっている場合を「歯肉炎」、それ以上に進行すると「歯周炎(歯槽膿漏)」と呼びます。
A.あり得ます。脳のはたらきが弱ったり、仕事に対してのやる気(パワー)が著しく低下したりすることが原因でしょう。今まではできていたのに、急に「文章がまとまらず、社内文書を作れなくなる」とか、「文が思い浮かばず、メールが打てなくなる」「スピーチをしようとしたら、言葉に詰まる」「言葉が出てこなくて、電話ができない」「言葉に詰まってしまい、会議で発言できなくなった」など、社会生活に支障が出てくる場合は早めに医療機関への受診を検討したほうがよいでしょう。
A.買い物にもエネルギーが必要ですから、「買い物をする元気と意欲」が出てきたこと自体は喜ばしいことです。ネットで買い物をするくらい余裕が出てきたということは、休息の時間が徐々に「暇」になってきたということですね。適度な買い物は気分転換にもなるため 、それ自体は特に悪いことではありません。しかし、これも「日常生活に支障が出る」レベルになってくると、心配です。
意欲が戻ってきて一時的に活動的になった可能性、抗うつ薬などの副作用で元気になりすぎた可能性、休職中の不安を買い物で紛らわしている可能性(ストレス発散の一環)、また実は「躁うつ病であった可能性(躁転状態)」 、そして「買い物依存症」になってしまった可能性もありますので、 「毎日数十万円単位の買い物をしてしまっている」など、明らかに異常な兆候が発現したら、エスカレートする前に必ず主治医に相談するようにしましょう。
(※)この●●には、「ゲーム」「SNS」「スマホガチャ」「スマホ」「動画」「ギャンブル」・・・その他、様々な依存性のあるものが入ります。
A.何かに熱中するにもエネルギーが必要ですから、ともかく「何かをする意欲」が出てきたこと自体は回復のサインです。しかし、その行為が「日常生活を棄損する」ようになってくると、それは「依存症」ということになります。何らかの欠乏感情・不安感情・満たされない気持ちを、代償行為によって一時的に書き換えているだけで、本質的にはその感情が何も解決していないのが依存症の特徴です。
例えば「やめたいのにやめられない」「やめるべきとわかっていてもやめられない」「触れていないとイライラしてしまう」「四六時中そのことについて考えている」「日常生活に影響が出ている」「ブレーキがきかない」「依存症じゃないか、と言われると全力で否定したくなる」といった症状が出ていればおそらく「依存症」の可能性が高いですから、 エスカレートしそうな兆候を感じたら、ただちに主治医に相談するようにしましょう。
A.前提として、心配な症状がある場合は主治医と相談ください。
自分でコントロールできて、日常生活のスパイスとして、自身の「やる気」や「活力」に直結するものは、特に問題のない「依存」です。仕事に穴をあけない(有給休暇は労働権なので除外)限りにおいては、ファンクラブに入ってアイドルの推し活をする、また一般に趣味全般が挙げられるでしょう。
一方、病的なものに踏み込みはじめている依存は、その夢中になっているものに日常生活が支配されつつあり、自分も周囲も困っているがなかなか(やめられない理由を探し出して)やめられないものと定義づけられるでしょうか。
そして、自分では制御不可能で、適切な治療を受けない状態では社会生活を送ることが困難な依存(アルコール依存なども含む)は、言うまでもなく危険な依存です。「依存症」といったときは、たいていはこの状態を指します。
A.脳がストレスを受けた時の反応を、「刺激と反応」のモデルに単純化して考えてみましょう。
ストレスは、「刺激」の1種です。強い刺激を受け続けることにより、これまで「反応」することで対処していた脳は「これ以上、"刺激"を受け容れてくれるな」と、防御反応を示すようになります。めまいや頭痛などは、「これ以上活動しないでくれ」というサインです。
しかし、よく考えてみると、「ストレス」(マイナスの刺激)というのは、必ず「自分の意志とは無関係に」やってきます。要するに、受動的なのです。ですから、いくら体調不良で抵抗をしたところで、その環境に身を置き続ける限り、刺激は自分の意志とは無関係に、与えられ続けます。こうなると余計に防御反応が強化され、「刺激をシャットアウト」するように心身がますます変質していきます。
ところで、マイナスの刺激の反対、「欲求に基づいた楽しいこと」(プラスの刺激)はというと、基本的には「自分の意志で」求めていくものです。こちらは能動的な概念だといえるでしょう (もちろん、「棚から牡丹餅」という現象もあります)。しかしストレスによって脳が刺激信号そのものをシャットアウトしてしまうと、困ったことにプラスの刺激すら、脳はシャットアウトするようになってしまいます。
よく、「ストレスにはよいストレスと悪いストレスがある」という言い方をすることがあると思います。これは言い換えると、「よいことも、悪いことも、刺激という信号の一種である」ということを述べていると言えるでしょう。 いずれにしても強すぎる刺激(が続くこと)は心身を蝕むのです。
強いストレスによって「これ以上、心身がどんな"刺激"も耐えられなくなっている」状態が、適応障害であり、それゆえに、「意欲」も低下してしまうのだ、と言えるのだと思います。
A.適応障害の場合、「適応」の障害ですから、字義の通り、「環境」への「適応」が難しくなった病気であるということができます。
適応障害のストレスの要因は「環境要因」とその「継続性」にあるとされます。環境の変化(仕事が増えた、激務になった、昇進・昇格があった、転勤があった、上司が変わった)はもちろんのこと、何らかの不適合性の高い出来事が継続している(長時間労働が続いている、過度なプレッシャーが続いている、土日も夜もなく働きづめであるなど)状態も要因となります。概ね、3か月を超えて継続的なプレッシャーが続くと危険とされます。
また、見過ごされがちですが日々の小さなストレス(スモールプレッシャー)も、環境要因や継続的なストレスで限界を迎えている心身には、どこかで「蜂の一刺し」になってしまうことがあります。どうということもない日々の通勤ストレス、同僚の愚痴などを聞くストレス、厭な取引先と付き合うストレスなど、「普段ならば大丈夫なのだが・・・」という小さなストレスも、高ストレス環境下では危険たり得るのです(これはちょうど、健康な人では何ともない常在菌が危険な免疫低下の患者さんともパラレルです)。
A.普段から怠惰な生活を送ることが普通であれば、それは性格とでもいえるでしょうが、以前と比べて、徐々にあるいは急に、普段通りの日常生活が送れなくなってしまう-ということがあれば、精神的な病気を疑いましょう。
例えば、以下のような「当たり前」のことをするのでも疲れやすかったり、億劫だったり面倒だったりして(面倒になることは誰でもありますが、ここで実際に)行動ができなくなる、というのが1つのサインだと言えるでしょう。
これらはいずれも、「活動するエネルギー」「他者から見られる想像力に要するエネルギー」が枯渇していることによって引き起こされていると判断することができます。基本的には休養によってエネルギーを充填しない限りは、日常生活の棄損 現象はどんどん増悪していくといえるでしょう。
A.はい。脳機能の低下によって集中力や意欲、興味が低下し、今まで楽しめていたものが急に楽しめなくなることがあります。
ポイントは、「急に」です。今まで楽しめていたものへの意欲が急激になくなったときは、メンタル面で何らかの不調を抱えていないか、ぜひともセルフチェックするようにしましょう(もちろん、当該のコンテンツに「飽きただけ」ということもあるわけですが・・・。)。
A.ストレスの蓄積によって自律神経のはたらきが弱まり、結果として胃腸の動きが減衰することが原因と考えられます。
また、物理的に忙しさのため「食事を取らない」とか、「食事をとる時間がもったいないので栄養バーだけで済ませる」といった食生活を続けることで、胃自体が小さくなってしまい、結果として食欲自体が落ちてしまう、という現象も考えられるでしょう。
A.ストレスの蓄積によって脳の働きが弱まり、"正常"な思考ができなくなっているためと考えられます。
別の項で詳述していますが、2022年1月発効のWHOのガイドライン(ICD-11)における適応障害のDiagnostic Requirements(診断要件)にも、「過度の心配やストレッサーについての反復的で悲観的な考え、またはその意味についての絶え間ない反芻を含む、ストレッサーまたはその結果へのこだわり」が適応障害の必須要件として定義づけられています。これはものすごく平たく言えば、「ストレスから生じる不安感情に過度にとらわれてしまい、通常の生活を送れなくなってしまった状態」と言えるでしょう。その背景にある「認知の歪み」こそが、まさに「妄想」として現れていると考えてよさそうです。
A.ストレスに端を発して、次の状態が心身に複合的に起こっていると考えてよいでしょう。
A.慢性的な仕事のストレスによって心身がダメージを受けた結果、疲弊のあまり文字通りあたかも蝋燭が「燃え尽きて」しまうかのように仕事の一線からフェードアウトしてしまう症状を指します。しばしば、適応障害の症状の1つとして数えられます。 英語の直訳で、そのまま「バーンアウト」とも呼ばれます。
燃え尽き症候群になると、心身のエネルギーの枯渇や強い疲労感を感じ、「仕事から離れたい」という気持ちが増加します。そして、しばしば仕事に対して否定的で、冷笑的(シニカル)な感情を抱くことになります。結果として今まで通り効率的に仕事を進めることが難しくなるばかりか、仕事に対する達成感や満足度を喪失してしまいます。
A.燃え尽き症候群では、「これまで仕事に真剣に取り組んでいたのに、突然やる気を失う」「仕事をバリバリこなしていた人が、突然職場から離脱してしまう」「仕事上の人間関係が突然億劫になり、思いやりの心が消えた」「仕事に対して感じていた達成感が消えた」というような、「これまで仕事に一生懸命取り組んでいた人が突然変化する」というエピソードがしばしば語られます。
これらを大まかにまとめると、主に次の3つの症状が発現するとされます。
上記のように、以前の自分と比較してやる気が低下し、自分への自信も失い、かつ周囲への思いやりをする気力もなくなっている状態が「燃え尽き症候群」の典型的な症状であるといえるでしょう。
A.主に仕事による過度なストレスが原因とされています。特に「自分が携わってきた大きなプロジェクトがひと段落し、次の仕事に取り掛かるとき」や「一生懸命取り組んできた前部署から異動してすぐ」、「全身全霊をかけて打ち込んだ仕事が頓挫した」「営業成績を死ぬ気で上げたのに評価が変わらなかった」など、力を入れて取り組んでいたことから「環境」が急に変わったときやそれが報われなかったときに、これまでの「疲れ」を後追いでダメージとして受け、心身が悲鳴を上げることで発症することがエピソードとしては多く聞かれます。
具体的な原因としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
また、この「燃え尽き症候群」は、脳内の報酬系のはたらきからも説明することが可能です。大きな仕事をしたり、仕事で評価されたりすると、脳内の報酬系が反応し、ドーパミンが放出されます。これ自体は、「やる気」につながるので悪いことではないのですが、問題は、この報酬系のサイクルが「依存」につながりやすいという点にあります。すなわち、一度ほめられると、脳が「嬉しい!気持ちいい!」となって、「もっと気持ちよくなりたい」と要求をはじめてくるのです。さらに報酬系は同一の刺激には「慣れ」を生じるため、「同じほめられ方」では到底満足することはありません。「もっとよい評価、もっとよい評価」を追求してしまうのです。まさに、ワーカホリックの一断面といえるでしょう。
よい評価を受け続けることで、脳が求める「刺激」に至るまでの難易度は際限なく上がり続けます。この負のフィードバック・ループに嵌ってしまい、さらに(忙しいことで余計に)「仕事だけ」でドーパミンを得ざるを得なくなってしまうと、やがてコントロールを失ってどこかで仕組みが破綻することになります(し、プライベートも家族も健康も犠牲にすることがほとんどです)。もはや、適応障害になる直前になってくると「やる気」サイクルで評価を上げていたわけはなく、完全に「報酬系のフィードバック」によって脳が暴走してしまっている、ということになります。
ワーカホリック状態で、「刺激」を求めて仕事をしている状態になると、目標設定はより酷薄で、無理といえるものに変わっていきます。当然、どこかで達成ができなくなるタイミングが訪れるでしょう。「達成できない」ということがわかると、それまで「報酬系のフィードバック」だけでコントロールされていた脳も「刺激」を得られないと理解することで一気に気分が落ち込み、やる気を持てなくなってしまうことがあります。まさに、「燃え尽き」です。
A.独りでストレスを抱え込み、頑張り続けてしまう人が燃え尽き症候群と親和性が高いタイプです。具体的には、次のようなタイプが挙げられるでしょう。
A.はい。しかしこれは、単に「仕事とプライベートの切り替えが下手なタイプ」というだけではなく、人格的な切り替えという部分も影響しているとされています。
人は、ある役割を負って社会生活をしていることが普通です。家では父の顔、夫の顔。外では会社員の顔。複数の「顔」を演じるのが普通です。それはいわば、「ペルソナをかぶったロールプレイング・ゲーム」ともいえるでしょう。
これはあくまでも「役割」であって、「人格」そのものではありません。しかし、社会上要請された(職務上強制された)「役割」と、自分自身の「人格」とを切り換えることが苦手だと、そのギャップに苦しみ、抑うつ症状を呈してしまいがちということが指摘されています。社会的立場においての「批判」を、自分自身への「非難」と受け取ってしまうことは誰にでもあることですが、その切り替えがうまくいかないと、燃え尽きたり、抑うつ症状を発してしまいやすくなる、ということです。
A.燃え尽き症候群とは慢性的な仕事のストレスにより心身をすり減らした結果、抑うつ症状を発症する状態を指します。「適応障害」や「うつ病」の症状の1類型とみることができるでしょう。すなわち適応障害は「病名」で、「燃え尽き症候群」は「病名」ではなく(ある病気の症状や性質を表す)「病像」、ということになります。
なお、一般的に憂鬱で、気分が塞ぎ、罪悪感が強く、自罰的な「抑うつ症状」を呈することの多い適応障害やうつ病ですが、燃え尽き症候群を背景に持っている場合は、「怒り」が強く、絶望や喪失感を強く抱き、不安感が強く、やや他罰的といった特徴があるとも言われていますが、適応障害と言っても「燃え尽き」の要素もあれば、その他の要素もある複合的な要素であることが普通ですから、その境界はどこまでも曖昧で、「この症状の場合はこれ」と、明確に定義づけられるものではないでしょう。
A.この情報だけでは判断できないものの、その可能性があります。どんな人でも、同じことをずっと繰り返していけば「飽き」がきて、突然やる気を失うことがあります。どんなにハイパフォーマンスでバリバリ働いていた人でも、ある閾値を超えると燃え尽きてしまうということは十分に考えられることです。
この場合、「実は、仕事が今の自分にマッチしていない」と考えてみるとどうでしょうか?しっくりくるでしょうか。
どのような仕事も、最初は「チャレンジ」からはじまります。少し難しいことを覚えて、できるようになってくると創意工夫が生まれ、やがてコンフォートゾーンといわれるような「快適」な環境に身を置くことになります。もっともパフォーマンスを発揮できる状態です。しかし、上達・熟練を重ねるにつれ、同じことを繰り返していくと「役不足」という状態につながっていきます。
挑戦の余地もなく、創意工夫も出尽くした-そんな状態に達してしまっては、燃え尽きるのも当たり前です。異動や昇進など、新しいステージへの挑戦をすべきですし、逆に言えば上司や会社は、そういう社員をつくらないためにも、積極的に定期的な異動を行っていくべきだといえるでしょう。
A.一般的に、短期間(数か月など)で複数のメンタル因での休職者が出る職場は、何かしらの問題があると考えてよいでしょう。その原因は様々ですが、大きく分けると次の5つが該当しそうです。
A.活躍しているが故、ということです。「できる人に仕事が集中する」のは世の習いですが、周囲の要求が過剰になる(エスカレートする)ことで、当人のキャパシティを超えてパンクするということです。当人の側から見ると、「仕事の過剰な請負が原因」ということになります。「金の卵を産む鶏に、もっと産め、もっと産め、とエサを与えて産ませ続けたら、鶏ごとダメになってしまった」ということでしょう。
A.燃え尽き症候群を起こす社員は、基本的にはハイパフォーマーであることが多いです。しかし、ひとたび燃え尽き症候群になってしまうと、組織への帰属意識やロイヤリティが大幅に低下し、キャリアへの満足度も下がり、無気力や不満を抱きやすくなると言われています。その結果、退職してしまうこともしばしば起こります。
もともとハイパフォーマーは、これまでの実績によって周囲への影響力も大きいですから、こうした社員が翻って残った社員に悪影響を及ぼすことは想像に難くありません。集団的な気力低下や業績悪化、大量退職などの現象も、決して珍しい現象ではありません。
ハイパフォーマーを燃え尽きさせてしまうと、組織にとっての生命線である優秀な人材を失うばかりか、組織にとって必要不可欠なナレッジ・スキルや、場合によっては貴重な人脈・ネットワークなども喪失してしまうことになり、経営にとっても大きなリスクとなるのです。決して放置しておいてよい問題ではありません。
A.個人が、組織の力を高めていくために職場で提供できるリソースは「情報的リソース」「社会的リソース」「個人的リソース」の3つがあるとされています。「情報的リソース」は専門の知識や技術、有益な情報のこと、「社会的リソース」はその人の立場や持っている人脈、属しているネットワークのことです。これらは、shareすることで「暗黙知」が「形式知」化していくうえ、摩耗することなく活用できるリソースです。
残る「個人的リソース」は、その人の具備している時間と体力や感情です。これは、どこまでも個人に属する属人的なリソースであり、かつ、使用することで必ず摩耗するリソースです。優秀な人、あるいはいわゆる「いい人」は、知らず知らずのうちにこの「個人的リソース」を簒奪されてしまっていることが多いのです。時間が奪われ、体力も吸い取られ、感情も枯渇し、通った後はペンペン草1本も生えない荒野になって、まさに「燃え尽き」てしまう・・・・
「求められるままに、個人的リソースを配る」ことをやめる―これが、燃え尽き症候群を防ぐための要諦です。
A.上記の回答を、そのまま「組織」にチェンジチェアして考えてみましょう。要するに、属人的な仕事を減らして、チームゴトを増やしていくということに他なりません。もう少し言い換えると、「個人的リソース」を供出させる仕事の回し方をやめて、いかに「情報」と「ネットワーク」を活かした業務体系にシフトしていくか―という命題でもあります。「個人のがんばった総量」で仕事を回そうとするから、いつまでたっても生産性は上がらず、実質賃金も物価上昇に勝てないのです。真の効率化とは、「賃金を下げる」ことではなく、「個人のがんばった総量」に頼らないで稼げる仕組みを組織的に考えることなのです。
職場レベルで見てみると、「個人のがんばり」に依拠した仕組みを減らすことがポイントになってきます。「本当に取り組むべき仕事」と「やらなくてよい仕事」の洗い出し、「○○さん」にしかわからなくなっているブラックボックス的な仕事の撲滅、こうしたことを全員で(一時的なハレーションを厭わず)取り組むしかありません。逆説的ですが、こうして捻出された余白によって「情報的リソース」「社会的リソース」が、個人のはたらきによってなかば「属人的」に創造されることこそ、組織の目指すことになるといえるのではないでしょうか。
また純粋に、連続して(ブランクなく)大きなプロジェクトを任せない、大きなプロジェクトのあとには有給の長期休暇を与える、プロセスを評価してよい処遇で報いる(やりがい搾取をしない)、など本人の気持ちを切れさせない組織的工夫は絶対的に必要なことといえまするでしょう。
A.上述の通り、「情緒的消耗感」(仕事を原因として情緒的に力を出し切ってしまって情緒面で消耗している状態)、「個人的達成感の低下又は喪失」(やりがいを失う、能力を発揮できている感覚を失う)、「脱人格化」(周囲に気を遣った言動ができなくなった状態)が3大症状とされています。
それぞれの基準において、確認してみましょう。前二者は、「多い」または「度合い」が高いと蓋然性が高く、最後の選択肢は「少ない」または「度合い」が低ければ低いほど、燃え尽き症候群を避けるファクターとなり得る指標です。
当てはまる項目が多い、あるいは各項目の「度合い」が高いかどうかを確認します。
当てはまる項目が多い、あるいは各項目の「度合い」が高いかどうかを確認します。
当てはまる項目が少ない、あるいは各項目の「度合い」が低いかどうかを確認します。
参考リンク:燃え尽き症候群の診断・チェックリスト
資本と情報化社会による世紀の病ともいえる「加速思考症候群」は、現代社会が老若男女問わず「考えすぎ」を促し、脳のオーバーヒートを起こしているとされます。自己認識と自己管理によって生活スタイルを変え、心の健康を保つことが何より大切です。次のチェックリストは、脳の疲労状態のチェックリストです。特に「1」が該当する場合は、脳がいつもフル回転しているせいかもしれません。1~2項目くらいならば、だれもが日常的に起こり得るものかもしれませんが、以下に多く当てはまれば当てはまるほど、「すわ危険」と考え、生活スタイルを見直すことが必要でしょう。
参考文献:アウグスト・クリ『加速思考症候群』 鈴木由紀子・訳(ハーパーコリンズ・ジャパン)
忙しかったり、疲れたりしていると、自分が気づかないうちに、「謙虚さ」が失われることが往々にしてあります。温和だったはずの上司が急に「偉そう」になったり、普通に接していた同僚が急に攻撃的になったり、外面はよいが「裏の顔」として店員や駅員には横柄で乱暴な態度をとるようになった家族がいたり、という「あれ?」という違和感は第三者のほうが気づきやすいことが往々にしてあります。そういうとき、「ああ、この人は疲れているんだな。余裕がないんだな」と思うことでしょう。以下のチェックリストで、自分が「そういう人」になっていないか、を確かめてみることは有用です。
A.「一人になりたい」と思う一方で、「孤独」も感じる。この矛盾した認知状況こそ、まさに特徴的な抑うつ症状の1つと言えるでしょう。誰かに気を遣うだけのエネルギーはもう残されていないのでできれば一人で過ごしたいものの、本当は(辛いから)一人にしてほしくないという複雑な感情ですね。
具体的にこの感情を言葉にしてみると、「人が近くにいても距離を感じる」「何かを話しかけられても遠く聞こえる」「誰かが楽しそうな会話をしていると、疎外感を覚える」「孤独な感情が渦巻き、絶望する」といった感じでしょうか。これらの感情が進行すると、外の世界が異常に客観的に見える感覚(モニター越しで外を見ている、硝子越しに外を眺めている、見えない膜に包まれている、水中にいるような気持ち)を覚えることがあります。これを「離人感」といいます。
離人感が強くなってくると、孤独感はあるものの、人とコミュニケーションを取る(あるいは取ることを想像する)だけで苦痛になり、やがて会食はおろか電話やメールでのやり取りすら難しくなってきます。インターフォン越しの会話、コンビニやレストランでの店員との会話すら困難になります。
強いストレスによって、他人に対して想像したり、気を遣ったりするエネルギーが残されていない状態です。本当はコミュニケーションを取りたいのに取れない、なぜならばアクションを起こすだけのエネルギーがない から、そんな状況です。
このような状況は放置していても悪くなる一方ですから、「一人になりたいけど孤独」といった感情が耐えがたいほど続くようでしたら、早めに心療内科を受診することをお勧めします。
A.一般的に、飲酒・喫煙の量が増えた時は「ストレスが溜まっている」と判断されます。これらは、「不安を紛らわす」ために行為される嗜好品だからです。
なお、飲酒も喫煙も、適応障害の症状(特に抑うつ症状)を悪化させるとされます。睡眠の質を落とし、抗うつ薬の副作用も出やすくなるとも言われています。可能な限り、飲酒・喫煙は控えることが望ましいといえるでしょう。
A.何らかの環境上の要因がストレッサーとなって、心身のストレス(本来あるべきと感じている状態との葛藤)が続くことが原因です。
ストレスによって生じた何らかの「情報」が、脳の記憶媒体でもある海馬の過去の(不快な)記憶を刺激するとともに、脳の前頭前野で分析された不快を検知する信号が偏桃体に伝わると、偏桃体はそれを「不安感」や「恐怖」と捉えます。
不安感は「危機感」や「焦り」を生み、心身は戦闘態勢に入ります。結果として脳が覚醒した状態となって、気持ちが落ち着かなくなります。この状態が続くことで、心身のホルモンバランスが崩れ、自律神経が不調になったり、不眠が続いたり、心身に様々な影響が出てくるのです。
ストレスによって不安感を感知した偏桃体は、「不安」や「恐怖」を感じ、脳の各所に「危険である」という信号を送ります(危機感や焦り)。まずは信号を受け取る代表的な部分ごとに、引き起こされる反応を見てみましょう。
このように、脳の各部位に危険信号が影響することで、様々な心身反応が発生することがお判りいただけたかと思います。闘争状態が続くことで心身の疲弊が強まるだけでなく、今の状態を何とかしようと(より安全で平和な状態に戻ろうと)脳は無意識下でフル回転します。それでもストレス状態が続くことで、この心理的葛藤は継続しますから、脳が休まることはなく、例えば「副腎疲労」とか(次項で解説)、より総合的に「脳疲労」という状態になっていきます。
脳疲労になると、これまではしっかりと機能していた脳の高次機能のネットワーク(前頭前野ネットワーク)が、機能不全を起こすようになっていきます。心が不安定になり、同じこと(大抵はマイナスなこと)をグルグルと考えるようになって、行動を起こすことができなくなってしまいます。「頭が回らない」「決められない」「集中できない」「本が頭に入ってこない」「楽しめない」といった状態です。頭に靄や霧がかかった状態、というのは、まさにこの状態を指します。
このとき脳内で起こっていることは、前頭前野で機能している実行制御の高次ネットワーク(ワーキングメモリー)がはたらかなくなり、デフォルトモードと呼ばれるネットワークが優位になってしまっている状態です。
もう少し詳しく説明します。ワーキングメモリーのネットワークは、背外側前頭前野(喜怒哀楽や睡眠、食欲をコントロールしている部位。機能が低下すると意欲が低下する)・後頭頂葉(感覚情報の統合。特に空間感覚の総合調整を行う部位)・前帯状皮質(自律神経の調節のほか、報酬予測や意思決定、共感や情動などの認知機能に関わる部位)などの領域によって機能しています。ワーキングメモリーネットワークは、別名を実行制御ネットワークとも呼び、すなわち、目標を定めたり、情報を整理したり、判断したり、意思決定をして(前向きに)行動につなげていくための前頭前野のネットワークなのです。しかし、脳疲労によって、これらよりもデフォルトモードのネットワークとされる内側前頭前野(認知行動の計画、人格、社会的行動の調節。特に、自身の内面的な方向に向けて考えや行動を編成する部位)や後帯状皮質(空間行動における視覚情報と運動情報の統合に関係する部位)が活性化してしまいます。デフォルトモードネットワークは、過剰に活動することで「過去の後悔」や「未来への不安」に関係する思考を高めてしまうとされます。マイナスのぐるぐる思考、どうすることもできない 過去や未来のことで思い悩んでしまう雑念などは、まさにデフォルトモードネットワーク優位の状況によって引き起こされるとされます。そしてこのデフォルトモードネットワークは、脳のエネルギーの6~8割を消費すると言われています。従って、これが過剰に発動すればするほど、ますます脳を疲れさせてしまう 、という悪循環に陥ってしまうのです。
こうなると、これまでできていた判断・意思決定、目標思考といった前向きな思考が難しくなり、意欲低下だけでなく、抑うつ、憂鬱感が高まり、反省・自己否定、マイナス感情の反芻が繰り返されるようになっていきます。こうなると、(マイナスの反芻に起因して)絶望感や自責の念が強なる一方で、最終的には希死念慮にまで通じるようになってしまうのです。
そして、問題は脳だけにとどまりません。ストレス状態が続くことで、ストレスホルモンによって「戦闘状態」に置かれ、何とか(ある意味カンフル剤によって)動かされていた身体も、やがて限界を迎えます。まったく疲れが取れなくなり、「朝起きられない」「疲れが取れない」「動けない」という状態になっていくのです。
ここまでをまとめますと、慢性的なストレス状態によって、脳から「危険信号」が過剰に発せられることによって、偏桃体が常時「不安」「危機感」を覚えることで、ホルモンバランスが乱れ、自律神経系が破綻します。闘争状態が続くことによって「脳疲労」が起こり、脳内が 「ぐるぐる思考」を生み出すデフォルトモードネットワーク優位となることで心を蝕んでいきます。この状態が続くことで、やがて身体も限界を迎え、疲れが取れない状態(慢性疲労状態)に陥ります。これがストレスによる不安感情が脳内に起こすインパクトです。
ここまで縷々申し述べてきましたが、本項の回答はすなわち、「ストレス状態の継続状況が脳を通じて心身のバランスを崩してしまう」ということになります。
副腎とは、多くのホルモンを分泌している臓器で、左右の腎臓の上にあります。ストレスの調整だけでなく、栄養素の代謝、電解質のバランス調整、循環器系の調節などを担っています。
副腎疲労とは、ストレスや生活習慣の乱れによって副腎の機能低下が起こり、ホルモンバランスが乱れることで、慢性的な疲労や精神不安、食欲不振やアレルギーなど様々な症状を引き起こす病態を指す言葉です(「病名」ではありません)。
症状としては、一般的に以下のようなものが挙げられています。適応障害の背後には、副腎疲労の状態が潜んでいる可能性もあります。
強い疲労感、なかなか疲れが取れない、疲弊していて何とか1日を過ごしている、精神不安定(注意散漫、落ち着きがない、興奮、我慢ができないなど)、消化器の不調(食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛)、料理の味付けが濃くなる・または摂取量が異常になる(塩分、砂糖、カフェイン、香辛料・スパイスの量の過多)、低血糖症、パニック発作、過呼吸、頻脈・動悸、起立性低血圧、悪寒、冷や汗、顔面蒼白、めまい・立ち眩み、不眠、抑うつ、アレルギー症状の悪化、耳のかゆみ、皮膚炎、脱毛、光線過敏、月経前症候群の悪化、性欲減退
A.はい。ただちに面談したほうがよいです。
会社で行うストレスチェック(心理的負担の程度を把握するための検査)の医学的な信頼性はきわめて高く、高確率で離脱予備軍をスクリーニングできます。したがって、この通知を受けている時点で、相当な危険信号と判断してよいでしょう(というか、ほぼ赤信号です)。できれば、むしろすぐに「直属の上司」に体調不良について相談することを強くお勧めします。 ここで早めに休めれば、それだけ復帰も早まるはずだからです。
これは私の実際の職場での経験値ですが、ストレスチェックで「高ストレス者」と引っ掛かった人のうち、実に8割が、なんと半年以内に「休職」ないしは「"疲弊による"突然の退職」 -すなわち業務離脱に至っています(また、チェック後1か月以内に100%、突然の体調不良による有休取得が全員に発生しています。これについては例外をみたことがありません)。この結果だけでも非常に確度の高いテストだと思いますし、そのチェックを受けただけではセルフコントロールなど不可能ということも示唆しています。
当然ながら、この通知を受けた人はすでに深刻な過労状態にありますから、「休めるわけないだろう」「面談なんてしている時間があるわけないだろう」という歪んだ心理状態に陥っています。もはやこの状態になってしまうと、何かを新しくはじめる余裕すらないのです。畢竟、自主的に産業医の面談なんて受けるわけがありません。実際、同僚同士で「ストレスチェックどうだった?」とやって、「高ストレス者」と判定されているにも関わらず、自主的に産業医と面談した人を見たことがありません。そして、そのまま8割が「休職」ないしは「突然の転職・退職」に至ってしまうのです。せっかくストレスチェックを導入しても、これでは遅すぎるということですね。
そもそも、「産業医」という響き自体が、過労気味の労働者にとっては言葉の響きが強すぎて、ハードルが高すぎなのです。このような現状では、社会的損失が大きすぎるように思います。本来は、もっと気軽に「産業医面談」なり、「カウンセラー」を利用できる(できれば通知が来るほど悪化する前に)ような仕組みがあるとよいのですが・・・(実際に適応障害になってしまうと、産業医もカウンセラーも、相談するためのハードルというものが、実はまったくないということに気づけるのですが・・・)。
A.残念ながら、その通りと考えます。ストレスチェックの結果「休みなさい」と言われて、素直に休めるくらいなら、とっくに休んでいるんですよね。休むべき状況なのに「休めるわけ、ないだろう」と認知が歪むのが適応障害の特徴ですから、もはや「高ストレス」と言われている時点でかなり引き返すのは難しくなっていると思ってよいでしょう。
ほんらい予防領域のはずのストレスチェックですが、運用上は、どうしても「結果の後追い」にしかならないというのが実情といえるでしょう。Webで「あなたはインターネットを使っていますか?」と質問すると、100%が「YES」と回答する-という笑い話に似ている気がするんですよね。とはいえ、「ストレスチェック」自体は、本人に「気づき」を促すという意味で非常に意味のあるものだと私は考えています。問題は、それを組織がどう運用するか、ということですね。
A.ストレスチェックは、本人の「気づき」を促すツールです。自分のストレスの状態を理解し、それをセルフケア(場合によっては、医療の力を借りる)することに活用できます。
まずは、「ストレッサー」(ストレスの原因)を知りましょう。自分がどのようなことにストレスを感じているのか、客観的かつ定量的に把握します。 次に、「ストレス反応」を確認しましょう。自分に起こりやすいストレス(ストレスが表れやすいポイント)を理解することで、心身からのサインを受け止めやすくなります。 そのうえで、適切な「周囲からのサポート」を得られているかを客観視します。上司や同僚、家族や友人といったファクターが、あなたにとってどれだけよい関係性かどうか、ということは、確実にストレス反応に影響するからです。
このほか、「エンゲージメント(いきいき度、仕事への忠誠度)」や「Wel-being(総合的な満足度)」といった指標もあれば、ぜひ参考にしましょう。
これらを受けて、「自分自身のストレスの原因になっていることは何か」「ストレッサーによって、自分は心身にどのような影響を受けているのか」を客観視し、実際の自分の仕事・生活と照合してみるこおとをお勧めします。 これといった自覚がなくても、心身が「ストレス反応」を蓄積していることはよくあることです。自分に表れやすい症状を知っておくことで、早めに不調のサインをキャッチすることができるようになります。
なお、これらを踏まえた上で最も有効な活用方法は、組織にとっても個人にとっても、「うつ病や適応障害予備軍の早期発見と対処」になります。もし、「高ストレス状態」と判定され、産業医面談をお勧めする通知をもらったら、心身が悲鳴を上げている状態です。躊躇なく、上司、およびカウンセラーや産業医と相談されることをお勧めします。
A.ストレスチェック実施業務には、人事権者が従事してはならないことが定められています。またストレスチェック業務の従事者は、守秘義務が課せられています。このことから、少なくとも法的には、ストレスチェックの結果 そのものを人事査定に反映させることはできません。あとは会社と個人との「信頼関係」の問題になってくるでしょう。
A.ストレスチェックの意味は、現状の自分(が気づいていないかもしれないストレス状態)に気づくために活用できるということだけでなく、「過去の自分と比較する」という部分にあります。過去(多くは1年前)との比較によって、ストレス状態が良化しているのか悪化しているのか、それとも特に変わらないのかを客観視できます。「どのような業務状態であると自分はストレスを感じる(あるいは感じない)のか」を把握しておくことは、適応障害の発症予防にも有効な防衛策となるでしょう。
A.極度のストレス環境下にあるときは、むしろ交感神経が昂っていたり、失体感・失感情状態によって正常な判断を失っていたりして、自分自身の心身の調子を適切に判断できず、気づくと「手遅れ」になっていることもしばしばあります。基本的に「高ストレス状態」であることは事実ととらえ、必要に応じて産業医面談など会社の指示に従って対処することをお勧めします。
A.検査の精度は高いとはいえ、当然に完璧ではありません。ストレスチェックの結果「だけ」で判断することは危険です。ストレスチェックの結果に拠らず、高ストレスを日常的に感じている場合は、上司や会社の健康保健スタッフ、または医療機関に相談することも検討してよいでしょう。
A.あり得ます。しかし、「仕事以外は元気だから大丈夫」とは必ずしも言えません。 このまま放っておくと悪化する危険性は十分にありますので、体調の悪さに気づいたら、早めに対策を取ることが肝要です。
心のエネルギーを費消していく過程で、真っ先にできなくなることは「嫌なこと」「苦手なこと」だと言われています。さらに心身のエネルギーが消耗してくると、やがて自分の好きだったこと、得意だったはずのことまで手につかなくなることがあります。これが「悪化」です。 仕事の環境が急変していたり、激務が続いている場合などは、猶更「職場」と「それ以外」との差が顕著に表れているともいえます。
なお心のエネルギーが回復してくると、上記のプロセスとは逆に、「好きなこと」「得意なこと」から元気に取り組めるようになってきます。この変化も、体調が回復しているかどうかのバロメーターになるでしょう。
A.あり得ます。一般的にメンタル失調による抑うつ症状は、「波」を描くとされます。特に特徴的なのが、「日内変動」と呼ばれる1日の中での気分の波です。
これは、「朝に憂鬱な気分が強く、夕方になると気分が軽くなってくる」というように表現されることが多い(※)です。病的ではない「気分の落ち込み」の場合、このような日内変動はあまり見られないとされます。
したがって、気分に日内変動があって、かつ、それが継続的ないしは断続的に起こっている(断続的な場合は、もう少し長いスパンで「波」が発生している可能性もあります)ときは、「うつ病」や「適応障害」を疑って、一度メンタルクリニックへ相談されることをお勧めします。
(※)これとは逆に、日中は比較的快活だが、夕方になると気分が落ち込むというタイプの抑うつ症状もあります。日中の活動によってエネルギーが費消されてしまうことと関係があるとされます。したがって、「朝は元気だから大丈夫」ということでもなく、気分に「日内変動がある」というところに着目したほうがよいかと思われます。もちろん、特に気分に変動がなく、「1日中落ち込んでいる」といったことも十分考えられますので、「日内変動がなければ抑うつではない」ということも、単純には言えません。 もっとも、本当は日内変動があるのにも関わらず、抑うつ症状が強すぎてそれを自覚できないといったこともありそうです。
A.可能です。「症状の継続期間」をみてみるとよいでしょう。
誰でも、仕事での失敗や心配事などで日常的に「気分が落ち込む」ことを経験します。しかし、このような一過性の「気分の落ち込み」は、早ければ数時間から1日(寝たら治るという現象ですね)、どんなに長くても1週間もすれば自然と回復します。 要するに、徐々に回復していくのです。そしてその回復を、自覚することも可能です。
しかし、適応障害の場合は、このような気分の落ち込んだ感覚がなかなか回復せず、1週間、2週間と続いていきます。「何をしても気分が紛れない」といった感覚がだらだらと続くことが特徴です。 「回復の自覚ができない気分の落ち込み」がある場合は、適応障害(またはうつ病)を疑ってよいでしょう。
A.「いつも元気」という人はいなくて、誰でも急に落ち込んだり、疲れがまったく取れなくなったりすることがあります。自律神経失調症は、疲労が蓄積されていれば、誰もが多少は経験する普通のことです。問題は、その状態の「継続性」と「異常性」 、そして「強さ」と「悪化度」ではないかと思われます。
A.肩こり・腰痛など、一見関係ないような症状でも、適応障害の症状の1つである可能性は十分にあります。このケースでは「眠れない」「会社に行くのにエネルギーを要する」「気分が落ち込む」など、心の症状や行動の障害も起こりだしています。
「不眠」「意欲低下」「抑うつ」はメンタル疾患の代表的症状ですから、「いつもと違う感じ」が2週間以上続くようであれば、一度メンタルクリニックの受診を検討してもよいかもしれません。
A.まずは厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」を使って確認することが一般的でしょう。ここでは、最近1か月の「自覚症状」と「勤務状況」について確認することとなります。
また、上掲リンクにある「家族のチェックリスト」をご自身でも確認されてみることをお勧めします。客観的に見た疲労蓄積のサインを自覚することができます。
このほかに、こんなことも疲労蓄積の大きなサインになるかと思います。こちらも、ぜひ直近1か月の様子を思い起こしてみましょう。
A.そのようなことはありません。まず大前提として、「本当に40時間なのか」という問いがあります。タイムカードや勤務報告書上は「40時間」であっても、実際の勤務時間はそれを大幅に超えていた(要するにサービス残業があるということ)ということはないでしょうか。残業時間というのは、必ず「実」残業時間を元に考えるようにしましょう。
次に、もし仮に「40時間」だったとしても、以下のようなことはないでしょうか?
これらの事情を抱えている場合は、疲労が蓄積している、あるいは疲労を十分に回復できていないということが考えられますので、適応障害の引き金となることは十分に考えられます。
私自身は、実残業時間が50時間を超えると翌月に謎の高熱でダウンする-というパターンを何度か経験してきました(80時間を超えると、メンタルが完全におかしくなります)。ですから、一つの危険ラインは「50時間」かな、と勝手に思っているのですが、これは個人差・業務差・組織差が大きいでしょう。大切なのは、「だいたい、この仕事量だと、これくらいの時間働くとパンクする」という基準や感覚を自分の中で持っておくことだと思います。
ちなみに、厚生労働省の基準では、「月45時間」以上の残業により、健康へのリスクが有意に上昇するとされています。「月45時間」というのは、会社員であればほとんどすべての人が日常的に経験しているものでしょう。たとえ「月80時間」といった極端なものでなくても、私たちは日々、健康リスクに曝されながら生活しているということを自覚しておきたいものです。
A.適応障害は、しばしば「身体の症状」→「心の症状」→「行動の症状」の順番で発現することがあるとされています。1つは心の症状が発症する前段階、適応障害の前駆症状とみることもできるでしょう。
また、「気分の落ち込み」などの心の症状の大きさよりも、身体症状が全面に出て目立っている(心の症状がマスクされてみえない)という場合もあります。
「おかしいな」と思ったら、できるだけ早めに病院へ相談するほうがよいでしょう。
A.その通りですね。「定時後だろうが休日だろうが、社用携帯が鳴ったら(パブロフの犬よろしく)対応してしまう」という人はたくさんいらっしゃると思います。私も休職する前までは「休日にも電話が気になってしまう症候群」の立派な一員でしたので、「厭だけど、気になるのでついつい電話を見てしまう」「電話をみておかないと、却って後で面倒くさいことになる」という心理状態はよくわかります。
しかし、「休めるわけ、ないだろう」と思い込むのが危険な兆候であるのと同じく、「電話を確認しないわけ、ないだろう」と思い込むのもまた、適応障害に片足を突っ込んでいる危険な状態であると、今ならよく分かるのです。実際は、オフタイムは電源を切るなり、電話に出ないなり、いくらでも"やりよう"はあるのです。究極の話、「あの人は、休みの日には絶対電話に出ないから」と思われてしまうくらいになって、はじめて「普通」といえるでしょう。法的には、休日なのに電話に出るという対応を"強制"する場合は、待期時間分も含めて給与が発生する話にもなってきます。出かけ先で仕事の話をしたら、誰かがそれを聞いていた-なんてこともあるかもしれません。コンプライアンスの観点からも、「オフタイムの電話対応」は避けるべきでしょう。
ところで社用携帯を持たされている人の多くは、「バイブ音」が空耳で聞こえて、携帯を確認したけれど何もなっていなかった・・ということを経験されているでしょう。これも結構危険な兆候らしく、目安として「空バイブ」が聞こえてくるようになったら、強制的にでも「オフタイムは携帯をみない」という生活をされることをお勧めします。
A.人間の身体は複雑系ですから、「A(原因)をしたからB(病気)になった」ということを直線的に断言することは、一般的には非常に難しいと言えます (「鼻をほじりすぎて鼻血が出た」「冷たい水を飲み過ぎて下痢をした」という因果関係が明快なものもありますが・・・)。あれだけ身体に悪いと言われ続けている煙草ですら、「ヘビースモーカーなのに長生き」という人はいくらでもいるわけです。
まずここで、コロナやワクチンの議論に入る前に、「社会が変容」したことそのものに思いを巡らせてみましょう。新型コロナウイルスによる社会変容が長期化したことそのものが、まず大きな環境の変化です。常にマスクと消毒という窮屈な社会生活を強いられることは、それだけでストレスになるでしょう。またこれまでテレワークなど微塵も考えることがなかった人がいきなりテレワーク下におかれたり、オフィス再編によってオフィスが急激に縮小して職場のスタイルそのものが変わったり、少なからず多くの人がこれまでにないストレスを抱えていることは想像に固くありません。このこと自体が、適応障害の誘因になっていると考えても不思議なことではありません(※逆に、コロナが落ち着いて「通常の社会」がスタートするときに、コロナ禍社会に適応していたテレワーク民が、オフィス労働に「不適応」になる、といったことも当然に起こり得る話でしょう)。
一方で、新型コロナウイルスの後遺症やワクチンの副反応で深刻な後遺症が発生するという情報も、海外の症例を含めて少しずつ明らかになってきました。実際に新型コロナウイルスの後遺症や、ワクチンの副反応として、以下のような症例が報告されているといいます。
これらの症状は、まさにメンタルヘルス疾患で自覚される抑うつ症状、自律神経失調症と極めて酷似しています。コロナ禍以降、日本のメンタルヘルス疾患の罹患者は2倍以上に増加したとされています。「環境の激変」というファクターのみならず、新型コロナウイルスへの感染、またはワクチン接種を契機とした「コロナ因」の適応障害は、エビデンスこそこれからの知見を待つほかありませんが、肌感覚としては少なくとも「あり得ない話ではない」と感じるところです。
A.適応障害になると脳の認知機能が低下しますので、若干「物忘れ」が増える、というのはよくあるケースです。特に、「人の名前が出てこない」「忘れ物が増える」「度忘れする」などの現象が多いようです。ただし適応障害による物忘れは、「忘れたこと」自体は容易に思い出せるため、その現象自体を悩めることが特徴とされています。
一方、認知症による健忘症は、「忘れること」自体を忘れてしまったり、人に指摘されても何のことかわからなくなる(ピンとこなくなる)ことが多いとされ、「忘れること」自体が(当の本人は)気にならないというのが特徴とされます。またしばしば、過去のことはよく覚えていても、最近のことは忘れてしまうというケースも見られるようになります。
したがって、適応障害による「物忘れ」と、認知症による「健忘」は、別のものと考えてよいでしょう。後者のような状態が続く場合は、早めに主治医に相談することをお勧めします。
A.ここ3か月で、直近1か月と比べて、「本人の訴え」と「印象(自分の印象、周囲の印象)」がどうかを観察してみましょう。1つでも該当するものがあれば要観察、複数個が該当するようであれば(2週間単位で見て増えているようであれば特に)産業医面談や通院を勧めることを検討します。 ポイントは、「元からの性格」というより、「変化の度合い」を見ることです(例えば、もともと「顔色が悪い」タイプなのかどうか。「落ち着きがない」タイプなのかどうか。もっとも、「いつもの状態」にとらわれ過ぎるとサインを見過ごすこともあります。「いつもと何かがどうも違う」というところがポイントです)。
A.適応障害やうつ病は、大まかに15人に1人が、一生に一度はかかる可能性があるとされています。すなわち、「誰もが経験する可能性がある」病気です。まずはそのことを念頭に置いた上で、ここ1か月くらいで、 様子・行動や、仕事のアウトプット、そして勤怠が、明らかに以前とは異なっている場合(特に、日に日に悪化している場合)は、変調のサインであるといえるでしょう。
こちらも、「元から」なのか、「変化している/悪化している」のか、というところが見極めのサインです(とはいえそれに拘泥しすぎると、「あいつは、もともと顔色悪いから」で見過ごされてしまいますので注意が必要です。「あいつ、近頃変だぞ」という声が複数の同僚から上がった場合は、間違いなく「何か」が起こっていまると思って対処しましょう)。
A.「なんだか、今までと違う」という直観は、当たっていることが多いものです。周囲や本人の「おかしいな?」「変だぞ」という気づきは、「気のせいか」と放っておくと、やがて対処不能になってから「やっぱりおかしかったのか・・」と気づいて後悔することにもなりかねません。
自分自身でも、同僚でも、部下でも以下で挙げるような異変のサインに気づいたら、抱えずに早めに誰かとコミュニケーションをとることがとても重要です。自分自身であれば上司と、同僚であれば本人や上司と、部下であれば本人と、です。自分自身であれば上司に「どうも最近調子がすぐれなくて・・・」と相談しましょう。同僚であれば「〇〇さんが疲れているようで心配だ」と上司に伝えるとか、本人に「疲れているようだけど、大丈夫?」と聞くといったことです。上司であれば部下に、「ちょっと疲れがたまっているようだが、大丈夫か?」と声掛けをしてみましょう。
A.パーソル総合研究所「はたらく人の幸せ/不幸せ診断」で提唱されている、労働するに当たっての諸因子「幸せの7因子」「不幸せの7因子」から援用して、「幸せ」が棄損されていたり、「不幸せ」が蓄積していたりしないかを、以下の観点でセルフチェックしてみるとよいでしょう。
A.気づきの力が重要です。あるメンバーが、「いつもと違う」ことに気づくことは、適応障害の早期発見につながり、職場の休職・離職を減らすことにもつながります。大きく分けると、「勤怠」「業務姿勢」「様子」の3つのカテゴリーで把握するのがよいでしょう。
出勤状況などの「勤怠の変化」は、定量的に把握しやすいため、リモートワーク下でも変化が掴みやすいものです。遅刻や早退の変化、残業や休日出勤の不自然な増加などは危険の兆候と言えるでしょう。1点注意しなければならないのは、本人の報告が必ずしも真実を表しているわけではないということです(大抵は、忖度によって過少申告となっているのが普通です)。「残業時間はこの数か月30時間くらいなのに・・・」と思って蓋を開けてみたら、毎日深夜まで風呂敷残業をして何とか間に合わせていた、などというのは、このご時世、確実に管理責任を問われることになるでしょう。
「業務姿勢の変化」は、メールやオンラインチャットのやり取り、会議の姿勢などからでも把握しやすい定性情報です。上司には演技をしていても、仲の良い同僚などから「最近、間違いが増えていて・・・○○さん、ちょっと変かも・・・」などと何気ない情報がもたらされることもあります。こうした第三者の情報もヒントに、変化が起きていないかに注意を向けるとよいでしょう。
「様子の変化」は、業務以外の面も含めた定性情報です。リモートワークでの把握は難しく、また上司と部下の関係になってしまうとかなり大きな変化(悪化)にまで至らないと気づかない可能性も多いため、日ごろ接することの多いメンバーの情報を仕入れるのがよいでしょう。「昼食を一緒にとらなくなった」「これまでは9時にはオンラインでつながっていたのに、最近はオンラインになるのが遅い」など、ちょっとした情報がヒントになることがあります。
A.以下の情報にアンテナを張っていただくことをお勧めします。例えばメールの返信が「元から」遅いのか、遅くなったのか、当然ながら後者の「変化」のほうが重要です。
A.普段温和だった人が、急に情緒が不安定になったり、感情コントロールができなくなったりしている場合、適応障害などによる抑うつ症状や自律神経失調症として、脳の認知機能や、感情を抑制する機能が低下している可能性があります。
本人のストレス状況が客観的に見て強い場合は、まず適応障害の可能性を疑って、状況によって休養や通院をお勧めできるとよいでしょう。
A.抑うつ状態にあることを推測することはできるかもしれません。特に、「いつもと違う」状態が続いている場合は要注意です。重症度が高いと思われる順番にご紹介してみます(個人差があります)。
A.声をかけ、心配であるという気持ちを伝え、話を聴いてみてください。往々にして「大丈夫です」などという答えが返ってきますが、鵜呑みにせず、気になることがあれば会社の産業保健スタッフや病院に相談することを促しましょう。
このとき、「がんばれ」「なんとか乗り切れ」といったむやみな励ましや、「そんな気持ちじゃだめだ」「誰もが大変なんだ」という非難をすることは、つらい気持ちを追い込むことになり、逆効果です。また、よかれと思っていたずらに「解決策」だけを提案し続けてしまうと、「ちっとも話を聞いてくれない」と思われて心を閉ざしてしまうこともあります。
A.適応障害が、かなり重症化している可能性があります。本人が不調を認めない場合は、無理に話をさせようとせず、守秘義務のある産業医やカウンセラーなどの専門家、あるいはメンタルクリニックへの受診を勧めることを早急に検討しましょう。いったんは「様子を見る」という手もありますが、 放っておいても事態が好転することはまずないでしょう。いずれにしても、「話してくれなくなる」まで放っておいた上司とのラポール形成は絶望的な状況ですから、早めに第三者の手に委ねることが必要です。
なお、訥々とでも、「実は・・・」と自分の感じている問題点を話してくれるような場合は、事態がまだ引き返せる段階にあると思ってください。余計なアドバイスはせずに、しっかり話を聞き、「どんなことに悩んでいるか」の問題を一緒に整理するようなスタンスで臨むと、まだストップを掛けられれる可能性がある状態です。
一方、面談の場を設けた途端、(普段のその人の性格からは信じられないようなレベルで)堰を切ったようにマシンガントークが止まらない、という状態の場合は相当にフラストレーションが溜まっている状態だと思いましょう。驚くと思いますが、これもこうなるまで放っておいた上司とのラポール形成不備の問題ですから、とにかく「正面から聞く」に努めるほかありません(ただ、こうなってしまうと、もはやストレスが臨界点に達していることは明らかですので、おそらく遠からず「休職」ないしは「退職」する可能性が極めて高くなります)。
A.基本的に、「具体的に動いて現状が変わる何か(活動提案)」を示せない限りは、余計なアドバイス(人生訓)は百害あって一利なしです。むしろ、具体策として会社の産業保健スタッフや病院に相談することを促しましょう。
「大丈夫」「よくあること」「しばらくすれば慣れる」などは、励ましているつもりで、弱っている身からすると単なる「脅し」でしかありません。「大丈夫」=「そのままやれ」といっているだけですから、どんどん追い詰められていきます。
最近は1on1がブームですが、「月に1回の1 on 1で30分」を下手に打つよりも、「おかしいと気づいたときは、数日に1回、5分のフリートークを続ける」ほうが効果的です。困ったことは「今」解決したいのですから、スパンが長くなればなるほど持ち出しにくくなります。そして、可能な限り直接対話をすることです。メールやチャットではなく、せめてオンラインの会議ででもよいので、「5分」を、少し多めに取るほうが事故を減らすことにつながります。
この時に、「次の2-3日で取り掛かること」を決めるのがポイントです。指示だけして、取り掛かりをフォローしないことは往々にしてありますが、ここでその取り掛かりができたか(スタートを切れたか)が確認できると、それができていなかったときは「何らかの問題がある」ということですから、早めに対処がしやすくなります。それこそ、「今、気持ちが落ち込んでいて取り掛かれなかった」なんていうこともあるわけです。
接触回数を増やすことで、ちょっとした「気持ち」のやり取りができるようになっていきます。「事実」と「指示」だけのやり取りは、必ず「病み」を産みます。「事実」と、それを受け取る「気持ち」があって、それを踏まえた「提案」をするからこそ、ものごとは気持ちよく(納得感を持って)回っていくと言えるでしょう。指示する側の気持ち、指示を受ける側の気持ち、その双方をよくよく意識することが大切です。
「何でそんなことになっているんだろう」とか、「突然病んだ」(実際は突然ではなく、その兆候はあるものです)とかという自体が起こるのは、「気持ち」を介在させず、「事実」と「指示」だけのコミュニケーションで無機質なコミュニケーションを取っていたから。
「気持ちを聞けて良かった」とお互いが思えるコミュニケーションが取れていると、「病み」は確実に減っていくでしょう。ヒントになりましたら嬉しいです。
A.大前提として、他人の人生ですから、家族でない限り基本的には自由にさせたらよいと思います。 冷たいようですが、そこまで他人に構う必要もないでしょう。見守るしかありません。
ただし、転職を繰り返す人の中には、適応障害の症状(認知の歪み)によって、「このままではいけない」という焦りから、その不安感情を打ち消す行動として、ほぼ無目的に資格を取りまくったり、すぐに転職活動をしてしまったり、という形で感情を費消してしまうケースがあることは事実です。
不安感が嵩じると、「焦燥感」に転化します。そしてこの「焦り」は、「何かをしなくては」というさらなる焦りを生み、正常な思考ができなくなることがしばしばです。
うまく行く場合はいいのですが、こうした行為を繰り返していると疲弊感情の中で集中力が続かず、失敗することで余計に自己肯定感を棄損することになります。 「20代のうちはうまくいっていたが、30代になったらそうもいかなくなった」ということもあるでしょう。本人の気づきを待つしかないとはいえ、社会的にはなかなか深刻な問題だと思います。
このQ&Aでも繰り返し述べましたが、抑うつ状態が強いときに新しいことをはじめるのは、「骨折しているのにマラソンに出る」のと同じくらい無謀なことであるということは認識しておいたほうがよいでしょう。
A.適応障害が発生する職場は、多かれ少なかれ、「病む原因」が潜んでいることは事実です。もともと「負の圧力」が強い職場であれば、休職者や退職者が出た場合、その負の感情が連鎖して、休職ドミノが発生することは決して珍しいことではありません。ただし、これは構造的な問題であって、個人レベルで「何かできることはなかったのか」を考えたところで、なかなか難しいところがあります。せいぜい、次の業務監査などで職場で感じている問題点を論理的に伝える、くらいではないでしょうか。あまり考えても詮方ないことのような気がします。
さて、休職を繰り返して退職まで至った場合、究極的には「その職場と本人がそもそもミスマッチであった」という可能性は否定できません。退職してしまった方が悪いということでは決してなく、あくまでも「相性」の問題だったという捉え方をしてみるとどうでしょうか。人のお付き合いと同じく、「別れたほうがよい」という組み合わせは存在します。無理にくっついてお互いが疲弊するよりも、きっぱりと別れてしまうほうが正解、ということもあるわけです。そう考えると、その退職してしまった同僚の方の今後の人生にとって、もしかするとプラスだったのかもしれない、と想像することも可能です。
いずれにしても、「残念だな」と思うのは自然な感情であると思いますが、「どうすればよかったのか」とあまり詮索しても答えは出てこない可能性のほうが高いでしょう。 「来る者は拒まず、去る者は追わず」です。
A.誰もが日常生活の中で不調になったり、憂鬱な気分を抱いたりすることがあります。しかし、「どうもいつもと何か違うぞ」という状態が2週間くらい続いとしたら、要注意のサインです。適応障害は身体症状⇒心理症状⇒行動の変化と遷移していくことが多いですから、変化に気づいたら、相手がどの段階にあるかも確認してみましょう。
A.心の不調のサインは、自分ではなかなか気づきにくいものです。また、気づいていたとしても、「家族や職場に迷惑をかけられない」と、自分自身で明に暗に抱杞憂え込み、そのまま放置してしまうということも起こりがちです。適応障害の予防、または早期発見・対処のためには、身近な家族の「気づき」がきわめて重要なポイントとなるのです。
いつもと違う様子に気づいたら、まずは「最近疲れているようだけど、大丈夫?話を聞くよ」といったスタンスで、本人の話を聞きましょう。ただし、本人があまり話したくないようであれば、無理強いすることは逆効果です。「話したかったらでいいよ」という調子で、しかし、「気にしている」「見守っている」という距離感が必要です。なお、話に対して逐一「それは考えすぎだと」といって否定したり、「これはこうしたらいいんじゃない」などと提案で返すと、「この人は何も話を聞いてくれない」「自分の思うことを言っているだけだ」と解釈されて、余計に殻に籠ってしまう危険性があります。まずは「話を聴く」というスタンスが何より重要でしょう。
そのうえで、つらい症状が続いており、本人が相談を希望している場合は、上司や産業医に相談してみることを促しましょう。もし本人が相談を躊躇していたり、あまり多くを語らないときは、家族がまず相談窓口などに相談してみる、というのも1つの方法です。
様子を見ていても、本人が辛そうだったり、いままでとは違う症状が2週間以上続いているようでしたら、病院(精神科や心療内科)へ受診することを勧めます。身体の病気と同様に、「早期発見・早期対応」が予後を良好にする秘訣です。このとき、あまり「うつ病」とか「適応障害」という言葉を直截的に伝えてしまうと、本人の警戒心を高めてしまうことがあります。そうではなく、「ひどく疲れている様子が心配」「眠れていない状態が心配」「めまいが続ている状態が心配」など、「症状」にフォーカスを当て、その症状解消のためにできることはないか、という観点で通院を進めるとスムーズにいきやすいでしょう。なお頑なに通院を拒む場合、または通院に極度の不安を訴える場合は、初診に「付き添う」ことも検討します。
A.いいえ、治りません。他の病気と同じように、早期発見・早期対応を行わないと、症状は次第に悪化していきます。一般的には、状態がより悪くなったり、症状が長引いたりしてからの治療は、時間がかかるばかりでなく、予後も不良になりやすい(復職しても再発しやすくなる)といわれています。 何事にも言えますが、早期治療が鉄則です。
A.相当難しいと思います。今は何とか仕事ができていて、家のことはできているから大丈夫・・と思っていたのもつかの間、無理を続ければあっという間に 「会議中にフリーズする」「電話ができなくなる」 「会社の入り口で足が止まる」「電車に乗れなくなる」「仕事に行けなくなる」「家から出られなくなる」 「ベッドから起き上がれなくなる」「身体を動かせなくなる」など、症状がどんどんエスカレートしていきます。ストレス源から完全に離れ、しっかりと休職を取らない限りは、適応障害の症状は悪化の一途を辿っていきます。それはまるで、坂道を転げ落ちるかのような 、猛烈なスピードになるはずです。
A.現実には、睡眠薬で何とか睡眠時間だけは確保して仕事を無理やり続けている・・・というケースはあるでしょう。しかし、「働き方」「仕事の質・量」が変わらないままであれば、睡眠薬の量が増えたり、さらに無理をしたり・・・と、結局は何も変わらないまま現状が悪化するということが容易に想像できます。 また長期連用で睡眠薬に耐性がついてしまうことも考えられます。今は何とか仕事ができていても、それが砂上の楼閣である可能性は高いということです。できればストレス源から完全に離れて、しっかりと「休む」ことを優先したほうがよいでしょう。
A.適応障害の治療の基本は、「ストレス源から離れて休養すること」「適切な投薬により症状を寛解させること」、そして「認知行動療法などで認知の歪みに気づくこと」が挙げられます。この基本から外れれば外れるほど、抑うつ症状が長引き、治療が長期化する傾向にあります。例えば、休養中も会社のことが気になって毎日メールチェックをしてしまう、主治医の指示に背いて処方された薬を飲まない、カウンセリングなどを受けても頑なに実践しない、などです。要するに、治療に対する「素直さ」がないと、なかなか治るものも治りにくいと言えるでしょう(頑固さは、ややもすると適応障害の症状として発現している可能性もあります。心の硬さを取っていくためにも、まずは何よりもしっかりと休養することが重要です)。
また、適応障害のストレス源が強烈であったり(「強度」の強さ)、抑うつ症状を発症してから休養に入るまでの期間が長かったり(「期間」の長さ)しても、その分、寛解に至るまでには時間がかかってしまうケースが多いとされます。何事も早期発見・早期処置が肝要です。心身の異変に気づいたら、できるだけ早めに医療機関を受診することをお勧めします。
A.「過去や未来のことを考えて、思考が無限ループ」する状態、本当に辛いですよね。仰る通り、こういうときに解決策としてよく提示されるのが、「腹式呼吸」だったり、「マインドフルネス」だったりの、「今、ここ」だけに自分の意識を集中させる術です。もう「耳にタコができる」くらい、聞いていますよね。もはやこれをアドバイスされることが分かっているがゆえに、質問 することすら憚られる、そんな状態の方も多いのではないかと思います。
実際問題として、「マインドフルネス」の習得にはそれなりの時間がかかります。禅の発想も取り入れられていることからお分かりの通り、マインドフルネスの習得には「修行」的な要素もあって、効果を実感するまでには、「覚悟」「時間」「余裕」も必要なのです。しかし適応障害で苦しんでいる人にとっては、正直なところ、それを実践するだけの「気力」がもう残っていないんですよね。よく分かります。マインドフルネスは、「元気な時」に「元気な人」が実践する方がよいのだと思います。 「病んだ人」が「病んでいるとき」に容易に実践できるかというと、なかなか酷なことだと思います。
適応障害で「無限の思考ループ」に陥っている人が、その負の状態から脱却する一番の解決策は、何が何でもとにかく一度休んでしまって「ストレス源から遠ざかること」です。しっかりとストレス源から離れ、そのことを考えないでよい環境に身を置くと、まずは「考えない」状態を比較的短時間で実現できます。そして、「これが<頭がすっきりする>ということか」「頭の靄が消えた!」「考えないって、こんなにラクなんだ!」と、あるべき姿(理想像)を一度イメージできるようにしておくことが大切です。イメージがないものを実現させるのは至難の業ですからね。
そのうえで、興味がある人は「腹式呼吸」や「マインドフルネス」などで「理想像」を常に実現できるようなコントロールをしたらいいと思います。しかし、ほとんどの人にとって、それをするだけのモチベーションはあまりないでしょう。そこで提案するのが、「考えるヒマを与えない」という方法です。
「よい暇」は人間性が涵養されますが、「悪い暇」は「暇だと、碌なことを考えない」という現象を惹起します。一度しっかり休んで、理想状態が分かってきたら、休んでいる間に「良い暇の過ごし方」を身につけ、「悪い暇」をやっつけてしまいましょう。
一番良いのは、趣味に没頭することです。自分が集中できる趣味に、休みという「暇」を活かして徹底的にのめり込むのです。「寝食を忘れてでも取り組む」趣味がある方は、黙っていても雑念が取り払われることでしょう。
趣味なんてないよ、という方。次にお勧めするのが、適度に苦しい運動をすることです。負荷としては、20分程度、「話しかけられたら応答はできるが、自分からは積極的に話しかけたくない」くらいの辛さのものがよいと思います。軽いジョギングや水泳が該当すると思うのですが、これを週2回くらいすると、運動中は「疲れて考え事どころではない」ですし、運動後は「不思議と頭がすっきり」します。夜は夜で疲れているのでよく眠れるという嬉しいおまけがついてきます。
このように、「ぐるぐるループをしない時間」を意図的に作り出すことで、思考のクセのようなものがほぐれてくるのではないかと思います。まず休む、そして休んでいる間に「没頭できる時間」を創出する、ということですね。
A.実は私もそうでした。医師に聞くと、適応障害で休職に入ったときに、とてもよくある現象だそうです。マラソンのゴールテープを切った直後に、選手がその場で倒れ込む映像を見たことはありますよね。あるいは、多忙な時に休日に限って熱がでるみたいな現象に経験はありませんでしょうか。それと全く同じだそうです。限界まで走って、「休める」となったとたんに、心身が緊張を解き放ち、一気に押さえこんでいた不調が爆発するのです。2週間くらい、何も考えずに寝る・食べるだけのダラダラ生活を送っていると、少しずつですが必ず回復してきます。 「休むことに慣れる」ことからはじめないといけないのですね。
A.体調不良の状況や、会社によっても異なりますが、だいたい次のプロセスを踏むことが多いでしょう。
A.その心理状態は理解できるものの、上司への事前相談をすっ飛ばして、「診断書」→「いきなり休職」となるよりは、通常の業務報告のプロセス(報告・連絡・相談)と同様に、「上司に体調不良を告白する」→「有給休暇を取り、通院する」→「医師の診断書を得る」→「上司に報告し、休職」という段階を踏むことがもっともスムーズかと思われます。
「上司と相談したくない」という発想が出てくること自体、おそらく適応障害の症状の1つだと思われます (何かあったら上司には真っ先に相談するのが社会人の基本のはずだからです)。もちろん、本当に症状が悪くてどうしようもないときは「休む」ことが優先ですから、「いきなり休職の診断書を引っ提げて突然休む」あるいは「家族から連絡を取ってもらう」ことも手段としては否定されるべきものではありません。ただし、これをやってしまうと心象的にはかなり気まずく、いざ回復した時に復職しづらくなってしまうこともあります。
「実は体調が悪くて・・・」と告白するのはとても緊張するかもしれませんが、コンプライアンス全盛の時代、それで変な対応をすれば上司の立場がきわめてまずくなります。「案ずるより産むが易し 」で、しっかり相談すると 、いろいろと取るべき方向性も見えてくるはずです。
繰り返しにはなりますが、余程のことがない限り、上司とは「事前に相談しておく」ことをお勧めします。
A.適応障害でただでさえ心が弱っているところへ、相手に自分の「弱み」を見せるのだから尻込みしてしまうのも当然です。まずは自分自身に、行動ができなくなる5つの「心の壁」があることを理解しましょう。
いかがでしょうか。恐怖心、遠慮、罪悪感、プライド、完璧主義、不信感、勇気の欠如-これらの感情がないまぜになって、自分の本心を自己開示できない状態になっているのが「休む」と相談できない心の正体です。まずはこういう心が作用しているということを否定するのではなく、受容しましょう。
これらの感情は、ストレスからの自己防衛反応です。こんな反応をしてしまっている自分をまずは労りましょう。「自分の心」と向き合うと、それが相談の原動力になるかもしれません。
もちろん、どうしても相談ができないという場合は「いきなり休職の診断書を引っ提げて突然休む」あるいは「家族から連絡を取ってもらう」ことも手段としては否定されるべきものではありません。ただし、これをやってしまうと心象的にはかなり気まずく、いざ回復した時に復職しづらくなってしまうこともあります。
A.まずは、「体調不良が続いていること」「体調不良が悪化していること」を伝えましょう。例えば「○月からよく眠れていない」「めまいが続いている」、そしてそれが「一向に改善せず、悪化してきている」という具合です。まず間違いなく上司からは「一度休め」とか、「病院に行ったのか?」といった声掛けがあることと思います。もしそれがない場合は、こちらから「一度お休みをいただきたい」ないしは「一度病院に行きたい」といったことを提案しましょう。
体調不良を心配する家族の勧めで○月○日に病院にかかったところ、「○○」という診断書をもらいました。(自分だけでは判断がつかないので、家族にも相談したところ、「医師の指示に従ったほうがよいのではないか」と言われています。 )急なことなのですが、この診断書に従って、○日からお休みをいただきたいのですが。
A.「2週間くらい、心身の不調が続き、日常生活に支障を来している」ようであれば、何かしらの行動をすぐに起こしたほうがよいと思います。 もう少し具体的に基準にしてみましょう。「心身の不調」「直近3か月の仕事の状態」「周囲の人の見解」の3点から検討してみます。
まず2週間くらいを振り返ってみて、以下のような心身の不調が1つでもあれば、基本的には「今すぐ休むべきサイン」だと言えるでしょう。
次に、「直近3か月の仕事の状態」について見てみましょう。下記のような状況が複合的に重なっている場合は、明らかに勤務状態が適応障害の引き金になっていると判断されるでしょう。
そして、「周囲の人の見解」も重要な判断要素となります。
いかがでしょうか? これらのことがある場合は、まず相当な危険信号だと思いましょう。それ、おかしくなっています!にも書きましたが、「休みたいのに、休めない」とか、「周囲が『休め』と忠告しているのに『休めるわけないだろう』と激昂する」ような状態になっている場合は、ほぼ間違いなく適応障害に両足を突っ込んでいる状態になっている、と思っても差支えないでしょう。
A.おそらくそうぐるぐると余計なことを考えてしまっている時点で抑うつ症状の一種なのではないかと思うのですが、それはさておき、風邪ならば「熱をはかる」とか、「咳が止まらない」などで明確に「具合が悪い」と客観視できるのですが、確かに精神疾患の場合はそれが「みえない」場合もあるのは事実です。
したがって決定的な基準というのはなかなか見出せないのですが、やはり、自律神経失調症が「2週間」くらい改善しないとき、不安感などの症状がどんどん増悪しているとき、「休め」と周囲から言われているのに頑なに「休まない」と意固地になってしまっている時などは、「危険」なサインなのではないかと思われます。 そうなったら、あとは医者に掛かりましょう。
A.大きく分けて「業務の引継」「長欠中の連絡の取り方」「長欠関係書類のやり取り」の調整が発生します。
A.大前提として、引継ができなくても気にしすぎる必要はありません。急な人員の欠缺が出ると職場はしばしば一時的なパニック状態になり、短期的には必ず仕事が滞るものですが、中期的には部署内でカバーし、長期的には組織的にカバー(人事異動など)して対応するものです。最優先は「体調の回復」であって、「仕事の穴を埋めること」ではないのです。
そのうえで、もし体調が許すのであれば、「1回、半日以内」で済むような簡潔な引継が望ましいでしょう(上記Q&A記載の通り)。
内容としては、当面(1か月程度)のtodoリストと懸念点や、抱えている仕事の進捗段階(何ができていて、何ができていないか)、当座で連絡すべき取引先のリストなどを簡単にまとめられるとベストです。自分のPCにしか入っていない資料は、可能な限り部署共有フォルダなどにコピーしておくとなおよいでしょう。
これが難しい場合は、少なくとも直近1~2週間のスケジュールと、できれば「何がどこにあるか」をメモ程度にまとめて引き継ぐことで十分です。
できれば会社に出社するのではなく、またビデオ会議等をするのでもなく、これらをまとめた情報を、文書ファイルにメモとして残す→メールする→必要に応じて電話で補足説明、という形をとるのが精神的にはもっとも負荷が少ないでしょう。
引継の際は窓口が複数あると五月雨式に同僚から連絡・相談が入ってしまうこともあります。これを防ぐためにも、引継は上司、または上司と相談した上で、業務を掌握できるリーダー格の同僚などに一本化できることが理想です。
A.適応障害に限らず、誰でも急に仕事に穴をあけてしまうことはあります。ある意味で「お互い様」です。復職したら、カバーしてくれた上司・同僚には心から感謝を伝え、職場で徐々に恩返しをしていけばよいのです。引け目を感じすぎると、心が休まらず、治るものも治らなくなってしまいます。
ここで感じる罪悪感は、おそらく適応障害の症状として発現している可能性があります。もちろん、「病気だから仕方ないだろ」と開き直る必要もありませんが、まずは自分自身が健康になることが第一です。必要 以上に落ち込む必要はありません。
A.まず大原則として、窓口を1本に絞ることが望ましいとされます。これは、「船頭多くして船山に上る」となる状態を防ぎ、休職者の心理的負担を軽減することが目的です。基本的には人事担当者や産業保険スタッフが窓口となることが多いでしょう。
しかし、上司として部下の状態を把握することも重要です。人事担当者・産業保険スタッフと連携し、定期的に様子を窺うことは基本的には問題ないでしょう。なお、本人を休ませるためにも、同僚などからは連絡をさせないように厳命するのが望ましいです。
頻度は、ケース・バイ・ケースです。症状が重いときは、コミュニケーションを取ることすらやっとという状態になっている場合もあるからです。最初は1か月に1回程度の連絡からトライし、人事担当者・産業保険スタッフとも連携しながら、2週間に1回程度くらいまで頻度を上げてもよいでしょう。「週に1回」ですとやや相手の負担感が大きいかもしれません。
連絡も、最初はメールなどからはじめ、体調を見て、個人携帯宛のアポを取っての電話やSMS(※)など、徐々に接触の密度を高めていくのがよいでしょう。このとき、「次回はいつ連絡する」ということもお互いに確認しておけると、休職者は安心して休むことができます。なお、アポなしの電話は 「いつ連絡が来るんだろう」という気持ちになって、本人を苦しめます。必ずメールでアポを取ってから、了承の上で電話をするなど相手の心理的負担を想像したコミュニケーションが望ましいと言えます。
(※)特に用件がなく、個人携帯宛のSMSなどで様子伺いをするときは、「様子を伺っただけですので、このメールには返信しなくて大丈夫です(←本当に返信しないで大丈夫です)」などの一言を添えると、安心感を高められます(逆効果かもしれませんが・・・)。
なお、法的には原則として労働を免除されている状態ですので、「労働提供義務」を盾にして報告・連絡・相談を命令することはできません。ただし、就業規則で「休職中に状況を定期的に報告すること」という規定を挿入することはできます。この場合は、在籍社員として、何らかの形で現況を報告する必要がありますので、就業規則に基づいて、人事担当者・産業保険スタッフと連携し、定期的に通院状況や体調の変化などを確認することとなるでしょう(就業規則に記載するレベルになると、会社としても報告体系を何らかの形でフォーマット化、ワークフロー化、システム化している可能性があります)。
A.問題ありません。むしろ、会社との紐帯を保つためにも、手紙などで会社で起こっている全社的な重要情報は積極的に伝えるようにしましょう。なお多くの場合は、人事マターで休職者宛 の情報共有(休職期間中に確認ができない給与明細等の発行や経営メッセージなどを取りまとめ、1か月程度の間隔で郵送するなど)を一括で行っている ケースが多く、上司がそれらの作業を行うことは少ないものと思われます。
A.思われるかもしれませんし、思われないかもしれません。しかし大切なことは、仮にそう思われたところで、休まなければあなたの体調不良は変わりません、ということです。 ですから、基本的には思いたければ勝手に思えばよいのです。「周囲が甘えと思うのが嫌で休みませんでした」という結果として、「もっと体調を崩して再起不能になりました」となっても、 絶対に誰も助けてはくれません。自分自身で、自分の身は守らなければならないのです。周りにどう思われようとも、あなたはあなたでしかありません。
ちなみに、事実として「働き過ぎ」が故に心身を壊しているのですから、「甘え」ではありません。自分自身が「甘えではない」と思えていれば、それでよいのではないでしょうか。
A.はい。「自分のPCにしか入っていないファイルがある」とか、「ブラックボックス化した業務を多数抱えている」、「忙しくて業務報告に挙げられていないグレーな事項がいくつかある」という属人化状態はきわめて危険です。
業務のファイルはこまめに部署共有フォルダにバックアップする、業務の手順書を整備しておく、業務報告はこまめに入力する、グレーな事項で業務報告に残したくない事項は別途メモを残しておく、といったことをしておくだけで、第三者がまさかの時に業務を代行したり、引き継いだりする際の有効な保険となります。
また、日ごろから共有の予定表に業務の詳細予定を1か月ほどは記載しておくとか、todoリストも文書化して残しておくなど、「記録を見える化する」工夫も有効です。
A.まず、多くの会社では就業規則上、長欠・休職の場合は診断書の提出は必須となります(通常、直属の上司経由(※)または人事部あてに直送することが多いです)。出さなくてよい、という扱いをすることはまず一般的ではないでしょう。
診断書は、もっともセンシティブな個人情報ですから、その記載内容は人事労務管理上必要な人だけ(レポートライン上の上司、人事責任者、労務担当者、産業医や企業の委嘱している心理カウンセラーなど)だけが厳重管理の下で共有することが原則です。
個人情報保護の観点から、上司含め診断書記載の情報を知り得たすべての社員は、個人情報の守秘義務が課せられます。したがって休職に入る際に、上司のほうから「どこまでメンバーに伝えてよいか」「伝え方はどうするか」を綿密に確認されることが普通です。この時に、「自分で伝えてよい範囲」を明確にして上司と共有するようにしておきましょう。もし上司からこのような提案がなかった場合は、必ず自分の希望を伝えるようにします(同僚に病名を伏せたい、という希望を伝えることは権利として認められます)。
(※)なお上長経由で診断書を提出するケースであっても、パワハラ・セクハラなどでどうしても上長を経由したくない、という場合は、まず人事担当者などに状況を相談することをお勧めします(状況次第では、人事部長や産業医等への親展扱いで提出することが可能なケースも考えられます)。
A.「個人情報保護法」に定める、最も配慮が必要な「要配慮個人情報」に該当します。雇用管理において、もっとも厳格に管理されるべき情報の1つです。利用目的を明確にし、その目的以外で使用することは厳に慎まなければなりません。例えば「休業理由の確認」のために提出された診断書であれば、それが人事の処遇などで目的外に利用されることは認められません。
A.健康情報として、最も慎重に扱う必要があります。
などが挙げられます。社内で通知すべき人以外に送付してしまったなどは個人情報保護の観点から見て非常に問題があります。信頼関係にもつながりますので、慎重な対処を心がけましょう。
A.人事担当者から休職者向けの書類一式(諸制度についての説明含む)が自宅に郵送される場合がほとんどかと思いますが、状況に応じて、次のことを確認するようにしましょう。
休職してすぐは体調も悪く、すべてを一度に確認することはできないかもしれません。上記はあくまでも概ねこの順番で確認していければ安心という目安ですので、焦らなくても(必ずしもすべてを休職に入るタイミングで把握していなくても)大丈夫です。
A.ケース・バイ・ケースですが、一般的には就業規則上の長欠・休職の規定(抜粋)と、休職中のルール、窓口や連絡方法などが書面で共有されることが多いようです。長欠や休職の期間、復職の手続き、給与や諸手当のルール、休職期間満了時に復職できなかった場合の規定などが記載されていることが多いと思います。
上述していますが、休職してすぐは体調も悪く、特に手続きに関することを一度に把握することは難しいかもしれません。家族の協力を得たり、体調が回復してからでもよいですので、「必要な情報が手元にあるかどうか」は、一度どこかのタイミングで確認できるとよいでしょう。
特に把握しておくべきなのは、連絡窓口・連絡の頻度や方法のルール、復職までの流れ・復職できなかったときのルール、給与や傷病手当金の支払いとルール、社会保険料の支払方法などについてです。少しでも疑問点があれば、労務・人事担当者に確認するようにしましょう。
A.ごく普通です。「いったん、1か月の診断書を出して様子を見る」というのは非常によくあることです。普通の病気やケガですと、「1か月休む」と聞くと、きっかり1か月後に戻ってくるというイメージがあるので健常者から見ると驚くのですが、メンタル要因では特に、1か月程度で復帰できることは極まれで、診断書が複数回更新されるということが普通にあります 。
したがって、メンタルの場合は「いつ戻ってくるかはわからない」「最低でも3か月、長ければ1年半くらい戻ってこないこともある」と思って(また戻ってきてからもしばらくは軽減勤務ですから)基本的には「当面は、いないもの」として考えておいたほうがよいでしょう。
A.「仕事脳」ですと、休暇の期間が未定ということは「あり得ない」ことのように思ってしまい、はっきりと「何か月休む」かが予め分かっていないと不安で休職できない、という悩みは非常によくあります。
しかし、適応障害の寛解の過程には個人差があり、「どのくらい休職するか」を計画することはまず不可能といってよいでしょう。「1か月の休職」という診断書が出ても、それが再延長されるということはいくらでもあります。最初の診断書通りに、ぴったり休んでぴったり復職ということはほぼあり得ません。それくらい、非常に見通しが立てにくい疾患なのです。
この中途半端な状態が不安な場合は、主治医と相談して、一般的なケース(あるいは可能性の高いケース)で仮の見通しを立ててもらうことをお勧めします。例えば「3か月くらいは休む人が多い」ということであれば、会社には「3か月くらいは休むケースが多い」と予め伝えておいたうえで、予定が変わる可能性があること、診断書が延長されたらすぐに連絡することなどを上司や会社の担当者と共有しておくとよいでしょう。
多くの場合、会社はたくさんの事例を持っています。「最初の診断書通りに戻ってくる」とは普通、思っていませんので、その点は安心しましょう。大切なのは、「いつ戻ってくるか」という見通しの正確さではなく、「今どのような状況なのか」を都度、継続的に、しっかりと会社と共有することです。
A.このQ&Aでも記載している通り、「就業規則通りに働けること」が復職の大原則です。しかしながら病気が治るまでの過程は個人差が大きく、「休職期間はこのくらいです」と一概には言えません。最初から正確な予測をすることはほぼ無理だと言ってもよいでしょう。この「不確定な状態」を「抱えながら生きる」ことが難しくなるのも、適応障害特有の認知の歪みによって起こっている可能性もあります。まずは「メンタル疾患は、治癒の見通しがなかなか立ちにくいものだ」という事実を受け容れることが重要です。
ちなみになぜ時期が明確にできないかというと、仕事に必要な体力・気力には、個人差もあれば職場の環境の差もあり、変数があまりにも多すぎるからだといえるでしょう。
特に長期にわたって休職する場合、自分が思っている以上に体力・気力が落ちていることがほとんどです(仮にその期間毎日運動をしていたとしても、です)。ただ仕事をするだけでもしんどいのに、これに加えて通勤、さらに復職者特有の気遣いなども必要になってきます。「仕事に必要な体力・気力がどれくらいあればよいのか」は、定量化がきわめて難しく、方程式のように定式化するのが極めて困難なのです。
A.適応障害による「休み方」はかっちりと理論化されていて、一般的には3つの時期に分けるようです。「とにかく休む時期」→「少しずつ身体を動かす時期」→「復職の準備をする時期」というようにです。
詳しくは「ストレスで休養するときの休み方」をまとめるに記載しましたので、ぜひご参照ください。 ここでは、それぞれの時期の特徴と休み方、次のステップに進む目安についてまとめています。
私は、最初の「とにかく休む時期」と、「少しずつ身体を動かす時期」の2つの時期を徹底的に休むことが極めて重要だと感じました。心身の健康を回復させる(人間性を取り戻す)のは「適切に休むこと」によってのみ実現します。基本的には、「本当に好きなことをして過ごす」のでよいと思います。今はリモートワークや変則勤務も普通になりましたから、平日にブラブラしていても世間の目はまったく気になりません。 ここまで会社に貢献して、さらに税金も保険料も払ってきたわけですから、ここはある意味で「権利」と割り切って、大手を振って休みましょう!!
休養がしっかり取れない(身体は自宅なのに、心が会社にある)と予後は不良になりがちと言われます。骨折した時はギプスを巻いてそこを動かさないように「絶対安静」にするのと同じで、適応障害は「心の骨折」だと思って、まずは「心を動かさず、休める」ことに徹しましょう。
A.適応障害は、論理思考をする「脳」が、ともすれば非論理的にみえる「心身」の声に蓋をしたまま「無理」を重ね、やがて心身が正常な活動をストップしてしまった状態と捉えることができます。適応障害で発現する抑うつ症状は、心と身体の悲鳴であるといえるでしょう。この、文字通りの「心の声」を無視したままでいるわけにはいきません。
そこで、「抑うつ症状」そのものを無理に治そうとするのではなく、その症状にまずは向き合い(声を聞き)、いわば「どっぷり浸かる」ことが「とにかく休む」ことにおける一番大切なことになるのです。ともすると、不快な抑うつ症状は社会復帰のためにも「治さなければならない」と思ってしまいがちなのですが、そう思うこと自体が、脳が心身を支配し、失感情と失体感から回復できていない証拠となるのです。
「症状に向き合う」とは、例えば「起き上がれない」のならば「起き上がれない状態のままでいる」、「誰とも話したくない」のであれば「誰とも話さないままでいる」ことに、「浸かる」ことです。いったん、「正常であらねばならぬ」ということをあきらめるといってもよいです。そもそも、「ねばならない」というのは、すべて脳が生み出した「すべき思考」とでもいうべき「義務感」です。しかし、繰り返しになりますが、まずやることは心身の声に耳を傾け、まず心身が本心から「したい」と訴えていることをすることです。「心身の声を聞く時間」を、たっぷりと取ることです。そしてそれはおそらく、「何も有意義なことをしない時間」を確保する、ということになるでしょう。この「何も有意義なことをしない時間」こそが、「とにかく休む」の本体です。
心の底から「何も有意義なことをしない」ことに慣れてくると、本心が顔をのぞかせてきます。最初は脳に押さえつけられることにおびえていた心身が、「本当は仕事ばかりではなくて、家族と過ごしたかったんだ」とか、「夜くらいは自分の好きなことをする時間に充てたかったんだ」とか、「上司に嫌われたくない一心でどんな仕事でも引き受けてきたけれど、本当はもう限界だったんだ」とか、「出世することだけが目的になっていたけれど、実はこの仕事自体にはあまり魅力を感じていなかったんだ」など、びっくりするほど饒舌に「本音」を語ってくれるようになります。今までの働き方と正反対の本音に戸惑いますが、これこそが「無理」の正体です。「そうか、そうだったんだね。今まで我慢して偉かったね、よく頑張ったね」と、勇気を出して本音を語った心身をほめてあげましょう。「本当はもっと休職していたいんだ」とか、「このままずっと休んでいたいな」など、休職前では考えられなかったような「本音」も出てきますが、否定してはいけません。それが、偽らざる「今の自分」だからです。
このように心身がリラックスしてきて、心身が「本音」を語るようになってしばらくすると、必ずすることがない自分に気づいて、「退屈」になってきます。そして「退屈」になると、自ずと「行動」できるようになってきます。「私はそろそろ動かなければならない」でも、「私はそろそろ動いたほうがよい」でもなく、「私はそろそろ動きたい」という自発的な行動欲求が芽生えてくるのです。休職中に何らかの行動を始めるのは、この「~したい」という気持ちが生まれてきてからでも十分なのです。
「何もしない」時間は、いわば「充電」の時間です。せっかく充電しているというのに、その横で、充電以上の「放電」をしているようでは、いつまでたっても寛解することはありません。徹底的に休む。それは、「何も有意義なことをしない」ということなのです。
A.何よりも自分にとって今、適切な休みを取ることです。適応障害で休職してすぐは、「気分転換」のために外出などのアクティビティは疲れてしまうだけで却って逆効果です。上述の通り、とにかく「何もしない」という「電源オフ」に近い休み方が必要ということです。
休むというのは実はスキルで、自分にとって適時適切な「休み方」を知っている人は、病みにくいということが言えるかもしれません。「体調管理も仕事の内」なんていいますが、これは「休み方もスキルである」ということをある意味で表していると思います。
まずは、自分がどんな休みが必要か、ということを自覚することが重要です。単に「気分転換」や「リフレッシュ」が必要なのか、それとも(適応障害の場合はしばしば)抜本的な「オフ」が必要なのか。往々にして、この「休みが必要であるという自覚」がないままに、ずるずると仕事を無理して続けることで、適応障害は悪化してしまいます。まずは「休みが必要なこと」をしっかりと自覚すること(認めなくなくても、勇気をもって認めること)が、実は「休み」の第一歩であることを心得たいものです。
そのうえで、「しっかりと必要な休みを取れる」環境を整える必要があります。半日や1日有休をとれば解消するのか。休職が必要なのか。ここの見極めも大切になってきます。本当は数か月単位の電源オフが必要な状態なのに、中途半端に有休と出勤を繰り返す・・・・なんていう状態では、休めるものも休めないのです。
休みが必要な状態であると自分自身で自覚すること(※)。休めるように環境を整えること、そして、自分自身が適切な休みを取れるようにすること―これが「休む」ことの本質であり、外してはいけないポイントなのです。
(※)「休めるわけがない」と主張する人に限って、自分が本当は「休みが必要である」と自覚できていないということは、このページでも各所で再三、記載しています。チェックリストも複数ご用意していますので、ぜひ、「休みが必要である」という自覚を持つ(もっていないことを意識する)ことからスタートいただくことを強くお勧めします。かつての自分がそうであったので、猶更強く主張したいのです。
A.何よりも休むことで安心感がある休みです。有休やいつもの土日では「会社の電話が気になってしかたがない」と、心がざわついてしまうのであれば、それは「安心感のある休み」とは到底、言えないでしょう。休職することではじめて、「誰からも電話がかかってこない」安心感が得られ、はじめて「心の底から休めた」という感想を持つ人は少なくないと思います。「何の心配もせずに、ただただ休むことに専念できる安心感」というのは、「適切な休み」の前提条件と言えそうです。
そのうえで、「自分の欲求と向き合う」とよいでしょう。「寝ていたい」のか、「散歩で気分転換したい」のか。「少し人混みに紛れていたい」のか、「一人で引きこもりたい」のか。自分の心に素直に耳を傾けて、「これをすると心が休まる」という状態に身を委ねましょう。これが、「自分にとって適切な休み」です。
A.「自分の欲求と向き合うことが可能な限り無制限にできる」状態に身を置くこと、です。もう少し見方を変えてみると、「他者の欲求」に応答する必要がほぼない場所に身を置くことが必要です。このページで扱っている適応障害においては、もっとも酷薄な「他者の欲求」が発現する環境は「職場」でしょうから、そういう意味では「休職」というのは、「休めるように環境を整える」上では最適なソリューションということが言えます。
もっとも、様々な事情から家庭で「身の置きどころがない」とか、実家暮らしで「家族の理解が不足している」というケースで、休職したところで「思うように休めない」という場合もあるでしょう。一定期間ウイークリーマンションで生活する、日中は漫画喫茶の個室に引きこもる、など「他者の要求」をほぼ受けない場所に一時的に避難することが有効な場合もあり得ます。「休める環境がない」という場合は余り無理をせず(変な環境の変え方をするのも治療に逆効果の場合もあり得るため)、主治医などとも相談してみるのもよいかもしれません。
A.まずはとにかく徹底的に「何もしないこと」が、やっておいたほうがよいことです。そのうえで身体が動くようになってきたら、やるべきは何と言っても、「五感を取り戻す」ことだと思います。もう少し平たく言うと、周囲の刺激に対して「感動する」経験を取り戻すことだと思います。『ドラえもん』で、なんでも初めての新鮮な気持ちになることのできる「ハジメテン」という道具がありますが、まさにこの「新鮮な気持ち」を取り戻すのです。
朝日がまぶしいな、空が青いな、緑がきれいだな、小鳥が鳴いているな、夕日が美しいな、月が明るいな、このごはん甘くておいしいな、この水は胃に沁み込むな-忙しくて 文字通り「心」を「失くして」いたときには気づかなかった様々な「身体の感覚」を取り戻すということです。
適応障害は、日々のストレスで感情が麻痺して、自分の身体が感じている様々なサインに気づくこともできなくなってしまった(失体感状態)にあると言えます。繰り返しになりますが、まずはとにかく動かずにじっとして、動けるようになるまで最低限の行動(「寝る」など)をして雌伏の時を過ごしましょう。身体が少し動くようになってきたら、ぜひともこの「失体感状態」を解消する-すなわち、「人間らしい体感覚、感情を取り戻す」ことに専念するのです。これは、ストレスでしわくちゃになった「心の折り紙」の皺を、少しずつ手で伸ばすような作業と言ってもよいでしょう。
以下、例示してみますので参考になさってみてください。
A.治療の大前提は「休養(ストレス源から離れる)」「服薬(脳内のセロトニン等を増やす)」「認知行動療法(考え方を変える)」ですが、日常生活においてもできることがあります。体調の回復をみて、次のステップを踏んで回復を目指していきましょう。
A.返信できる元気があれば、してもよいでしょう。しかし、返信することを悩むくらい体調が悪ければ、無理に返信する必要はないでしょう。相手も返信が来ないことを半ば織り込んでメールをしているはずです。 なおこのご質問に対する直接のお答えとしては、「返信すべきでしょうか」と聞かれている時点で、返信が負担ということでしょうから、「返信しなくてよい」が回答になるかと思います。
A.仲が良い同僚には、メールの1本でも送りたくなる気持ちはよく分かります。しかし、1つの返信で何時間も悩んでしまうほど、休職者の心が病んでいる可能性もあります。休職中は原則として「仕事のことを思い出させない」ことが最重要です。よほどの緊急が発生したとき以外は、原則として何も連絡を取らないようにしましょう。それが、むしろ「やさしさ」です。
A.最近はテレワークのおかげで、大の大人が家にいてもそれほど不自然な状況ではなくなりました。また、世の中には「平日休み」の仕事もごまんとあります。都市部であれば、「そういう人もいるよね」で特に問題なく片づけられるわけですが・・・地方ではそうもいかないこともありますよね。
周囲の目が気になるようであれば、無理に外出したり、変にカミングアウトしたりしなくてもよいと思います。例えば通常の通勤時間と同じ時間にスーツを着て外出し、生活圏とは少し離れた「個」が目立ちにくい場所(スーパー銭湯、大きな町のショッピングモール、隣町の図書館、個室の漫画喫茶など)で一人静かに時間を過ごすのも一手でしょう。
A.はい。「適応障害になりやすい」性格類型があるのと同様、「休職が長引きやすい」性格類型も存在します。例えば、一般的には以下のような性格が当てはまります。「適応障害になりやすい」性格類型とほぼイコールと捉えてよいでしょう。当てはまる方は注意(否定ではなく、特性を理解した上で過ごす ということ)が必要です。
A.個人差があると思いますが、とにかく「頭から仕事のことをきれいさっぱり忘れて、違う脳の使い方をする」ということに「徹すること」が大切だと思います。違う脳の使い方をしていると、脳が覿面に休まってきます。脳が休まってくると、日々の物事に「発見」や「感動」することができるようになり、次の行動の活力につながってきます。私の場合は、身体が動くようになって、少し「ヒマだな」「動こうかな」と思ったタイミングで、次のようなことをしました。
○寺社巡り(週に1~2回)
近所や、少し遠出をして、神社やお寺に参拝しました。「何かお願いごとをする」のではなく、また徒に「御朱印を集める」ことに躍起になるのでもなく、ただただ無心で祈り、
杜の中で静かに感謝を捧げることで、心に平穏が訪れます。
○電動自転車でサイクリング(週に1~2回)
電動自転車は、坂道も疲れずに走行できるので、自然と行動距離が広がります。近場だけでなく、電車で遠出をして駅周辺のレンタサイクルを借りてみるというのも景色が変わってお勧めです。
○スーパー銭湯巡り(週に1回)
最近は岩盤浴や天然温泉もついているスーパー銭湯も増えてきました。身体を芯まで温めることで血流も増え、心身をリラックスさせることができます。空いている平日ならば人混みのストレスもありません。岩盤浴の汗をシャワーで流したら、高濃度炭酸泉にゆっくり浸かって、露天風呂で旅行気分。風呂上がりにマッサージ機で全身をほぐしたら、さっぱりした天ぷらそばでも食べてお腹を満たす。昼下がり、リラクゼーションルームで無糖炭酸水でも飲みながら雑誌を読んでワイドショーでもボーっと眺めていたらいつの間にかうたた寝をしていた・・・なんていうのが最高の過ごし方です。あとどうでもいいのですが、肌荒れしていた背中がツルッツルになりました。
○美術館・博物館・資料館・展望台巡り(月に2~3回)
普段はじっくり通うことのできない文化施設を巡るのもお勧めです。仕事漬けで鈍り切った感性を刺激し、新たな発見や知的興奮を得るのに最適なアクティビティです。平日ならばよりゆったりした時が流れていますから、自分のペースで心行くまで鑑賞ができます。ミュージアムショップも空いているのでついつい見入ってしまいます。
○漫画喫茶巡り(週に1回)
できれば完全個室タイプの漫画喫茶に半日籠って、敢えて普段は読まないような、「出会ったことのないジャンルの漫画」を手にとって、一気読みするのも一興です。「自分の知らなかった世界」に手軽に浸ることができます。
○読書(毎日)
脳が休まってくると、まとまった本を集中して読むことができるようになってきます。できれば仕事とは無関係のジャンルの本、普段は買わないような種類の本などを手に取り、読書の世界にどっぷりと入り込みましょう。
風景の写真集のようなものも感性が刺激されて、お勧めです。普段はなかなかそのようなものを鑑賞する時間はありませんからね。
○音楽(毎日)
お気に入りの音楽を、1日中iPodで聞きまくるということをしました。これも、実はなかなか時間が取れないことの1つですね。すっきりします。
○どうぶつの森(急性期に、ほぼ毎日)
ここぞとばかりに、島の大改造をしました。どっぷりと「自分の考えた理想の島、家」を作れるので、箱庭療法的な精神安定効果がある-と、プレイしていて本気で思いました。
シムシティやA列車で行こうなどでも同様の効果があるかもしれませんね。
【解説】
これらの活動は、いずれも心身のバランスを整えるのに大いに活かされた活動だったと振り返って思います。
まず寺社巡りは、「お願い事をするために詣でる」のでも、「一心不乱に御朱印帳を集めるために巡る」のでもなく、ただただ無心で感謝の心を捧げるというところが重要かと思います。邪心や欲を持たないことを意識することが何よりの「薬」にもなったと思います。
電動自転車も手軽な運動として最適でした。ジョギングというのもよくメンタルダウンした場合に勧められがちな運動なのですが、中途半端に体調が悪いときは却って疲れてしまったり、継続できなかったりと万人にお勧めできるかというとちょっと微妙なところがあります(それならば、散歩のほうがよいでしょう)。サイクリングならばジョギングよりも疲れずに長距離を移動できますし、電車と組み合わせることでさらに行動範囲が広がりますので気分転換にはもってこいのアクティビティだと言えるでしょう。
スーパー銭湯(風呂、サウナ、岩盤浴など)は、心身のバランスを整えるのにお勧めの活動です。まず身体を温めるので血流が改善し、血行が良くなります。血流がよくなると、身体の凝りもほぐれ、自然と脳のはたらきもよくなります。抑うつは一定程度、ストレスで脳の血流が滞ることにも原因があるでしょうから、「お風呂に入る」というのは極めて簡便な抑うつ脱出法の1つであるといえるでしょう。最近、原料高で「風呂に入浴しない若者」が増えていると聞きます(シャワーで済ませる)。ただ、ある程度湯船につかったほうが憂鬱な気分を晴らせるのではないかな、とも思うわけです。もし適応障害のような症状に悩まされており、「しばらくシャワーしか浴びていない」と思い当たるような方がいらっしゃれば、ぜひ「湯船につかる」ということを試してみてはいかがでしょうか。 余談ですが、精神症状でも焦燥感や不安感、イライラが強いときはぬるめのお風呂が、抑うつ気分が強くやる気が起きないときは熱めのお風呂が適していると言います。それぞれ副交感神経、交感神経を活性化させるためですね。ご参考までに。
美術館など文化施設巡りは、「心の栄養」を補給するのに至適のアクティビティだと言えます。仕事漬けで感性がすり減っていると、思いもしなかった芸術作品や展示品を見て感動することすら忘れてしまっていることに気づきます。休日はどうしても混んでいるようなところでも、平日はガラガラということはよくあります(ただし、タイミングを間違えると修学旅行生でごった返していることもあるので注意が必要です)。ゆったりと芸術の世界に身を投じて、心身をデトックスしてしまいましょう。
漫画喫茶もよかったですね。ポイントは「普段読まないようなジャンル」に挑戦するということと、「気になっていたが、これまで様々な理由によって手に取ってこなかった漫画」を読んでみることでしょうか。新たな発見がありますし、世界が確実に広がります。私の場合はここで『からかい上手の高木さん』に出逢い、その日のうちにAmazonで新刊 ですべて大人買いしていますからね。その後は沼にハマりましたからね。そういう出会いもあります。
読書。適応障害になると、最初のうちは脳が疲弊しきっているので文章が頭に入ってこなくなります。漫画喫茶で漫画を通読できるようになって初めて、まとまって本が読める-そんな感じでしょうか。本はかなり好きなほうですが、それでも休職してから1~2か月の間は一切読書ができませんでしたからね。それだけ脳が狂ってしまったということです。ビジネス書・・・というよりは、普段は読まないようなジャンルの本に出会うことで感性も刺激されたように思います。
音楽。私の場合は、歴代の「プリキュア」(休職中)と「高木さん」(復職後)の曲を聞きまくっていました。冷静に考えると、適応障害で休職して「プリキュア」の曲を聞きながら町を徘徊しているという非常にヤバい精神状態に一時期陥ったわけですが、あの時はそれで精一杯だったので仕方ない。ともかく、プリキュアと高木さんのおかげで命拾いしたようなものです。彼女たちには感謝してもしきれません。 本当に。
どうぶつの森。休職したてのときにやりまくっていました。箱庭療法的な精神安定効果がありそうなことは私が実体験で実証しています。ただ今思うと行動がおかしくて、自宅(ゲームの中のですよ)の中の家財道具を全部うっぱらって、「空っぽの部屋」にして遊んでいたんですよね・・・少し調子がよくなってから造り直しましたが・・・・あれは今思うと本当にヤバかったんだな、と思います(下でも書いています)。
A.休職直後は、まったく身体が動きませんでした。 初日は「一度リセットしよう」と、遠くのスーパー銭湯に行ってじっとしていましたが、とにかく肩凝りが酷い。体調も悪い。一番体調が酷かったのが休職2日目です。泥のように眠るとはまさにこのことで、1日中、ベッドから起き上がる気力もなくただ只管寝続けていた記憶があります。それからは、しばらくはテレビですら見る気力も起こらず、当然活字も入ってきませんから、漫画もダメ。ボーっとしていることしかできない状態が続きました。 余りにも体調が変なので、翌日、重たい体を無理やり起こしてメンタルクリニックに行きましたね(午前はとても行けず、結局午後に・・・)。
このころは、「スーパー銭湯+岩盤浴」で1日中ただただボーっとしているのと、「どうぶつの森」を延々としているのと、耳では「プリキュア」の音楽をエンドレスで流しているだけで精一杯でした。思考というものがないのです。「どうぶつの森」なんかは、せっかくいろいろと集めた自宅の中をいったん、全部空っぽにする(たぬきちのお店で全部売ってしまう)という愚挙を犯していました。心が 病み過ぎて、バーチャルで断捨離をしてしまうくらい(リアルでそれをやる気力はない)頭が狂っていたようです。
1か月くらいして徐々に活動できるようになってくると、もともと大好きだった神社やお寺を巡ったり、サイクリングをしたり、博物館や美術館を回ったり-といった外出を頻繁にするようになりました。身体を動かすと脳もはたらいてきて、ようやく漫画や読書もそこそこできるようになってきます。中盤からは、個室の漫画喫茶で半日読んだことのないジャンルの漫画を読み更ける、といったこともよくやっていました。 相変わらず、週1はスーパー銭湯で岩盤浴。今思えば、「身体を温めた」ことはよかったのかもしれません。
そして復職直前になると、「文章を書く」とか、「ジョギングをする」みたいなことも普通にできるようになってきます。こうなるまでに3か月かかりました。
振り返ってみると、適応障害というのは、考えようによっては頭と心がおかしくなるだけでなく、結局身体にもダメージがある(そもそも、動けない)大病なんだな、と分かります。働くだけでこんなことになってしまうなんて、なんとまあ、恐ろしいことです。
A.以下のような効能があるとされています。
A.以下のような効能があるとされています。
(※)低温のサウナの場合は、反対に副交感神経が優位となり、リラックス効果(鎮静効果)が得られます。不安感や焦燥感などで昂った神経を抑えることができるほか、快眠効果が得られます。
(※)急激な温度変化や血圧の変化は、心臓機能などに予期せぬ負担を掛ける場合があります。健康に不安のある場合は、必ず医師に相談してから実践しましょう。
A.以下のような効能があるとされています。
A.はい。昔から「冷えは万病のもと」と言いました。身体を温めることで、体調もととのうということですね。
実際、細胞を温めることでヒートショックプロテイン(HSP)と呼ばれるタンパク質が生成され、そのタンパク質が損傷を受けた細胞の修復を担っていることが知られています。疲労やストレスでも細胞は傷つきますが、HSPはその修復を行ってくれるのです。「身体を温めること」そのものが、細胞の修復に寄与するということですね。
A.治療や回復を妨げるすべての行為です。
第一に、「義務感」に駆られてすることすべてです。「本当はやりたくないのに、仕方なくやる」という行為が一番よくありません。運動したくないのに運動したほうがいいと思って運動する、せっかくの休みで手持無沙汰だから資格の勉強でもしないといけないと思って勉強する、などです。本当にしたければすればよいし、したくなければしない、まずは一度、自分の気持ちに正直になることが一番です。
あとは、「会社のメールを見る」といった、会社の仕事を思い出す行為も絶対NGです。会社のものからはいったん、徹底的に離れましょう。 中途半端に仕事のメールチェックをしたり、同僚と連絡を取り合うといったことを続けていると、治るものも治らなくなります。
このほか、主治医の指示に反する行為(薬を正しく飲まない、再診に出向かないなど)、主治医に正しく症状を伝えない行為(本当は眠れていないのに「眠れています」と虚偽の報告をするなど)は治療の方向性を大きくゆがめますので厳禁です。
このほか、当然ながら「過度の夜更かし」だの「連日連夜お酒を飲みまくる」といった不健康なことを繰り返したり、体調が十分に回復していないのに「トライアスロン大会に出場する」「海外にヒッチハイク旅行に出かける」など、極度に身体を疲れさせるアクティビティを重ねることは、予後を著しく不良にします。
ちなみに、よく「職場の人に見つかると心象が悪い」とか言って「旅行はダメ」などとピンポイントでNGを出すような言葉も見かけますが、職場の人がどう思おうとまったく関係ありません。体調が回復してきており、それが心身のリフレッシュになるのであれば、旅行に行きたければ自由に行けばいいのではないか、と思います(私自身は、「リフレッシュ」よりも「疲労」の方が大きくなると思って旅行には行きませんでしたが)。
A.一番は「会社に関連することすべて」です。とにかく「仕事」を想起させるものからは完全に離れます。この時期(概ね1か月くらい)を徹底的に休めるかどうかで、予後が大きく変わってくるといっても過言ではありません。ここを十分に休めると、回復も比較的早く、復職後も再発をしにくくなるとされています。
このほか、急性期においては、できるだけ「適応障害」や「うつ病」に関する書籍やネットの情報を検索することは避けましょう。「休む」とは、要するに「考えない」ということなのですが、ついつい「空白」を埋めるために「自分の病気」のことばかりを考えてしま いがちで、こうなると自分の症状に必要以上に意識が集中してしまい、却って症状がリフレイン(反復)することになるからです。できる限り、「検索する」以外のこと(とにかく寝る 、読書など別のことをするなど)に徹することをお勧めします。
また、しばらくニュースなどに触れないこともお勧めします。世の中には悲惨なニュース、センセーショナルな話題、心に突き刺さるショッキングな情報があふれています。マスメディアはそういったトピックスを、増幅して拡散する装置です。ネットメディアはその情報を更に「個人化」して、ピンポイントに手元に届ける装置と言えるでしょう。元気な時は「対岸の火事」で、野次馬的に眺めていられたものが、メンタルが弱っているときは「自分ゴト」になってしまうことが往々にしてあります。「情報」と「自分」が同一化してしまい、 ショッキングな話題にますますメンタルが弱ってしまうのです。本来は「天下国家のこと」「世間のこと」は、自分の「今、ここ」とは直接関係ないはずなのですが、休職していると社会との接点が基本的には絶たれてしまうため、メディアの情報がそのまま、自分の「今、ここ」と、 逆説的ですが却って直結しやすくなるのです。 「部屋に引きこもっている」と、どうしても「世界」と「自分」がバーチャルに疑似的に直結してしまい、あたかも世界が自分につながっている(本当は数十億分の一の存在でしかないにも関わらず・・)錯覚に陥ってしまうのですね。
こうしてみると、休職によって社会の接点が絶たれた状態で、「意識の空白」ができやすいときに、「情報を意識的に入れない」ということが大切だ、ということが分かります。実はこれを悪用するのがカルト集団だったりします。すなわち、「弱った心」×「社会と隔絶」という状態にあるときに、何か「情報」を入れると、その情報に、自己が取り込まれやすくなる、ということですね。 悪い人たちは、そこに付け込むわけです。-ですから、特に弱っているときには「自己啓発」など自分を「改造」なり「改革」するエネルギーを持ったものに関連する物事に、安易に近づかないことも重要かと思います。
A.突然、ぽっかりと時間が空く休職期間。将来不安も含めて、「何かをしなくては」と焦燥感からこのような志を休職初期に持つ人は多いと言います。しかし、病気が長引くだけなのでやめたほうがよいのと、そもそも休職期間中に勉強を継続することはかなり困難でしょう。なぜなら、脳がダメージを受けてしまっているからです。
第一に、「勉強」「資格試験」といったアクションは、脳を酷使します。試験のプレッシャーが新たなストレスにもなる可能性があります。休職中に必要なのは「休養」であって、「勉強」ではありません。休養によってしっかり壊れてしまった脳を休ませなければ、復職に必要なパフォーマンスを取り戻すのに、余計に時間がかかってしまうでしょう。これでは本末転倒です。
またそもそも、心身が休養を必要としていますので、途中で「あ、無理だ」と気づくことになるはずです。自分が想像している以上に心身はダメージを追っているので、おとなしく休養することが最適解である・・・ということに、休めば休むほど気づくことになるでしょう。そして、そもそも「何かをしなくては落ち着かない」という気分になること自体が、適応障害の症状であることも理解できるようになるはずです。
A.たぶん、病気が長引くのでやめたほうがいいと思います。全部とは言いませんが、近年の意識高い系のメディア(自己啓発系の書籍、Webサイト、YouTube含む)は、結論として「コスパ」と「自己責任」というのを言葉を変えて言っているとある面では結論づけられます。「病気で休んでいる状態」というのは、まさに意識高い系メディアが言うところの「コスパが悪い」かつ、「自己責任」の一言で切って捨てられることになりますから、そういうコトバに触れるだけで、かなりしんどいと思いますよ。
社会は、「コスパ」や「自己責任」だけで片づけられない物事がたくさんあります。多くの偶然や縁が重なって社会が構成されているという視野に立つと、「適応障害で苦しんでいるAさん」は、「明日の私」だったかもしれないという「他者への想像力」は、"バランスよく"生きていく上で必要不可欠なな概念だといえるでしょう。「コスパ」と「自己責任」(≒効率よくカネを稼ぐことがすべて)というある種の露悪的な論調からは、こういう、自分が社会に(偶然と縁で)生かされているという謙虚さがみられません。すべては「自分の力」という、ある種の幼児的自己万能感すら感じ取れます。しかもこの論調は、常に「勝ち組」でいなければらない(いつか見捨てられるかもしれない)という恐怖と闘い続けることを強いるロジックになっていることにお気づきでしょうか? 常にそんな「転落の恐怖」と闘っているタワーオブテラーのような人生、本当に幸せだといえるのでしょうか?
もちろん、「効率よく稼ぐ」「無駄を省く」というのは重要です。効率性の追求はある種の「正しさ」でもあります。しかし、その「正しさ」だけが正しさではないことへの言及がなされていないところに、「コスパ」「自己責任」の意識高い系メディアの視野の狭さ、もっというと「危うさ」が感じられるのです。また、そもそも過激な論調でフォロワーを増やして、より"効率よく稼げる"オンラインサロンなどの「サブスクビジネス」なり「情報商材のネットワークビジネス」なりに引き込むことがこうしたメディアの真の目的というところもありますから(全部が全部とはいっていませんよ、念のため)、囲い込まれないようによくよく注意したいものです。
ともかく、ただでさえ脳の働きが弱っているときに、あまり刺激的なことはしないほうがよいと思います。
A.体調がある程度よくなるまでは、「SNS断ち」をすることをお勧めします。他人の自己顕示欲のストレートな攻撃、羨望を集めるようなセレブ生活を見ていると、そういうキラキラした正解と、「休んでいる自分」「社会から隔絶された自分」とのギャップの大きさにやられてしまい、他者を羨み、妬み、嫉み、やっかみ、結局のところ自分にその憎悪の念が還ってくることになるからです。
具体的には、「LINEの通知をオフにする(あるいは、チェック時間を決めて見る)」、「YouTubeのチャンネル登録リストをいったん整理する (実際に消してみると、生活が変わらないことに気づきます)」、「X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTokなどをしばらく見ない (あるいは、チェック時間を決めて見る)」といったところでしょうか。
体調が悪いときに、わざわざ他人からの「どうだうらやましいだろう」という自慢大会を見にいく必要はありません。ただひたすら、自分の心が回復するのを静かに待ちましょう。
A.ストレス源から離れて十分に休養を取り、正しい服薬によって症状を抑えることは必須です。この上で、心身の状態がよくなってきたら、復職に向けてリハビリを進めていきましょう。以下の取り組みを行うことがお勧めされます。
A.ただやみくもに振り返るというよりは、例えば次のようなプロセスで整理していくと体系的に自分の認知傾向を捉えることが可能です。また、振り返りプロセスを経ることで、復職の準備にもつなげることが可能です。
症状がさらに回復してきたころには、次にような振り返りもしておけると、そのまま「産業医面談」などでも活用することができます。
A.特に休職して最初のうち(2週間程度)は、とにかく体調が悪く、気分も塞ぎ、「何もしたくない」という状態が続くことが多いでしょう。これはこれまでの緊張感や疲労から解放されたことによる現象ですので、気にする必要はありません。
少し元気になってきたら、朝日を浴びる、日中は10分でも外にでて散歩をしてみる、スーパー銭湯に行く、図書館で仕事と関係のない書籍や軽めの雑誌を読んでみる、個室の漫画喫茶などで自由気ままに過ごす、など負荷が軽く、人とそれほど接する必要もない気分転換を気軽に試してみるとよいでしょう。
もし、治療を開始して(しっかり休養して)1か月程度経っても「少しも気分が晴れない」「良化しているように思えない」ということが続くようでしたら、主治医と相談することをお勧めします。
A.気分転換には、2種類のタイプがあります。「静的」なものと、「動的」なものです。「静的」なものは、芸術鑑賞、森林浴、読書など、身体の大きな動きをあまり必要としないもの、「動的」なものはスポーツ全般、旅行など、身体の大きな動きが発生するもの、と大まかに分けることができるでしょう。
それぞれ好みがあるので、「静的だからよい」とか、「動的だからだめ」というものではありません。ただし、一般論として、「動的」なものは肉体的な疲労を伴うことが多いですから、適応障害を発症してすぐのいわゆる「急性期」にあまり動的なアクティビティに偏って気分転換をしてしまうと、心身ともに「余計に疲弊してしまう」ということがあります。休む直前、休職してすぐなどは、できるだけ「静的」な気分転換に努め、徐々に身体が動かせるようになってから、「動的」なアクティビティを取り入れたほうがよいでしょう。
A.そもそも「他人がいる環境」にいることがまだ難しい、あるいは「長時間同じ場所にいることがつらい」ということであれば、まだ十分に症状が回復していない可能性があります。積極的に外出すべき時期なのかどうかは、主治医とよく相談することをお勧めします。
なお、「図書館に通う」こと自体は、当然ながら適応障害を治すための必要条件ではありません。「図書館通いがよい」からといって「図書館に通わなければ治らない」と曲解することは避けましょう(カフェでも、公園でも、漫画喫茶でも、1日の一定時間、「外出すること」そのものに意味があると思いましょう)。
A.そもそもアルコールはダウナー系の"薬物"なので、メンタルが弱っているときに飲むと、余計に「落ち込み」や「焦燥感」を刺激します。また、寝つきが浅くなることから睡眠そのものにも悪影響を及ぼします。「飲めなくなる」というより、「わざわざ飲まないほうが、予後もよい」というところでしょう。
ただし、寝酒で睡眠が浅くなる、深酒をする、不安を紛らわすためにアルコールに依存する、といったことにならないような、「たしなむ程度」であれば、気分転換にはなるので「別に構わない」とする見解もあります。かと思えば、アルコールそのものが気分を下げて症状を悪化させるので「原則ダメ」とする見解も強くあって、結局は「諸説あり」的な感じです。
しかし、いずれにしても抗うつ薬などの副作用を強くしてしまうことは医学的に事実なので、少なくとも積極的には飲まないほうが間違いなく「無難」というところに落ち着くかと思います。 少なくとも痛飲するようなものではないと思っておきましょう。
A.言わずもがなで、非推奨となるでしょう。煙草に含まれるニコチンは交感神経を刺激しますので、心拍数増加・血圧上昇などを引き起こし、自律神経のバランスにも悪影響を及ぼすからです。
A.喫煙者からすると、「イライラしたときに煙草を吸うと頭がすっきりする」とか、「煙草を吸うことで深呼吸になるので、それがストレス解消になるのだ」という見解を疑いなく持たれることでしょう。しかし、実際はストレス解消というよりは、それがニコチン中毒の状態です。
すなわち、喫煙が習慣になると脳がニコチンに依存し、「ニコチンが切れると」脳がニコチンを要求して落ち着かなくなり、イライラするのです。そしてそのイライラは煙草を吸うことで解消(脳がニコチンを補給されて満足した状態です)するため、あたかも今までのイライラやストレスが雲散霧消したように感じるということです。
すなわち、ニコチンが切れること自体が脳にとって深刻なストレスになっていて、煙草を吸うことでニコチン切れのストレスを解消するというマッチポンプ状態になっているだけであり、決して「煙草を吸うことで日常のストレスを解消している」わけではないことに留意したいところです。
ですから、適応障害になるほどの深刻なストレス状態にあっても煙草によってそれに気づくことが遅れる場合もあります。この意味からも、煙草は非推奨といえるでしょう。
A.カフェインには脳を刺激し、覚醒を促す作用があります。一説には日本人の4人に1人くらいはカフェイン過敏であるとも言われていて、体質に合わないカフェイン摂取で体調を崩す(胃腸障害、不安、パニック発作など)こともよく聞かれることです。ストレスが溜まっているが、仕事を頑張ろうと思ってコーヒーや健康ドリンクなどを摂取して、却って体調を崩してしまうというケースもあるのです。
一方でカフェインにはリラックス効果もあり、すっきりして気分がよくなったり、心地よい気持ちになったりする人もいます。こればかりは、個人の体質・体調が影響するということになるでしょう。
しかしいずれにしても、カフェインは薬物です。過剰摂取で頭痛、抑うつ、不安、不眠、胃腸症状(吐き気、下痢)を引き起こします。また依存性があり、日常的に多量に摂取している人は急に摂取をやめると禁断症状として、猛烈な体調不良に襲われることもよく知られています。
したがって、適応障害の人にとってカフェインは、禁忌とまではいわないまでも、症状を悪化させる可能性があるため、体質的に受け付ける人でもあくまで適量をたしなむ、体質的に弱い人はカフェインレスないしはデカフェを心がけるといったことがよいのではないかと思います。
ちなみにカフェインは、コーヒー、栄養ドリンクなどだけでなく、緑茶や烏龍茶、紅茶やコーラなどにも含まれています。1日の摂取量が過剰にならないよう、意識してみるのもよいでしょう。カフェインレスを意識しただけで、不安や不眠、抑うつ症状が軽快したという事例も実際にあるといいます。
A.まずは目の前の病気を治す(寛解させる)ことに専念するのが一番です。一般的に心の病気になると、頭も少し悪くなる(脳の血流が抑制されているので、働きがよわくなる)のが普通です。こういう時にわざわざ脳や心身に負荷をかけても、大抵はよいことがないのです。
まず資格ですが、休職中で時間があるからと言って休養に時間を充てずに「試験勉強」「暗記」など、過度に脳を使う行為をしていては、休まるものも休まりません。大抵は合格へのプレッシャーなどから、余計に体調を悪くしてしまうでしょう。そもそも、「時間があるから何かしなければいけない」と思うこと自体が、適応障害の症状が治っていないのだと疑うべきです。 やるべきことはただ1つ、「頭を休ませること」です。だのに、変に頭を使わないほうがよいでしょう。
また副業ですが、これも危険です。「お金が心配だから」と安易に副業を探し、結果として「ラクに儲けられる」という謳い文句の怪しい情報商材などに手を出してしまい、お金を根こそぎ奪い取られる-などという悲惨な事例は、おそらく枚挙に暇がありません。少し考えれば分かることですが、適応障害で社会から離脱してしまっている状態の人がまともに稼げる状態にあるわけがないのです(だから「休職」しているのです)。 社会生活から離脱するくらい「頭が弱くなっている」ことを自覚し、「まずはちゃんと治そうよ」としか、言いようがありません。そもそも、休職しているのに働くのならば、会社にとってみれば「じゃあうちで早く働けよ」ということになりますからね。
A.大前提として、「うまい話」を赤の他人が教えてくれることは絶対にありません。例えば「○○万円もうかる」のであれば、人に勧めるのではなく、自分自身がやれば良い話だからです。なぜ「うまい話」を人に持ちかけるのかというと、それはその「うまい話」を売ることそのものが、売る人にとって「儲かる」からに他なりません (※)。このスキームさえ理解しておけば、「うまい投資話」などあり得ないと気づくことができるでしょう。
またそもそも、一般庶民は、大口の投資家(機関投資家を含む)と比べて資金力が圧倒的に過小です。ガリバーと小人が闘うようなもので、ましてや休職中の(しかも心が壊れ、頭をやられている)病人が投資をしたところで、巧く行くはずがないのです。例えビギナーズ・ラックがあったとしてもそれだけの話です。下手をすると、骨の髄まで絞り取られることになるでしょう。
ということで、心身の調子が整うまでは、余計なことはせずに、「休養する」ことに専念しましょう。脳の機能が回復してくると、「どうしてこんな儲け話なんかに気を取られていたんだろう・・」と思う時がきっとくるのではないかと思います。
A.焦らずに、「小さなこと」からはじめることをお勧めします。寝起きでいきなりフルマラソンをしたら、危険です。冬場の風呂でいきなり熱湯を浴びるのも危険です。何事も「急」は危険なのです。じっくりと、「できること」からはじめることが心身をベストにしていく秘訣です。 他の項でも書いていますが、ふつうに頭のはたらきがおかしくなっている(弱っている)ことを自覚し、おとなしくするのが吉です。
最初は「毎朝、日の光を浴びる」、「1日1回でもいいから外出して散歩する」など、本当に最低限のことでいいのでちょっとしたルーチンをつくりましょう。いきなり大きなことをしようとしても失敗します。「千里の道も一歩から」です。
なお、漠然と「でかいこと」と思っていて、ある日突然、実際に突拍子もないこと(脈絡もなく突然スポーツカーやタワーマンションを買ってしまう、高額な商品をYouTuberの「爆買い動画」並みに買ってしまう、何日も起き続けているなどの異常行為)を衝動的に実行に移してしまった場合は、「適応障害」や「うつ病」ではなく、「躁うつ病」で操転してしまっている可能性も否めませんので(完全に別の精神疾患です)、すぐに主治医に相談することをお勧めします。
A.あまり大きなことは考えず、静かに休養したほうがよいとは思います。「登録者数」「再生数」「コメント」といった"気にしなければならない数字や言葉"がたくさんある世界で、精神を病んだ状態でうまくいくかというと・・・なかなか厳しいかもしれません。動き出すのは体調が十分に回復してからでよいかと思います。もっとも、参入障壁自体はほとんどない世界ですから、誰が止めるものでもないので「余計なお世話」かとは思いますが・・・。
A.いいえ。あくまで体調優先ですが、無理のない範囲で気の置けない友人と語らいの場を設けることは、よい気分転換になるでしょうし、復職に向けて対人コミュニケーション力を回復するうえでも有効なプロセスだと言えるでしょう。
ただし、「人と会うこと」は、楽しいことではあっても心身に負荷がかかり、疲労するため、症状が悪化する恐れもあります。あまり無茶はせず、療養に専念できる範囲にとどめておくことが肝要です。
A.いいえ。体調が回復してきているようであれば、無理のない範囲で出かけることはよい気分転換になるでしょうし、非日常の世界に身を置くこと自体が、復職に向けて必要な「心の固さ」をほぐすことにもつながります。見方によっては「湯治」とか、「転地療養」の一種とも言えるでしょう。
もっとも、旅行はどんなに楽しくても、普段とは異なる環境やスケジュールによって多少なりとも緊張や興奮はするもので、心身には負荷がかかりやすく、疲労もするため、 無自覚のうちに症状が悪化することも懸念されます。「極端な長距離・長時間旅行は避ける」という部分は意識しておいたほうが無難かと思われます。決して無理は禁物です。
なお、休職中に旅行をしていることを会社や同僚が知ってしまった場合、その行為の価値とは無関係に、心証を悪くするというリスクは常に孕んでいます。むやみにFacebookやTwitter、Instagramなどに「旅行だー!」などと呑気に投稿をすると、誰が見ているか分かりませんので十分注意しましょう。わざわざ自分の評判を落とす必要はないのです( 「壁に耳あり障子に目あり」ですから、裏アカウントも意外とバレている可能性がありますよ)。
A.上述の通り、まずはとにかく「しっかり休む」ことで、エネルギーを回復させましょう。少し身体が動くようになったら、疲れない程度に散歩などからはじめます。さらに元気になってきたら、ジョギングなどの軽めの運動、半日くらい街をブラブラとウォーキングしてみるのもよいでしょう。いつまでも身体も動かさずに鬱々としていると、気分までくさくさしてきます。ストレス「発散」というように、うちに溜まったストレスは適度に放出していったほうがよいといえます。
ところで、直近で「大声を出す」ようなことはありましたか?適応障害になるタイプの人は、気持ちを内側に、内側に閉じ込めてしまう傾向の人が多いように見受けられます。マグマを溜め込めばいつか大爆発するのは必定です。うまくマグマを小出しにしていくのが心の安寧を保つコツといえるでしょう。ここはいっそのこと、心行くまで、叫ぶ(シャウトする)ことをお勧めします。
人それぞれ、得手不得手があるかと思いますが、少し元気ならば、「カラオケ」はどうでしょうか。誰かと行くのではなく、「ひとりカラオケ」でよいでしょう。できるだけ元気な曲を、思い切り大声で唄うのです。唄っているうちにもやもやした気分が晴れるかもしれません。もう1つ大声といえば、遊園地やテーマパークの「絶叫マシーン」もよいでしょう。例えば、東京ディズニーランド(R)の「ビッグサンダーマウンテン」「スプラッシュマウンテン」、東京ディズニーシー(R)の「タワーオブテラー」などは、周りに気兼ねなく(周りも叫ぶので)気軽に大声を出せるアトラクションだと言えるでしょう。下りたころには、乗り物酔いとともに心地よい疲労感があるはずです。
どうもそういう気分ではない、というあなたは、「海」へ行きましょう。海の波を眺めながら、「うおおおおおお」と叫べば、心の中の荒れ狂うブラックな何者かが、きれいさっぱりなくなっているかもしれません。
A.近年は資源保護や虚礼廃止、個人情報保護、働き方改革、経費削減等々の恩恵で、幸いなことに職場内での年賀状のやり取りも減っていく傾向にあります。・・・ということは 、少なくとも職場において年賀状は、「絶対になくてはならないもの」ではそもそもないと言えますから、メンタルが弱っているときは猶更、「もらいたくもないし、出したくもない」というより「出す必要がない」ものだと断言できるでしょう。
結論としては、少なくとも「自分から出す必要はありません」。せっかくの年末年始に会社を思い出してしまうばかりか、「本来、必要のない」ことで心を病んでしまっては、もったいないことです。しかし問題は、「相手から届いてしまったとき」ですよね。
まず、同じ職場の方が気を遣って送って下さった場合ですが、心の中で「ありがとう」と感謝の言葉を唱えつつ、「ごめんなさい」と念じて、返信は書きません。「どう返信するものか」文言にまず悩むことになりますし、「元気です」というのも変ですし、年明け早々 「申し訳ございません」とお詫びをしたり、「まだ具合が悪いです」と挨拶したりするというのもおかしな話です。ここは復帰してから、個別に「年賀状ありがとうございました。当時は体調が悪くて返信もできずに失礼しました」と、口頭で非礼をお詫びすれば十分でしょう。
次に、あなたが休職をしていると知らない方が送ってくださった場合です。そもそも、それくらいの関係性なのでもう年賀状を送り合う必要性もないのですが、こちらも基本的には心の中で「ありがとう」と唱えつつ、「ごめんなさい」と念じて、返信は書かなくてもよいでしょう。どうしても気になる場合に限り、通り一遍の書面に、「本年もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします」と手書きして投函するのもなしではないと思いますが、基本的には心身の調子を優先することをお勧めします。こちらも復帰して、相手とコミュニケーションをとるようなことがあったら、個別に「実は休職をしていまして・・・当時は体調が悪くて、年賀状の返礼もできずに失礼いたしました」と、口頭で非礼をお詫びすれば十分でしょう。
もちろん、「年賀状を書くのが大好きで仕方ない!」という方は好きに書けばよいと思うのですが、それはそれで「貰った側」も「え?休職中なのに年賀状は出せるの!」と困惑するかもしれません。 あるいは、「無理しなくてよいのに・・・」と気を遣わせることにもなります。いずれにせよ、積極的に「出しましょう!」というような性質のものではないと言えます。
A.調子が悪いときは(というか、調子がよくてもですが)、気が乗らないのに無理に友人と会う必要はありません。調子がよくなって「会ってもいいかな」「会いたいな」と思ったら、その時に会えばよいでしょう。わざわざ高熱があるときに友人と会わないのと同じで、自宅療養というある意味で「大病」を患っていることを思えば、むしろそれが普通です。
A.わざわざ話す必要はありません。ただ、余程信頼関係があって、相談したい、ということであれば伝えてもよいでしょう。しかし、「すべき」という結論にはならないと思います。
逐一、「今日の自分は下痢をしています」とか、「人間ドッグで肝臓がE判定だったからヤバいんだよ」などと友人に報告する人はあまりいないでしょう(そういう性癖や関係性ならば別ですが)。元気な時に今まで通り接すれば、それでよいと思います。
むしろ治ってから「あのとき実は適応障害になって大変だったんだよ・・」と伝えるなど、実はいくらでも方法はあるのです。「今すぐ」カミングアウトするほどの切迫性は、余りありません。
A.見られません。白い目で見るような奴はまともな同僚、友人ではありませんから、相手にしなくてよいでしょう。ほとんどの人は、ただただ心配します。
「自分は白い目で見られているに違いない」と思い込むのはおそらく適応障害の症状で、認知の歪みや妄想が出てしまっている可能性があります。休養と服薬、認知行動療法などで症状が落ち着いてくると、このような悩みは雲散霧消するでしょう(今まで、あなたはメンタルで休職した人を白い目で見ていましたか?それがそのまま、あなたの鏡となるでしょう)。
A.全体として、「あなたを必要としている」「私、待つわ。いつまでも待つわ」というメッセージを伝え続けるイメージで臨みましょう。頻度の塩梅は非常にデリケートなのですが、「連絡を取りすぎる」と休職者にはプレッシャーを与えるだけですし、「連絡を取らなすぎる」と「自分はやはり不要だ」と休職者を精神的に追い込むことになります。 「駄々っ子」のように扱いが難しいところですが、休職者を出している時点ですでに管理責任が問われる状況下にありますので、「降りかかった責務」と思うほかないでしょう。
休んですぐの頃は、会社から連絡がくるだけで本人にとっては相当なプレッシャーとなり、病状を悪化させる恐れがあります。まずは体調を見て、慎重に連絡をしていきます。SMSなどを使って連絡するアポを取り、その時間に 短時間、「声を聴く」程度の電話をするなどがよいと思います。
体調が回復してきたタイミングで、2~3週間に1回程度、コミュニケーションを取るようにします。「通院の翌日」や「診断書を更新するタイミング」など、「節目」が双方にとって分かりやすいかと思います。予め、頻度や方法については休職に入るタイミングで共有しておくとよいでしょう。
もっとも、「上司のストレスそのもの」で休職している場合は、直接のやり取りが憚られる場合もあります。いずれにしても連絡を取る場合は、可能な限り、産業医や人事担当者などともタイミングや内容について、連携を取るようにします。
A.私も全く同じ考えをしていたので、その心情はとてもよく理解できます。お金を稼ぐためにも働き続ける必要がある(だから休めない)というのは、当然の考えだと思います。 「働かざる者食うべからず」とも言いますしね。しかし、だからこそ猶更、 ここで完全に倒れてしまうわけにはいかないのです。足を骨折してすぐに100メートルをダッシュで走る人がいないように、心が折れているのにその心労を更に積み重ねなければならないといういわれはどこにもありません。 心が完全に壊れてしまったら、回復するまでには年単位の時間がかかることもあるのです。それこそ、余計にリカバリーが難しくなる可能性があるのです。
仕事人生は長いです。過労の末に再起不能になるのか、一度立ち止まって心身を整えて再起するのかという選択をしたときに、「より可能性の多い」選択肢を選んだほうが、長期的に見れば幸せになれる可能性が高いと考えます。
A.とてもよく分かります。が、倒れるまで働いて再起不能になったら、結局今の仕事をもっと悪い形で放っぽりだすことになってしまいます。何とか再起可能性があり、まだ調整のつく(連絡のつく)レベルで休養に入ったほうが、よほどマシだと言えないでしょうか。 失踪レベルにまで至ってしまうと、それこそ余計に周囲を巻き込むことになってしまいますから・・・。
そもそも、「突然異動する」「適応障害に限らず、様々な要因で仕事を休まざるを得なくなる」といったことで、「取り掛かっていた仕事に突然穴が開く」ということは人生で誰でも起こり得ます。その時に、「その人が抜けたために何とかならずに職場が崩壊した」という話はまず聞きません。ほとんどのことは「何とかなる」のが世の中ですし、「お互い様」というものまた世の中です。
体調を崩したのは、ここまで労働し、税金を納め、会社と社会に少なからず貢献してきたが故のストレスがもとなのですから、もっと堂々と休んでよいと思います。休むことは我儘などではなく、労働者の「権利」であるくらい思っても良いでしょう(それを口に出したら角が立ちますが、こんなことを口に出すような人はそもそも適応障害にならないと思いますので敢えて書いています)。
よりストレートにいうと「もっと自分中心でいい」ということになります。自分の人生は自分でしかコントロールできません。他人はあなたの人生に責任を絶対に追わないのです(それこそ 「お互い様」です)。ですから、休むことそのものが「仕事」ないしは「自己管理(セルフコントロール)」であると割り切って、本当に辛いときはしっかりと休めばよいのです。
A.業務から離脱してすぐに人員補充が為されることはまずありませんから、多かれ少なかれ同僚には直接間接の迷惑を必ず掛けることになります。ただ、これはどんなことでも突然起こり得ることです(病気、怪我、家庭事情など)。ある意味で、「お互い様」というところがあります。 大事なことなので繰り返しますが、「お互い様」です。
そして、どんなことであれ、世の中にはいろいろな感じ方をする人がいます。「かわいそうに」と思う人もいれば、「迷惑だ」と思う人もいるでしょう。ただ、他人がどう感じるかということと、あなたの体調というのは実はまったく無関係です。もちろん、「(迷惑をかけて)申し訳ない」と思うのは自然な感情ですが (そしてまったくそう思わないのはもはやサイコパスですし、そういう人はおそらく適応障害にはなりませんので)、過度に恐縮する必要はありません。
そもそも、休まないことで余計に体調を崩して再起に時間がかかってしまったり、体調が悪いまま勤務を続けた結果、深刻なミスをしでかしてしまったりするほうが、余程「迷惑だ」という考え方だってあり得るのです。
A.迷惑を多少なりとも掛けるのは当然ですし、辛いのもまた人情ですが、変に頑張り続けた挙句、職場で倒れて、再起不能になるほうが余程「迷惑」という考え方もあります。元気になって、元通りのパフォーマンスを発揮するほうが、長期的に見れば有益ではないでしょうか。
そしてそもそも、人員に穴が開いた場合、それを調整するのは「組織」の役目であって、「個人」の問題ではないことも心得ましょう。代表取締役でもないのに、いち組織人が、「組織の代表」を勝手に背負う必要はないのです。組織である限り、どんなときでも、代わりは必ずいるのです。
A.労働安全衛生法の「労働者に対する不利益扱いの防止」によって、メンタルヘルス要因により以下のことが明示的に禁じられています。
A.実際は、「一度休む」ことをぜひとも念頭に置きたいのですが、どうしても休めない(休みたくない)!という場合は、次のプロセスを踏んでみましょう。少しだけ気が軽くなるかもしれません。
これをご覧になって、「それが出来たら苦労しないよ」という反論が間違いなくあるでしょう。しかし、「休む」という選択を取れない以上は、「業務軽減」という「引き算」で臨むしかありません。仕事は常に「たし算」で降ってきます。ここをいかに「引く」かが、最大のポイントになるでしょう。この交渉ができない(そんな気持ちが沸かない)くらい疲れている場合は、「休む」ことがきわめて現実的な選択肢となってきます。
A.大丈夫です。「自分にしかできない仕事」というのは、基本的に幻想です。そもそも、そこまで属人化してしまった仕事をしているとしたら、それは組織上の大問題でもあります(もしくは、業務手順から逸脱した恐ろしく非効率なことをしているのかもしれません)。しかし、突然の業務離脱というのは、異動はもとより、病気や怪我、家庭事情などでいつでも、どこでも起こり得ることです。
もちろん、「なかなか得難い人材」は居ますが、仮にその人物がいなくなったところで、業務はその当人がいなくなったとしても、1週間、1か月もすればそれなりにしっかりと回っていくものです。「今〇〇さんが抜けられたら困る」という「〇〇さん」が異動しても、3か月もすれば「〇〇さん」のことなどほとんど思い出さなくなる、ということは組織に居れば誰もが経験していることでしょう。
適応障害で業務離脱が発生した場合、概ね1週間は応急措置が取られます(最悪の場合、直属の上司がその職務を一時代行することもよくあります)。そこから1か月で部署内で役割の割り振り・再配置が行われ、3か月~半年かけて全社的なルーチン(異動による人員補充)で対処されるということが一般的でしょう。「あなた」が抜けた穴は必ず組織的に対処され、変わりない日常に吸収されていきます。そのとき、あまりにも属人化してしまっていた業務は、スポイルされてむしろ最適化(効率化)されるということだってあり得ます。
「自分にしかできない仕事」という発想に陥るのは、適応障害によって引き起こされる典型的な視野狭窄そのものです。これはある意味で妄想でしかありませんから、そこまであなたが組織を背負って自分をボロボロにする必要など全くないのです。
A.現実問題として、長く休めば休むほど手取りは減っていきますので、「傷病手当金があるから大丈夫」と安易に言えないところは確かにあります。 金銭面の部分に触れずに「休め」とだけいうのは、片手落ちと言いますか、無責任とも言えます。休んでいるからと言って基本的に軽減措置もない住民税や社会保険料などの負担もありますしね。「いくらお金が必要か」「どのように生活設計を見直すか」ということは、適応障害に必ずついて回る課題であることは間違いありません。そこでこのQ&A集では、リアルな「お金について」の疑問をまとめております。ぜひご覧ください。ここでは、給料、傷病手当金、 労災、税金、社会保険料、治療費、ボーナス、有給休暇、ローン、節約方法といった「気になること」をできるだけ網羅的に記載しています。 ここでは、やはりお金の問題がついて回ることも赤裸々に書いているつもりです。
もっとも、「再起不能」になってしまうと肝心の稼得能力すら失ってしまうことになりますので、そうなる前に適切に休んだほうがよいことは間違いありません。 他の場所でも書いていますが、「休めない」と思っていること自体が、適応障害の症状である可能性があることは、しっかりと意識しておきたいものです。 適応障害による抑うつ症状は、とにかく視野狭窄を起こしやすいものです。しっかり一度休むことで、改めて生活設計について考えるクリアな頭脳も戻ってくるはずです。
A.前提として、「休めない」という思考回路になってしまっている時点で、適応障害の症状が進行していることが考えられます。だいいち長期間体調が安定しないということは、会社が求める職責を全うできる状態にない、と考えることもできます。命あっての物種ですから、自分の体調にあったキャリアプランを見つめなおす時期にあるのかもしれません。
「休めない」と働き続けた挙句、長期間離脱してしまっては、結局、キャリアを棄損することになってしまいます。一度積み上げてきたキャリアから一瞬でも降りることはとても辛いことですが、一度しっかり休むことで、健康を取り戻し、今までの経験、能力、スキルを活かしたキャリア再構築ができるようになるかもしれません。 また、そのキャリアが本当に臨むべきキャリアだったのかを再考することにもつながるかもしれません。
A.逃げでも、悪でもありません。休職は「立ち止まる」だけです。ここから退職に進めば、それは単に「ミスマッチだった」ことを認めただけに過ぎません。そして続く転職は「軌道修正」です。単にキャリア上の路線変更、あるいはトラックチェンジですから、これは「善悪」の範疇ではないのです。
A.いいえ。否、よしんば「逃げ」だったとしても、第三者にとっては関係のないことです。自分の身体は自分で守るしかありません。会社は絶対に個々人の身を守ってはくれませんので、そこに身も心も捧げる必要は全くありません。捧げるのは持てる「能力」の部分だけで十分です。人格も、尊厳も、「自分」が持ち続ければよいのです。悪しき環境であれば、ときに「逃げ」ることも必要でしょう。
A.まずないでしょう。放置すると確実に重症化・慢性化して、本人にとっての損失はもちろんですが、社会的な損失も拡大する一方です。放置は百害あって一利なし。その他の病気と同じく、「早期発見・早期治療」が鍵です。
早期に休養し、必要に応じて服薬し、適切なタイミングで認知の歪みを修正することで、劇的によくなります。「まずは休む」・・・これが最大のくすりです。
A.「よく眠れない」という症状で病院にかかり、仮に睡眠薬を処方されてそれがぴったりはまって、よく睡眠できるようになったことで不快な諸症状が解消された・・・ということは起こり得ることです。「眠れるようになったことで、心身の状態が回復する」のであれば、それはそれでとても喜ばしいことです。休まずに済むのであればそれに越したことはないですからね。しかし、実際にはそれ以外の症状を呈している可能性もあり、「休まず、投薬だけで何とかする」というのはリスキーかもしれません。主治医とよく相談しましょう。
A.会社は、業務に起因する疾病が原因で休業している労働者を、休業期間中および復職してから30日以内に退職させることができません(労働基準法)。したがって、休業期間中の退職勧告や自主退職の勧めには、応じる必要はありません。 少なくとも、自分からそういった処分を申し出る必要もありません。
なお、ここでの「業務に起因する疾病」とは、判例の限りでは、「当該の業務に内在する危険が現実化したものであると認められるとき」であって、「労働災害の認定要件」ほどの厳格さが求められていないと解釈できる点には、雇用者側は特に留意が必要です(「労災ではない私疾病だから、業務には起因しないはずだ」という主張はおそらくは詭弁ということになります)。
ただし、打ち切り補償(平均賃金の1200日分)をした場合、療養開始後3年を経過した時点で労災の「疾病補償年金」を受け取っている場合、および、天災等やむを得ない事由で事業継続ができなくなった場合についてのみ、例外とされます。
A.いいえ。おそらく、適応障害の症状によって認知の歪みが生じ、「職責が果たせないということは、自分は降格(降職・退職)すべきだ」といった「0か100か思考」に陥ってしまっているように感じます。これまで組織に十分貢献してきたからこその今の地位・立場であることを忘れてはなりません。
すぐに自分を痛めつけることを考えるのではなく、むしろ、これからも従前の地位・立場で会社から本来期待されてきた職責を果たすためにも、治療によってまずは治すことを優先しましょう。会社は、「今まで通り働いてくれるあなた」をまず期待しており、「降格・降職、退職」などは端から望んでいないと思ってください。
治療が進み、症状が落ち着いてきてもなお、今の職責であること自体が適応障害の原因であると思われ、それが苦しいと自覚している場合に、主治医や産業医とも相談のうえ、はじめて直属の上司を含めた会社側と話し合うべき話題といえるでしょう。
「職場に迷惑を掛けない」というのは実は「あなた都合(あなたの安心)」であって、本来は「自分」と「会社」それぞれにとってのベストを探ることが大切です。そしてそれは、「体調が悪いとき(=脳の働きが弱っているとき)」に行うものではありません。まずは適応障害の治療を優先し、脳の働きが十分に回復してから検討すればよいことなのです。
A.長時間過酷な環境で働き続けていると、抗ストレス反応によって「ランナーズ・ハイ」のような状態―いわばプチ躁状態―となり、自分の心身の変調にますます気づかなくなるか、気づいていても自分の評価が落とされることを気にして無意識に「無視」するようになり(「休むと上司に認められなくなる」「出世できなくなる」という恐怖心から、いわば自己防衛によって「休む」という選択肢に自ら蓋をするようになってしまうのです)、やがて正常な思考力と感情を喪失します。
このような心理状態に陥ると、現象としては「風前の灯」となります。すなわち、「燃え尽きる直前」ということです。
プロセスとしては上記のメカニズムが働いているわけですが、その根底には、「休む」ことに対する「不安と恐怖」、弱みを見せられないという「プライド」、そして(多くは身体症状から発症するという特性に根付いた)「まさかこの症状が精神病のわけがない」といった誤解、そして「まさか自分が精神病になるとは」という油断、など様々な心理過程が存在するのです。 まずはこの感情の機微を理解するところからはじめましょう。
A.適応障害で燃え尽きる直前の人ほど「休めない」し、「休めるわけがない」から、「休まない」というきわめて頑なな心理状態を呈します。「失体感」「失感情」により、完全に自身の心身の変調に気づかなくなっている状態です。
こうなってしまうと、「休め」という命令形、「休んだら」という提案形は逆効果で、ますます「休まない」という殻に閉じこもっていくことになります。
ここは「北風と太陽」の寓話の通り、「強制」ではなく、「本人が自分で行動をとる」アプローチをとっていくことが重要になるでしょう。具体的には、「気づかせる」アプローチが有効です。
まず、疑問形で「問題」を提起します。「眠そうだけど、ちゃんと眠れている?」「顔色が悪いけれど、無理していない?」などと投げかけます。たいていの場合は「大丈夫」などの素っ気ない返答が返ってくるでしょうが、間違いなく本人の中で「あれ?そう見えるのかな?」という「疑念」が浮かんできます。
次に、疑問を感じた理由を伝え、「共感」を示します。「このところずっと忙しそうだったから、実は気にしていたんだ」とか、「負担が増えているよね。いろいろ任せてしまって申し訳ない。」などと伝えてみましょう。本人にとっては、「へー、気にかけてくれているんだ」という「発見」を得ることができます。
ここで、最後に解決策を伝え、「出口」を示すことが重要です。実は、「眠れてる?気にしているよ。ごめんね」まではコミュニケーションが取れていても、ここで終わったしまえば単に「世間話」で終わってしまうのです。疲れがピークになっていると、「あの上司は、自分の責任逃れのために気にしている"フリ"をしているだけだ」と、変な逆恨みを買うことにもなりかねません。
ここからは一歩踏み込んで、「辛かったら、〇〇の仕事は引き取ることもできる。遠慮なくいってくれ」とか、「調整はこちらの責任でするから、今大変になっていることを話してみてくれないか」というところまで突っ込んで話ができると、いよいよ本人は、「あ、本気で考えてくれている」という「気づき」を得ることができるのです。
こうなってはじめて、「どうだろう、休んでみてはどうか?」という提案も受け入れられる、というものです。健全なラポール形成のプロセスともいえるでしょう。
A.「体は家、心は職場」という状態にさせないことです。物理的に職場から離れるだけでなく、心理的にも離すことが肝要です。
具体的には、休職の初期に「連絡を可能な限り取らない」(同僚からの様子見の連絡も含む)ことです。様子見も、また引継も、どんなに時間をかけても最初の1週間(1回あたり30分くらいまで)とし、できれば半日で済ませるくらいのイメージが重要です。
休み始めの休職者は、「休んでいいのか」「みんな働いているのに」「もう戻れない」「サボっている」「ダメ人間」「申し訳ない」といった感情に支配されており、ここに仕事の情報が1ミリでも触れることで、ストレスを連想し、不安と恐怖に支配され、休職がいたずらに長引くことにつながります。
またこの期間を使って、メンバーへのヒアリング(どうしてこの状況が起こってしまったのか。何をすればよいか)を間断なく行い、業務体制の見直しを行うべきであることは言うまでもありません。 ちなみに、ここでのメンバーの協力姿勢(有益な真実を語ってくれるか)は、日ごろの上司の鏡像そのものといってよいでしょう。
A.「心の」病気だと思うとついつい身構えてしまうのですが、これが「風邪」「インフルエンザ」だったらどうでしょうか?身体の病気の時と同様、心の病気でも、基本は「静養」です。静養とは、「心と体を休めること」。すなわち、「安心して休息する」ということです。では、安心して休息するために必要な接し方とはどのようなものでしょうか。
A.適応障害の急性期は、家事もできないほど辛い症状が続くこともあります。可能な限り、家族の誰かが代行するようにしたいものです。一般的に、完全休養と投薬の効果で、1か月以内には家事ができるくらいには回復することがほとんどです。もし1か月程度経っても「まったく何もやる気が起きない」状態が続いているとしたら、別の疾患(うつ病など)を疑うべきかもしれません。
なお、食事は「宅配サービス」やコンビニ・スーパーの惣菜を利用し、掃除は「ルンバ」の使用や外部清掃サービスへ委託、洗濯は乾燥まで全自動で可能な素材のものを着る-といった工夫で、乗り切ることができ る可能性があります。そしてここが重要なポイントですが、1か月くらい自堕落な生活を送ったところで、人間は元気に生きていけるものです。長い人生の1か月くらい、ほとんど家事ができなくても大丈夫です。
A.家事も仕事ですから、辛いときに無理をすると症状を悪化させる危険性があります。まずは体調が回復するまでしっかりと休養に努めることを優先しましょう。
家族に申し訳ないという気持ちはわかりますが、それは体調が回復し、何かできるようになってから協力すればよい話です。罪悪感、後ろめたさ、責任感などから請け負ってしまっても「無理なものは無理」です。感謝は忘れずに、できる範囲で協力することを心がけましょう。
A.とにかく気を遣う存在。辛い。もう決してムリはしてほしくないが、早く治って元気に働いてほしいという複雑な気持ち-これが家族から見た適応障害です。家族の大変さといったら、想像を絶するものがあります。
1つの希望は、適応障害は不治の病ではないことです。「適切な休養と投薬」で症状が劇的に解消し、「適切なリハビリ」で<必ず>寛解していく病気です。ありきたりな言い方になりますが、過度に腫物扱いするのではなく、まずは「寄り添って」あげてください。
寄り添うためのポイントは「正しい理解」です。適応障害は、「波」のある病気です。休養と投薬で体調がよくなっているように見えても、内心では不安が渦巻いているということもよくあります。本人も、「どうしたらよいか」分からなくなっていることもあります。
ダラダラしているように見えても矯正することはせず、「時間」を与えてあげることが重要です。復職までには最低でも3か月。長くて1年、1年半とかかります。そこから半年~数年という再発を防ぐためのリハビリ期間があります。このように長期の闘病が必要ですから、見ようによっては「大病」です。ぜひ、「待つ」ことをしてあげてください。
なお急性期(もっとも体調が悪い、休職から1か月くらいの時期)は、家事を可能な限りサポートし、ムリに「運動」「旅行」などのアクティビティは誘わずに、本人のやりたいようにさせることが一番です(寝たいだけ寝る、ダラダラしたいだけダラダラする)。
1か月程度して体調が目に見えて回復してきたら、徐々に家のこと、外出などを(本人の申し出に基づいて)応援してあげるようにしましょう。このときもできるだけ、本人のやりたいようにさせることが一番です。ついつい「元気なとき」の調子で叱咤激励をしたくなりますが、ここはぜひ、待っていただければと思います。
とにかく、「適切な休養」で必ずよくなるのが適応障害です。相応の時間はかかりますが、ぜひ「待つ」ことを意識して接してあげてください(永久にダラダラできる性格の人だったら、そもそも適応障害にはなりません)。
とにかく家族も辛いのが「適応障害」です。下手なことを言ってしまって間違いを犯さないか気を遣うし、かといっていつまで家にいるのか分からないし。元気なようでいて不意に落ち込むときもあるし。家の雰囲気も暗くなるし。家計も心配だし。イライラするけど、その気持ちもぶつけられないし。よくなってほしいけど、その糸口が本当に見つかるのだろうか。一言で言えば、邪魔。早く会社に行けという気持ちも湧いてくる。でも本心ではよくなって欲しい。前のような状態にはなってほしくない。いろいろな感情が渦巻いて、本当に気が休まることがありませんよね。
配偶者が適応障害になって、家でずっと顔を突き合わせることで家庭内で喧嘩が絶えない-という状態になってしまうほど追い込まれてしまったら、双方にとって「家庭」そのものが新たな適応障害の原因になりかねません。
この場合は、本人の体調が回復している(日常生活を送れる)場合において、主治医やカウンセラーとも相談のうえ、一時的にどちらかが実家に帰る、数日間ホテルに泊まる、平日はウィークリーマンションに滞在し、週末は一緒に過ごす、などの「一時別居」をすることも真剣に検討してよいかと思います。本当は著しい「環境の変化」は適応障害の大敵なのですが、「耐えられないほどの喧嘩が続いている」となると、話は違ってきます。
こうなってしまったら、距離が近すぎるとお互いを刺激しすぎてしまうという「ヤマアラシのジレンマ」の逸話を持ち出すまでもなく、いったん「距離を取る」のが最適解となってくるでしょう。
A.家族が休職を快く思わず、納得していなかったり、疑問を呈されたりする状況は、「心の安定」が何より必要な休職期間中において、あまりよい状態であるとはいえません。休職者本人の説明でなかなか納得してもらえない場合は、ぜひ主治医との診察に同席してもらったり、家族向けのカウンセリングを受講してもらったりして、理解を深めてもらうように働きかける必要があるでしょう。
A.子どもは敏感に親の変化を察します。ですから「隠す」というのは得策ではありません(不信感を持たれるだけです)。しかし、かといってあまりにも深刻に「仕事の負の側面」をあけっぴろげに見せても、子どもの将来の勤労意欲を棄損するかもしれません(仕事は酷薄なものだという印象ばかりが強くなる危険性があります-まあ、それもまた事実の側面なのですが)。ここは子どもの年齢や理解度などを加味して、「方便」か「正直に伝える」かの二択がよいでしょう。
「方便」を使う場合は、今はテレワーク時代ですから、「しばらく家で仕事をできることになった」というのがシンプルだと思います。 しかしこの場合も、「家にいる」こと自体をタブー視することは、却って事態をややこしくするでしょうからお勧めできません。
「正直に伝える」場合は、「お父さん(お母さん)は最近働き過ぎていたから、しばらく会社からお休みをもらえることになったんだよ」と配偶者からさりげなく伝えてもらうのがよいでしょう。これならば、「嘘」をついていないという意味で良心も痛みません。 またある程度の年齢であれば、状況を察して配偶者ともそれなりの会話をかわすことができるでしょう。
A.適応障害の場合、少なくとも半年~年単位での長期間の通院になるはずですから、何よりも「通いやすい(自宅から近い)」ことが第一選択でよいような気がしています。 あまり調べるのに凝って遠くの医者を選んでしまうと、定期的に通うのがしんどくなりますからね。一般的に復職してからも通院は半年、1年といった単位で続くはずですので、「働いていてからも定期的に通えそうか」という観点は、忘れないようにしておきましょう。
また、セカンドオピニオンを求めてドクターショッピングを繰り返すのも、結局は似たような診断となって、「骨折り損のくたびれ儲け」になることが多いようです。まずは最初に選択した医師の指示に従ってみましょう(医師の診断を殊更に不安に思うこと自体が、適応障害の症状かもしれません)。
A.はい。人は、お金を貰うアルバイト先、趣味のエクササイズ(スポーツクラブ)などですら、遠いと長続きしないくらいには「意志の弱い」生き物です。通うのが面倒であればあるほど、元気になったときに通院を継続することは困難になるでしょう。結果的に継続的な治療をやめてしまう→再発、という負のループが発生する可能性も否定できません。とにかくまずは「通いやすい(自宅から近い)」ことを最優先して探すことを強くお勧めします。 できれば徒歩圏内が推奨されますが、どんなに長くても電車や車で30分以内が妥当な範囲ではないでしょうか。
A.通院先を決める前に必ず確認するであろう「病院のレビュー」は、「精神状態の悪い人がその時の気分で投稿すれば、それは低評価になりやすいですよね」という、逃れられない宿命があります。ですから、参考にはしても、思い切り割り引いて見てよいと思います。 そもそも、感じ方や好き嫌いには個人差がありますからね。 また一般的な病院は要するに「治る病院」「症例数の多い病院」が「よい病院」とされることが多いわけですが、精神科系の宿命として、そもそも「なかなか症状が治らない」こともあるわけです(※)。症例数などがそのまま参考にならない可能性があることも、ことをややこしくしているように思います。
その結果、「話を聞いてくれない」とか、「待ち時間が長い」とか、「受付の雰囲気が悪い」といった、「その病気を治すことに直結しない」部分でのレビューが溢れかえることになるわけです。
例えば「医者が目を合わせないでパソコンのほうばかりみている」というのは非常によく見る代表的な「悪いレビュー」の1つなのですが、これを「ドライ」と感じる人もいれば、「目を合わせなくて済むのでラクだ」と感じる人もいるわけです(私はどちらかというと後者です 。弱っているときは、そういう人と話しているほうが圧倒的にラクですし。ずっと目を見られたらイヤという人もいるのです)。
それから「受付の態度が冷たい」というレビューもすごくよく見るのですが、「窓口」ってそもそもそういうものだと思いませんか?これと対になる「あたたかい窓口」ってどんなものなんでしょう? いちいち長話に付き合って一向に会計が終わらない窓口を「あたたかい」とでもいうのでしょうか?・・・そう考えてみると、あまり気にならなくなりませんでしょうか。 程度の問題ですが、事務的に対応したり、例外を許さなかったり、みたいな対応が必要な時だってあるのです。
老いも若きも 「おもてなし」なんて言っちゃって、何事にもサービス過剰で、自分たちで生きづらくしているんですよね。一般論として、何事も「誰かが何とかしてくれるかも」と、過度な期待はしないほうが精神衛生上よいかと思います。何事も背負い過ぎず、適度にやり過ごすと吉。中庸が肝心。 だいたい、そんなもんかと思います。他人は自分の鏡ですからね、自分自身がそもそも相手にフレンドリーに接することができるか、という話でもあります。
(※)ある病院の低評価レビューでは、書き出しで「もう7年通っていますが・・・」とありました。うん、それ確実に重病で、しかも治ってないからでしょ・・と突っ込まずにはいられませんでした。「具合が悪い人が書いている」ということは絶対に忘れてはならないポイントと言えるでしょう。しかも大抵は匿名ですからね。「参考にはしても、鵜呑みにはしない」、というスタンスが何より大事です。
A.上述の通り、レビューは「心の具合が悪い人」が書いていますから、100%当てにすることは危険です。レビューだけで判断するのではなく、最終的には「百聞は一見に如かず」の言葉通り、自分で経験するしかないという部分はあります。ただ、実際問題として治療方法によって回復に差が出る可能性はありますから、「地雷」はできるだけ引き当てたくないのも人情・・・ということで、避けたほうがよい病院の特徴を挙げてみたいと思います。
A.そうですね。せっかくなので、上記の反対を記載しておきましょう。
A.「精神科」「心療内科」「メンタルクリニック」自体は、国家資格の医師であれば標榜することができますので、かかる医者が精神科に精通した専門医かどうか、という観点で病院を探すのは観点としては正攻法だといえるでしょう。
具体的には、Webサイトで以下の資格についての有無を確認するとよいでしょう(次項と次々項で解説)。
A.日本精神神経学会が認定した学会認定専門医です。資格取得には2年間の初期研修と、3年以上の精神科後期研修が必要となります。
A.旧精神衛生鑑定医のことで、精神保健福祉法で定められた国家資格です。精神医療における非自発入院の判定を独占的に行える資格者で、医療観察法における医療観察制度の精神保健審判員になることができる資格者でもあります。
認定には、「精神科3年以上を含む5年以上の臨床経験」を有した上で、指定の講習を受け、指定された複数の症例(5例)に対するケースレポートの提出、そして口頭試問(合格率は5~6割とされます)を経る必要があります。
A.実際問題として、需要と供給がまったくバランスされていないことを感じます。予約が1か月後、ということは普通に起こり得ることですので、「少し体調が悪いな・・病院にかかったほうがよいかも・・」と少しでも感じたら、その時点で早めに予約に動かれることを強くお勧めします。 本格的に悪くなる前に、早めにかかるようにしたいです。
A.休日や平日の夜は予約ができなくても、平日の朝や日中はどうでしょうか?まずは本当に空きの時間がないか、確認してみましょう。空きがあれば仕事よりも心身が最優先です。
これでも本当に取れない場合は、複数の病院を当たるほかありません。メンタルクリニックのハードルは一昔前に比べれば大幅に下がって、今や一般的に非常に混雑していますので、なかなか病院が見つからずに不安になるということもあるでしょう。このとき、できるだけ「レビュー」の悪評に引っ張られ過ぎないことをお勧めします。別記していますが、もともと心の状態が悪い人が書いたレビューですので、割り引いて見る必要があることと、そもそも医療には個人差がありますから、いち患者の見解だけで診療の質を判断できるほど単純なものでもないからです。この点は留意した上で選択をしていきましょう。
A.確率として、医学的な介入があったほうが早く回復する可能性は高いと思います。そもそも、「薬が不安」と過剰に思うことそのものが、適応障害のもたらす不安症状の1つかもしれませんしね。少なくとも「私は」医師の指示にしたがって服薬を続け、結果として復職まで至りました。
すごく身も蓋もないことを書きますと、「どうせおかしくなっちゃったんだから、この際、少しでも治る確率があることをしたほうがよくない?」ということなのですが・・・
ただこれは、リスク×効果の許容度をめぐる哲学的な問題ですよね。科学や論理というより個人の「感じ方」 の問題ですから、基本的に誰もが納得する「正解」はないと思います。科学的に言えば、何事にもリスクはありますから、「絶対100%安全」というのは誰も保証できないわけです。しかし、だからと言って怪しいスピリチュアルな方向に何十万も費やしてしまったり、エビデンスのない民間療法に頼ったりするほうがよほど医学的には危険だというのが私の偽らざる感覚です(ただこれも感覚でしかない、というところがポイントですが ・・・例えプラセボでも「治る」なら、その人にとっては「薬」と言えなくもないわけですからね)。
A.うつ病のケースですが、未治療の場合は1年後に40%が自然に寛解し、20%が改善(反応)、40%が未改善になるとされています。
一方、投薬による治療によっては50~70%程度が改善(反応)し、改善した患者のうち60~70%が8週間の治療によってのち寛解に至るとされています。このことからも、まずは8週間(2か月)、まず病院で適切な治療を受けることは有効であると考えてよいでしょう。
A.説明ができないということは、あなた自身の中に「このまま薬を飲み続けるのはよくない」という気持ちがあって、同じ疑問を抱いている可能性があります。疑問を抱きながら治療に専念することは治療効果を減らしますから、早めに主治医に相談することをお勧めします。素人判断がもっとも危険です。
当初から家族が聞く耳を持たない、なかなか理解してくれないで困っているというときには、再診の際に同席してもらい、主治医に説明してもらうことも検討しましょう。
A.適応障害を含むメンタル疾患においては、治すのは自分自身であって、周囲はその「手助け」をする存在です。極端な話をすれば、「この壺が効きます」といって、それで本人が「納得」して「安心」して、なぜか心が軽くなった!というのであれば、その人にとっては「治った」ということもあり得るわけです。ただしそこには、科学的なエビデンスはありません。これはプラシーボといえばプラシーボですし、「偶然」といえば「偶然」です。
民間療法が何らかの「癒し」となって、所与のストレスを解消する可能性は否定できません。しかし、科学的には「休養」と「投薬」という医学的アプローチと、「認知の歪みを修正する」という心理学的アプローチが第一選択であって、あくまでも治療の補助、安心材料としての活用をするほうが、結果的には予後を安定させることにつながるでしょう。
A.適応障害になってしまったとき、科学的・医学的な根拠に基づいた精神科医療を受けることは、国民皆保険制度によって、この国でもっとも安価に医療の恩恵を受けることができる制度です。これを第一選択にしない時点で、かなり認知的にはダメージを追っていると思ってよいでしょう(要するに、脳が病気になっているということです)。早期に対応すれば、間違いなく「高額なお金を掛けずに治療を開始できる」のが適応障害です。適切な休養と投薬、認知の歪みの修正こそが適応障害治療の王道であって、高額な投資をするとか、「何かグッズを買うことで治る」といった科学的なエビデンスはないと思ってよいでしょう(※)。
繰り返しになりますが、本人が「納得」して「安心」して、「治った」という気持ちになれば、どんなものであれ、それがプラシーボ、「気のせい」、偶然、であったとしても、それは「治った」と解釈することもできるでしょう。ですから、何らかの民間療法が治癒につながる可能性を否定するものではありません。しかしながら、やはり、科学的なエビデンスはありません(エビデンスがあれば、国が認めることによって原則、保険適用になるはずだからです)。
しかし世の中には、藁をもすがる思いでやってくる人に対して高額なサービス、物品等を売りつけるという商売は、残念ながらたくさんあります。売り手が儲かるからです。ふと、心が揺れそうになったときは、一度立ち止まって、自分が「商売のタネ」にされていないか、よくよく考えてみることをお勧めします。
1つだけ言えることは、これだけモノやサービスが氾濫している世の中で、「敢えて宣伝しているもの」は、売り手が「買ってほしいもの」であって、買い手が「買いたいもの」ではない、ということですね。
(※)科学的なエビデンスがないことと、ある個人に「効果がある/ない」というのは、まったく別個の概念です。「私は○○で治った」が、「あなたも○○で治る」とイコールとなる可能性が高いことが 認められ、その適否を科学的に、すなわち反証できるものが医学で、そうなることが特に保証されていないものが民間療法だということを、ここでは言っているに過ぎません。
A.ひとたび発症すれば、症状そのものを自分だけでコントロールすることは極めて難しく、一般的には休養と服薬、認知行動療法などによって症状の緩和や軽減、心身の回復を図っていきます。 コントロールできるようであれば、そもそも発症しない、ともいえるでしょう。
A.個人差はありますが、適応障害の治療は、まず休養してストレス源から離れる→投薬により心身の症状を落ち着かせる→症状が落ち着いてきたら認知行動療法などによって心の在り様に気づくという経過を経て寛解を目指していきます。
ここでストレス源から適切に離れず、また心身の症状が激しく現れている段階で「認知を変えよう」と思っても、心がそれを受け入れる準備ができていない可能性があります。
すなわち、心に余裕があるときに「0か100か思考は控えよう」と言われると「本当だ、その通りだ」と素直に耳を傾けられるのですが、心に余裕がないときに同じことを言われても、「そんなこと知ってるよ」と素通りする危険性があるのです。これはちょうど、「休め」と言われたときに「休めるわけ、ないだろう」と心に余裕がないときほど反発する精神構造と極めて酷似している現象です。
このようなタイミングでは、せっかくのカウンセリングの効果も低くなってしまうことが考えられます。体調不良を自覚したらできればまずは主治医をみつけ、適切な「休養」と「投薬」からスタートし、体調を落ち着けてから認知行動療法 (カウンセリング)へ進んだほうが、予後もよいといえるでしょう。このケースでは、回答するならば「ご相談のタイミングが早すぎた」ということになろうかと思います。
A.個人差はあるという前提ですが、抑うつ症状が強く、体調がすぐれないときにはせっかくカウンセラーと話をしても、それが有効に機能しないことがあり得ます。心がコンクリートのように固くなっているときは、いくら「認知の歪みを見直してみましょう」といっても、その「歪み」に気づけないことがほとんどだからです。休養と投薬によって心がほぐれてきて初めて、カウンセリングも有効になってくるといえるでしょう。
A.適応障害に対するカウンセリングは、カウンセラーと患者が、その患者にとって重要な「認知の歪み」を修正していくための話し合いを重ねていきます。
これまでの経験(人間関係、出来事)、認知の傾向(性格、心理)、現状の認識(気分、気になること)などをやり取りしていく中で、患者の抱える課題を整理し、「気づき」を促していきます。
本人が自分自身の認知の癖に気づくことで、はじめて「対処法」が浮かび上がり、ストレス状況に対する捉え方をアップデートしていくことができるようになるわけです。メンタルクリニックの行う「医学的アプローチ」と対照的に、「心理学的アプローチ」によって適応障害にコミットメントしていくものだといえます。
医学的アプローチが「マイナスを0に戻す」ものだとすると、心理学的アプローチは「0をプラスにしていく」ものだとも捉えることができます。
A.いわゆる「心理カウンセラー」には、様々な種類があります。心理カウンセラーを名乗るための法的な制限はないため、事実上無資格のカウンセラーも存在します(無資格だから悪い、ということではありません)。
代表的なカウンセラー資格には、次のようなものがあります。カウンセラーを総称して、「心理職」と呼ぶこともあります。
上記4つがよく耳にする心理カウンセラーの資格です。このほかにも、以下のような心理カウンセラー資格があります。
A.以下の点に留意しましょう。
A.違います。どちらもメンタルヘルスに関わる仕事ですが、精神保健福祉士は「精神保健福祉法」に基づく、精神保健福祉領域の「ソーシャルワーカー(社会福祉支援)」の国家資格です。精神障碍者の社会復帰支援のため、福祉施設や医療機関などで勤務しているケースが多いです。
A.環境調整(ストレス源から離れる)→十分な休養→投薬による症状の改善を経て、カウンセラーと認知行動療法に取り掛かるとき、よく行われるのが「何が原因で適応障害になったのか」という振り返りです。振り返りを明確にして、「自分」と「環境」の双方の原因に向き合うことは、寛解のためにも、また再発防止のためにも重要なプロセスです。
しかし、体調が不十分でないときに「振り返り」をはじめてしまうと、これまでのストレス状況がフラッシュバックして、せっかく落ち着いていた症状がぶり返してしまうことがあります。おそらくこれが原因と言えるでしょう。一言で言えば、「カウンセラーにかかるのが早すぎた(あるいは「振り返りのプログラムを実施するには早すぎた)」ということです。
カウンセリングを受けてから(それが原因で)体調を崩したと思われる場合は、 主治医・カウンセラーと相談し、カウンセリングやリハビリに向けた活動のリスケジュールを行うことが望ましいといえます。
A.ハードル、高いですよね。でもこれは大丈夫です。行くと普通に老若男女、多くの人が待合室にいます。そして、誰も彼もが「普通の人たち」です。現代社会でみな、傷つき闘っているんだなぁ・・・と頭が下がります。そして、その一員として安心すらします。
以前、痔になったときも肛門科に行くのは躊躇しましたが、これまた普通に老若男女、多くの人が待合室にいました。そして、誰も彼もが「普通の人たち」です。「社会はふつうの人たちの集合体だ」という当たり前の事実に気づかされます。
A.周囲から見ていて、次の5つのいずれかが該当した場合は、ただちに通院を勧めるとよいでしょう。
A.それぞれみていきましょう。
A.違います。そしてそもそもまず、神経科と神経内科は別物です。なかなかややこしいので、以下で確認しておきましょう。
A.「精神科・心療内科」という響きへの抵抗感、また精神疾患と診断されることへの拒否感などがあるからでしょう。できれば早めにメンタルクリニックの診断を受けることが望ましいのですが、まずは目の前の「症状」を緩和することを企図して、診療のハードルが低い「内科」や「神経内科」の受診を勧めることからはじめるのも一考です。このほか、家族として「心配している」ことを伝え、「産業カウンセラーを強制的に予約してしまう」とか、「企業や公的機関の相談ダイヤルに家族として相談する」といったことも検討しましょう。
一人で心療内科の診察に行くことに逡巡している場合は、一押しとして「初診に同席する」ことも相手の不安感を緩和するためにしばしば有効な手段です。
A.明らかに通院を勧める目安を満たした症状を発していながらも本人が頑なに通院を拒む場合、または通院することは納得していても実際に行動に移す過程で極度の不安を訴える場合は、家族が付き添うこともあります。付き添うことのメリットは、第一に本人にとって「一人ではない」という安心感を得られることです。一緒に主治医の話を聞くことで、必要な本人のサポートについて、直接理解することができることも大きなポイントです。また、主治医にとっても家族からの客観的な情報が得られ、治療に活かせることもあるという副次的な効果が期待できます。
一方、治療はあくまでも「本人」と「主治医」の間で第一義的に行われるものですから、家族が前に出すぎることがないよう、注意が必要です。
A.本人が説明できないことを追加で説明する、本人が聞けないことを追加で聞くなど、治療に向けた主治医との情報共有のサポートをしていきます。
具体的には、本人の生活状況や症状、これまでの対応についての情報提供を行うこと、そして、発症の原因と症状、治療方針、処方薬の効能と注意点、復職の見込み、休職時の留意点などの説明を受けることです。
A.「医療相談」であれば、病院によっては自費診療扱い(保険適用外)で受診することができる場合があります。ただし薬の処方はされませんので、最終的に治療する場合は本人の同席が不可欠です。
A.例えば、以下のような内容が聞かれます(症状により、聞かれない項目もあります)。このすべてを診察時間だけで聞き出すことは難しいので、精神科や心療内科では、問診票で以下のような項目を事前に記載することも多いです。心に余裕があれば、予めメモをしてからかかるとよいでしょう。
A.例えば、以下のような内容が聞かれます(症状により、聞かれない項目もあります)。このすべてを診察時間だけで聞き出すことは難しいので、 再診であっても問診票を必要とするクリニックもあります。
A.病名、発症の原因、治療の方針、処方薬の効能と注意点(副作用など)、今後のスケジュール(復職の見通し、次回の通院日、寛解する時期の見通し)、休職時の過ごし方について確認しましょう。
A.適応障害の臨床的な診断は、米国精神医学会「精神疾患の分類と診断の手引き(※1)」(DSM-5)と、WHO(世界保健機関)の「疾病および関連保健問題の国際統計分類」(ICD-11)が 国際的な基準となっています。
(※)「精神障害の診断と統計マニュアル」とも。
まずDSM-5において「適応障害」の診断は、
A.はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3か月以内に情動面または行動面の症状が出現する。
B.症状が、臨床的にみて次のいずれかまたは両方に当てはまる。
(1)そのストレス因に不釣り合いな程度や強度を持つ著しい苦痛。
(2)社会的・職業的、その他の(生活上の重要な)機能の重大な障害。
C.症状は、他の精神疾患の基準を満たしておらず、既存の精神疾患の悪化でもない。
D.死別によって抱く症状ではない。
E.ストレス因から離れると、症状が6か月以上継続することはない。
に則ってなされ、原則として、上記のA~Eすべてに該当する必要があります。
臨床上は「例外」もありますから(例えばストレス因の始まりから「4か月以内」だったら適応障害ではないと言えるのか?というとそんなことはないはずです)、実際の運用上は、「もともと普通に働けていた人が、明確に説明のできるストレスに曝され、心身の症状が発現し、かつ、身体症状がその他の身体疾患によって引き起こされたという可能性が否定され、当該のストレスによって心身の不調を来たした」と論理的に判断できるようであれば、いったんは「適応障害」と診断されることになるでしょう。
もちろん、これは仮説にすぎません。治療の過程で、「症状が半年以上続いており、実はうつ病だった」とか、「隠れた発達障害が判明した」とか、「実は躁うつ病であった」とか、別の要因(甲状腺の病気など)で抑うつ症状が発生していた、などのケースももちろんあって、その場合は診断名が変わる可能性もあります。
また、2022年1月発効のWHOの新しいガイドライン(ICD-11)では、適応障害におけるDiagnostic Requirements(診断要件)のEssential (Required) Features(不可欠[必須]の特徴)の項目に、The reaction to the stressor is characterized by preoccupation with the stressor or its consequences, including excessive worry, recurrent and distressing thoughts about the stressor, or constant rumination about its implications.(ストレッサーに対する反応は、過度の心配やストレッサーについての反復的で悲観的な考え、またはその意味についての絶え間ない反芻を含む、ストレッサーまたはその結果へのこだわりによって特徴付けられる。)という表記が記載されました。
簡単に言えば、ストレスおよび、ストレスに対する反応(心身の諸症状)に強くとらわれてしまい(頭から離れない、四六時中考えている)、通常の日常生活・社会生活を送れなくなってしまった状態を以て「適応障害」と診断する、ということになります。そして、その背景には、「認知の歪み」や周囲のサポートを得られない状態などの複合的な要因が重なっている場合が多いと指摘されています。
ICD-11によって、これまでDSM-5では明記されていなかった「ストレスへのとらわれ」と「適応への失敗」が適応障害診断の必須要件として規定されたことで、単に「強いストレスで心身の症状が出ている」だけでは、今後適応障害と判断されないケースが出てくるかもしれません(例えば「急性ストレス性〇〇」といった症名をつけた状態で一定期間様子を見るなどの対応を取られる可能性もあり得ます)。旧来の心身症状だけでなく、「ストレスへのとらわれ」という部分に着目したという点で、適応障害の診断ステージは一歩上がったといってもよいでしょう。今後、様々な病院や文献で、ICD-11に基づいた新しい「適応障害臨床」が行われていくことになるでしょう。
A.ICD-11の診断基準では、「ストレスへのとらわれ」を示すものとして、「ストレスへの過度の心配」「ストレスについての反復的で悲観的な考え」「ストレスを引き起こした原因についての絶え間ない反芻」を含む、ストレッサーまたはその結果(症状)へのこだわり、と明記しています。そして、これこそが、適応障害の確定診断基準である、としていることがポイントです。
すなわち、不眠や頭痛、めまいなどの「症状そのもの」というより、さらに深層心理において、「ストレス及びその症状」に対する「こだわり」が生じていないかどうか、にフォーカスしていくという視点です。
ストレスの経験は、実際の体験と感情が強固に結びついた感情的記憶となります。ここに「認知の歪み」や周囲のサポート不足が重なることで、負の感情的記憶が固着化し、強い印象となってストレスそのものへの執着をもたらします。すると、ますますそのストレス、およびストレスに連関する状況、そしてストレスによって引き起こされた心身の状態に注意が向くようになるため、そのことがいつも頭から離れなくなってしまうのです。これが、ストレスへの「とらわれ」のプロセスです。 このプロセスは、実際に適応障害を経験した私もよくわかります。
ストレスにとらわれた結果、ストレスに敏感となり(易刺激性)、「過度の心配」「極度の警戒」「ストレスの反芻」「反復的で悲観的な苦痛な思考」が惹起されるようになります。身体は防衛本能で、ストレス源そのものやそれを連想させるものを次第に避けるようになります(これが、例えば「 仕事への不安感で会社に行けなくなる」「仕事のことを考えて夜、眠れなくなる」といった症状を呈することの本態であるといえるでしょう)。
このようにして、過度の心配や反復思考は、心身の影響のみならず、直接あるいは間接的な回避行動によって社会生活にも影響を及ぼすようになり、そのことでますます負の感情的記憶が肥大化して、さらなるストレスを生み、余計にストレスに敏感になって、苦痛が際限なく増大していくことになってしまうのです。まさに「とらわれ」の悪循環と言えます。
「とらわれ」は、「そのことで頭がいっぱいになってしまう」ということです。「とらわれ」は視野を狭め、精神を内向させ、認知を歪ませてしまいます。すると(歪んだ)主観が支配する世界で物事を見聞きし、判断することになるため、どんどんと客観視ができなくなってしまい、まさに現実社会との「適応」が障害されるようになってしまうのです。
A.原因不明の体調不良に「名前」がつくことで、ようやくその治療がスタートできます。まずは「名前が付いた」ことに安心しましょう。仕事のこと、家庭のことなど先行きを考えるととても不安になりますが、「休むこと」が一番のくすりです。どんな病気にも言えることですが、治療に専念する環境を整え、まずは「休む」ことに集中することが重要です。
A.仕事の業務報告とまったく同じで、「事実」と「要望」、「感情」を分けて伝えることが重要です。そうでないと、聞き手へのミスリードを起こして、コミュニケーションに齟齬が生じてしまうでしょう。
まず、「自分の現在の症状」と「医師の診断内容」という「事実」を伝えることからはじめ、家族には「まずは休むことに専念する」ことへの「理解」と「協力」を「要望」します。そのうえで、自分自身の今の気持ち(不安感、焦り、安堵感など様々な「感情」)を伝えるようにします。
客観的な事実と、自分の心情を吐露することとを明確に分類することで、聞き手は安心してあなたに接することができるようになるのです。
どうにも自分で説明することが難しいと予想される場合は、初診や再診の際に家族に同席してもらうことも検討したい点です。
A.仕事の業務報告とまったく同じで、「事実」と「要望」(場合によっては「感情」)を分けて伝えることが重要です。ただし相手はビジネス上の付き合いですから、家族ほどには「すべて」を伝える必要はありません。業務上必要な事柄に絞り、心情の過度な吐露など、余計なことは必要以上に伝える必要はないでしょう。
基本的には、まず、「自分の現在の症状」と「医師の診断内容」という「事実」を伝えることからはじめ、職場には「まずは休むことに専念する」ことへの「理解」と「協力」を「要望」します。繰り返しになりますが、家族とは違ってあまり自分自身の今の気持ちを開陳しすぎる必要はありません。
A.ストレス源からの回避、症状の改善、ストレス受容力の強化、復職支援、再発防止と進んでいきます。順番にみていきましょう。
A.数か月~半年程度の場合もあれば、数年単位に及ぶ場合もあります。大雑把に言って、症状が重かったとか、予後が不良の場合やメンタル疾患を繰り返している場合ほど長く、反対に症状が比較的軽く、予後もよく、初回の発症であれば短くなるといえるでしょう。
A.メンタル疾患は再発の可能性があり、「完治」という言葉を使うことが非常に難しいのが現実とされています。そこで一般的には「完治」という表現を使わず、症状が落ち着いて(非常に軽くなったり、一時的に消失したりして)日常生活に支障がなくなった状態(寛解)をまず実現し、その状態が長期的に安定して定着すること(完全寛解≒回復)することを目指します。
A.違います。寛解は病気が寛(ゆる)く解けている状態であって、症状はほとんどなくなっていることを前提として、「このまま治る可能性もあるし、再発する可能性もある」ことを指します。一方の「治癒」は「完全に治ること」を指します。メンタル疾患は再発の可能性は常にありますから、 安易に「治癒」という表現をしないことが普通です。
A.同じ意味で使われます。
A.寛解は、上述の通り「症状がほとんどなくなっている」ことを前提として、「このまま治る可能性もあるし、再発する可能性もある」状態を指したものです。この状態が2か月以上続くことを、特に「回復」と呼んでいます。
ちなみに、治療によって症状が50%以上回復した状態を「反応」と呼んでおり、適応障害は治療に「反応」し、「寛解」を経て、「回復」するというプロセスで"治って"いくことになります。
A.「再発」は、一時的に症状が治まったり、消失したりしていた状態がまた悪化する(従前の状態に戻る)ことを指します。ただし発症の時期・タイミングによっては「再燃」と言い 、厳密に使い分けを行っています(詳細は次項)。
一方の「増悪(ぞうあく)」は、もともと悪かった状態が、さらに悪くなることを指します。なお「憎悪(ぞうお)」とは字面も意味もまったく違うので、注意が必要です。
A.同じ意味ではありません。「再燃」とは、治療が効果をもってよくなってきた段階で、症状が悪化してしまうことを指します。一度寛解したものの、「回復」に至らず2か月以内に症状が悪化した場合も「再燃」となります。
一方の「再発」は、寛解して2か月以上無症状だったものの(すなわち一度「回復」に至ってから)、その後、再び適応障害を発症してしまう状態を指します。
簡単にいうと、反応または寛解の状態で再び悪化することを「再燃」と呼び、回復後に再び悪化することを「再発」と呼ぶのです。
A.治療は、納得しなければ専念できるものではありません。「自分が病気であること」を受容して初めて、治療がスタートするといっても過言ではありません。診断に疑問点があれば、まずはその診断を行った主治医に質問するようにしましょう。その回答に納得が行かない場合はセカンドオピニオンを選択肢て納得するまで診断をしてもらうということもあるいは取り得る手段ですが、プロの判断に素人が深い疑念を抱いてしまう時点で、適応障害の影響で心が固くなってしまっている可能性があるという点には常に留意しておきましょう。
また、「頭痛」「めまい」「胃痛」「動悸」「不眠」「肩凝り」など、自分に起こっている様々な症状の原因を、1つずつ「潰す」という方法も、疑問解消のために有効にはたらくことがあります。例えば頭痛であれば 内科や神経内科、めまいであれば神経内科と耳鼻科(場合によっては整形外科も)、胃痛であれば胃腸科、動悸であれば循環器内科、不眠であれば神経科、「肩凝り」であれば整形外科・・・といったように、原因を突き詰めていくのです。非常に手間が掛かりますが、この方法で「原因不明」となれば、いよいよメンタル疾患である可能性が明確になってくるというわけです。もっとも、「自分の病状にとらわれて、その原因を探ることに血道をあげる」という行為自体が、適応障害の影響で心が固くなってしまっている可能性があるという点には常に留意しておきましょう。
A.医師には守秘義務があるので、本人の許可なく本人不在の状況で医師が家族に病状を説明する、ということは原則できません。説明を求めたい場合は、家族に初診や再診などに同席してもらうことをお勧めします。
A.精神科・心療内科の外来は、1時間ほど待って、初診は10~15分くらい、再診は長くても5分くらいですかねー。私も最初は「こんなに短くて大丈夫なのかしら」と不安に感じたこともあったのですが、よく考えると内科や耳鼻科なんてもっと短いですよね。まあそんなもんかなー、と。別に病院側の肩を持つつもりはないですが、それでも長ければよいというものではないですからね。有名な話で、同じ手間賃で、「5分で直してくれる鍵屋」と「直すのに1時間かかる鍵屋」、心情としてどちらのほうが得したと感じるか、という命題と似ているような気もします(技術は前者が圧倒的に優秀なのに、なぜか損した気持ちになりませんか?)。
いずれにしましても、冷静に考えて今の保険診療体制で「何十分も話を聴いてもらえる」という方式は、人的コストを考えるとどうみても無理があります (精神科の問診は30分まで保険点数が同じなんですから、初診はともかく、再診で20分も見てくれるなんて、まず不可能なことなのです)。本格的に「1時間話を聞いてほしい!」ということであれば、自費診療のカウンセリングを選択することになると思います(結局、 「普通車が嫌だったらグリーン車をどうぞ」というのと類似した構造の話なんですよね、これって。世知辛いといえばそれまでなんですが)。
あとは一般論として、何事も「誰かが何とかしてくれるかも」と過度な期待はしないほうが、精神衛生上よろしいかと思います。 最終的に病気を治すのは自分自身であって、医師は「自然治癒力を高める」ための医学的パートナーです。治療の主体者は自分自身なのです。
A.はい。あります。大前提として、初診や症状が重い人ほど診察時間は長く、症状が安定している人ほど診察時間は短くなる傾向にありますが、ここではもっと根源的な話をします。「保険点数」の観点です。
実は通院の精神科専門療法(問診のことですね)の保険点数は、5分以上30分未満で「330点」、30分以上で「400点」となっています。医療報酬の点数は1点が10円ですから、「5分」で3300円、「60分」でも4000円ということになります。つまり「5分話すのと、60分話すのとでは、700円しか変わらない」ということになるのです。これを見て明らかでしょう。今の保険診療体制で「精神科医に話をたっぷり聞いてもらう」というのは、経営的に(経済合理性からみて も、医師という高度専門職の労働単価から見ても)絶対的に不可能なのです。
ここは割り切りましょう。「診断書と薬が欲しければ、保険で精神科医へ」「長時間話を聞いてほしければ、自費でカウンセラーへ」ということです。 ここをしっかり認識さえしておけば、病院に過度な期待を抱かなくて済みますから精神衛生上もラクになります。
A.漠然とした会話ではなく、具体的な相談をすることです。すなわち、「今後の治療の見通しはどのようなものですか」「現時点で、日常生活でやってはいけないことはありますか」といった治療方針や生活上の見通しについてや、今後の仕事についてです。
主治医は産業医とは違い、あなたの職場のこと、仕事内容については「よく知らない」というのが実際のところです(もちろん、業界や業種などによる傾向は事例を持っているわけですが)。ですから、むしろ「仕事で1日に5時間程度はパソコンでExcelを操作するのですが、時間制限をしたほうがよいですか?」とか、「週に1回程度、自動車で出張があります。まだ長距離運転が不安なのですが、よい対応方法はありますか?」など、仕事については特に、「具体的なシチュエーション」で質問するとよいでしょう。
A.主治医にその旨を相談してみましょう。
A.その医師やカウンセラーにかかること自体がストレスで辛いのであれば、無理をする必要はないでしょう。「ウマが合わない」と過剰に思ってしまうこと自体が、適応障害の症状である可能性は頭に入れておきつつ、本当に必要だと信じるのであれば、アクションを取ること自体は別のよいのではないかと思います。しかし、いたずらにドクターショッピングを繰り返すと、結局は似たような診断を受けることとなり、「骨折り損のくたびれ儲け」になることもあるようです。短期間で何件も梯子をする、というのはいかにも予後が心配な行動と言えるでしょう。
なお、独りよがりの判断をできるだけ避けるためにも、主治医に課題がある場合はカウンセラーに、カウンセラーに課題がある場合は主治医に、など、専門的な見地から「別の先生でも問題ないのか」、ぜひ 第三者に見解を聞いてみるとよいかと思います。
A.どうしても主治医と合わず、それがストレスになっているようであれば、主治医を変えてもらったり、別の病院にかかることはよいでしょう。その際はできれば独断ではなく、事前に家族などに相談したり、診察時に同席してもらうなどして、客観的な評価も参考にしたほうがよいでしょう。適応障害の症状によって正常な判断ができない状態になってしまっている可能性があるからです。
A.大原則として、やめたほうがよいでしょう。同一疾病で複数の病院にかかる場合、「重複診療」と見做され、セカンドオピニオン扱いとなって原則自費診療(健康保険適用外)となるだけでなく、治療の継続性を棄損する恐れがあるためです。様々な理由で転院をする場合は、診療情報提供書(いわゆる「紹介状」ですね)を前の主治医から発行してもらったうえで、継続性を以て受診するようにします。
A.適応障害の症状によって、正常な判断ができていない可能性があります。繰り返すということは、パターンとして「医師」と「なかなか信用できない患者」という役回り―何らかの「心理的ゲーム」といわれる現象―を引き起こしてしまっている可能性もあります。まずは一度、「自分がどうして主治医と関係性をうまく構築できないのか」「うまくいかないことだけでなく、うまくいったことは何か。それはどういう点においてか」ということを確認してみることをお勧めします。そのうえで、できれば家族に相談したり、診察時に同席してもらったりして、客観的な評価も参考にしたほうがよいでしょう。
A.大前提として冷静に考えてみてください。変にベタベタされても怖くないですか?患者さんの訴える境遇に1つ1つ「わかる、わかる。辛かったですよね」とやっていたら、お医者さん自体がそれこそ病んでしまいます。距離を置いて客観的に、冷静に見てくれるからこその専門家 (プロ)であって、患者さんといたずらに感情的に関わって、変に依存関係になってしまうのも考えものでしょう。「話を聞いてくれるからよい医者なのか」というと、必ずしもそうではないかもしれません。あまり、「あたたかい、冷たい」だけで判断しないほうがよいのではないか、と思います(※)。
あとはそもそも、適応障害の症状でそうセンシティブに感じてしまっている可能性があります。 調子がよくなってくると、主治医の態度の機微がまったく気にならなくなる、というのはよくあることだともいえるでしょう。あまりにも主治医の一挙手一投足が気になるようなときは、「余程、敏感になっているんだな。まだまだ体調が悪いんだな」とむしろ思ってさえよいかもしれません。
(※)私は、「話を聞いてくれるのが、悪い」とは一言も言っていません。「話を聞いてくれるから、絶対によい」わけでは「ない」と書いているだけです。話を聞いてくれるのは、基本的には「よい」ですが、それだけではないですよね、ということを言っています。
A.違います。「仕事、どうされますか?」と聞いている時点で、「こりゃあ、診断書出せるな。ただ、仕事を休むかどうかを最終的に決めるのは患者さん次第だ。さあ、自分の口から「休みたい」って言ってごらん」ということを含意しているのです。でもこの対応を「こんなに辛いと言っているのに、休めとは言われなかった」と<解釈>してしまう患者さんはいます。この曲解も、人の言葉の裏を読むのに疲れた、適応障害の症状かもしれませんね。
そもそも病気を治すのは患者自身であって、医者はその治癒を助ける医学的パートナーです。ですから、どんなに辛い境遇を訴えても、主治医は原則、「仕事、どうされますか?」と本人の意思を問うフレーズしか言わないはずです。積極的に「仕事、休んでください」というと、「私権の制限」になってしまうことはこうやって言葉にしてみると明らかですよね。そんなことは普通しない(できない)のです。 医療的な措置として「休まなければ危険だ」とストップを掛けられる以外は、最終的に「休む」ことを決めるのは本人でしかないのです。そして医師は、その意思を尊重します。 「休みたい」と言っている患者に対し、「いやいや、まだ働けるでしょう」とは普通、言わないのです。
A.明確にあります。適応障害の場合は、必ず「外部環境(多くは職場環境)」"も"発病の原因に含まれるので、会社も必然的に対応や調整が必要になります(安全配慮義務があるため)。一方でうつ病の場合は、必ずしも「職場環境」を原因に含まない場合もあるので、会社が積極的に環境調整に対応しないことも、理屈上は起こり得るからです (あくまで理屈の上で、ですが)。会社が環境調整をするべき誘因を創り出すという観点でみると、「適応障害か、うつ病か」は重要な違いがあると言えるでしょう。
また、「適応障害」と「うつ病」は基本的には別の疾病ですので、例えば「同一疾病で〇年以内に休職した場合は、休職期間を通算する」というような就業規則が適用されている会社の場合は、当該期間中に例え違う職場環境によって「適応障害」を発症して休職してしまったとしても、それは「同一疾病 (類似の疾病)」と見なされ、休職期間を通算される可能性があります(公私様々な生活保障の期間が短くなることを意味します)。しかし、例えば「適応障害」が長期化し、実は環境要因以外の「うつ病」を発症したという診断書があれば、 「同一疾病」ではなく、「適応障害」と「うつ病」それぞれの疾病で休職期間が計算されるといったケースもあり得ます(この場合は、それぞれフル期間で公私様々な生活保障を受けることができる"可能性"があります)。ですから、生活の保障という観点でも、「適応障害」と「うつ病」を書類上、厳密に区分することがきわめて重要になってくるのです。
A.「医者に着くと安心して元気になる」という現象はよくあることです。そして、適応障害になるような人ですから、多少は「外ではよそゆきの顔になる (平たく言えば「内弁慶である」 )」ことくらい、百戦錬磨のお医者さんはお見通しです。調子よく「元気になりました」と言っていても、言葉の端々、行動の細かいところで「不安」や「焦り」が見られると、「あ、元気になっていないな」「取り繕っているな」というのはすぐに分かってしまいます。相手はプロですから、そんなことぐらいでは「特に問題ない」とは絶対に思われないので大丈夫です(そもそも病院に来ている時点で調子が悪いことは自明です)。このような心配は、元気な人からすると「そんなわけないだろう」と笑い飛ばせるのですが、適応障害真っ只中だと結構深刻な悩みだったりします。よくわかります。ただ、医者はプロフェッショナルです。いくつもの症例を見ていますので、「本当の体調」はまず確実に見抜けるはずです。そこは、安心して委ねましょう。
A.きわめて稀ですが、抑うつ症状が重症の場合、原則として本人の希望を汲んで入院を勧められる場合はあり得ます(いわゆる「強制入院」ではなく、任意入院であることがほとんどです (※))。
(※)任意入院(自発入院)以外の非自発入院を判定は、国家資格である「精神保健指定医」を有する医師が独占的に行えることとされています(精神保健福祉法)。
A.初診時などに、血液検査を行うことがあります。調べる目的は大きく分けると、以下の2つの観点があります(詳しくは主治医に確認してください)。
A.例えば、次のようなものが挙げられます。
精神症状:気分の落ち込み、不安感、イライラ、怒りっぽくなる
自律神経症状:のぼせ・ほてり・異常発汗(ホットフラッシュ)
身体症状(不定愁訴):頭痛・眩暈・吐き気・易疲労感(疲れやすさ)・肩凝り・腰痛・不眠症状(浅眠)
精神症状:気分の落ち込み、集中力の低下
身体症状(不定愁訴):性欲減退・不眠症状(浅眠)
A.自律神経失調の諸症状には、対処療法的に胃薬や止瀉薬(下痢止め薬)・下剤(便秘薬)・制吐剤(吐き気止め)、鎮暈薬(めまいの薬)、頭痛薬などが使われることがあります。しかし 、第一選択としてもっともよく処方されるのは、「向精神薬」でしょう。
適応障害で処方される向精神薬は、「抗うつ薬」「睡眠薬」「抗不安薬」が代表的です。抑うつ症状を改善する抗うつ薬にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などがあります。「不安感」を改善する抗不安薬には非ペンゾジアゼピン系(依存性がない、効果がマイルド)からペンゾジアゼピン系(依存性がある、効果が強い)の各種、 「不眠」を改善する睡眠薬にも即効性が高いものから持続性の高いものまで様々な種類があります。一般的には、依存が少なく離脱困難になりにくいマイルドな薬からはじめて、効果をみて、 症状によっていわゆる「強い薬」に移行していくことが多いです。
上記の「西洋薬」以外では、体質改善を目的とした「漢方薬」の処方も行われます。漢方薬は1剤で複数の症状に対応していることがほとんどですので、内服の絶対量を減らすことができるだけでなく、副作用や多剤併用を抑制できるという効果も期待できます。
A.適応障害の投薬治療の基本となるものが抗うつ薬です。脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の減少が抑うつ症状の原因(の1つ)と考える「モノアミン仮説」に基づいて開発されています。ただし、この仮説だけでは抑うつ症状のメカニズムをすべては説明できておらず、最新の学説である「ウイルス原因説」を含め、メンタル疾患の発生機序は完全には解明されていないというのが実情です。
実際、「抗うつ薬」だけを使った治療での抑うつ症状の改善割合は約50%、寛解に至る確率は約30%とされています(※)。このことから、適応障害は「薬を飲めば必ず治る」ということではなく、「休養」と「投薬」「認知行動療法」の組み合わせで症状を改善していく治療法をとることが 、少なくとも現代医学においては標準選択となっています。
(※)なお、投薬効果を高めるために、「非定型抗精神病薬(セロトニン・ドパミン拮抗薬)」や「気分安定薬」などと「抗うつ薬」を組み合わせる「薬物治療増強療法」という療法が取り入れられることがあります。増強療法は抗うつ薬による治療で十分な効果が認められない場合の効果が期待されます。
以下、抗うつ薬の種類について詳しく見ていきましょう。まずは伝統的な抗うつ薬である「三環系・四環系抗うつ薬」です。代表的な薬も箇条書きで示します(以下同)。
ドグマチール(スルピリド)など。
続いて、「新規抗うつ薬」について見てみましょう。近年では、これらの「新しい薬」が第一選択として使われることが多いようです。
デシレル・レスリン(トラゾドン塩酸塩)など。
ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)、パキシル(パロキセチン塩酸塩)、デプロメール・ルボックス(フルボキサミンマレイン酸塩)、レクサプロ(エスシタロブラムシュウ酸塩)など。
サインバルタ(デュロキセチン塩酸塩)、トレドミン(ミルナシプラン塩酸塩)、イフェクサー(ベンラファキシン塩酸塩)など。
レメロン・リフレックス(ミルタザピン)など。
A.抑うつ症状のうち、パニック障害のほか、不安や緊張などが強い場合に用いられることが多い薬です。症状を抑えるために効果の強いベンゾジアゼピン系の薬を使用することが多いですが、 一般的に依存性がある薬が多いため適応障害においては長期投薬をされることはまれで、しばしば通院初期の、特に不安感情が強いときの頓服薬として処方されることが多いです。
セディール(タンドスピロンクエン酸塩)など。
デパス(エチゾラム)、レキソタン(プロマゼパム)、ワイパックス(ロラゼパム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)、ソラナックス(アルプラゾラム)、セルシン・ホリゾン(ジアゼパム)、セレナール(オキソゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)など。
A.睡眠薬(睡眠剤とも)は、抑うつ症状のうち、睡眠障害(熟眠できない、入眠できない、中途覚醒・早朝覚醒など)を改善する薬です。抗不安薬にも使われるベンゾジアゼピン系の薬剤のうち、睡眠を起こす作用が特に強いものについては睡眠導入剤、睡眠薬としても使用されています。
昨今では、副作用が少なく、依存性もないかほとんどない、より「安全」とされる非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬も導入されています。これらは切れ味のよさというよりは、睡眠リズムを整えるとか、入眠をスムーズにするという作用を期待しての投薬となることが多いようです。
レンドルミン(ブロチゾラム)、リスミー(リルマザホン)、サイレース・ロヒプノール(フルニトラゼパム)など。
ベルソムラ(スポレキサント):オレキシン受容体拮抗薬、ロゼレム(ラメルテオン):メラトニン受容体作動薬
アモバン(ゾピクロン)、マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩)、ルネスタ(エスゾピクロン)など。
ドリエル、リポスミンなど
A.一剤で複数の症状に対応している漢方薬は、全身のバランスを整えることで適応障害の諸症状を改善していく効果があります。即効性がなく、効き方がマイルドな半面、西洋薬にあるような依存や離脱症状などの危険な副作用はないとされています。
西洋薬は即効性が高いため、特に発症初期の「抑うつ症状が強く、QOLの観点からもただちにつらい症状を取り除く」ことにはきわめて有効ですが、しばしば依存などの問題を孕んでいます。 そこで、西洋薬でパキッと強い症状を落ち着けてから、漢方薬で心身のバランスを改善していくというアプローチが取られることもあります(もちろん、西洋薬のみのアプローチ、漢方薬のみのアプローチもあり得ます)。
ほてり感、怒りっぽい、イライラしている、落ち着かない、のぼせ感、鼻血、不眠、胃炎、女性ホルモンの変動による精神不安定、めまい、動悸、湿疹、皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎、目の充血、顔の発赤
疲労、顔色が悪い、血の巡りが悪い、不眠症、不安、悩みがある、寝汗、微熱、熱感、食欲低下、胃もたれ
のぼせ感、肩凝り、疲れやすい、不安、いらだち、動悸、めまい、便秘、冷え症、虚弱体質、女性ホルモンの変動による精神不安定、不眠症
軽い悪寒、頭痛、鼻づまり、食欲不振、軽い抑うつ状態、神経質でちょっとしたことで落ち込んだり悩んだりする
胃炎、胃酸過多、過敏性腸症候群、鼻炎、気管支炎、腰痛・下肢痛、精神不安、筋緊張、手足の冷え
不安、動悸(特にお腹周り)、不眠、便秘、高血圧、のぼせ感
疲れやすい、倦怠感、貧血気味、口渇、動悸・息切れ、神経過敏、女性ホルモンの変動による精神不安定、不眠(特に眠りが浅いタイプ)、微熱、寝汗
腹痛、便秘、胃炎、高血圧、肩こり、頭痛、のぼせ、いらだち、ほてり感
不安感、のどの異物感、抑うつ、神経性胃炎、咳、しわがれ声、息苦しさ、動悸、不眠、不安神経症型の抑うつ症状全般
めまい、立ちくらみ、頭痛、頭重感、冷え症、胃腸虚弱
怒りっぽい、興奮しやすい、イライラする、かんしゃくを起こしやすい、不眠、歯ぎしり、女性ホルモンの変動による精神不安定、筋緊張
怒りっぽい、興奮しやすい、イライラする、かんしゃくを起こしやすい、不眠、歯ぎしり、女性ホルモンの変動による精神不安定、筋緊張、抑うつ、胃腸障害(抑肝散よりもより胃腸が弱い人に向く )など
胃弱、胃炎、消化不良、食欲不振、胃痛、吐き気・嘔吐、みぞおちのつかえ感、易疲労感、貧血、手足の冷え
A.一般的に抗うつ薬は即効性が低く、効果が現れるまでに2週間程度かかると言われています。「効果がないから」「休んだら却って具合が悪くなった(別のところで書いたように、実はそれが普通です)」と自己判断でやめるのは危険です。
一方で、併用される事の多い睡眠薬は即効性が基本的には高く、概ね最初の服用から効果を感じることができるでしょう。また、不安障害やパニック障害などが症状で発言している際に頓服で併用されることの多い抗不安薬も、同様に効果が出るのが早い薬とされています。
A.一般的なSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)でご説明します。
体内の縫線核で産生されたセロトニンは、脳内においてはシナプス小胞の中に蓄えられており、神経細胞の末端部から放出されて、シナプスを介して次の神経細胞の受容体に結合します。セロトニンが次の神経細胞の受容体に結合すると、シグナルが伝達されます。
放出されたままの(次の神経細胞に結合されていない、シナプスに存在する)セロトニンは、「セロトニントランスポーター」のはたらきによって、再び1つ前の細胞のシナプス小胞に取り込まれます。これを「セロトニン再取り込み」と呼んでいます。
すなわち、「セロトニン再取り込み阻害薬」とは、読んで字のごとく「セロトニントランスポーターによるセロトニン再取り込みの働きを阻害することで、セロトニンの再取り込みを抑制する」薬ということになります。セロトニンの再取り込みが阻害されることによって、シナプスへのセロトニンが蓄積されることになります。この結果、セロトニン受容体を介してシグナルが強まっていきます。
シグナルによって、細胞体の自己受容体が刺激され、一時的に神経細胞の活動が抑制されます。するとセロトニンの分泌が押さえられ、結果として脳内のセロトニン濃度は安定していくことになります(このメカニズムについては、次項でも解説していますので併せてご覧になってみてください)。
脳内のセロトニン濃度が安定した状態でSSRIの服用を続けることで、神経細胞の活動が戻り、セロトニンの分泌が再開される(ただしこのときも、セロトニンの再取り込みは阻害されたままである)ことで、シナプス間のセロトニン濃度が上がっていきます。
こうして一定のセロトニン濃度に達することで、不安や抑うつといった症状が改善していくのです。
A.適応障害の治療で一般的なSSRIの例でご説明します。SSRIを服用することで、上項で解説の通りセロトニンの再取り込みが阻害され、脳内のセロトニン濃度は当然に高まります。しかし、セロトニン濃度が急激に高まったことで、逆にセロトニン自己受容体が刺激されて神経活動は抑制され、(自分自身による)セロトニンの分泌が一時的に低下するのです。この状態が数週間続いた後、徐々に自己受容体が脱感作し(簡単に言えば状態への過敏状態から刺激への「慣れ」が生じる閾値に達したことで)、神経活動が回復すると、(自分自身による)セロトニンの分泌量が高まって、脳内のセロトニン濃度が治療有効なレベルに到達することで、抑うつ症状が徐々に改善してくる(効果を自覚できる)ようになると考えられています。
セロトニンの分泌量が、治療有効なレベルにまで達するようになると、否定的な思考ループの原因となっている脳のデフォルトモード・ネットワーク優位の状況が、徐々にワーキングメモリー・ネットワーク優位の状況に切り替わっていくようです。この脳の状態変化が起こることで、抑うつ症状が改善するようです。
セロトニンの濃度回復→脳の状態変化が起こるまでが、概ね4週間程度とされています。ここまでが、「効果が出るために時間がかかる」理由となります。
4週間をめどに抗うつ薬を継続し、改善効果がみられたら、そのまま服薬を続けることでさらに状態が良化していくことが期待されます。別項で記載していますが、改善したら終わり、ではないのが服薬です。「改善した状態」を長く保つことが重要なのです。
セロトニンの濃度を高い状態に保ち、ワーキングメモリー・ネットワークが優位の状態を維持することで、症状の改善・寛解をはかっていくのが投薬の基本となります。服薬は、症状によって数か月~1年~数年程度かかる場合もあります。「セロトニンの濃度を保つことで、よい脳の状態を維持していく」、ということを意識して、気長に治療に臨みましょう。
A.脳内の「偏桃体」は、不安や恐怖感を司る部位です。セロトニンは、その偏桃体の抑制性ニューロンなどに作用し、戦闘態勢の脳(活性化した偏桃体)を鎮める役割を持っているからです。
そもそもストレスを契機とした戦闘態勢は、前頭葉や海馬などから受け取った情報を元に偏桃体が生み出した「危機感」を、大脳辺縁系や青斑核などに情報として発することで生じ、しばしば、抑うつやパニック発作などの引き金となります。
一方で偏桃体には、これと逆の作用、すなわち、不安を押さえる抑制系の神経細胞も持っています(抑制性ニューロン)。
抑制性ニューロンにはセロトニン受容体があって、背側縫線核にある「セロトニン分泌ニューロン」から刺激を受け取ります。刺激を受けた抑制性ニューロンからはGABA(ガンマアミノ酪酸)が放出されて、偏桃体の中にある不安を生み出す神経細胞を抑制します。またセロトニン自体も、不安に関係する神経細胞に直接はたらきかけるとされています。
このようにして、セロトニンの濃度が高まることで、「不安を感じる神経系の活性を抑制する」ことにつながり、抑うつの改善につながっていくのです。
A.抗うつ薬は胃腸症状(吐き気、便秘・下痢など)の副作用が出やすいものがあります(個人差があります)。飲み初めの1~2週間、ただでさえ体調が悪化しているうえに、ちょうど「効果を感じにくいとき」に気持ちが悪くなるものですから、むしろ具合が悪くなった、という気分になることは容易に想像がつきます。副作用が強すぎて辛いときは、遠慮なく医師に相談しましょう。 症状がひどい場合は胃薬などを処方してもらったり、薬の種類を変えてもらったりすることもあります。
A.もっとも多いのが、服薬初期(多くの場合、長くて2週間程度)の胃腸症状です。吐き気や腹痛・下痢などが起こります。実際、服薬初期の間、胃薬や制吐剤などが併用して処方されることもあります。また、めまいが起こることもあります。
これらは服薬初期に多いので、「休んだら、余計に具合が悪くなった」「薬を飲んだはずなのに、余計に体調が悪くなった」と捉えてしまいがちです。
しかし、徐々にこの反応は落ち着いてきて、(当然ながらまったく起こらないこともありますが)数日から1~2週間程度で次第に収まってくることが一般的です。
A.症状が強すぎる場合は、躊躇なく医師に相談しましょう。
A.SSRIなどの抗うつ薬は、脳内のセロトニン濃度を高めることで抑うつ効果を期待するくすりです。しかし、セロトニン受容体は脳内だけでなく消化管の迷走神経にも存在し、この消化管の迷走神経が抗うつ薬によって活性化されることで、吐き気をはじめとする胃腸症状を引き起こしてしまうのです。
なお体内のセロトニンの9割は消化管で作られているため、もともとセロトニンの胃腸への影響は大きく、抗うつ薬によってセロトニン受容体が影響することで、胃の働きが弱まったり、腸管の蠕動運動を促進することによる下痢・腹痛 、食欲不振などが起こるのです。また血管性の迷走神経反射によってめまいを引き起こすことも知られています。
A.変わります。上述の「胃腸症状」は代表的な副作用ですが、これはセロトニンに関連する副作用でした。SSRIやSNRIなどセロトニンを増やすくすりで起こるもので、このほかにも「めまい」や、セロトニンの血管拡張作用による「ほてり」なども副作用として挙げられます。
このほか、SNRIではセロトニンだけでなくノルアドレナリンを増やす作用もあるため、ノルアドレナリンの上昇に伴う諸症状も副作用としてみられることがあります。動悸や手の震えなど(振戦)のほか、めまい・ふらつき・立ち眩み、頻脈なども見られます。
古くから使われている三環系・四環系の抗うつ薬は、SSRIやSNRIとは違う機序で、アセチルコリン、ヒスタミン、アドレナリンといった受容体を阻害するため、抗コリン作用、抗ヒスタミン作用、抗アドレナリン作用が副作用として発現しやすいとされます。
抗コリン作用の副作用としては、代表的なものに「口の乾き」「目の乾燥感」があります。このほか、排尿困難や便秘、物が二重に見える(複視)といった症状が出現することもあります。
抗ヒスタミン作用としては、眠気が代表的ですが、食欲の亢進、体重増加といった症状もよくみられます。
抗アドレナリン作用は、眠気のほか、めまい・ふらつき・立ち眩み、頻脈などが挙げられます。
このほか、抗うつ薬の副作用として、発疹やかゆみといった皮膚症状、肝機能障害(健康診断や人間ドッグにおいて肝数値の悪化を指摘されるなど)、性機能障害(不感症、特に男性の場合はEDや遅漏)などもみられます。
A.いいえ。副作用は、基本的に「体質に合わない」ために起こるのであって、効く/効かないとはまた別の話です。特にこれといった副作用を感じることなく、抗うつ薬が十分に作用するというケースがほとんどです。安心してください。
A.はい、あるようです。数か月程度たってから副作用として消化器症状などが出てくるケースもあると言われています。とくにこれといった問題がない状態で原因不明の胃腸症状が続くなど、副作用を疑うような症状が出た場合は、一度主治医や薬剤師に相談してみることをお勧めします。
A.自己判断での服薬中断は危険です。主治医や薬剤師に相談しましょう。
A.上述の通り吐き気などが比較的よくみられる副作用ですが、危険な副作用もあります。次のような症状が発現した場合は、すぐに医師・薬剤師に相談しましょう。
●精神症状:不安、イライラする、興奮する、混乱する、動き回るなど
●錐体外路症状:手足が勝手に動く、震える、身体が硬直する・固くなるなど
●自律神経失調症状:高熱が出る、異常発汗、下痢、頻脈など
●精神症状:不安感、焦燥感、過興奮、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア(じっとしていられない)、躁状態、情緒不安定
●自律神経失調症状:パニック発作、易刺激性、不眠
●精神症状:不安感、焦燥感、倦怠感
●身体症状:頭痛、吐き気
●自律神経失調症状:ふらつき、めまい、頭痛、頭の中がピリピリする感じ、不眠
A.適応障害で抗うつ薬を服用する最大の目的は、抑うつに伴う様々な心身の症状を押さえ、気分を落ち着けたり明るくしたりすることで、「休養」や「仕事」など、"本来やるべきこと"に意識を集中させ、「安心して」日常生活を送れる状態にすることです。可能な限り副作用や依存を防ぎ、ともに過ごすパートナーとして付き合っていきたいものです。以下、留意点を挙げたいと思います。
A.うつ病の場合ですが、ストレス源から離れて適切な休養をとれば、1年で40%程度は(薬がなくても)改善に向かうと言われています。一方で、抗うつ薬を用いることで8週間の治療で約50%程度が「改善」するとされます(何らかの効果を感じる割合は、4週間で8割、6週間で9割とも言われるようです)。
すなわち、ストレス源から離れて適切に休養をとることで、自然に良くなる場合もあるものの、服薬によってその回復が早まる、ということが言えそうです。4週間(1か月)~8週間程度(2か月)経つと、辛い症状がラクになったと感じられると確率が高まるとみてもよいでしょう。
最終的には、薬に反応が悪い「治療抵抗性」のケースは10%程度とされているようです。総合的にみて、医学の力に頼るほうが圧倒的に早く治癒に向かいやすい、ということは言えそうです。
A.多くの抗不安薬は、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬です。脳の異常な興奮を押さえる働きをしている神経伝達物質である、GABA(ガンマアミノ酪酸)のはたらきを強めることで、抗不安作用・筋弛緩作用・催眠作用・抗痙攣作用を期待します。抗不安作用の強いものを抗不安薬、催眠作用が強いものを睡眠薬として用います(睡眠薬の機序の項も参照してください)。
ベンゾジアゼピン系のくすりは、脳のベンゾジアゼピン受容体に結合し、GABAの作用を活性化させます。GABAが脳の興奮を抑えることで、不安感情を抑制するのです。
A.適応障害の発病初期にパニック発作などが見られる場合に、その強い不安感情を軽減させる目的で処方されるケースの多いベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、催眠作用や筋弛緩作用を持っているため、「眠気」や「ふらつき」「めまい」「身体に力が入りにくい」といった副作用が起こりやすいとされます。効果が強すぎると感じたら、医師と相談のうえ、作用の弱い薬(効果、持続期間ともに)に切り替えることも検討したほうがよいかもしれません。
抗不安薬は、不安感情を取り除くためには切れ味がよく、抗うつ薬と比較しても効果をすぐに感じやすいという長所がある半面、長期連用や服用の量が多くなることで耐性がついてしまうことも懸念されます。依存度が高くなると、断薬するときに却って不安感が強まったり、焦燥感が出たり、不眠状態を引き起こすこともあります(退薬症状)。何よりも用法容量を守ること、急な減薬は行わないことが重要です。
この耐性の問題があることから、適応障害の投薬については、抗不安薬においては初期の緊急避難的な服用にとどめ、基本的には抗うつ薬の服薬を中心として不安感情の軽減を図っていくことが多いようです(もちろん、パニック発作などの強い不安感情が見られる場合は、その症状軽減のために抗不安薬を一定期間服薬するという選択が取られることはあり得ます)。
A.はい。適応する症状により、4つの分類ができます。
(※)効果が早い睡眠薬では、服用後に長く起きていると無意識で(夢うつつで)思わぬ怪我をする危険性があります。服用したら、すぐに床につくようにしましょう。
A.はい。大まかな分類はあったとしても、個人差は非常に大きいといえるでしょう。
A.大きく分けて、以下のような種類があります。それぞれ説明していきます。
(※)ω3受容体は、詳細が解明されていない。
A.睡眠薬の副作用としては、以下のようなものが挙げられます。睡眠薬の中には依存性の高いものもありますので、適応障害の治療の場合は、睡眠状態が回復して来たときには、主治医と相談のうえ、睡眠薬を減薬したり、頓服に変えたりして、抗うつ薬よりも早期の段階で服用を止めていくことも多いです。
一般的にこれらの副作用は、アルコールとの併用で悪化したり、あるいは効果を短期間で打ち消して不眠症状が悪化したりすることもあるようです。睡眠薬を服用している間は、アルコールの接種を避けましょう。このほか、以下のような副作用が知られています。
A.はい。まず、例え「副作用がない」薬があったとしても、どのような薬でもあり得る依存が「精神的依存」です。特に睡眠薬は、「入眠障害」(寝付けない)、「中途覚醒」(何度も目が覚める)、「早朝覚醒」(早朝に目が覚めてしまう)、「熟眠困難」(朝すっきりと起きられない)など、辛い不眠症状を服用初期からスパっと解放してくれる薬です。最初は喜んで服用しますが、徐々に、「これを飲まないと、また夜眠れなくなって、あの苦痛を味わうことになってしまうのではないか」と不安になって、恐怖心から睡眠薬を手放せなくなることがあります。もし、このような心理状態になっていることに気づいたら、躊躇なく医師に相談しましょう(この不安感は、依存というよりもまだ適応障害の症状が回復していないだけかもしれません)。
もう1つの依存が、「身体的依存」と呼ばれる状態です。これは、心理的というよりも身体が依存をしてしまっている状態です。GABA受容体に作用するベンゾジアゼピン系、また非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬で起こりやすいとされます。理由は、薬によってGABA受容体が刺激されることが恒常化することで、むしろ「薬で刺激されていない状態」が異常事態として身体に認識されてしまうからです。
身体的依存がすすむと、睡眠薬をストップしただけで不眠、イライラ、不安感などの症状を惹起し、睡眠薬を手放すことができなくなってしまいます。
A.薬の刺激に身体が慣れてしまい、薬効が薄くなることが考えられます。同じ効き目を求めて、薬の量が増えることが考えられます。薬の量が増えると、畢竟、副作用も危険性も高まります。頭痛や眩暈、疲労感、胃腸障害や食欲不振、意欲低下のほか、記憶障害や肝機能障害などを引き起こすこともあります。
A.次のような対策が考えられます。
A.以下のチェックリストを参考にしてください。当てはまる項目がある場合は、早めに主治医に相談しましょう。
A.休養と投薬で体調がよくなっているだけで、まだ本当に体調が良くなっているわけではない可能性があります。製薬会社の肩を持つわけではありませんが、自己判断で薬をやめるのは、再発や慢性化の危険もあり、きわめて危険な行為とされています。 これも、確率として、医学のプロの診断を仰いだほうが早く回復する可能性は高くなるのではないかと思います。
A.水虫の治療をしたことがある人は分かると思うのですが、見た目の症状が収まったとしても、角質層の下には水虫の原因となる菌が潜んでいて、それを根治させない限りは水虫は容易に再発します(治療をサボると長期化します)。水虫と一緒にするのはどうかとお叱りを受けそうですが、要するに「症状が見かけ上収まっていること」と、「薬を使わなくてもよいこと」との間には、乖離があるということです。上記でも記載したとおり、素人判断で服薬を中断することは基本的にはハイリスクな行為でしかありません。必ずプロの判断を仰ぐようにしたいものです。
A.一般的に「適応障害」の場合、適切な休養が治療の第一選択とされ、投薬が絶対というわけでもないと言われています (実際に、最初は投薬をせずに様子を見るケースもあるようです)。「まずは休養すること」が最優先とされますから、薬を飲むこと自体が不安な場合は、一度主治医と相談することをお勧めします。
ただし、「薬を過度に不安に思うこと」そのものが適応障害の認知の歪みによる症状として現れている可能性もあります。実際は、不安感が強い場合は抗不安薬などでまずその不安感情をラクにしたり、睡眠障害が起こっている場合は睡眠薬によってまずは「眠れる」生活サイクルを作ったり(眠れないと必ず人はおかしくなります)、診断上、やはり「抗うつ薬」を併用して様子をみておきたいと判断した場合は最初から抗うつ薬を出されることもあるでしょう。まずは素人判断の前に、主治医の診断に従って服薬することが最優先といえるでしょう。
A.はい。一般的には「寛解」するまでは通院・投薬治療が必要です。期間は、症状や復職後の回復状況にもよりますが、短くても6か月程度、長ければ数年単位での通院が必要な場合があります。頻度は、2週間~1 ・2か月(症状が軽快してくれば3か月程度にまでスパンが伸びることもある)に1回程度となることが普通です。主治医や職場と相談し、スケジュールとしては可能な限り最優先で通院を継続できれば、予後も良好になります。調整も仕事の一種と割り切り、通院時間は定期的に必ず確保するようにしましょう。
A.当該の病院でしか治療ができない状態であれば、定期的な通院はやむを得ないでしょう。一方で、症状が良化しており、経過観察が中心であれば、紹介状を書いてもらったうえで近所の病院へ転院することは不可能ではないといえます(場合によっては「治療」と「経過観察」を分業することもあり得ます)。いずれにしても、自己判断はせず、まずは主治医とよく相談しましょう。
A.産業医、上司、会社の健康保健スタッフと相談し、可能な限り同じ病院に通院できるように業務上の配慮をしてもらうことを検討しましょう。月に1回、通院の時間帯だけは「時間有休」「フレックス勤務上の不就労時間帯とする」「やむを得ず時間帯欠勤とする」などの方法が考えられます(会社の就業規則にもよります)。 また最近では、服薬中心であればオンライン診療を行っている病院も増えてきています。
対応が難しければ、主治医と相談し、通院曜日・時間帯について調整し、それでも難しい場合は転院を検討せざるを得ないでしょう。何をおいても、通院時間そのものは最優先でしっかりと確保することが重要です。
A.いいえ。復職は、あくまでも「働きながら日常生活を送れるようになった」ことを示すだけで、「治療の終了」を意味していません。治療は、症状が長期的に安定し、主治医が「完全に寛解した」と判断するまで続きます。治療継続期間(短くて半年、長くて数年単位でかかることもあります)は、服薬も続くと思ったほうがよいでしょう。
A.症状が寛解し、本人の意思もあり、主治医が問題ないと判断した段階でまず「減薬」していくことになります。何よりもまずは「症状が安定していること」が条件です。「症状が安定している」とは、抑うつ症状が寛解しており、体調変動の波も少なくなっており、社会生活を問題なく送れているということです。そのようなタイミングで、まずは頓服薬から、続いてメインで使用している薬を減らしていくことになるでしょう。いきなり全部やめると、「離脱症状」(頭痛、めまい、動悸、発汗、しびれなど)といった不快な症状に苛まれたり、睡眠薬の場合は「反跳性の不眠」が起こってしまうケースもあるので、普通は「様子を見ながら」慎重に減薬していきます。 減薬や断薬の自己判断は危険とされます。必ず主治医と相談して取り組みましょう。
A.抑うつ症状が改善し、社会復帰を果たして寛解した状態になっても、油断はできません。メンタル疾患は残念ながら再発しやすいという特徴があるため、寛解してからも半年~数年程度は薬物治療を継続し、抑うつ症状の再発を予防しながら、「調子のよい状態」を維持することが大切です。調子のよい状態をキープできればできるほど、心の「易刺激性」も回復に向かい、それだけ予後は良好になるとされています。
これはちょうど、怪我をしてかさぶたができたら、そのかさぶたをそっとしておくことと似ています。変にいじらず、またかさぶたの部分には負荷をかけず、きれいにかさぶたがはがれるまで「大丈夫な状態」を維持しておくことが大切だと思います。ただでさえデリケートになっているかさぶた周辺を刺激すると、再び出血してしまう、ということは自明のことです。
A.依存性があったり、耐性がついたりする薬はもちろんあります。ただし、用法用量を守り、指示通りに通院している限りにおいては、社会生活に影響を及ぼすほどの「依存」「耐性」がつくことはないとされています。依存や耐性を過度に気にしてしまうことそのものが、適応障害の症状の1つの可能性があります。まずは、「抑うつ気分が軽くなり、活動する元気が出る」とか、「毎日しっかりと寝ることができる」という状態を作ることを優先しましょう。
なお、復職ないし症状が寛解してから半年~1年半程度は何らかの薬(しばしば、セロトニン等を増やし、安定させる抗うつ薬)を飲みつづけることが一般的です。長く感じるかもしれませんが、 よく考えてみると、ステロイド剤や抗生物質などの「治ってからもしばらくは飲み続けたほうがよい薬」や、花粉症などの抗アレルギー薬、高血圧の薬など「何年にもわたって飲む薬」は、意外とたくさんあります。 「精神」という目に見えない部分に作用する薬だと思うと恐ろしく感じることはやむを得ない部分もありますが、作用するのが臓器としての脳だと考えると、「抗アレルギー薬を飲み続けること」と、現象自体はそれほど変わりのないものです。症状があるうちは、やはり、薬の力に頼ることも大切なのではないか、と思います。また依存や耐性という意味では「お酒」や「煙草」のほうが余程強いんじゃないの、という気もします。
A.よくある誤解は、アルコールなどの濫用によって起こるような「薬物依存」をイメージしてしまうことです。あたかも、精神病薬に心身が支配され、「それなしでは生きていけない」という状態になるような状態を想起してしまうのです。しかし、ここでの「依存」というのは、適正に処方された範囲で起こる「常用量依存」のことを指します。常用量依存は、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬で起こる不快な諸症状のことを指します。
では、この「常用量依存」では、どのようなことが起こるのでしょうか。代表的な3つの症状を挙げてみたいと思います。
1つが、薬で押さえられていた症状が出てきてしまう「再発」「再燃」という現象、2つめが「反跳性不安」「反跳性不眠」、そして3つめが「離脱症状」です。
不安感、焦燥感、気持ちの昂り、記憶障害、集中力の低下、抑うつ、イライラ感、不眠、離人感
めまい、ふらつき、食欲低下、筋肉痛、痙攣、悪心・嘔吐、振戦、心悸亢進、頭痛、頭がピリつく感じ、皮膚のかゆみ
知覚過敏(光、音、歯)、身体のゆれ(動揺感)、味覚の異常(金属や血の味がする)
A.「長期使用」と、「急な断薬」が原因となることがほとんどです。
まず「長期使用」についてですが、「離脱症状を起こしやすい薬」の場合、3~4か月程度の服用でその頻度が高くなるとされ、高容量・多剤併用があるとそのリスクも高くなるとされます。もう1つが「急な断薬」です。主治医と相談して、徐々に、時間をかけて、少しずつ服用量を減らしていくことが重要です。
それよりもまず大切なことは、可能な限り、「依存を起こしにくい薬剤を、できるだけ短い期間服用する」ことです。
A.いたずらな長期服用を避ける、急に断薬しない、段階的に減薬する-の3点を守れば、極端な常用依存で苦しむ確率を、確実に減らすことができます。依存を恐れるあまり薬による治療を拒否するのは、せっかくの治療の機会を自ら捨て去っているのと同じです。 自己判断ではなく、専門家による診断への「正しい理解」「正しい対応」で、 まずは適応障害に伴う辛い心身症状の解消を目指していきましょう。
A.心配な場合は基本的には医師・薬剤師に相談いただくことを大前提としての記述です。
「飲み忘れ」は、忙しい日常の中では起こり得る現象です。結論としては、症状がある程度安定している場合においては(※)、1回程度の飲み忘れではすぐに深刻な影響が生じることはないとされますので、まずは安心ましょう。その場合、基本的には、まとめて服用することはせず、「気づいたとき」に飲むようにすれば大丈夫でしょう。
(※)症状が安定していない時は、基本的に「飲み忘れ」は少ないはずです(その症状で悩んでいるわけですから)。したがって、飲み忘れが起こるというのは「症状が安定してきている」証拠とも言えるかもしれません。ちなみに私の場合、パニック障害で適応障害のときよりも強い抗うつ薬を服用していた時に、1日飲み忘れるだけで一瞬、頭の中に電気が走ってふわふわする現象(いわゆる「シャンビリ」として知られています)を数度となく経験したことがありました。今回の適応障害のケースでは、この時よりも 効果がマイルドな処方薬であったことから、1日の飲み忘れで自覚的な影響はない・・・・・ように思います。いずれにしても個人差があるはずですので、「飲み忘れはできるだけしない」ということを大前提にしつつ、過度に心配しすぎないという心持ちは必要かと思います。
ただし、例えば次の薬を飲むタイミングに近いとき(服薬の数時間前程度)に飲み忘れに気づいた場合は、まとめて複数分飲むことは避け(1回分飛ばして)、以後、規則正しく服用するようにします。
抗うつ薬の場合、成分の血中濃度が安定するまでに数日を要する場合もあるとされるので、多少の時間のずれは許容してでも、気が付いたときに「1日の回数」を守ることが大切とされます。 ルーズになることなく、「できるだけ薬効成分の血中濃度を整える」ということはイメージしておかれてもよいかと思います。
また睡眠薬の場合は、就寝前に飲むことが重要ですので、飲み忘れた分は飛ばして(朝飲むようなことはせず)、次の日から規則正しく服用するようにします。
なお、飲み忘れが続いたときは、それを防ぐ手段(枕の上に置いておく、など)を取り、「飲まないこと」が習慣化しないように留意しましょう。処方薬の安易な飲み忘れ (不規則な服用)は、回復を遅らせる原因となります。
A.飲むタイミングで必ず目に留まるように準備をすることが肝要です(もちろん、「風景」になってしまうおそれはありますが・・・)。
A.基本的に何らかの薬を処方されているときに当該処方外の薬を服用する際には、市販薬を含めて医師又は薬剤師に確認することが推奨されます。一般的なものが風邪薬や花粉症の薬(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー剤など)、胃腸薬、鎮痛薬(頭痛薬)などかと思います。これらの作用機序は異なるとはいえ、いずれにしても専門家に相談するのがベストでしょう。
仮に飲み合わせとしては問題がなくても、例えば一部の「花粉症の薬」と「抗うつ薬」は眠気を催す場合がありますので、機械類の操作や運転などには注意が必要というケースもあります。
A.すべてに言えることですが、本人が「効いた」と実感できれば、それはプラセボでも立派な薬になり得ます。まさに「鰯の頭も信心から」です。
ただし、医薬品として認められている「薬」と、効果があるかもしれないという民間療法とは、(将来的にそのエビデンスから医学として加えられるという可能性は置きつつも、現時点では)「別物である」という峻別は必要でしょう。あくまでもベースは「休養」「服薬」「認知の歪みに気づく」の3本柱であって、それらを無視して「この方法しかない」と縋ることは慎重になるべきかもしれません。
その前提において、一部の自然食品(いわゆるメディカルハーブ(※))は抗うつに効果があるとされてきました。しかし、抗うつ薬との併用が禁忌だったり、本当に平均的に効果があるか医学的に立証されていない(医薬品として認定されていないという意味です)可能性もあったりするため、特に既に適応障害の治療を受けている場合においてはその使用は慎重であるべきでしょう(医師・薬剤師への相談を推奨します)。また、治療前であっても、症状が酷い場合は躊躇せずに医学の力を頼るべきかもしれません。
そのうえで、人口に膾炙している自然食品には、例えば以下のようなものがあります。
(※)日本語にすると、要するに「薬草」ということになるのですが、漢方薬、および正規の"医薬品"というニュアンスではないことを示すために外来の表現で記載しています。
A.そのような研究がなされていることは事実のようです。緑茶に含まれる「テアニン」という物質が、脳の興奮を鎮め、リラックス効果をもたらすとされます。「お茶を飲むと、 なんだかほっとする」のは「気のせい」ではないのかもしれませんね。
A.「そもそも薬効があれば医薬品となっているはず」ということを前提として、以下のような栄養素の減少(補給とは述べていないことに注意)はうつ病との関連性が指摘されています。
ここで大切なことは、例えば「ビタミンDが有効」というときに、「ビタミンDばかりを摂取する」からといって抑うつ症状が改善するわけではない、ということです。
A.そのような研究結果があることは事実のようです。乳酸菌を含む飲料・食品(ヤクルトやヨーグルトなど)などの「プロバイオティクス食品」や、オリゴ糖や食物繊維といったいわゆる善玉菌を増やす「プレバイオティクス食品」によっておなかの調子が整ってくると、抗うつ効果があるとされています。
A.いいえ。そのようなエビデンスはありません。そもそも、うつ病であっても、1/3(~2/3)ほどの人にとっては薬が著効ではないともいわれています。適応障害であっても、ここまで述べてきたように適切な休養と投薬との組み合わせで、臨床的に効果がみられるからこそ、再発防止も含めて処方されているものです。
A.様々なアプローチがありますが、自分自身の内面から生み出される「不安感情」と、それらの「自意識過剰」や「思い込み」の存在に「気づき」を得ることで、行動を状況に適応化させていくという治療の根本的な思想はほぼ同じと捉えてよいでしょう。
あるストレス状況に対して、「自分はダメだ」という(ほとんどの場合は)思い込みが加わり、自分のことを実際以上にネガティブに評価し、ぐるぐるとマイナスのことばかりを考えてしまう。これによってさらに不安感が増幅し、抑うつが坂道を転げ落ちるかのように悪化していく- これが抑うつが悪化する典型的な負のループですが、その前提には、このような「自意識の過剰」(マイナス感情の暴走)もあるということです。
小学校の頃、当番で黒板消しをしているときに、「誰かに見られている気がして振り返ったら、誰も見ていなかった」という経験をしたことはありませんか?これと同じで、他者は自分が思っているほど自分のことを見てもいないというのが真実です。またよく言われることですが、「隣席の同僚の1週間前のネクタイの柄」など、誰も覚えていないのです。
しかし、こういうことを知識としては知っていても、ストレスによって自分の感情が暴走すると、冷静に周囲を観察・評価することができなくなってしまうのです。
暴走した感情で周囲と接することになると、それを修正することが難しくなり、益々ストレスを感じやすくなってしまいます。この悪循環を断ち切り、自意識の過剰を解消するとともに、誤った固定観念(認知の歪み)を修正し、環境に適応的な行動を促していくのが「認知」「行動」療法の本体といえるでしょう。
そのためには、自分の考え方のクセ(固定観念)に気づき、その気づきから観念の修正と行動の実践につなげていくことが大切です。
認知行動療法でよく勘違いされがちなのが、「プラス思考にさせる治療法」という捉え方です。現実はマイナスのこともあればプラスのこともあります。そうではなくて、自分がどう世界を捉えがちなのかという認知のクセ(歪み)そのものに「気づく」ことが重要だということです(プラス思考になりましょう、と言っているわけではないことに留意しましょう)。
自分が抱く不安感の背景にある「考え方」「受け取り方」に気づくことで、見方を変えて、不安に支配されにくい考え方(適応的な考え方)の習得を目指します。
「ストレスをなくす」「不安をなくす」ことはできません。あるストレス環境に置かれたときに、認知を変えることで対処し(実践・訓練)、成功体験を積み重ねることでストレス対処や不安対応が上手になっていきます。この訓練を通じて、ストレス対処や不安感情の克服につなげていくのです。
症状やカウンセラーにもよりますが、一般的には1回当たり30~60分程度を目安に、2週間~1か月程度を空けて半年~1年くらい(10回程度)の面談~実践を行うことが多いようです。
「気づき」の言語化・対処の実践と合わせて、心理テスト等によって認知の傾向を分析したり、アンガーマネジメント等の専門的な教育を受けることで、認知の歪みを修正していきます。
ではここから具体的に、どのような形で「気づき」を促していくかの一例をみていきたいと思います。
ある具体的な出来事に対して次のステップで言語化することで、自分の不安感情がどのような機序で発生し、またどう解消していくとよいのかを可視化することができ、認知の歪みを修正する助けになります(これはトレーニングですので、訓練をすることで認知の歪みに気づき、自己修正することが容易になっていきます)。
一定程度、心理的にも内面を見つめる形で深く探求をしていく負荷がないとはいえないプロセスになりますので、一般的には急性期の体調不良・疲労感が軽減してから療法を開始することが多いです。
A.適応障害の基本的な治療は、休養を最優先に、投薬やカウンセリング・認知行動療法が組み合わせることが一般的です。これ以外にも、医療機関や症状によって、以下のような治療法を併用する場合もあります。
A.厳密には、検査単体で確定診断するものではなくてあくまでも診断の補助として使われる検査ですが、以下のような検査が取り入れられています。抑うつ状態は様々な精神疾患(場合によっては身体の疾患で副次的に精神症状が現れる場合も含む)でみられるため、抑うつ症状がみられたからといって、それが即、「うつ病」であるわけではないことは、ここまででも記載したとおりです。「確定診断をするため」というより、どのような疾患で抑うつが生じているのかを補助的に診断する材料として、これらの検査があるという捉え方をするほうが正確でしょう。
A.検査単体では自費診療となります。保険適用のためには、既に器質的疾患が除外されており(その他の内科、脳神経系の病気ではないという意味です)、うつ病として治療を既に受けていて(抑うつ状態を有していることが前提です)、かつ、治療抵抗性がみられ、「うつ病」「統合失調症」「双極性障害」など精神障害の鑑別が必要な場合、と条件があります。医師と相談のうえ、医師が条件に照らして検査対象ではないと判断した場合は保険適用外となる可能性があります。
A.治療抵抗性のうつ病とは、抗うつ剤を一般的な処方量で十分な期間(1~2か月)使用しても、本来の調子に戻っていかない(効果が見られない)状態を指します。「1剤」で効果が見られない場合が狭義の「治療抵抗性」ですが、一般的には2種類(~数種類)の抗うつ薬を服薬しても効果が見られない時に「治療抵抗性」と定義づけることが多いようです(その判断は、医師による)。
諸制度は時代の変化とともに変更となる可能性があります。必ず、関係機関の公式情報や、所属組織等の就業規則・給与規定などをご確認ください。本稿は自身の経験および文献による一般論となります。
A.会社によって扱いが異なります。会社が独自に定める「病気(療養)休職期間」に入る前に有給休暇期間(積立有給制度を取っている企業もあります)の消化をまず求められたり、休職前のワンクッション期間として数か月程度給与が減額される疾病休暇制度(あるいは一定期間だけ「欠勤扱い」となって、給料から一定割合の控除がなされるケースもあります)が設けられたりしている場合もあるので、余裕があるときに自社の制度を確認しておきましょう。
これらのクッション期間を経て会社の定める休職期間に入ると原則「無給」(一般的には住宅手当や扶養手当などの諸手当も含めて不支給のことが多い)となりますが、当該の期間は健康保険から「傷病手当金」が標準報酬日額の2/3支払われます。さらに会社によっては「就労不能保険 (GLTD)」や「共済組合などによる給付金」など、福利厚生で保険金などが支払われることもあります。 ただしまったくその制度がない場合もありますので、こちらも、自分の会社の制度をしっかりと確認しておくとよいでしょう。
これらのセーフティネットにより、ざっくりとですが、当面の間(制度の運用によるが、 概ね1年半~2年程度(※))は基本給の6~8割くらいまで収入(額面)が担保される可能性があります。なお、疾病手当金や保険は支払いタイミングがずれる場合があります。支払いサイトが「給与と同じ」と捉えないでおくほうが無難でしょう。
いずれにしても、 このような非常時に備えて、「有給は計画的に取得し、年度内である程度残しておくこと」「毎月の家計において、突発的な減収分をカバーできるだけの余裕資金を残しておくこと(例えば預金に回していた分を休職中は生活費に補填することで、資産の目減りを最小限に抑えられます)」は、日ごろから意識しておかれることをお勧めします。
(※)就労不能保険(GLTD)の場合は、生涯単位(多くは60歳まで)で所得保障を受けられる場合もあります。ただし精神疾患の場合に限り、保障期間を「数年 (例えば「最大4年」など)」と限定しているケースもありますので、自社の制度詳細を必ず確認しておきましょう。
A.ありません。したがって、有休消化期間を終了してからは、企業個々の就業規則によって扱いが大きく異なります。病気による休職制度自体を設けていない場合(※)もありますので、必ず自社の就業規則を確認するようにしましょう。
(※)この場合は、法的な労働者の権利である有休消化期間を終了すると、原則自己都合退職もしくは就業規則に基づいた解雇となります。非常に重要なポイントですので、必ず自社の制度を確認することが大切です。
A.企業ごとに異なっています。有休消化期間(40日)→疾病休暇(欠勤)期間(3か月)→療養休職期間(1年半~2年)というかなり長期のスパンでセーフティネットを設けている企業もあれば、有休消化期間→療養休職期間と、有休消化後は即、休職期間に入る決まりとしているケースもあります。 また既述の通り、休職制度(※)がない企業もあります(この場合は有休消化後に解雇もしくは自己都合退職となる)。必ず自社の就業規則を確認するようにしましょう。
(※)休職制度は、事実上の「解雇猶予期間」です。法律では義務付けられていないため、企業は原則自由に休職制度を運用することができます。ただし一度でも休職制度を設けた場合は、不利益変更禁止の原則(労働契約法第8条)により「制度をなくす」ことを従業員から同意を得ることは相当に難しくなるでしょう。
A.復職後の通院や突発的な事態に備えて有休を数日だけ残して、先に休職期間に入るということですね。有休取得は基本的には労働者の権利ですから、会社と相談してみることは可能かもしれません。しかし、結論としては何とも言えません。必ずしもその要望が通るかどうかは、社内の運用による可能性があります(ルールとして、有休休暇を数日残しておけると明示している場合もあります)。また、もしも有休を消化しなかったとしても、あまり多くの日数を残すことは得策とは言えません。その理由を以下、述べます。
第一にお金の問題があります。有給期間は当該日においては満額の給与・手当が保証されていますから、医療費や当座の生活を考えた時には、生活の基盤を安定させる意味でも重要です。病身においては、まずは「収入を確保する」ことを選択するべきでしょう。
次に、制度の問題です。実は、「有給休暇を使い切ってから欠勤・休職」を指導している企業は、セーフティネットとして敢えてそうしている可能性が高いのです。なぜならば、休職期間中あるいは休職期間を使い切ってから、復職を経ることなしに有給休暇を取得することはできないからです。
どういうことかと言いますと、休職期間中は当然として、休職期間が満了してしまった場合、そこに余っている有給休暇をくっつけることは原理上、できないからです(ほんらいの労働すべき日に労働役務を免除するのが「有給休暇」であって、そもそも労働が義務でないときには有給休暇という概念は存在しない、という理屈ですね)。ですから、有給休暇を余らせて休職期間に入って、いざ 長期の休職期間が満了してしまった場合、そこに有給休暇をくっつけて、さらに休職期間を伸ばす、ということはできないわけです。
すなわち、先に有休消化をさせることは、その期間分だけ、もしも休職期間内で復職できなかった場合に退職するまでの期間を延長できるという意味で、会社が与えた安全弁であると考えることができます。したがって、できる限り有休を消化してから欠勤・休職期間に入ることを指導するケースも多いのです。
精神疾患は「いつ治る」かが見えにくいものです。ましてや休職してすぐは今後の方向性がまったく見えないのが普通です。どうなるのかよくわからない将来の数日を惜しんで、その「数日分」が後になって重しとなるようなことは極力避けたほうがよいともいえます。このあたりも斟酌の上、会社と相談されてみてください。
A.企業ごとに扱いは異なりますが、就業規則上、自己都合退職(あるいは解雇)となることが一般的です。休職期間は一定期間内の同一疾病においては原則として通算されることが多いため、短期間で休職を繰り返すと休職期間を使い切ってしまう可能性もありますので注意が必要です。
A.まず給付要件ですが、労災でない疾病(私疾病扱い)で就労不能となり、休職に入ってから「3日以上連続して、4日め以降に入った状態」であることが必要です(この連続した3日のことを「待期期間」といい、この期間には土休日を含みます)。
(※)ただし疾病手当金の給付開始が2020年7月1日以前の方については、経過措置として「前の規定」(復職後は勤務期間でも支給日数を消化扱い)が適用されるので、要注意です。
A.以前に傷病手当金を受給した時と同一の傷病を理由とする場合、以前の傷病手当金の受給を開始した日から1年6か月(通算)以内であれば、再度傷病手当金を受給することが可能です。1年6か月(通算)を超えていた場合は、再受給できません。
なお、今回の再発が、以前とは別の傷病であると勤務先の健康保険組合が認めた場合は、以前の期間とは無関係に、「新たに」受給できる場合も当然にあります(※)。
(※)厚労省の保険局長の通達では「同一の疾病とは、1回の疾病で治癒するまで」という定義がなされており、治癒の認定は医学的判断だけでなく、「社会通念上治癒したものと認められ、症状をも認めずして相当期間就業後の同一病名再発のときは、別個の疾病とみなす」とされています。再発の際は、「前症の受給中止時の所見、その後の症状経過、就業状況等調査の上認定す。」とありますので、同一疾病であっても「別個のもの」として認定され得ると解釈できます。ただし、認定者はあくまでも健康保険組合ですので、実情はケース・バイ・ケースと言えるでしょう。保文発 (※)3027(S29.3)、保文発1731(S30.2)、こころの病で再休職した場合、傷病手当金を再度支給できる仕組みはあるの?
(※)厚生労働省(旧厚生省)の「民間に対して出す保険局長名通達」の略称。
A.傷病手当金の受給期間中に時短勤務で復職した場合、時短勤務で支給された金額が従前の傷病手当金の範囲内であれば、原則としてその差額を受給することは可能です。
A.退職日(資格喪失の前日を指します)までに継続して1年以上の被保険者期間があり、かつ、資格喪失時に疾病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしている場合は、残りの期間において疾病手当の給付を受けることができます。
ただし、退職日に合わせて1日でも「出勤」した場合は、給付を受ける条件を満たさないことになりますので、資格喪失日(退職日翌日)以降の傷病手当は打ち切られます。 例えば私物整理などで出社した場合に、当該日の勤務形態をどう位置づけるかは(要するに「出勤」とするかどうかは)、傷病手当の状況も踏まえて慎重に検討しましょう。
A.原則として退職翌日からは健康保険の資格は喪失します。ただし、退職前に2か月以上継続して勤務していた場合、健康保険は「任意継続被保険者」として健康保険を継続することが可能です。継続する場合(※)は、従前の健康保険組合の給付を最大で2年間利用することが可能です (保険料の納付が必要)。なおこの場合、基本的に任意喪失をすることはできなくなりますので注意が必要です。
任意継続の手続きを行わない場合は、市町村の「国民健康保険」に加入(保険料の納付が必要)することになるか、あるいは健康保険に加入している家族の被扶養者(保険料の納付は不要)となることになります。
(※)申請は退職してから20日以内に手続きを行う必要があります。
A.退職時の標準報酬月額と、保険者の標準報酬月額のいずれか低いほうで、保険料は全額自己負担となります。
A.通常の退職の場合と同様に、厚生年金に加入しない場合は、退職と同時に厚生年金を脱退して、国民年金の第2号被保険者から、国民年金の第1号被保険者となるか(保険料の納付が必要)、もしくは配偶者の健康保険の被扶養者となる場合は第3号被保険者(保険料の納付は不要)となります。
なお、前年の所得水準によっては保険料の免除の措置があります。委細は住所地の市区町村役場で確認しましょう。
A.被保険者期間中に初診日がある疾病が、初診日から起算して1年6か月が経過した日(その間に治癒もしくは症状が固定した場合はその日)に定められた障害がある場合は、障害厚生年金が支給されます。このとき、障害等級が1・2級の場合は障害基礎年金も支給されます。
また、厚生年金の被保険者期間中に初診日のある疾病が5年以内に治り、定められた状態にあるときは障害手当金(一時金)が支給されます。
詳しくは年金事務所・年金相談センターでご確認ください。
A.私疾病ではなく、「労災」が認定された場合は、健康保険による「傷病手当金」ではなく、労災保険から「休業補償給付」が支給されます。
労災保険の休業補償には3つの要件があり、
1.業務による疾病の療養中であること(労災認定された疾病の療養中であること)
2.労働できる状態にないこと
3.賃金を受け取っていないこと
のすべてを満たしている場合において、給付が続きます。
この場合、休業1日につき、給与基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます(土日祝日を含む)。給与基礎日額とは、労働基準法で定める「平均賃金」のことで、医師の診断により業務上の疾病にかかったことが確定した日の直前3か月間の賃金総額をその期間の歴日数で除した1日当たりの賃金額を指します。
これは「賃金総額」ですから、諸手当や残業代を含めて計算します。ただし、臨時金、ボーナス、現物給付は含みません。
なお支給は、休業開始から「通算(※)」3日間(有給取得日・休日・欠勤日も含む勤務しなかった日すべて)は会社が給与基礎日額の60%を補償し、休業4日目以降から、当該疾病の休業日数分の休業補償(給与基礎日額の80%)が労災保険から支給されることとなっています 。
(※)健康保険による「疾病手当金」は待期期間が「連続3日間」であるのに対し、労災保険による「休業補償給付」は待期期間が「通算3日間」であることに注意してください。
A.上記の休業補償(※)給付のほかに、以下のような給付を受けることが可能です。いずれも厳密な支給要件がありますので、詳しくは厚生労働省「労災保険給付の概要」(PDF)をご参照ください。
(※)業務災害の場合は「補償」の用語がつき、通勤災害の場合はつきません。本稿では、適応障害の特性から、一律で「補償」をつけた形で表記しています。
A.労災保険の休業補償の3要件(労災認定された疾病の療養中であり、労働不能の状態で、かつ賃金を受け取っていないこと)を満たしている限りにおいては、休業補償の給付は継続されます。
ただし、療養開始後1年6か月経っても疾病が治らず、その状態が規定の障害等級(1~3級)に該当した場合は休業補償は打ち切りとなり、「傷病補償年金」に切り替わります。
また、治療を続けても、疾病の改善がこれ以上見込めない状態になる「症状固定」状態になった場合は、治療終了と判断され(労災の表現では「治癒」)、休業補償が打ち切られます。この場合は、規定の障害等級(1~7級)に該当するときに限り、「障害補償年金」および「障害補償一時金」が支給されます。
A.退職を理由に補償が打ち切られることはありません。
A.いいえ。健康保険による「傷病手当金」のほか、労災による「休業補償給付」など労働基準法の規定により受ける療養のための給付については、すべて非課税所得となります。
A.無給の期間中は、給与がありませんから当然に「所得税」は掛かりません。また、「雇用保険料」の負担もありません。なお「傷病手当金」や「休業補償給付」は非課税所得で、賃金ではありませんから 「給与」とは無関係です。
ただし、以下の税金や社会保険料は、原則として会社が指定する方法で、無給状態であっても休職前と同額を支払う必要があります。 最大で6~8割となった収入(額面)の中でこれら税金は従前と同じ額を支払う必要がありますので、「全額が自分の手元に残るわけではない(休職期間中の手取りも、額面収入を下回る)」ことはよくよく留意しておきましょう。
ご存知の通り、これらはどれもバカにならない金額になりますので、日ごろから給与明細で「毎月どれくらいの税金と社会保険料を支払っているのか」はしっかりと確認しておきましょう。そのうえで、「毎月の家計において、突発的な減収分をカバーできるだけの余裕資金(預金や投資に回すお金)を残しておくこと」がとても重要です。
なお、支払いタイミングは給与と同じではありません。会社によって以下のような支払方法が取られます。
なお、傷病手当や休業補償給付の請求から支給までの間の従業員やその家族の生活困窮を防ぐ目的で、「傷病手当」や「休業補償給付」相当額を会社が一時的に代払い(この場合は後日返還することになります)する場合があります。このケースでは、傷病手当や休業補償給付を会社が代理受領することもあります。
また このような代理受領を会社が行った場合、会社は保険料や税金を控除した後に、傷病手当や休業補償給付(の残り)を個人の口座に振り込むこともあります。 これらは会社との取り決めによりますので、家計運営上不都合があれば担当者と相談するようにしてください。
A.原則として、下がりません。
ここで少し詳しい方だと、「え?でも、毎年7月に、4月・5月・6月に支払われた給与の平均額から標準報酬月額を算出して、9月から標準報酬月額が適用される(定時改定という)のだから、この期間に休職したら、少しは下がるんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし「保険者算定」の仕組み上、4月・5月・6月に休職していた場合、「一部休職」の場合は当該月を除いて計算し、「全部休職」の場合は「従前の標準報酬月額と同額とする」というルールが定められているのです。
要するに、休職前の標準報酬月額がそのままスライド適用されることになっていますので、休職によって厚生年金保険料、健康保険料などが減額されることは、原則としてないのです。
A.下がりません。休職による「無給」は、単純に「ノーワーク・ノーペイ」の原則で所定の給与が支給されていないだけで、ただちに社内制度上の「減給」を意味しないからです(そもそも、労働安全衛生法により、「心の病」を理由とした不利益な扱いは禁じられていますから、「減給」には できません)。
標準報酬月額が随時変更となる要件は、「固定的賃金の変動がある」「変動後3か月とも17日以上の賃金支払い基礎日数がある」かつ「変動月から3か月間の報酬の平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある」という条件を、<すべて>満たしている必要があります。ちなみに「固定的賃金の変動」とは、昇給・降給、給与体系の変更、固定的な手当の支給額の変更、時給や歩合率などの基礎単価の変更などが該当します。繰り返しになりますが、休職による無給は、所定給与を「不支給」としているだけで、制度上の給与体系の変更を意味していないのです。
いずれにしましても、「休職」では標準報酬月額がそのままスライド適用されますので、休職によって厚生年金保険料や健康保険料などが減額されることは、原則としてないのです。
A.保険適用の通院(月1~2回)で2000円弱/回、投薬で1回1000~2000円弱、診断書が実費で1通3~5000円ほどかかります(ただし診療情報提供書は保険適用)。諸々込みで、ざっくりと月4000~8000円くらいといったところでしょうか(なおこれはカウンセリングやリワークプログラムを併用しない場合です)。 初診の頃を除き、通院・投薬だけで月1万円までいくことはほとんどないと思いますが、多めに予算を見積もっておくとそう外れないかと思います。 薬は積極的にジェネリック医薬品を選択し、医療費を少しでも押さえていきましょう。
家族のことや、他の病気にかかることなども考えると、「医療費年間10万円ライン」は見えてきますので、領収書(交通費を含む)はしっかりとっておき、確定申告で医療費控除・還付も忘れずに受けましょう (ただし「診断書」や、異常の見つからなかった場合における「健康診断費用」については医療費控除の対象外です)。
なお、利用する医療機関等にもよりまちまちですが、カウンセリング(自費診療)を利用した場合は5000円/回くらい、リワークプログラム(原則保険適用)が2~3000円/日くらい別途かかるので、プログラムの利用状況によっては合計で月に2~3万円くらいの出費がかかる場合もあるでしょう。 カウンセリングやリワークプログラムを利用する場合は、この点の予算化にも留意しておきましょう。 そのほか、自費診療を受診する場合は別途お金がかかることは言うまでもありません。
また細かい話ですが、医療機関や就労支援施設等へ向かう交通費、診断書などを会社へ郵送する費用(普通郵便ではなく、レターパックや宅急便等の追跡可能な手段を使うことになるので、数百円/回程度)も別途掛かります。
A.世帯所得により、精神医療費の軽減が受けられる「自立支援医療」制度があります。入院、保険外診療、カウンセリングなどを除く精神医療が対象です。
また、入院費などでかかった医療費が高額になった場合は、「高額療養費制度」もあり、自己負担上限額を超えた分について、加入している医療保険から原則として後日、補填をしてもらえる制度もあります。
詳しくは厚生労働省「こころの病気への助成について」をご参照ください。
A.はい。よく、「疾病手当金があるから当面は安心」とか、「医療費の公費助成があるので活用しましょう」-という言葉を見かけますが(当座はその通りなのですが)、それでも敢えて言うならばやはり収入は下がりますし、一部の税金や社会保険の負担も変わりません。 住宅手当などの諸手当も原則、入ってこなくなります。精神疾患は「いつ完治するか」が見えにくいですから、しばらくの間、それなりの家計防衛をする必要はあります。要は、生活水準を見直す必要は多かれ少なかれ出てくるといえるのではないか、と思います。
いきなりお金の心配をすると「焦り」ばかりが出て体調の回復を妨げます。まずお勧めは、有給消化期間で思い切り休むことです。それから1か月ほどして少し頭が回るようになってきたら、家族と一緒に「疾病休暇期間」「疾病手当の期間」「GLTD制度や共済制度で補填される期間」などを指さし確認し、「いくらもらえるのか」「いくら出費が必要なのか」、そして「生活費からみて単月収支、年間収支のバランスはどうか」などを確認していくとよいでしょう。
A.ただでさえ体調が悪い時期ですから、あまり「節約」という言葉を意識しすぎて神経質になると、余計に具合を悪くしてしまいかねません。かといって、「貯蓄を食いつぶす」のも精神衛生上、よくありません。もっとも理想なのは、減収分が健常時の強制貯蓄額の範囲に収まっている場合です。この場合は、貯蓄をいったん抑制することで、生活水準を当座はキープすることができますから、環境変化を最小限に押さえることができます。しかしそうもいかないこともあるでしょう。「あまり神経を遣わずに」、しかし、「確実に」家計を守っていく方法を考えてみたいと思います。
まずは大前提として、「今後の収入見込み」と「支出見込み」を可視化しておきましょう。家計簿をつけていればおおよその出入りは分かりますが、もし無データであれば、直近の3か月くらいの平均はざっくりと見えるようにしておきたいものです。
ではここから、具体的に見ていきましょう。収入がほぼ固定となる以上、いじれるのは支出面ということになります。支出を分解すると、「固定費」と「流動費」に分かれます。
(※)ただし、電気ポットの待機電力をオフにすることは節電効果が高いとされます。保温機能を極力使わないことは大きな節電となります。
※2022年11月現在。衛星契約(1年分一括払い)の場合、24000円くらい(月約2000円)が浮きます。
これらは、普段は忙しくてなかなか着手できない課題でもあります。時間がある「休職期間」を逆手にとって、固定費の見直しをすることで、筋肉質な家計を作っていきましょう(休職中で人に余り会わないので、試しやすいというメリットもあります しね)。
A.「備えあれば憂いなし」といいます。メンタル要因の「もしも」のときのために、備えておけることには以下のようなことが挙げられます。
まずは、一定数の有給休暇を残しておくことです。「有休を全く使わない」というのも問題ですが(今は「5日」は取得義務がありますね)、少なくとも「1か月」くらいは一切お金の心配をしなくても過ごしていけるだけの日数を確保しておけると、いざメンタルダウンをしてしまったときでも、安心して休養に専念することができます。ダウンして最初の1か月は「ダラダラ期」とも言われ、とにかく「何もしない」ことが治療の根幹となります。ここでしっかりと休むためにも、「安心して休める」状態を準備しておくことをお勧めします。
次に、フローとストックの両面から、余裕資金を確保しておくことです。
(解説)
上記の記述はあくまでも「目安」です。生活費・住居費の高い都市部で、実家の援助を得にくい状態で、「生活水準を落とさない」と仮定した時に、バッファーを相当に多くとった目標ストック金額です。実際には 生活費や住居費 といっても、ローンの有無、居住エリアの家賃相場、地域の生活に必要な費用の水準の差、実家の援助の有無、公的な援助、配偶者や親類の扶助など様々な要因が絡むため、必要金額には大きく個人差があることをお含みおきください。
また、「生活水準を落とさない」という想定自体がファンタジーという批判も可能です。現実問題として、休職が長期化すれば生活水準は落とさざるを得ないことになります。しかし、人間は一度生活水準を高めてしまうと、それを「下げる」ことはかなり難しくなってしまうのもまた事実です (これは、理屈では分かっていても、一度でも経験すると身に染みて分かります)。「どの生活水準までが家族として成立する許容範囲か(我慢ができる範囲か)」「いざというときにどう生活防衛を図るか」という観点は、日ごろから配偶者とリスクヘッジという意味でも、一度話し合っておくとよいかもしれません。「妻が妊娠・出産で一時的に労働ができないときに、夫が適応障害で休職してしまった。マンションを数年前に購入したばかりで、ローンも残っている。マンションを売ろうにも、購入価格から下落しており、売るに売れない」という状況は、決して対岸の火事ではなく、誰にでも起こり得ることだからです。
先立つものはカネであり、収入が絶たれている状態では安心して休めるどころではなくなってしまうのです。身も蓋もないことを言ってしまえば、「お金のことを当面は気にせず、1年くらいは休める」という状況のほうが、「休むこと」に専念できるということです。よく「休め」「休んでも、お金がでるから」というのですが、ことは簡単ではなく、現実問題としては「お金が心配で、休めない(まだ休めない、またはこれ以上休めない)」という人が一定数いることで「脱うつ」を難しくしていることは 明確な「社会問題」として認識しておく必要があるでしょう。
医師は基本的にお金があるので、簡単に「休め」と言えるのですが(と、受け取る患者もいるはずです)、お金がない・「手に職」の国家資格もない圧倒的大多数の庶民からすると「休む」=「退路が絶たれる」に等しいことでもあります。適応障害の症状で「休めない」という精神状態になっているだけでなく、本人の置かれた状況そのものが「休めない」状況を作っている、という厳然たる事実に、しっかりと目を向けなければならないのです。
堂々と休むためにも、一定程度休めるだけのカネを作っておくことは、いざというときに我が身を守るために極めて重要です。資源インフレかつ重税なのに将来の賃金上昇圧力も乏しいだろうこのご時世、「宵越しの金は持たぬ」というわけにはいかないところが、実に世知辛いですね。
A.なりません。要するに単なる「赤字になること」であって、資産は目減りするだけです。もう少し詳しく書くと、「キャッシュフローを赤字にする」ということでしかないからです。たとえ投資による所得がプラスであっても、税金や借入金の返済分を含めるとトータルで赤字 (だから結果として税金は減るわけですが)であれば、その投資は単に「金食い虫」なだけで、資産を増やすことは絶対にできません。簡単な算数です。
そもそも、「キャッシュフローがマイナス」なことと、節税はイコールではありません(ここを勘違いして、「投資話」に乗ってしまう人は多いようですが)。キャッシュフローがマイナスならば、当然にそこにかかる税金も下がるわけですが、それは「節税」とは言いません。繰り返しになりますが、それはただの「赤字」です。
では、投資での節税とはどういうことかというと、損益通算によります。すなわち、確定申告をする際に、不動産所得や事業所得などで損失が発生した場合に、総所得からその損失分を控除できる仕組みです。不動産を取得した初年度の不動産取得税や登録免許税、仲介手数料などの諸経費、減価償却なども合算することで、確かに「初年度」こそ節税はできるかもしれません。しかし、何年間も不動産所得がマイナスということ 、は、ここに税金や借入金の返済を考えると、そもそも不動産で「儲かっていない(儲かることができない)」ということでしかなく、結果的に損益がマイナスなので理論上 ・・というか見かけ上は「節税」になるとはいえ(つまり、嘘は言っていません)、永久に資産はプラスにならない・・・ということになります。「不動産投資で節税」というのは、「確実に赤字になる不動産経営を続ける」ということであって、決して"資産形成"の手段ではないのです。「金食い虫」を借金をして飼うようなものなのです。 資産形成ではなく、資産を棄損することによって「節税」を生み出すというスキームです。
そもそも「節税」というのは、「どこかでマイナスを発生させること」です(所得を減らすことで支払う税金を減らすわけですから)。繰り返し書きますが、「資産形成」ではないということをよくよく肝に銘じましょう。不動産投資で節税が利くのは、基本的には「相続税」によるものでしょう。 重税に苦しむほとんどの現役世代にとって、それは余り身近なものではないはずです。
うまい話などそうそうあるものではないですし、適応障害になってそもそも脳の調子がおかしくなっているときに、余計なこと・複雑なこと・よく分からないことはしないに限ります。
A.会社によります。休職したとしても、「勤務した日数に応じて評価する」ことが一般的かと思いますが、期間中営業日○割以上の休職で一律評価にするとか、全期間休職の場合は支払わない、など細かくルール化されていることが多いようです。事前に規定を確認しておきましょう。当然ながら評定は下がることはあっても上がることはまずないでしょうから 、休職期間中にローンで「ボーナス払い」などを組んでいる場合は、十分に注意しておきましょう。
いずれにせよ、当面は(少なくとも休職した年度いっぱいと、復職した年度くらいまでは)あまり期待しないのが吉と言えましょう。
A.そうなんですよね。金の切れ目が縁の切れ目です。「会社のため」なんて本当にもったいなくて、「自分のために会社を利用する」くらいでちょうどいいんです。
小学校の学級会ではないですから、誰も「倒れるまで働いて偉いからボーナスをはずもう」なんて思うわけがなく、 「自己管理ができずに仕事に穴をあけたんだから迷惑料を貰いたいくらいだ」くらいにしか思われていません。そこに気づけると、いかに「会社のために身を粉にして働く」ことが馬鹿らしいかわかるというものです。
そりゃ、プロとしてお金を貰っているから一生懸命働くべきですよ。でも、それは「会社のため」ではありません。「自分のために働く」「自己実現の機会として会社というフィールドを使う」―結果として、会社のためにもなる―くらいの意識で、ちょうどよいのです。
「会社ファースト」の洗脳が完全に解けたという意味では、一度脳がぶっ壊れた意味もあったと思いますね・・・。
A.会社によりますが、「有給消化期間」および「疾病休暇・欠勤期間」は諸手当も含めて全額支給、「休職期間」は諸手当も含めて全額不支給、というのがよくあるパターンです。 ただし欠勤期間であっても、 「職務手当」は支給、「交通費」「在宅勤務手当」や「みなし残業代」は不支給・・などと項目ごとに条件が定められている場合もありますので、詳しくはそれぞれの就業規則を確認してください。
なお、休職期間に入ると、扶養手当や単身赴任手当などはもとより、「住宅手当」「都市手当」など住居に関わる手当も支給停止となるケースがほとんどです。借り上げ社宅の場合、賃貸契約は維持したままで賃料は全額負担、というケースもあります。住宅関係のお金は税金・社会保険料と合わせて負担がきわめて大きくなりますから、「どの手当が、 いつのタイミングで不支給になるのか」は必ず確認をしておくようにしましょう。
A.法的には「前年度に全労働日の8割の出勤」が翌年度の有給付与の要件になります。この「出勤」の解釈が、会社によって異なるので必ず確認をしましょう。
長欠の場合、有給期間や、会社が特に定める疾病休暇期間(特別に欠勤扱いとする場合もある)と、就業規則上の「休職期間」とを分けて考える必要があります。様々なパターンがありますが、当然に「有給期間」は「出勤日」に含まれ、疾病休暇期間や休職期間は「出勤日」に含まれないのが一般的です(つまり、休職期間が短かければ翌年度の有給休暇は付与される可能性が高くなります)。当然に、「休職期間」に入ると、就業規則で「当該期間は継続勤務期間に通算しない」と定められている場合が多いです。
ただし会社によっては、労働者保護の立場から、特別に「疾病による欠勤」や「休職期間」の全部または一部を、全労働日の計算から除外する措置を取っている場合もあります(この場合は、比較的長期間の休職でも翌年度に有給が付与される確率が高まります)。人事規程を確認するようにしましょう。
なお、「全労働日」とかかる「出勤期間」については、「リフレッシュ休暇の取得に必要な勤続年数の算定」、「昇格や昇給に必要な評価期間の算定」、 「異動検討の参考資料となる部署滞留期間の算定」、「退職金の計算」などに影響する可能性があることにも合わせて留意しておきましょう(休職期間はこれらの算出から外されることもあれば、一部算入する場合などもあるでしょう。 こちらも人事規程をご確認ください)。
A.変わる可能性があります。一般的に有給期間や欠勤期間は「算入」、休職期間は「未算入」とすることが多いのではないかと思いますが、必ず人事規定を確認しましょう。上述していますが、退職金やリフレッシュ休暇等の計算で使われる勤続年数の算定、部署滞留期間の算定、評価期間の算定などに影響します。
A.会社の制度として、復職後の通院を特別に時間有休とすることができたり、フレックスタイム制度で「不就労(勤務時間外)」とすることができたりする場合は問題になりません。しかし、このような制度がない場合は「ノーワーク・ノーペイ」の原則により、通院時間については欠勤となり、毎月の給与又は賞与の際に当該時間分が控除されることになります。
上司や人事・労務・厚生担当部署との相談により、通院時間分をずらして勤務する(スライド勤務)が特例として認められる可能性もありますので、まずは一度上司や人事担当者と相談してみることをお勧めします。
A.します。団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン借り入れ後、返済中に死亡・高度障害となった際に、残債が免除(生命保険で一括返済)される制度です。団信の審査では、必ず「健康状態の告知」をする必要があり、リスクの高い疾病を予め弾く審査を受けます。適応障害 (精神疾患)の場合はまさにこの「リスクが高い疾病」と判断されます。適応障害で団信に入ることは一般的にはきわめて困難であり、住宅ローンそのものを借りられなくなる確率も高くなります。
具体的には、「告知日から3カ月以内の治療、投薬歴」のほか、「告知日から3年以内の手術または2週間以上の期間にわたる治療歴」について、すべてを正確に告知する必要があります。この期間に該当するケースでは、団信の審査が下りないと考えたほうが無難でしょう。
なお虚偽の報告をした場合は、いざというときに保険金が支払われない(ローンは残る)ことになりますし、故意など悪質な場合はローンの一括返済を求められることもあります。
A.可能な場合があるとされています。金利は高くなるものの、「ワイド団信付住宅ローン」という審査基準を緩和した商品開発が行われているからです。もちろん審査がありますので100%ではないものの、一般の団信とは違い、適応障害を含めた健康リスクの高い方でも組むことができる(ことの多いとされる)住宅ローン商品です。ただし 当然ながら本稿で確約はできませんので、詳細は、 まずは借入予定の金融機関と「必ず」相談するようにしましょう。
なお、やろうと思えば「団信なし」で「フラット35」を組むことは仕組み上可能なのですが(この場合は当然に保険料がかからないので金利も下がります)、余りにもリスクだけが異常に高すぎるため(おそらく、一般人が取り得る金銭的なリスクの中でも、レバレッジをかけたFX投機と並んで最上級のリスク要因の1つといえるでしょう。無保険の住宅ローンなど、安心して日常生活を送ることはまずできなくなりますし、そもそも適応障害になった人が取るべき選択肢では、少なくとも絶対にありません 。やるとしたら、資金があって敢えてローンを組む(※)人くらいでしょうか)、 冒険はゆめゆめせず、何らかの保険加入は原則絶対的に必須と考えておくべきでしょう。
(※)現金で買えるのにローンを組む―潤沢な資産があって、住宅ローンの金利(例えば0.4%)と、投資で得られる利息(例えば3%)の差を考えた時に、現預金を不動産購入に回すのではなく、投資に回すことで、その利子で住宅ローンの返済を行って、金利差額(単純計算で20%の税金を引いても2%分)を収益とすると住宅ローン減税も含めて大幅な節税にもなる、という目的でローンを組むということはあり得る話です。この場合は、確かに保険加入はなくてもそもそも「返済」できるので、わざわざ保険加入をする必要はないといえます。
A.します。基本的には上記の団体信用生命保険の記述に準じますので、「更新」はできたとしても、希望の保険に希望のタイミングで「新規加入」できないことは十分にあり得ます。一部で審査基準を緩和した商品も開発されていますが、一般的に保険料は割高となります。詳細は、 まず加入したい保険のWebサイトを直接確認するとよいでしょう(いきなり比較サイトを使ったり、フィナンシャルプランナーや営業担当者に相談してしまうと、そのまま営業を受けるだけですので、一度ご自身で直接情報収集をすることをお勧めします)。
A.精神疾患において労災が認められるのは、労災の認定要件である「業務遂行性(労働者が事業主の支配下にあったこと)」および病気の「業務起因性(業務を原因として発生したこと)」を前提に、原則として次の3つの要件をすべて満たす場合です。
1.認定の対象となる精神障害(適応障害も含みます)を発病している
2.発症の概ね6か月以内に、業務による強いストレス(心理的負荷)が認められる
3.業務以外のストレス・心理的負荷や個体側要因により発症したとはいえないこと(※)
(※)「業務以外のストレス」とは、以下のものが挙げられます。
・自分の出来事(離婚・別居、精神疾患以外の病気・流産・怪我、夫婦間のトラブルや不和、自分の妊娠、定年退職)
・自分以外の近親者の出来事(近親者の死亡や健康問題、世間体を問われる事態の発生、親戚づきあいのトラブル、家族の婚約、子どもの進学・受験、親子の不和、子どもの問題行動や非行、家族が増えた(子どもが生まれた)・減った(子どもが独立した)、配偶者の就職・転職・退職)
・金銭関係(多額の財産の損失、突然の大きな出費、収入の減少、借金返済のトラブル、ローンを組んだ)
・事件・事故・災害(天災、犯罪被害、交通事故、違法行為)
・住環境の変化(騒音や異臭などの環境トラブル、引越し、不動産の売買、家族以外との同居)
・業務以外の他者との人間関係(友人や先輩とのトラブル、親しい知人の死亡、失恋や異性問題、近所トラブル)
ではここで、「業務による強いストレス」がどのようなものなのか、確認してみましょう。 強いストレスについては、「特別な出来事」と、「具体的出来事」に分けて、次のように判断されます。
この「特別な出来事」がない場合は、発症前の概ね6か月以内の「具体的な出来事」を総合評価して、発症の概ね6か月以内に、業務による強いストレスを受けたかどうかを判断します。
類型1:事故や災害の体験
「重度の病気やけがをした」「悲惨な事故や災害の体験を目撃した」などが挙げられ、病気やけがの程度や、後遺障害の程度、社会復帰の困難性等が判断されます。
類型2:仕事の失敗や過重な責任の発生
「業務に関連した重大な人身事故や重大事故を起こした」「会社の経営に影響する重大なミスをした」「会社で起きた事件・事故の責任を問われた」「自分の業務で多額の損失を発生させた」「業務に関連した違法行為を強要された」「達成困難なノルマが課された」「ノルマが達成できなかった」「新規事業の担当になった、会社の立て直しの担当になった」「顧客や取引先から無理な注文を受けた」「顧客や取引先からクレームを受けた」「大きな説明会や公式の場での発表を強いられた」「上司不在時の代行を任された」などが該当します。
類型3:仕事の量・質
「仕事内容や仕事量の大きな変化を生じさせる変化があった」「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」「2週間以上にわたって連続勤務を行った」「勤務形態に変化があった」「仕事のペース、活動の変化があった」などが挙げられます。
類型4:役割・地位の変化
「退職を強要された」「配置転換があった」「転勤をした」「複数名で担当してた業務を1人で担当するようになった」「非正規社員であるとの理由により、仕事上の差別や不利益扱いを受けた」「自分の昇進や昇格があった」「部下が減った」「早期退職制度の対象となった」「契約満了が迫った」などが挙げられます。
類型5:パワハラ
「上司等から身体的・精神的攻撃等があった」ことが挙げられます。
類型6:対人関係
「同僚等から、暴行またはいじめ・いやがらせを受けた、「上司・同僚・部下とのトラブルがあった」「理解者・上司の異動」「昇進で先を越された」などです。
類型7:セクハラ
これらを簡単にまとめると、「月80時間以上の残業」「12日以上の連続勤務」「達成困難なノルマとペナルティ」「極度のいやがらせ・いじめ」「パワハラ・セクハラ」は、放置していると労災として会社が訴えられるリスクが極めて高いリスクファクターにもなる、ということです。
A.働く意思と能力がありながら就職できない場合で、以下の3つの要件をすべて満たしているときは給付対象となります。
A.疾病などの理由で引き続き30日以上賃金の支払いがなかった場合は、離職の日以前2年間(解雇の場合は1年間)に、賃金の支払いがなかった日数を加算した期間について、賃金の支払いの基礎日数が12か月以上(解雇の場合は6か月)あれば、期間要件を満たすことができます。
A.病気で働けない場合は、「労働の能力」がないと見做されますので、雇用保険の定める「失業」の定義(労働の意志及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない)から外れてしまい、その時点では失業給付を受け取ることはできません。
ただし、「受給期間の延長」の手続きをすることで、病気が回復して働くことができるようになってから、手当を受給することが可能です。雇用保険の受給期間は、離職した日の翌日から1年間となっていますが、疾病などで30日以上働くことができなくなったときは、その日数だけ、受給期間を延長することができます(最大3年間まで)。
A.「国立精神・神経医療研究センター」がWebサイトに掲載しているリーフレット「休職中に活用できる社会保障制度を理解しよう」が、網羅的に掲載された情報になっており参考になります(リンク先はPDFファイル)。このQ&Aには掲載していない、退職した場合の「雇用保険」、日常生活や仕事に支障が生じた場合の「障害年金」等の諸制度について詳しく記載されています(※)。状況に応じてご参照ください。
※上記のリンクは、「傷病手当金」の情報のみ、旧制度に基づいた記述になっていますのでご注意ください。上述の通り、2022年1月より「1年6か月」の定義が、就労不能となって休んでいた日数分(暦日)に変更となっています 。
A.体調が回復し、「会社のことを考えても体調に変化がなくなる」ことが、復職までのプロセスを意識する第一歩です。復職のプロセスは、会社によって順番は若干異なるかもしれませんが、一般的には次のような形を取ります。
なお、診療情報提供書の発行には時間を要することがあるほか、普通は産業医も常勤でない限り月に数回の出勤と限られていますので、主治医と復職についての相談をはじめてから、産業医面談を経て実際に復職するまでは、順調に進んでも3~4週間程度かかる場合があります。これはそういうものですので、この期間は「準備期間」と思って、決して復職を焦らないようにしましょう。
A.職場での立ち位置や企業のヘルスサポート制度が分かる客観的な情報があると、主治医の判断に役立ちます。 社員の従前の職掌(業務内容・立場・責任範囲)と、その企業での復職基準や復職者のサポート制度などです。
A.主治医と復職について相談をはじめる目安は、以下のようなものが挙げられるでしょう。
個人差や状況の違いはあると思いますが、1つでも当てはまらないものがある場合は、復職の時期にあるかどうかはよくよく主治医と相談しましょう。
A.主治医や産業医が復職を判定するにあたって、最も慎重に判断するのが「復職の意欲」です。適応障害になるような人はもともと真面目な人が多いので、少しでも抑うつ症状が良くなると「復職したい」と口にするようになります。実際はストレス源から離れ、休養をして、薬を服用しているから「元気」になっているだけという場合がとても多く、そもそも「焦り」から「(本心ではまだ休んでいたいが)復職しなければならない」という義務感を、「復職したい」という「意欲」に偽装してしまっていることがほとんどなのです。そのような中途半端な状態で復職すると、容易に再発することになってしまいます。
身も蓋もないことを言ってしまうと、仕事というのは、どんなに美辞麗句で飾ったとしても、所詮は「稼得手段」でしかありません。そして稼得行為は往々にして、「誰かがやらないこと(やりたくないこと)を代行することでお金を貰う」という性質があります。要するに、仕事は「義務的なもの」かつ「従属的なもの」であり、それ自体に自発的な意欲を喚起する要素は本来内在していないのです。しかし、現代社会の一種のレトリックがはたらき、「仕事」=「意義があること」=「社会貢献」=・・云々、要するに「よいこと」というポジティブな修辞が為され-いわば全面的に換装されて-「仕事をしたい」という言葉が生ぜしめるという倒錯が生じているのです。「洗脳」と言っても過言ではありません。
ですから、心の声に素直に耳を傾けてみれば、適応障害で深く傷ついた心が、容易に「働きたい」という気持ちにはならないはず、なのです。したがって、休職の初期(1~2か月程度)の段階で「復職したい」と言っても、それは単に「焦り」であり、心身の悲鳴を脳が巧妙にマスクしてしまっている状態ですから、なかなか素直に専門家からそれが首肯されることは少ないのではないか、と思います。
しかし人間は、高度に社会化された存在です。本当の意味で心身ともに休めている(完全に仕事から離れて休養し、感動体験を積み重ねることで心身のエネルギーが回復する)状態が続くと、「ただ休んでいる」ことに、真の意味で「飽きて」きて、「社会とつながる」こと、すなわち「仕事」をしてもいいかな、という気分になってくるのです(「しなければならない」ではなく、「してもいいかな」です。用法の違いにぜひ注目してください)。この「飽き」と「してもいいかな」の気分が、きわめて重要です。どうでしょうか、「飽きるまで休む」って、普通の社会人だと想像も付かないのではないでしょうか。しかし、実際に「休むことに飽きて、何かをしたくなってくる」時期が必ず来るのです。ここまで待てるかどうか、要するに「徹底的に休むことができるか」が、その後の回復を決定的にするのです。
ということで結論としては、「休むことに徹すると、そのうち『飽き』がくる。『働かなくては』ではなく、『働いてもいいかな』と思える時も来る。そのタイミングが、『復職の意欲』というものです。そうなるまでは、時期尚早だと思ってよいでしょう」「したがって、まずはとにかく徹底的に休みましょう」というのが、本項の答えとなります。
A.次のような状態が1つでも見られる場合は、復職を考えるべき段階にない(休養が必要な状態)と判断できます。
A.主治医の判断は、あくまでも医学的見地から、初診時から比して回復傾向が見られたことが認められ、一般的に「労働ができる状態」であることが判定されたにすぎず、必ずしも当該の職場において求められる水準での業務遂行能力を回復したことを認定するものではありません。
多くの場合は、主治医の判断を受けて、産業医が当該の企業の業務遂行能力や判定し、軽減勤務を課した上で復職となります。産業医面談のタイミング(※)にもよりますが、早くても主治医の復職判断を経てから数週間~1か月程度は復職までかかることもごく一般的です。
(※)産業医は常勤ではなく嘱託であることも多く、月に数回程度しか産業医面談を行うことができないケースも多いです。この場合は、主治医の診察から産業医面談までの期間が大きく開いてしまうこともごく普通にあります。希望のタイミングで復職ができない場合もあることは覚えておきましょう。可能な限り復職を早めたい場合は、会社の人事スタッフ、上長、主治医とも連携して調整をしていく必要があります。
A.生活リズムが整ってくると、自然と体内時計のリズムも整います。すなわち、「決まった時間に眠くなり、決まった時間に自然と目が覚める」(睡眠)、「決まった時間にお腹が空く」(食事)、「決まった時間にうんちが出る」(排便習慣)といったことが普通になってきます。この状態が1週間程度問題なく続くようになれば、「リズムが整ってきた」と考えてよいでしょう。もっとも、毎日の体調は健常な人であっても変動があるのが当然です。過度に気にしすぎないほうがよいでしょう(さすがに昼夜逆転は就業にとっては憂慮すべき状況ですが、例えば休日の起きる時間が1時間程度のずれてしまうといった現象は、特に問題ありません)。
A.焦る気持ちは痛いほど分かりますが、職場復帰を焦らないことが大切です。適応障害は心に傷を負った状態であり、その回復には時間がかかります。このQ&Aでも取り上げている「3か月」というのはもっとも短いケースで、実際には復職まで半年~1年半ほどかかるケースもごく普通です。
しかし、社会から隔絶された状態でいると、本人も、ときに家族も、「このままでは職場で居場所がなくなるのではないか」とか「周囲にこれ以上迷惑はかけられない」といった心配や不安を抱えることがほとんどです。そして、その感情はごく普通のことです。ただし、この焦る気持ちは、適応障害の症状として表れている可能性もあります。
中には、「いつまでも休んでいると、却って悪化する」とか、「仕事をしながら治すという手もある」「一度顔を出してみないか」といった周囲からの「悪魔の誘い」もあるのですが、体調が回復していない段階で職場復帰をするのは、「再発してください」と言っているようなものだと重々覚えておいてください。
湧き上がってくるような「焦る気持ち」は決して否定せず、受け容れましょう。ただ、十分に回復していない状態で職場復帰をしたところで、せっかくよくなりかけていた抑うつ症状が悪化し、すぐに出勤ができなくなったり、仕事が手につかなくなったりして再休職ということは、非常によくあることです。そして休職を繰り返すと、休職を長くしていたときよりも、却って悪い印象を周囲に与えることになるでしょう。
「がんばって1か月で戻ってみたけど、またすぐに休職してしまった人」と、「しっかり半年休んで戻って、復帰後1年かけて寛解させた人」とでは、後者のほうが周囲も安心して接することができる、というのは自明でしょう。
なお適応障害(心の病全般)に特徴的なのは、回復に波があることです。これを「三寒四温」に例えることも多いです。症状がよくなったと感じても、まだまだ不安定で、「よいとき」と「悪いとき」を繰り返しながら、徐々に寛解に向かっていくというイメージです。
したがって、少しばかり調子が良くなったからといって、急に復職を目指すのではなく、体調の波を見極め、ある程度状態が安定するのを待つことも大切な休養であると心得ましょう。
あなたが復職の意志を示した時、もし主治医や職場の保健スタッフから「まだ判断できないなぁ」とはぐらかされたときは、客観的に見て「時期ではない」ということです(否定はメンタルを病んでいる人にとって受けるダメージが大きいですから、大抵はそうと取られないようにはぐらかされることが多いはずです)。
A.適応障害の症状が回復していない可能性があります。もちろん、「聞いたのに教えてくれない」のであれば問題ですが、「何も聞かなければ、誰も何も教えてくれない」のが普通です。もしあれこれ先回りしたらしたで「復職をせっつかれている」と感じ、義務感に駆られて早期に復職し、結局再発してしまう-などということもあり得ますが、そんな失態は何としてでも避けたいのが会社です。そもそも、「仕事」を手取り足取り教えてくれることなんて、ほとんどないでしょう?それとまったく同じです。誰も「自分のため」になんて動いてくれないなんてこと、骨の髄まで分かっていたはずだのに。適応障害で脳がダメージを受けたので、はたらきが弱り、その社会の厳然たる掟のようなものを一時的に忘れてしまっただけです。
そもそも、「誰かが方法を教えてくれるだろう」と待っていると、いつまでも何も進まないものです。主治医も産業医や会社の保健スタッフも人事担当者も、自分から「そろそろ復職を考えています」と声を出してくれるタイミングを待っています。復職は「誰かのせい」ではなく、「自分のこと」そのものなのですから。
すなわち、おぜん立てされて復職するのではなく、自分から復職に向かっていくという気持ちになるまでは、症状が回復しきっていないともいえるでしょう(誰かにおぜん立てされて就職したのではなく、自分から応募して就職したというのと近しいアナロジーで説明できます)。これを自身の回復度の1つのバロメーターにしてみるとよいでしょう。
A.リワークプログラムは、施設によりかかる費用が異なります。多くの場合、リワークプログラムは精神科医療機関で実施されているため、健康保険の適用となることが多いです(3割負担)。また、所得状況により自己負担が原則1割となる「自立支援医療制度」を使用できる場合もあります。
具体的な 金額については医療機関、リワークプログラム実施機関へ、公的な援助についてはお住まいの自治体へ、それぞれ確認されることをお勧めします。
A.リワークとは、Return to Workの略で、メンタル疾患で休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリを実施する機関で実施されている医療プログラムです。「復職支援プログラム」や「職場復帰支援プログラム」といった表現をする場合もあります。
基本的には、復職を想定した訓練を行います。プログラムに応じて、「決まった時間に施設に通う」(通勤の訓練)、仕事を模したオフィスワークや軽作業(作業療法)、再発防止のための疾病知識習得・心理療法などが組み合わされます。施設によっては、集団生活に 馴化(順化)するためのレクリエーションや簡単な集団運動などが取り入れられることもあります。プログラム中では、従前の働き方・考え方を振り返り、再発しないための準備も行っていきます。
A.いいえ。あくまでも治療の根幹は「休養」と「服薬」で、必要に応じて心理療法やリハビリが取り入れられます。ただし、休職期間が長引けば長引くほど、仕事に必要な体力や精神力も低下し、復帰までの心理的ハードルが高くなることも考えられます。したがって比較的長期間休養している場合は、不安感解消・仕事に必要な体力や勘を取り戻していくという意味でも、リワークが勧められることが多いようです。
また、一人でリハビリを行うことに不安を感じる場合も、主治医や産業医と相談してリワークを紹介してもらうこともよいでしょう。
なお近年では、企業内で復職支援プログラムを準備しているケースも増えてきました。組織内に医療機関や社員のヘルスケア専門の部署を設けている企業の場合、自社版にカスタマイズした復職支援プログラム(通勤訓練のほか、心理カウンセリングによる認知行動療法などを含む)を提供したり、EAP(Employee Assistance Program/従業員支援プログラム)の一環としてメンタル疾患を起こした従業員にリワークの機会を提供したりすることもあります。
この背景には、従業員のメンタル疾患による「再休職の多さ」という現実があります。復職後に安定的に継続勤務をしてもらうために(※)、リワークの受講完了(リワーク担当の医師や心理カウンセラーによる判定)を復職の条件としている企業も今や珍しくありません。この場合は、リワークは「必須」ということになります。
(※)もともとメンタル疾患でダウンする社員は、「働き過ぎ」の傾向にあり、その意味で、企業の求めに過剰に適応してきた結果としての適応「障害」という側面もあります。これを鑑みると、新規採用・育成・企業文化馴化に向けたコストと、既に会社文化を知っていて戦力化していた社員の再戦略化に向けたコストを比較考量した時に、明確に後者のベネフィットが高いからこそ、企業はリワークプログラムを積極的に社費で賄おうとするというのが市場原理的な側面から見た時の、EAPとしてのリワークプログラム提供の背景と言えるでしょう。身も蓋もないことを言えば、「今の従業員を再生工場に送って再起させて長く勤めてもらったほうが、新規採用よりも明らかに得だから、再生工場送りにするんだよ。そこんとこよろしくね」ということですね。
A.実施主体によって、大きく4つの形態があります。1つずつ解説します。
A.数週間~年単位と、施設や症状などによって様々です。平均的には3か月~7か月程度とされています。
A.適応障害の初期の辛い症状が緩和し、リワーク実施施設まで安全に通い続けられる状態(※)になれば参加が可能です。このとき、復職に向けて活動をする自発的な意思があるかどうかも重要でしょう。
リワークを紹介したり、リワーク施設を併設したりしているような病院であれば、主治医に相談してみることもお勧めです。
(※)リモートで実施するリワークプログラムもあります。
A.基本的には休職者本人ですが、復職後にフォローアッププログラムが半年程度設けられていたり、制度によっては家族や上司などが参加するプログラムが用意されていたりすることもあります。
A.例えば、次のような形態があります。これらの形態を組み合わせてプログラムが用意されることがほとんどです。
A.次のような内容で行われます。
A.復職に向けた、就労に必要なスキルを回復することができます。次のようなものが挙げられますが、これらはそのまま、「復職後、安定して働き続けるために必要な力」そのものと言えるでしょう。
A.日常で必要となる「食事」「洗顔」「料理」などの、応用的動作能力のほか、就学・就労・社会参加といった社会的な適応能力を維持・改善し、その人らしい生活の獲得を目的としたリハビリテーションを行う専門職です。メンタルヘルス領域においては、患者のメンタルケアを行うことも作業療法士の仕事の1つに数えられます。
A.理学療法士は「立つ」「座る」「歩く」など、身体機能の大きな動きのリハビリテーションを行うことで、運動機能回復を図り、日常生活の自立をサポートします。
一方の作業療法士は、「箸を持つ」「服を着る」「手を洗う」「字を書く」などの、応用的な動作能力のリハビリテーションを行い、「その人らしい」生活の回復をサポートしていくことが相違点です。また、メンタルケア領域のリハビリも担う点が異なっているといえるでしょう。
A.目的は2つで、「本当に復職が可能なのかを見極める」ことと、「復職時に制限すべきことを判断する」ことが挙げられます。
産業医には守秘義務がありますので、「会社に言わないでほしいこと」は、遠慮なくそう伝え、取り繕うことなく、本音で答えましょう。会社の業務をイメージした上で、適切な助言をもらえるはずです。
こちらも、素直に感じたことを答えるのでよいでしょう。
これらを踏まえた上で、産業医は「今後のためのアドバイス」をしてくださいます。ちなみに私の場合は、「再発をしないことが何よりも重要」であるということと、そのためにも不足がちな「運動」を必ず組み込むこと、をかなり強めの口調で言い渡されました。
A.「主治医からの復職許可の診断書」があることを大前提に、まずは本人が仕事に安全に復帰できる状態かどうか、一般的に以下の基準で判断されることが多いようです。
判断基準は概ね以上ですが、実は、「本人との面談」だけでは復職が許可されることはありません。必ず、上長や人事担当者も交えた協議を行い、「受け容れる職場の環境が整っているか」「上長の理解が得られているか」いう部分も加味した上で、最終的な「復職判定」となります。
慎重な企業では、1対1の産業医面談を受けて、産業医・上長・人事担当者と環境調整協議を行い、本人・産業医・上長・人事担当者との4者面談で復職時期や条件を指さし確認した後、さらに本人・上長との最終調整の面談を経て、双方納得の上で、上長と人事担当者とで最終調整という段階を踏んで、はじめて復職が許可されるケースもあります(復職を最終的に判断するのは 、産業医ではなくあくまでも会社側です)。
A. TPOを弁えたものであれば、それでよいかと思います。対面の場合・リモートの場合ともに、その会社で勤務する時の一般的なドレスコードでよいでしょう。就職活動の面接ほど気張る必要はないでしょうが、かといって「就労可能であることを証明する面談」でもあるので、「パジャマ」などの「アットホームすぎる服」、短パンTシャツサンダルなどの「カジュアルすぎる服」は避けたほうが無難です(髪の毛がぼさぼさのパジャマ姿で登場した場合はおそらく、「この人、 少しも治っていない」と思われるはずです)。
A.対面だろうがリモートだろうが、問題はありません。巧く「伝える」というより、状況がしっかりと「伝わる」ことのほうが大切です。
A.復職に向けた不安感情が発露しやすい時期です。このときこそ、本人を観察し、異変の兆候があれば躊躇なく主治医などに相談するようにしてください。
A.休職中の社員が職場復帰をする前に、本人のリハビリはもとより、産業医などが職場復帰の可否を判断することなどを目的として、本来の職場に一定期間継続して出勤する(厳密にいえば「出勤ルートを辿る」)ものです。職場復帰支援プログラムの一環としてひろく実施されています。
労使の協定にもよりますが、多くは週3~5日程度、午前中にスーツを着て家~職場までを往復するプログラムとなっていることが多いようです。
A.休職者は、「労働を免除」されている存在ですので、労働者としては微妙な立場にあります。事故が起こった際の対応、不利な立場に置かれないようにするなど、労使ともに慎重かつ合意の上で実施する必要があります。
まず、「試し出勤」で軽作業などを業務命令として遂行した場合は、労働基準法上、賃金が発生します。これに関連して、何らかの業務で賃金が支給されると、当該期間においては傷病手当が不支給となる可能性があります。まずはこの点に留意する必要があります。
一方で気を付けなければならないのが、通勤途中あるいは会社施設内において事故が発生した場合です。もし、上述の通り賃金が発生する場合は、「労働」ですから、労災の適用対象となります。しかし、賃金が発生しない場合は「通勤」とは見做されませんので、労災が適用されない可能性があるのです。
「試し出勤制度」は、リハビリや復職判断にも活かせる実利的ななプログラムですが、一方で「労働基準法」「労働者災害補償保険法」「健康保険法」に関わる法的な問題を惹起する可能性も孕んでいます。繰り返しになりますが、労使ともに慎重かつ合意の上で慎重に運用する必要があると言えるでしょう。
A.フルタイムでの復職が条件となっている会社であっても、 当面の間(半年~1年単位)は「就業措置期間」とされ、主治医・産業医・人事による管理下に置かれます。この期間においては、「仕事の成果」や「本来の職責を果たす」ことではなく、「心身ともに職場に馴化して、再発せずに働けるようになること」が最大の目的となります。就業措置期間では、決まった時間での出退勤が継続することを最優先として、「仕事中心の生活リズムに慣れる」ことからはじめ、職場環境そのものへの慣れ、体力・気力の回復、職場の人間関係(上司・同僚・取引先)の再構築、そしてそれらの結果として、仕事に必要な技能を再習得・再学習していくことが求められます。
就業措置期間の最初期にほぼ100%付帯されるのが「残業禁止」「休日勤務禁止」の2つです。このほかに、職務特性に合わせて「出張禁止」、「渉外業務やクレーム対応禁止」「乗り物の運転禁止」、「フレックス勤務禁止(勤務時間管理)」「半日勤務」「6時間勤務」など様々な条件が付帯されることがあります。一般的には、定期的に行われる産業医面談によって、これらの条件が徐々に緩和されていくことになります。例えば2か月後に「残業」解禁、半年後に「休日勤務」解禁、1年で通常通りの勤務を許可、などです。
このような勤務上の制限(業務時間・業務内容)のほか、作業の進め方(同時並列作業ではなく、当初は直列で完結する業務を与えること)や現状の力量に併せて段階的に難易度を調整すること(一般的には1か月で本来の職責の3割、3か月で5割、半年で9割とされています)などについても産業医より意見が付されることが、しばしばあります。
A.復職後にとられる就業措置期間は、社員に当然に求められる2つの職務姿勢、すなわち「就業規則に基づいた勤務ができること(特に、指定の事業所に通勤し、フルタイム勤務ができること)」かつ、「上司から指示命令された業務を遂行できること」の2点を復職者にも求めることを原則としつつ、再発防止の観点から、健康状況をみながら一定の配慮を行うという労働安全衛生措置の1つです。
この期間においては、総業務時間(職責も含む)は漸増するように配慮すること、そして、心身の負荷が著しく高い業務や、生命や健康に関わる危険業務を一時的に避けることが何よりも求められます。その配慮に基づいて、例えば、以下のような措置が取られます。1つずつ理由と措置の内容を見ていきましょう。
なお、これらの就業措置と相反して分かりにくいところなのですが、一方で「復職」とは、組織の指揮・命令系統に基づいて労務提供が可能な状態であることを(少なくとも形式的あるいは手続き論的には)意味します。したがって、復職直後であるから、という理由「だけ」で、「〇〇の業務を禁止する(制限する)」といった、あまりにも仕事内容に踏み込んだ、具体的な制限がかかることは一般的ではありません。
復職者の仕事内容そのものは、レポートラインで見ても上司の指揮命令系統(労務管理)に属する問題なので、就業制限を踏まえつつ、「今の体調でできる仕事は何か」を吟味、取捨選択しながら、あくまで上司が「指示」する形を取っていくことになります。
A.原則現職復帰とされている理由は、大きく分けて3つあります。
上記の複合的な理由から、タイミングが合わない限りは、「復職のタイミングで希望の部署に異動する」ということはかなり難しいということが想像できるかと思います。ただし、パワハラやセクハラなど、明らかに対処すべき事案がある場合や、休職前の職場環境にあまりにも適合できずに異動が望ましいと明らかな(本人もそれを強く希望している)場合は、当然にこの限りではありません。最終的には、主治医・産業医・会社との調整が必要になってくるでしょう。
なお、「現職復帰」したのちに、落ち着いたころのタイミングで、より本人に適合的な部署への異動が行われるということは普通に起こり得ます。復職してみて、やはり現部署での仕事が辛いなど、何かしらの違和感を感じるようであれば、就業措置の期間中に上司や産業医などに 遠慮なく、また躊躇せずに逐次相談しておくようにするとよいでしょう。
A.「隣の芝生は青く見える」という言葉があります。今の職場が大変だったからと言って、希望する新しい職場が本当に自分にとってよいかどうか、は一概には判断できないところがあります。
新しい職場では、人間関係や仕事、職場のローカルルールや業務手順の習得などを一から構築していく必要があります。そのこと自体がストレスとなることは確実で、再発の大きなリスク要因となります。また、新しい職場について得ている情報が本当に正確かどうかという観点も忘れてはなりません。 中に入ってみないと分からないことはたくさんありますよね。
会社や上司と部署変更を相談するにあたっては、主治医や産業医とも、「どのような職場環境や働き方が望ましいか」「今の職場環境でできる改善点はないか」「復職時の部署変更に治療的な効果は見込めるのか」といったところを十分確認したうえで、「自分自身がどうしたいのか」「なぜ部署変更を望むのか」を明確にしたうえで話し合うようにしたいものです。
A.「以前の職場」が、以前のままの環境であることはまれです。人が1人変わるだけで職場の雰囲気は随分と変わることがあります。「以前のイメージ」で戻ってみたところで、微妙に違う空気が流れていることに気づき、結局そのことがストレスになることもあり得るわけで、空想上の安心感とは裏腹に、再発のリスクは常に潜んでいるといえるでしょう。これも、「隣の芝生は青い」の一種と言えそうです。
A.復職は、原則として「就業規則通りに働ける」状態を指しています。就業規則上、時短勤務が法定の育児や介護以外で定められていない場合は、論理的必然性として、その他の、すなわち、「(病気による)時短勤務制度が存在しない」ということになります。会社の考え方によりますが、「フルタイム勤務ができないくらい体調が悪い場合は、まだ休んでいてくれ」ということがメッセージとしてある (※)、ということでしょう。逆に言えば、「フルタイムで戻れるくらいに体調を整えてから戻る」ことを明確に要請していることになります(ただしこの場合でも、フルタイムで復職を原則としつつ、残業禁止などの軽減勤務は付加されることが普通です)。
フルタイム勤務ができるということは、基本的には(ある程度周囲に気を遣われるにせよ)常識的な範囲で業務をこなし、同僚と通常通りのコミュニケーションを取れることを前提としているわけです。周囲が極度に気を遣うレベルの軽減勤務は、そもそも復職できる状態ではないということですね。
(※)軽減勤務を課すことがごく一般的とはいえ、就業規則で想定する業務状態から敢えてハードルを大幅に下げ、極端な低負荷状態から勤務を開始するということは復職の条件にはそぐわない、ということですね。これが難しいレベルであれば、まだ職場での勤務は認められないということになります。
A.「フルタイム復職」は、 論理的には上記の回答が理由となりますが、心情的にはフルタイムで戻るのはとても不安ですよね。その「不安」は、必ず主治医や産業医に相談しましょう。もし、この「不安」が適応障害の症状として発現している場合は、まだ「復職は時期尚早」ということでしょうし、場合によってはリワークプログラムや出勤訓練などを別途で実施し、復職への病的な「不安」を解消するべくしばらくリハビリが必要な状態かもしれません。一方で、その不安は、長期離脱していた人ならば当然に誰でも抱き得る「不安」かもしれません。この場合は、復職してしまえば「喉元過ぎれば熱さを忘れる」「産みの苦しみ」「取り越し苦労」 な「不安」といったところでしょう。繰り返しになりますが、これは誰もが通る不安ですので、その気持ちを持つことはむしろ自然です。
病的な不安なのか、自然な不安なのか。 この辺りの見極めは、復職後の再発防止の観点からきわめて重要なファクターとなります。ちょっとした心の変化は、ためらわずに主治医・産業医にお話しするようにしてください。
A.一般的に、体調を回復させるためには「規則正しい生活」が不可欠です(特に睡眠リズム)。フレックスタイムは、働く時間を自由に決められるという意味で自由度が高く、自律性という意味でも健常な労働者にとってはストレス軽減という側面もあるでしょう。しかし、就業措置におかれている労働者にいきなりフレックスタイムを適用してしまうと、ただでさえ復職直後で疲労が蓄積している中で、「仕事で疲れていて朝起きられなかったから昼から夜まで働こう」となり、さらに「夜まで働いたら朝起きられなくなってしまった・・・」といった不規則な生活が定着してしまう恐れがあります。深夜型になったり、午前中に仕事がまったくできなくなったりと、精神衛生にとっても、また業務においてもマイナスの効果が多くなる可能性を捨てきれません。そこで、就業措置期間中は勤務時間を敢えて指定し(多くの場合は休憩時間も指定されます)、まずは「規則正しく日中に労働できる状態」にもっていくことを目指すことが一般的です。
A.はい。復職時に軽減勤務を課す場合は、基本的に「朝から」の勤務となります。理由は、適度な負荷をかけることによって生活習慣を適切にコントロールするためです。朝と比べて負荷が格段に少ない「昼からの出勤(ないし勤務開始)」を許容してしまうと、いつまでたっても規則正しい長時間の就労開始が困難になる恐れが出てきます (※)。
適応障害の場合、午前中の体調不良が一般的に観察されやすいですから、「朝、すっきりと目覚めて定時勤務ができる(多くの場合は出勤ができる)」状態が回復の大きな目安となります。逆に言えば、これができない場合は回復しておらず、「復職させてはならない状態」と見做すこともできるのです。
(※)3時間勤務や隔日勤務など、極端な形で就労制限がかかった状態は、「ほんらいは復職すべき状態ではない」と判断すべきであると考えたほうがよいでしょう。100%は求められないものの、あくまでも一定レベル(就業規則に定める勤務水準)の業務をこなせる状態(想定の7割程度)になってはじめて、復職が可能であると考えるほうが安全です。
A.正常な判断が期待できない心理状態にある可能性が極めて高いからです。
もちろん、会社自体に嫌悪感を持ってしまっていたり、今の組織に所属すること自体への魅力、生きがい、意味を見出せなくなってしまったり、ともかく「今の会社に勤めていること自体が適応障害の症状を増悪させている」場合は、当然ながら「退職」や「転職」も視野に入れるべきでしょう。しかし、適応障害の症状そのもので「一刻も早く今の環境から離れたい」という焦燥感から、性急に物事を進めようとしている可能性もあるため、休職期間中にまずは一度「クールダウン」の期間を設けることをお勧めします。
退職や転職は、「かかるストレス」「生活(金銭面を含む)への影響」「家族など周囲への影響」が非常に大きいものです。ただでさえ病身の休職中に、「余計にストレスがかかること」にわざわざ追加で取り掛かるメリットはあまりありません。今後のことは心身のコンディションが十分に回復してから、時間を掛けてじっくり検討していきましょう。
特に転職先を決めずに勢いで退職してしまった場合、いくら「失業保険」等があるからといっても、休職中は思うように活動することは難しいのが普通です。しかし病院への通院は続けなければなりません 。配偶者等の健康保険の扶養に入る場合を除き、(任意継続被保険者にならない限りは、今までの)健康保険証は退職翌日から使用できなくなります(誤って使用してしまった場合は後日7割分の返金が必要になります) し、任意継続被保険者の場合であれ、国民健康保険加入であれ、健康保険料を負担する必要がありますので金銭的にも辛くなってくるでしょう。
抑うつ症状の渦中にいるときは、大抵は視野が狭窄しているものです。「なんだかわからないけど、辛い」という状態です。混乱した状態で変化の大きいアクションを起こしても、大抵は具体的な解決策が打てず、何か新しいことをしたところで、次の「なんだかわからないけど、辛い」を生み出すだけとなり、余計に物事を複雑にする危険性があります。
まずはしっかりと休んで、心身に余裕ができてくることを待ちましょう。余裕が出てくると、徐々に「自分が辛かったものの正体」が見えてきます。「会社そのものが辛い」のか、「業務内容が辛い」のか。はたまた「人間関係が辛い」のか。朧気ながら「辛いもの」の正体が見えてきたところで、多くの人は復職準備に入っていけるようになります。そして復職準備~復職の時期になると、より具体的に「本当は辛かったけれど、我慢していたこと」が見えてくるようになります。「人間関係が辛い」であれば、「上司との定期的な面談がプレッシャーだった」とか、「隣の席の〇〇さんの言動が苦手だった」などです。「業務内容が辛い」であれば、「取引先の世間話に付き合うのが嫌い」とか、「ずっと外出できない〇〇の時期が苦手」というものがあるでしょう。このようにして、「自分が本当は深層心理でマスクしていたこと」を解きほぐしていけるようになってはじめて、「それを我慢する」のか、「解消すべくアクションを起こす」のか、「それでも解決しないなら異動なり、転職なりを選択するのか」を冷静に考えることができるようになります。
このように、まず休む→余裕を持つ→真因を探る、というプロセスを丁寧に踏んでいくことで、同じことの二の舞にならない選択ができると言えるでしょう。
またよくある問題として、精神が不安定な時期に勢いで「退職届」を出してしまったが、いざ体調がよくなってみると(冷静になってみると)「浅はかなことをしてしまった」と後悔する、というケースもあります。会社側が退職の申し入れを承諾し、法的に雇用契約の解約が成立したとみなされる場合は、あとで労働者側が「撤回」を申し入れても、会社がそれを応諾する義務はなくなります。 よしんば会社側が受理を保留していたとしても、一度「やめる」と言った社員を今後どこまで会社が本気で処遇しようと思うのかは、わかったものではありません。「本当に退職してよいのか」「今、このタイミングで"今の環境から逃れたいという一心"で、いわば"勢いだけ"で行動してしまっていないか」は、よくよく 、本当によくよく振り返ったうえでアクションを起こすようにしましょう。
身も蓋もないことを言えば、少し頭が弱くなっているときに、わざわざ生活が激変するような大変なことをして、余計に大変な思いをする必要はないよね、という話です。 まずは「心身の回復」を何をおいても優先させるべきです。
A.上記に記載の通り、大前提として「申し出る力がない」ほどに弱っているときは、人生に関わる決断をすべきではないでしょう。しかし、「在籍していることそのものが適応障害の症状回復の妨げになっている」こともあろうかと思います。主治医やカウンセラーとの相談、家族との相談も経て、いざ「決断」したとして、それでも申し出るパワー(さらに、業務引継を行うパワー)が沸かないときは、弁護士に退職代行の相談をするという手もあります(非弁業者の場合は社員の急な欠缺で引継もできないなどの事情による「損害賠償請求」など法的な交渉ごととなった場合に対応することが法的にできないため(代理で交渉事に対応してしまった場合は非弁行為となり違法なので)、原則は弁護士に依頼することが重要といわれます)。
A.それが普通です。「ちゃんと元通りに仕事ができるだろうか」「どうせ奇異の目で見られるんだろうな」「また悪くなったらどうしよう」「今でこんなに不安なら、これからもっと不安になるぞ」など、ありもしないことを想像して不安になるのです。
しかし、自分のことを思い出してみてください。今の時代、職場に1人や2人、休職明けの人を迎えたことがあるでしょう。その人たちが戻ってきたときに、あなたはその人の一挙手一投足を確認したことがあるでしょうか?していませんよね。そうです。職場は忙しいので、わざわざそこまで他人のことに関心を払えないのです。だから大丈夫です。だれもあなたのことを監視していませんし、それほど興味も持っていません。 隣の男のネクタイや靴の色を3日後になっても覚えているでしょうか?他人への興味など、その程度のものです。謎の自意識過剰は、 この際捨てましょう。
経験者としての復職した日の率直な感想を書いておくと、「周囲はすごく普通(いつも通り)」で、しかも「(思っている以上に)優しかった」です。何というか、うまく表現できないのですが、「復職直前の不安が最大で、それ以上の不安は復職後には襲ってこない」ものです。だから、一度復職の日にオフィスに入れれば大丈夫です。安心してください!
ちなみに私は、最初の出社時に会社の入り口で「このまま海に行ってしまおうぜ・・・」と悪魔のささやきがあり、それを「いやいや、とりあえず出社しましょう」と天使が瞬時に止めてくれました。正直、かなり危なかったです。 でもそれが普通です。誰もが通る道ですので、安心して最初の出社に臨んでください。
A.それが普通です。就業時の7割くらい(いや、もしかすると5割、・・・・・・下手すると3割くらいかもしれません)調子が戻ってきたら、あとは現場でリハビリをするということです。いくら心理トレーニングを積み重ねたところで、「実践(社会生活)」で活かされなければ、 それは絵に描いた餅なのです。
そして、ここが考えどころなのですが、そもそも、「100%の状態」ってあるのでしょうか?
「普通に働けるけど、喘息を持っている」とか、「普通に日常生活は送れるけど、ヘルニア持ち」とか、人は常に何かを抱えて生きているものではないでしょうか。「花粉症持ち」 「カフェインに弱い」「下戸である」「頭痛持ち」「胃弱持ち」「下痢しやすい」「生理痛持ち」 「扁桃腺が弱いから風邪をひきやすい」「歯が弱い」「近視・乱視・遠視・老眼」「腰痛がひどい」などはその典型ですよね。取り立てて病気がなくても、深刻な「悩み」を 日常生活で抱えている人はたくさんいます。「何もない」人はむしろいないのではないかと思います。
中には「完治」する病気もありますが、適応障害などは「寛解(ひとまず病状がおさまって穏やかであることですね)」した状態で日常生活を送っていくタイプの病気だと言えるでしょう。ですから、社会生活が送れなくなるほどの「苦痛」は緩和しつつ、普通に生活を送れることを可能にしていくこと。それが、適応障害の治療なのかもしれません。
そもそも、「100%を目指す」「元気か病気の状態か白黒つける」というのは、適応障害になりやすい思考形態そのものです。そうではなくて、「健康と病気の状態は実はグラデーションである」「体調は何も100%でなくても社会生活は普通に送れる」ということに気づけると、なんだかラクになってきませんか? 「適応障害と、うまく付き合っていく」という考え方が大切でしょう。
A.「0か100か思考」の陥穽にハマっていると思います。病気の状態と健康の状態はグラデーションであって、「100%健康」という状態は、ほとんど稀有なことなのではないかとさえ思います(一方で、「100%病気」という状態もほとんどあり得ないことです)。実際は、「少し爆弾は抱えているけれど、日常生活は難なく送れています」という「未病」状態を、多かれ少なかれ、ほとんどの人が抱えているのではないでしょうか。
問題そのもの「が」なくなることを求めるのではなく、それが問題「で」なくなるように努力の方向性を持って行ったほうが、格段に生きやすくなるのではないかと思います。
A.職場復帰に備える活動が、適応障害におけるリハビリです。病状等によっては専門のリワークプログラムに参加することもありますが、自分自身でも取り組むことはもちろん可能です。
足を骨折したとき、最初は骨を固定して、絶対安静をします。これが適応障害でいう「休養」に当たります。骨がくっついて動かせるようになったら、ここからは可動範囲を広げ、日常生活が送れるように訓練をしていきます。これが「リハビリ」ですね。
適応障害のリハビリは、主に次の2点を、少なくとも2週間以上継続して行えることが重要になってきます(継続性)。仕事は1か月はおろか、何年も続くものですから、就業を意識したリハビリには、必ずこの「継続できること」が問われてくるのです。
まず最も重要なのが、「規則正しい生活を送ること」です。起床時間・睡眠時間が職場のリズムと合致していること、長時間(2時間など)の昼寝をしてしまっていないこと、食事が決まった時間に取れていること・・・といったものですが、これは仕事に必要な体力・精神力・回復力を維持するためのもっとも基本となるものです。
これを前提として、「就業を意識した日中の活動を送る」ことに挑戦します。例えば次のような訓練方法があります。慣れてきたら、少しずつ段階を上げてみるのもよいでしょう。
もちろん、これらの準備をすべて行う必要はありません。しかし、復帰に向けた準備を十分に行わずに復職してしまうと、結局、早期に消耗を来して戦線を離脱せざるを得ないということもあります。 かといって、体調が十分でない状態で無理をしすぎるのもよくありません。主治医、上司、産業医、人事担当者、保険スタッフと相談し、 自分にとって必要な準備をしてから復職に臨みましょう。
A.不要です。私も当時はすごく悩みましたが、結果的に持っていきませんでした。
仮にお菓子を持っていっても、「お菓子を買う元気があったら、早よ働け」と思う人がいるでしょう。逆にお菓子を持っていかなければいかないで、「周囲に散々迷惑をかけておいて菓子折り1つもないなんて、なんて非常識な」と思う人もいるでしょう。しかし、圧倒的大多数は「どうでもいい」と思っています。実際、自分が思っているほどには、他者は自分のことなんて少しも考えていません。 休職していたとて、「たまに」あなたを思い出してその時だけ心配して、いざ戻ってきたら「よかったー」で終わりです。自分自身、他者に対してそうでしょう?
そして、実際変にかさばるお菓子をもらっても、例えば辛党の人はすごく困るわけです(お菓子は、カバンに入れて持って帰るのも一苦労です)。それからリモートでそもそもほとんど出社していない人もいます(お菓子は、ロッカーの中で肥やしになります)。要は、「人それぞれ」ですから、そんなところに神経を注がなくてよいのです。むしろ、再発をしないことのほうが重要です。わざわざ菓子折りを持って行って、1か月後に再発した・・なんて言ったらシャレになりませんからね。
そもそも、私疾病で済まされがちな適応障害ですが、その実は、労働災害に限りなく近い疾病です(ほとんどの経験者は一度はそれを思うでしょうが、まあ、今後のためにわざわざ会社と争わないようにおとなしくしているだけですからね)。いくら「認知上の歪み」が原因の1つとはいえ、間違いなく「仕事によって発症した」のは厳然たる事実なのですから、そういう意味でも、あまりそのあたりは会社に気を遣う必要はありません。堂々としていればよいのです。
ただし、それでも「菓子折りを買う」行為そのもので復職前の不安が解消するのであれば、買っても別に悪いものではないと思います。ただ、少なくとも「絶対に必要」なものではないということです。まあ、こうやって悩むということは、潜在的に「別にいいか」と思っているということですからね。悩まずに買う人はそもそも 悩むことなく、何の疑問も抱かずに好きに買っているでしょうから・・・。
まあ、言いたいことは「私的な旅行で長期不在にしていた」のとはワケが違う、ということです。
A.「消えもの」であることは大前提として、「比較的長持ちするもの(腐りにくいもの)」、かつ、「かさばらないもの(軽いもの)」がよいでしょう。特定の商品名は避けますが、「軽さ」は重要なファクターであると(貰う側からすると)思います。
ただ繰り返しになりますが、「別にあってもなくてもどちらでもよい」ということは押さえておきましょう。なにせ、「病欠」なのですから。
A.上記の「菓子折り」ではないですが、物質的な何かをするということよりも、寛解するまで治療を継続し、毎日元気に働いて、安定して継続的に仕事をすること-つまり、穴をあけないこと-が、何よりの恩返しであり、また、感謝を伝えることにもなるでしょう。 再発をしないことのほうが余程職場にプラスですから。
もちろん、ここまで・そしてこれからの有形無形のサポートを「当たり前」と思わず、日々感謝の気持ちをもって、お礼を伝える、やれる範囲で率先して協力するなど、「できること」を積み重ねていくという姿勢をみせることは大切です。
A.内容は簡潔に、しかし謙虚に、「お詫び」と「今後」について述べる程度でよいでしょう。
まずタイミングですが、初日の出社時にまず上司(直接)、続いて出社している同僚(直接)、朝礼などでの全体挨拶(スピーチまたは一斉メールなど)、その後は必要に応じて関係のあった他部署の社員(メール)、取引先(メール)・・・と挨拶していく形になるかと思います。 心身の負担になるでしょうから、特に指示のあった場合を除いて電話をしたり、直接出向いたりする必要はありません。
以下、それぞれへの挨拶方法について述べていきます。
「ご無沙汰しております。(適応障害で○か月、お休みをいただいておりましたが、)おかげさまで本日から復職することができました。休職中は、本当にご迷惑をおかけしました。忙しい中、急遽○○の仕事を代わっていただくなど、皆様にはたくさんのことをカバーしていただいたと聞いております。大変感謝しております。まずは少しずつリハビリをしながらの勤務となりますが、1日でも早くキャッチアップして、チームに貢献できるように再び頑張りたいと思います。宜しくお願いいたします」
「なお、お忙しいところ恐縮ですが、当面の間はリハビリ期間として通院しながらの勤務となります。○か月間は残業禁止とされていて、お先に失礼することもあるかと思います。その分、しっかりリハビリに励んで調子を取り戻していきたいと思いますので、しばらくの間、ご堪忍いただければ幸いです」
件名:復職のご挨拶
本文:ご無沙汰しております。おかげさまで、○月よりお休みをいただいていたところ、○月○日より復職に至りました。休職中、○○様には大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。まずは少しずつリハビリをしながらの勤務となりますが、1日でも早くキャッチアップできるよう、精進して参る所存です。以上、ご挨拶方々ご報告まで申し上げます。今後とも宜しくお願い申し上げます。
件名:復職のご挨拶
本文:株式会社○○ ○○部○○課 ○○様 平素よりお世話になります。○月より、急遽お休みを頂戴しておりました○○です。おかげさまで、○月○日より復職に至りました。急な休職となり、○○様には大変ご迷惑をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。メールにて不躾ながら、○○様には先ずご挨拶をとご報告申し上げた次第です。今後ともどうぞ、宜しくお願い申し上げます。
A.概ね、以下のようなことして徐々に心身を慣らしていきます。挨拶と必要な打ち合わせにはじまり、社用PCや携帯の再設定など必要な機材の整備、 社内で起こった・起こっている出来事の情報収集、当座のスケジュール管理、復職系事務、メールの確認と回答、人事処理、精算、身辺整理などが「まず取り掛かるべきこと」でしょう。少なくとも復帰当日から、いきなり「成果」「責任」を求められるようなことは原則発生しません。
A.何よりも仕事を軸とした生活のリズムに慣れ、「再休職」しないこと、に尽きます。
適応障害の再発率は、一説には1年で3割、2年で4割近くにも上るという統計があります(5年単位では6割とも言われます)。 また、一度再発してしまうと7割の人が再々発となり、再々発してしまうと9割の人がさらに再発をするとも言われます。
また 一般的に、一度の休職は「誰でも起こり得ること」として、長期的な視野では組織的に受け容れられる (多少はタイミングが遅れても、本人の本来のパフォーマンスが回復すれば普通に昇格・昇進なども可能)のに対し、二度目以降となると、 本人の本来のパフォーマンスも100%にはなかなか回復が難しくなり、「二度あることは三度ある」ということで、組織的にもどうしても警戒されるようになってしまいます(昇格・昇進なども、 それだけハードルが高くなる)。そして何より、貴重な労働力が長期間にわたって無力化してしまうことで、会社、そして社会的な損失もはかり知れません。
これらのことからも、「再発させないこと」がいかに大切なことかが分かります。
そこで近年は、いきなり従前のレベルで業務をさせたり、早期の復職をさせることには会社側もかなり慎重になっています。復職後のペースも、「最初の1か月は本来の職責の3割、次の3か月で5割、半年で9割まで持っていくこと」というのが標準的なものとされています。 さらに最初の数か月間は、「残業禁止」「休日出勤禁止」「出張禁止」「運転禁止」「渉外業務禁止」など、労働時間や移動の負担を制限するケースがほとんどの場合で行われるようです。
さらに慎重な企業では、フルタイムでの復職は認めず、「半日勤務2週間、6時間勤務2週間」などの慣らし勤務からスタートすることもあります。それくらい、最初の2週間、そして1か月は再発しやすい要注意時期とされているのです。さらに4か月、そして6か月、と慣れたころに「再発の山」がやってくると言われます。しかし、6か月を乗り越えると、再発の可能性はそれまでと比べると大きく下がっていくようです。したがって、「まずは6か月間でペースを取り戻す」ということが重要とされています。
とにかく、復職後は「すぐに前と同じことをしない」こと、が肝要でしょう。使いすぎて壊れた道具を接着剤でくっつけても、すぐには使えないのと一緒ですね(そして、前とまったく同じ環境で同じ使い方をしたらまたすぐに壊れます。一度壊れたら、今度は「気を付けて」使うものです)。
日常生活では、「規則正しいリズムで生活すること(特に食事と睡眠)」および「適度な運動(週2回、20分ずつ程度の、少し息が上がるレベルのジョギングなど)」が基本のキとされます。
再発防止に関連する以下の記事も参考にしてください。
A.復職後も、「疲れ」から不安感情が高まることがあります。日常的に本人を観察し、異変の兆候があれば躊躇なく主治医などに相談するようにしてください。
A.謙虚に、かつ、あきらめましょう。
「謙虚」というのは、<申し訳なさを出しつつ、堂々と軽減勤務にいそしみましょう>ということです。「自分は病人だから仕方ないだろう」という態度を表に出してしまうと、周囲から反発されますからね。まあ、そんなことに気づかない性格の人が適応障害になることもあまりないと思いますが・・・。
「あきらめましょう」というのは、<再発防止こそが自分の最大の仕事であると心得よ>ということです。しばらくは「業績評価」の呪縛から離れ(完全復活するまでは、出世やボーナスは端から期待しないでおきましょう!)、 「残業禁止」などの軽減勤務を厳守し、「出力120%」ではなく、「常に7割運転を維持する」という、持続可能な働き方を身につけていく「訓練期間」に充てましょう。そもそも適応障害になる人はまじめな人が多いでしょうから、「率先垂範」「即レス」「抱え込む」という「過労ワード」の逆、「言われたらやる」「自分のタイミングで反応する」「他人にやってもらう」という「お前はやる気あるのかワード」を実践するくらいで実は「ちょうどよい」塩梅かもしれません。 「割り切る」ということですね。
A.なります。会社というのは、感覚として、「1か月」も休めば「知らない言葉」「新しい制度」「思いもよらぬ事件」があちらこちらで起こっているものです。 ただし、復職してからしばらくはのんびりとメールや社内掲示板を見る時間を作れますので、じっくりと1か月くらいかけて状況把握につとめていけば大丈夫です。 キャッチアップを焦る必要はありません。
A.はい。心配無用です。よくよくご存知の通り、職場は常にギリギリの人数で回っています。「猫の手も借りたい」わけです。一人でも職場に人が増えることは、ウェルカムとしか言いようがないのです。
休職の後ろめたさ、ブランクによるパフォーマンス回復への心配、キャッチアップできるかどうかの不安、再発の不安など、「不安感」が強いのでしょう。しかしこう感じることは、むしろ普通です。「出勤できなくなること」は、誰にでも起こり得ることです。「お互い様」です。この気持ちを忘れずに、自分が復職者を受け入れる立場になった時に、やさしく接したらそれでよいのです。
A.可能性はあります。種類・飲み合わせ・個人差など様々な要因で、副作用は起こり得るからです。特に日中のふらつきや眠気が強い場合など明らかに仕事に差し触る場合は、躊躇なく主治医と減薬や服薬タイミング、薬剤の変更を相談するようにしましょう。運転や機械類の操作が発生する場合は特に注意が必要です。
A.大きく分けて4つあります。
A.上司としての義務、そして最大のミッションは、何よりも「再発させない」ことです。
復職とは、制度上は「就業規則に基づいて働けるよ」ということですが、その実は「この人は自宅安静はしなくてもいいよ」という意味でしかなく、決して「以前と同じように働けるよ」ということを意味していないことをまずは理解しましょう。すなわち、「回復した」ととらえないことが肝要です。冷酷かもしれませんが、「員数」ではあってもまだまだ「戦力」ではないのです。
復職者は、あくまで「医療の管理下」(犬で例えればリードがつながれた状態)においての軽減勤務が続きますから、いわゆる「戦力化」するのは、どんなに早くても6か月~1年程度はかかると思いましょう。要するに、「高い能力を要する業務を、いきなり課してはならない」ということになります。 少なくとも1か月、3か月というレベルでは、とても以前のようには「使い物にならない」のです。
復職直後は、復職者は「長期離脱」からの不安で「自分だけダメだ」という劣等感、「周囲がよそよそしく感じる」という孤立感、そして「申し訳ない」という罪悪感を抱きがちです。
「まずは出社してくれるだけでありがたい」「あせらず、今は成果は気にしなくていい」「周囲と比べず、まずは体調を整えて」―というメッセージを、上司は繰り返し伝える必要があります(同僚の気遣いは、過剰になると「負担」になりますが、上司の気遣いは、過剰と思うくらいが「心理的な安全性」に直結します)。
なお、少なくとも「勤務制限」のある期間については、「定時の出社と帰宅」「生活リズムの安定」「仕事や職場への慣れ」「体力や気力の回復」「人間関係の再構築」「仕事のスキルの再学習」だけを目標とし、仕事での成果は一切、求めないことが重要です。
一見大丈夫そうに見えても、内心では相当無理をしているのが最初の半年間です。少なくとも週1回、こまめな声掛けを心がけましょう。つい業務負荷を過剰にしてしまった、とか、不用意に責任のある業務を与えてしまった、ということが ゆめゆめないようにしたいものです。
A.復職直後の復職者は、プレッシャーに対して極端にセンシティブになっていることが多いです。したがって、「他者を巻き込む仕事」「期限がある仕事」「ノルマがある仕事」を与える場合については特に慎重になるべきでしょう。就業措置の期間はこれらの仕事をメインで持たせることは避け、少なくとも半年、理想的には1年くらいかけて「元通りの業務量」に戻していくことが望ましいといえます。
他者を巻き込む仕事というのは、「担当取引先を持つ」「人前でプレゼンテーションをさせる」といったものを含みます。少なくとも数か月は影響範囲が大きい業務をメインで担当させるべきではなく、まずはサブやバックヤードにつけて、間接的なサポートから、少しずつ担当範囲を拡大し、段階的に業務量を戻していくことが必要です。最初は自己完結できる簡単なルーチン業務(定型の部署内の連絡など)からはじめ、部署外、さらに社外が絡む案件については慎重に与えていくようにしましょう。
期限がある仕事にも注意が必要です。最初はできれば〆切がないか、長期スパンの仕事(資料整理や自己研鑽など)からスタートし、影響範囲ができるだけ小さいもの(部署内など)から段階的に拡大していくことが無難です。
また、ノルマがある仕事は復職直後には与えないことが望ましいといえるでしょう。評価上、どうしても定量的な指標を課さなければならない場合は、担当数を絞る、誰かとペアにつける、一時的にサブ担当として扱う、など本人が(少なくとも就業措置期間内では)数字のプレッシャーを必要以上に感じない環境づくりをすることが望ましいといえます。
ここで、上司が我慢ができると復職者はめきめき復調し、時間はかかりますがやがてこれまで通りのパフォーマンスを発揮してくれるようになります。問題はここで我慢ができなかった場合です。多くの場合、1年以内に再発させてしまい、部署全体の生産